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第22話 おじさんは神器を振るう(2)
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◇◇◇◇◇◇
「…………ッ!」
気付くと僕は地面に横になっていた。
そして目だけを動かすと小さな青い少女の姿をした存在が僕に魔法をかけていた。
恐らくは解毒の魔法だ、身体がめっちゃ痛いけどちゃんと動くからね。
「ありがとう、お陰で助かったよ」
「────!」
この子は滝に落ちる前に発動した『精霊の指環』の効果で短期契約した水の精霊である。
『精霊の指環』はその地に住む精霊を短期のアルバイトとして少しの時間だけ契約出来るというマジックアイテムだ。
様々な精霊と契約出来るが持続性は皆無のマジックアイテムである。その土地毎に精霊の助けを借りられるので前々かは欲しいと思っていたのだ。
それにしても…あ~~死ぬかと思った。下が滝壺で池みたいになってなかったら死んでたよ。
水の精霊が回復魔法までかけてくれた。
僕の身体を淡い緑色の光が包み込む、ゲームみたいに一瞬で回復とかはしないがないよりはマシだ。
何とか起き上がる、そして水の精霊にお礼としてポケットから手頃なモンスターの魔石を少しばかり与える。
魔石を出すと水の精霊がとても小さな手の平で魔石に触れてきた、魔石から魔力を吸収してる。
本来は契約した僕が魔力を与えるのが普通なのだが僕は地球人なので魔力とか持ってないからね。
魔力を受け取った水の精霊は見えなくなってしまった。
多分帰ったんだな。本当に助かった、ふうっ何とか人心地ついたぞ。
「けど、まいったな……」
実はマジックポータルは上級魔法なのだ。上級魔法は二回発動するともう使えない。呪文書《スペルブック》を読み直せば使えるけど、ここで読書とか絶対に無理。命が幾つあっても足りないよ。
こうやって休めてる状況が奇跡だ。水場にモンスターがいなかった事に感謝だよ、回りを警戒しながらしばしの休憩だ。
その時、頭に声が聞こえた。
(ハジメ、今話せる?)
「……マコラ?」
これは魔法による遠隔念話だ、特定の魔法を使える者同士で登録し合うとその魔法を使えば離れていても頭の中で会話が出来る魔法だ。
「…………テレパス」
これも魔法の名前である、超能力の方じゃない。
魔法を発動した事でこちらの声も向こうに届く様になった筈だ。
(マコラ、どうかしたのかい?こっちは少し忙しいんだけど)
(……貴方とクエストに出ていたと言う女の子がベースキャンプで騒いでいる)
ああっポンコツちゃんか。確かにあの状況で放置されたらパニックにもなるよね。またこっちに来るとか無茶をしないといいけど。
(確かに僕はパニアと言う名前の女冒険者と一緒にクエストに出ていたよ、彼女がどうかしたの?)
(……………)
ん?魔法の調子が悪いのか?マコラが無言だ。
(マコラ?)
(そのパニア……って女の子が。紅葉大狐の特異個体が出た。狩れば大金になるぞって他の冒険者を扇動《せんどう》してる…)
(…………え?)
(かなり焦っていた。多分彼女は貴方を助けるために必死なんだと思う)
本当に、本当にさぁ~ポンコツちゃんさ~。
マコラはなんかいい風に言ってるけど、単純にお金が目的なんじゃないかと日頃のポンコツちゃんを知るおじさんは思う。
(止められません?多分冒険者で袋叩きにすれば倒せるでしょうけど……確実に死人が出ますよ?それも多数)
(貴方にそこまで言わせる相手?)
