上 下
19 / 61
第1部『旅の魔法使いと水神の巫女』

アルゴ島の神話

しおりを挟む
◇◇◇イオリア視点◇◇◇


「ふうっ今日はこのくらいにしておきますか」

 私の名はイオリア・マナスクラブ、現在は魔術師ギルドにて少々調べ物をしている最中です。

「それにしても、今日は少し疲れました」

 思い出すのは船に乗って降りるまで、いやっ降りて直ぐの時もでしたがアレですね。やたらと人のことを、特に胸とか顔とかお尻とかを見てくる視線ですね。私は旅をしていますがアレにはよく悩まされます。

 まあ視線だけで実害は滅多にないから良いんですが(実害があった時は容赦しないと決めています)、それでもやはり苦手なのは変わりません。

 いつものことでも正直疲れましたっと考えていると1人の少年に出会いました。
 彼も顔とか胸とか見てきましたが、直ぐにそう言うスケベな視線を送ってくるのをやめました。

 他の男性よりはきっとマシですねっと考えた私です。そこで私は彼に助けを求める事にしました、見た目から魔法使いだと言う事は分かりましたから念話の魔法で話しかけました。

 すると彼は私の願いを聞いてくれて一芝居付き合ってくれました。少年とかいえ男性がいるだけであの露骨な視線が大分軽減されたのには驚きました、私は彼氏とか作った事がないから知りませんでしたよ。

 そして少年は私が魔術師ギルドに行きたいと話すと案内をしてくれました。少年も旅の魔法使いらしく意気投合してしまいました。

 あの時は本当に助かりましたから、この島にいるうちに少年にはお礼をしたいと思っています。

 そしてこの魔術師ギルド、魔術師ギルドの中には魔法が使えなければ人に非ずみたいな禄でもない方針の魔術師ギルドもありますが、ここの魔術師ギルドはそんな感じじゃなくて安心しました。

 魔術師ギルドは冒険者ギルド違って荒事よりも魔法やマジックアイテムの知識や実験の手伝いなどがよく依頼されます、魔術師ギルドに登録した魔法使いはそんな仕事をこなしながら生活費を稼ぐのです。

 私はお金の方は心配ないのでギルドの隣にある大きな宿屋の1室を借りて日々自身の研究をしています。
 ちなみに私は値段が高くてもお風呂かシャワールームがある宿屋を借りるようにしています。

 そんな宿屋がないときは魔法でなんとかするのです、魔法の本領発揮ですね………冗談です。

 今、私の机の上には何十冊もの分厚い書物が重ねられています。このアルゴ島の神話を調べているので多くの歴史書を魔術師ギルドの図書館から借りて来ました、魔術師ギルドには大抵図書館が併設されているんです、冒険者ギルドに酒場が併設されてるように。

 まあ私はお酒はあまり飲みません。コーヒーはわりと飲みます、但しちゃんと甘くした物じゃないとイヤです。無糖のブラックなんて許せませんね。

 しかし今日はもう疲れたので休む事にします、外は既に真っ暗です。明かりは天井に大きな魔法の明かりを灯す物があり、部屋は明るいですが。

「……………水神の神話」

 私は書物の一文を読んでいます。

『島の真実にたどり着く事を望む者、三つの宝玉を求めよ。そして鍵と巫女と共に扉を開くのだ。
その先に道は続く、古き神話とそこに眠る真実、大いなる宝をその手にするがいい。』


「神話とそこに眠る真実、そして大いなる宝ですか」

 自分でも分かるくらい笑みを浮かべている自覚がありますね。
 やはりこのアルゴ島の神話、ただのおとぎ話ではありませんよ。

 何しろこの神話と水神を信仰するあの組織が実在しているんですから。

「……必ず尻尾を掴んであげますよ?」

 そう言えばあの少年は私の職業を考古学者だと勘違いしていましたね、あの時は否定する事はしませんでしたが、実は私の本職ってそんなのではないんです。

 まあそれを説明する事はないでしょうが、無事にここでの仕事が終わったらお礼したらこの島を立つつもりですから。

 そう言えばあの結界魔法、中々に便利な魔法でしたね。少年は魔力はまだまだですが魔法を生み出す発想力は素晴らしい物がありますね。

「……ただ、あの魔法。彼の魔力で発動可能とは思えませんでしたが」

 まさか少年にも何か秘密が?……いえっまさか。

 私はベッドに入って休む事にします、部屋の明かりを消しました。













しおりを挟む

処理中です...