息抜きで異世界へ

どらいあい

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第4話 甘党梨と奴隷ちゃん(1)

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 これはゴーレムコアと呼ばれるマジックアイテムだ、コイツとゴーレムを召喚する魔法があれば大抵の場所でオリジナルのゴーレムが創成出来るというステキな魔法のアイテムである。

 取り出したゴーレムコアを地面に転がす、そしてこのおじさんもブツブツと呪文を唱える。

 ……準備完了。僕は魔法を発動した。
「サモン、スパイダーゴーレム!」

 僕は魔法が使える。女神様から借りた私物の中に呪文書《スペルブック》なるアイテムがあるのだが、この書物には魔法についてその能力とかが記されている。

 そしてこの呪文書、なんと読むだけで魔法が使えるようになるというチートアイテムなのである。
 しかもファンタジーによくある魔力を必要とか一切ないので魔力なんて全くない日本のアラサーでも魔法が使えるのだ。

 但し魔法を使える回数には制限があり、それが尽きるとまた呪文書読まないとその魔法は使えない。

 大雑把に説明すると、下級魔法は基本的に一度読むと五回は使える。中級魔法だと四回、上級は二回。その上の特級や超級レベルの魔法だとやたらと長いページを読む必要があるのに一回しか使えない……まあそのレベルの魔法は阿呆みたいに危険なので基本的に使わないけどね。

 そしてこのゴーレム召喚の魔法は中級魔法である、後三回しか使えないがゴーレムを何体も召喚するつもりなんて特にない。

 この魔法で召喚したのは足が八本ある身体がマンホール蓋をぶ厚くしたようなゴーレムだ。
 その身体からは柵が生えていて円を形作っている、まんま籠《かご》である。

 このスパイダーゴーレムは荷物持ちポーターである。八本も脚があるので移動も素早くそれなりの荷物を持てる、コイツにリュックサックを持ってもらうわけだ。

 リュックサックもそこそこ重いので身軽になっておきたい。しかし魔法が使える事を多くの人間に知られても基本的に面倒くさい事にしかならない(この世界、魔法使いってかなり少ないらしいのだ)ので基本的には秘密にしているが、僕の冒険者スタイルはいわゆる魔法使いなのである。

 鎧とか重いから装備したくないし、武器なんて銃刀法違反になるので日本に持ち込む訳にもいかないからな。呪文書をネビウス様に渡された時から僕は魔法を使える冒険者になる気満々だった。

 ゴーレムの籠にリュックサックを入れて準備完了、僕は『紅葉の森』の探索を開示した。


 ◇◇◇◇◇◇


 探索を開始してから十数分程経った。
「そろそろ目的の物がある場所に……げっ」

 今回の僕の採取依頼はとある梨の採取が目的だ。
 そこでその梨をゲットする為に来たのは『紅葉の森』にある野生の梨の果樹園である、『紅葉の森』には自然の果物の果樹園が幾つかあるのだ。

 その殆どが簡単には見つからない場所にあり、『紅葉の森』は危険なモンスターもいるので冒険者じゃないと採取も出来ない。そもそも自然と果樹園が出来る時点でファンタジーな話である。

 そろそろそのとある梨について話そう、僕が求めるのは普通の梨ではない。
 甘党梨《あまとうなし》と呼ばれるとても美味い梨である、このアレクサンドでは品種改良なんて言葉はないので大抵の物は元からの自然界に存在する果物だ。

 それでも地球とは違いリンゴとが普通に甘いのだが、流石に他の大陸の梨は日本の梨の方が甘くて果汁も多い。
 しかしこの甘党梨、そんな日本産の梨よりも甘くて果汁が多いと言う代物なのだ。

 それ故に好きな人は多く、このテンバー地方でも人気の果物で採取依頼が常設されている程だ。
 梨一つ採取するだけで銅貨一枚が報酬である、銅貨一枚は日本円で千円くらいだと思って欲しい。そんな甘党梨の果樹園に来たのだが……。

「ぜっ全部持ってかれてる……」
 甘党梨、全部なくなってたよ。
 『紅葉の森』のモンスターも冒険者も甘党梨を好む物は多いので誰かしらが取っていくが、まさか何十本もある梨の木の甘党梨が全部ないとは…。

 甘党梨は香りよく果樹園に移動するだけでその香りがしてくる。しかしその香りが全くない、つまりこの果樹園には甘党梨が一つもないと言う事だ。
 ハァッ自然界に存在する果樹園だし、こんな事もたまにはあるのは理解しているがヘコむわ。

「仕方ない、ここがダメなら他の……けどもう歩くのも面倒くさいし、ここは『切り札』をだそうかな?」

 ちなみにその『切り札』ってそんな大層なもんじゃないからね。

 ん?、そう離れていない場所から何やら戦闘音が聞こえできた。派手な魔法による大きな音と武器による攻撃、それに反応するモンスターの咆哮だ。
「誰かがモンスターと戦闘をしているな、どうするかね……」

 普通なら助けると思うが、狩猟依頼を受けてるのなら割って入るとむしろ怒られる事がある。
 仕方ないので魔法で戦況を見て判断する事にした。呪文をブツブツと唱える。
「……サモン、マジックアイズ」

 右手から緑色に光る球状の光球を生み出す。その光にはモノアイみたいな目のイラストが描かれている、これは僕の第三の目と言える物でこの手抜きイラストみたいな目が見た光景を僕も見る事が出来るのだ。

「ゴーレム、モンスターが接近してきたら教えてくれよ」

 ゴーレムは身体を上下に軽く動かす。了解の合図だ、ここは本当に何処からモンスターが出て来るか分からないからね、油断はしないが見張り役は用意しておく。

 早速、マジックアイズを戦闘音が聞こえた方角に飛ばす。大体三百メートルくらい離れた木々の先で戦闘は行われていた。
 そうっ行われていたのである。もう決着はついておりました。

 冒険者達……全滅してます。
 あっ違った。一人だけまだ生きて戦っていた。

 女性だ、しかし冒険者にしては装備が……いやっ装備なんて何もないな。素手だそして服装がかなりボロボロだぞ。
 まさか……奴隷ちゃんか?。



 
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