(特殊能力が二つ、狐火、それと咆哮で魔法をかき消してきますし、身体は大きいのに動きが俊敏。更に特殊能力の狐火までパワーアップしてるからね、僕も何とか避難中だよ)
(…………私も行く)
は?いかん。なんかマコラまで来るつもりらしい、止めてって。しかも念話が途切れた……これは下手にこちらから連絡しても無駄か?ポンコツちゃんって別に方向音痴とかじゃないからあの場所を案内くらいなら本当に出来そうだし……。
弱ったな、流石に助けに……まあ名目上は僕を助けに来てくれた冒険者に死なれたら目覚めが悪いってレベルじゃないぞ。獲物を横取りしようとした連中なら何とも思わないけどさ。
「………ハァッ仕方ないな」
ここはおじさんが少し無理するか。その扇動された冒険者が来る前にあの特異個体を見つけてさっさと討伐してしまおう。
こんだけボロボロにされちゃ説得力ゼロだけど、手はあるのだ。
要は魔法が駄目なら武器で倒せってだけの話だ。
背中のリュックサックを下ろして中をガサゴソ、先ずはゴーレムコアを取り出してスパイダーゴーレムを召喚する。
そしてリュックサックをスパイダーの背中にある籠の中に入れて更にガサゴソ。
魔法のリュックサックから本来入る筈のない長さ二メートル五十センチある大太刀を引っ張り出した。
『討滅の太刀【天借《てんしゃく》】』。持ち手は金糸があしらわれ、刀身が純白で青い波紋がある実に清廉な雰囲気の太刀だ。
天借って何と思うかもだけど、要は天ってのは女神ネビウス様でそのネビウス様から間借りしてるからこんな名前がつけられないらしい。本来は別の名前があるらしいがそれは教えてもらえなかった。
この太刀なら使い手が余程の雑魚でなければあの特異個体にも負ける事はない………筈!。
恐らくあの特異個体は戦闘をした場所の近くに居るはず、扇動された冒険者でも数時間で行ける場所だ。
のんびりピクニックでもしててくれれば良いんだけど、ポンコツちゃんが変な方向に張り切ってるらしいので僕より先に特異個体と鉢合わせしないかが心配である。そもそもポンコツちゃんにそんな能力が本当にあるのかいまだに疑っているおじさんです。
しかしマコラが言うのならそのつもりで動く、さっさと特異個体を見つけて倒してしまおう。
幸い体力と身体の傷は回復した、僕の魔法は魔力も使わないからほぼ全快のコンディションだ。
あのお狐モンスターめ、必ず借りは返してやるからね……。
「…………ッ!」
気付くと僕は地面に横になっていた。
そして目だけを動かすと小さな青い少女の姿をした存在が僕に魔法をかけていた。
恐らくは解毒の魔法だ、身体がめっちゃ痛いけどちゃんと動くからね。
「ありがとう、お陰で助かったよ」
「────!」
この子は滝に落ちる前に発動した『精霊の指環』の効果で短期契約した水の精霊である。
『精霊の指環』はその地に住む精霊を短期のアルバイトとして少しの時間だけ契約出来るというマジックアイテムだ。
様々な精霊と契約出来るが持続性は皆無のマジックアイテムである。その土地毎に精霊の助けを借りられるので前々かは欲しいと思っていたのだ。
それにしても…あ~~死ぬかと思った。下が滝壺で池みたいになってなかったら死んでたよ。
水の精霊が回復魔法までかけてくれた。
僕の身体を淡い緑色の光が包み込む、ゲームみたいに一瞬で回復とかはしないがないよりはマシだ。
何とか起き上がる、そして水の精霊にお礼としてポケットから手頃なモンスターの魔石を少しばかり与える。
魔石を出すと水の精霊がとても小さな手の平で魔石に触れてきた、魔石から魔力を吸収してる。
本来は契約した僕が魔力を与えるのが普通なのだが僕は地球人なので魔力とか持ってないからね。
魔力を受け取った水の精霊は見えなくなってしまった。
多分帰ったんだな。本当に助かった、ふうっ何とか人心地ついたぞ。
「けど、まいったな……」
実はマジックポータルは上級魔法なのだ。上級魔法は二回発動するともう使えない。呪文書《スペルブック》を読み直せば使えるけど、ここで読書とか絶対に無理。命が幾つあっても足りないよ。
こうやって休めてる状況が奇跡だ。水場にモンスターがいなかった事に感謝だよ、回りを警戒しながらしばしの休憩だ。
その時、頭に声が聞こえた。
(ハジメ、今話せる?)
