マイダンジョン育成中

どらいあい

文字の大きさ
99 / 100

第99話

しおりを挟む
 料理パーティーは和やかな雰囲気で終了した。
 時刻は午後五時過ぎくらいだ、明日も用事があるという工藤さんや学校がある 高見さんやアズサたちは片付けを手伝ってくれた後はそれぞれ家に帰って行った。

 ちなみに彼女たちが帰る時には基本的にハルカに頼んで皆をそれぞれ『瞬間移動』で家の近くまで運んでもらっている のだ。

 しかし今回はネシアのところにいるドラゴンメイドさんの中にも『瞬間移動』を使える人がいるとの事でそれぞれ個別にスキルで運んでもらうことになった。

 ドラゴンメイドさんは想像以上に有能だ、ちなみに主であるネシアはミスラに逆らって酒を飲みすぎて寝ているよ、アヤメのテントの中でね。
 テントの外にいてもいびきが聞こえてる、案外酒には弱かったのだろうか。

 自分のテントを奪われたアヤメも先程までハルカに逆らって結構飲んでいたので今はワゴン車で寝ている。

 さすがにこの時間に寝ると夜眠れなくなってしまいそうだが、まあそこはそれ だその時はこの前契約した動画見放題とかテレビ番組やオリジナル番組の見放題の番組のやつとか見て時間でも潰すだろう。

「それじゃあヒロキさん、彼女たちを送ってくるわ」

「ああ、分かった。お願いするねハルカ」

 万が一もないと思うがまた彼女たちの身に危険が迫るなんてことになったら大変だからね。
 ハルカやメイドさん達にはその辺りを気をつけてもらえるようお願いした。

 そんな風にあれこれしているとさっきまで賑やかだったダンジョンの拠点があっという間に私とアンジェさん以外みんないなくなってしまった。

 一気に静かになる、こういう時ってちょっとだけ寂しいよね。
 最後に残ったわずかな片付けを済ませて、私と彼女は砂浜の方に来ていた。

「…やっぱりここの砂浜は波の音はとてもいいですね」

「はい、心が落ち着きます。私も日に一度はこの砂浜で波の音を聞いてますよ」

 人はほぼいないし、ゴミも全くない静かな砂浜でただ波の音を聞いていたい。
 こういう感情は…何もかもが世話しなく進む社会で自分の人生というのを安い値段を売り払ってきたような生き方をしてこないと分からないだろうな。

「アンジェさん、今更ですが専属契約の話を受けてくれてありがとうございました」

「お礼なんて……それは全て私の言うべき言葉なんですよ? 広樹さんは私を救ってくれました、本当にありがとうございました」

「どういたしまして」

 二人きりになったので私たちはお互いの労を労い合う。
 アンジェさんも頑張って私だって頑張ったのだ、たまにはこんな風に褒め合うのは悪くないだろう。

 そんな感じでお互いにこのダンジョンのことだったり、あるいは他の皆のことについてあれこれと楽しく話したりして いると、自然と時間が流れていった。

 そうこうしているとアンジェさんがあっと言った感じで口を開いた。

「…広樹さん、この前、私の部屋に来た時に言ったセリフを覚えてますか?」

 彼女の言葉に当然心当たりがある。
 あのプロポーズだなんだとアホなことを抜かした事だろうな。
 我ながら何度思い返してもあの時のテンションはどうかしてたなと思う。

「もちろんです、しかしあの時は…我ながら変なことを口にしてしまいましたね。すいませんアンジェさん」

「どうして謝るんですか? それに私、全く嫌じゃなかったんですからね、ビックリはしましたけど…」

「えっ……そうなんですか?」

「はい、亜梨沙さんにしてもアズサちゃんや響ちゃんにも広樹さんに何か問題があるという風に言ってる人は1人もいませんでしたからね」

 いつの間にやら彼女たちの女子トーク の間でアラサーの名前が出ていたようだ。
 なんかちょっと恥ずかしいな。

「そんな話からきっと誠実な人なんだろうという風には思っていました、そして今回のことで想像以上に広樹さん、貴方は強い人間なんだと思い知りました」

「まさか、私なんて1人じゃ何もできない 臆病な人間ですから。ハルカにアヤメ、それ以外にもこのダンジョンで出会った様々な存在に助けられて今があるだけなんですよ」

「その謙遜する姿勢も好感を持たれる理由ですよ、傲慢になってもおかしくないのに…きっと広樹さんは人に対して誠実なんですね」

 アンジェさんが移動して私のすぐ隣に来た、かなり距離感が近く感じる。
 間近に寄る顔を見るとその青い瞳がこちらをまっすぐ見つめていた。

 お互いに無言で見つめること少し、若干だが顔が熱くなるのを感じる。
 いかんね、こんなところで経験なさというものが出てくる。
 まあ顔が赤くなってるのアンジェさんも同じである。

 しかしどうしようかこの空気。
 こんな時どうすればいいのか非モテのアラサーにはさっぱりである。

「あ~よく寝た…ってもうパーティーとやらは終わったのか!? わっ私は全く食べていないぞ!」

 テントからもぬっと出てきたネシアによってこの場の空気がぶち壊された。
 顔の赤みが引いた私たちはネシアの方を見た後に再びお互いの顔を見て、呆れたように笑い合った。

「まぁあの話はこれからもよろしくお願いしますと言う意味で受け取っておきますね、広樹さん」

「アンジェさん…こちらこそよろしくお願いします」

「ヒロキー! お前らは何をしてるんだ?」

「なんでもないよー何か食べたいんだったら簡単に用意できる物でいいなら作れるけどどうします?」

「頼む、作ってくれ~」

 天井が破壊された新居のキッチンに行くためにダンジョンゲートに私は向かう。
 アンジェさんを見ると笑顔でこちらに手を振っていた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

処理中です...