「……マコラ?」
これは魔法による遠隔念話だ、特定の魔法を使える者同士で登録し合うとその魔法を使えば離れていても頭の中で会話が出来る魔法だ。
「…………テレパス」
これも魔法の名前である、超能力の方じゃない。
魔法を発動した事でこちらの声も向こうに届く様になった筈だ。
(マコラ、どうかしたのかい?こっちは少し忙しいんだけど)
(……貴方とクエストに出ていたと言う女の子がベースキャンプで騒いでいる)
ああっポンコツちゃんか。確かにあの状況で放置されたらパニックにもなるよね。またこっちに来るとか無茶をしないといいけど。
(確かに僕はパニアと言う名前の女冒険者と一緒にクエストに出ていたよ、彼女がどうかしたの?)
(……………)
ん?魔法の調子が悪いのか?マコラが無言だ。
(マコラ?)
(そのパニア……って女の子が。紅葉大狐の特異個体が出た。狩れば大金になるぞって他の冒険者を扇動《せんどう》してる…)
(…………え?)
(かなり焦っていた。多分彼女は貴方を助けるために必死なんだと思う)
本当に、本当にさぁ~ポンコツちゃんさ~。
マコラはなんかいい風に言ってるけど、単純にお金が目的なんじゃないかと日頃のポンコツちゃんを知るおじさんは思う。
(止められません?多分冒険者で袋叩きにすれば倒せるでしょうけど……確実に死人が出ますよ?それも多数)
(貴方にそこまで言わせる相手?)
(特殊能力が二つ、狐火、それと咆哮で魔法をかき消してきますし、身体は大きいのに動きが俊敏。更に特殊能力の狐火までパワーアップしてるからね、僕も何とか避難中だよ)
(…………私も行く)
は?いかん。なんかマコラまで来るつもりらしい、止めてって。しかも念話が途切れた……これは下手にこちらから連絡しても無駄か?ポンコツちゃんって別に方向音痴とかじゃないからあの場所を案内くらいなら本当に出来そうだし……。
弱ったな、流石に助けに……まあ名目上は僕を助けに来てくれた冒険者に死なれたら目覚めが悪いってレベルじゃないぞ。獲物を横取りしようとした連中なら何とも思わないけどさ。
「………ハァッ仕方ないな」
ここはおじさんが少し無理するか。その扇動された冒険者が来る前にあの特異個体を見つけてさっさと討伐してしまおう。
こんだけボロボロにされちゃ説得力ゼロだけど、手はあるのだ。
要は魔法が駄目なら武器で倒せってだけの話だ。
背中のリュックサックを下ろして中をガサゴソ、先ずはゴーレムコアを取り出してスパイダーゴーレムを召喚する。
そしてリュックサックをスパイダーの背中にある籠の中に入れて更にガサゴソ。
魔法のリュックサックから本来入る筈のない長さ二メートル五十センチある大太刀を引っ張り出した。
『討滅の太刀【天借《てんしゃく》】』。持ち手は金糸があしらわれ、刀身が純白で青い波紋がある実に清廉な雰囲気の太刀だ。
天借って何と思うかもだけど、要は天ってのは女神ネビウス様でそのネビウス様から間借りしてるからこんな名前がつけられないらしい。本来は別の名前があるらしいがそれは教えてもらえなかった。
この太刀なら使い手が余程の雑魚でなければあの特異個体にも負ける事はない………筈!。
恐らくあの特異個体は戦闘をした場所の近くに居るはず、扇動された冒険者でも数時間で行ける場所だ。
のんびりピクニックでもしててくれれば良いんだけど、ポンコツちゃんが変な方向に張り切ってるらしいので僕より先に特異個体と鉢合わせしないかが心配である。そもそもポンコツちゃんにそんな能力が本当にあるのかいまだに疑っているおじさんです。
しかしマコラが言うのならそのつもりで動く、さっさと特異個体を見つけて倒してしまおう。
幸い体力と身体の傷は回復した、僕の魔法は魔力も使わないからほぼ全快のコンディションだ。
あのお狐モンスターめ、必ず借りは返してやるからね……。
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