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第16話 ノイズの向こうには…

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 しかし確認を途中で止める事は出来ない。やるなら最期までやっておく、その後の船員達の行方とか気になるから。

 船員達からの過度な期待にどうしょうも無くなったりバリー。しかしその時─

「!?」

 突然脳内に浮かんでいた過去の映像にノイズが走った、そして本来聞こえる筈のバリーや他の船員達の声が聞こえなくなる。
 どう言う事だこれは、何かの魔法でこの時の事を確認しようとしたら妨害するように細工でもされていたと言うのか?

 画像が砂嵐になる、そのノイズの向こうで何やらバリーは話をしていた。

「ぼっ僕……が………?」
『───……ああっそ──……大丈夫さ、なにし……──………フフ…─』

 なんだ、一体何と話している?
 少なくともついさっきまでバリーの近くには腰巾着の二人すらいなかった、この二人は何気に教師陣の誰かによってとっくに飛行艇を脱出している事を知っている。この腰巾着の二人、ゴイルとマルックにも『過去見聞』を使ってそれは確認済みだ。

 ゴイルは大柄な肥満体型、マルックは見た目キザ男なモヤシ系男子である。
 いやっお供の事はどうでもいい、問題は……くっ更にノイズが……。

 ザザザと言う雑音が酷くなってきた、これ以上下手に探ろうとするのは危険だな。
 仕方ないが諦めるか、俺は魔法を解除……。

 うぉおおおりゃあああーーーーーー!

 する前に一発本気で魔法を発動、ノイズの向こうを力ずくで確認する!
「………………」

 そこにはバリーがいた、目の前には無数の魔物の死骸、そして船員達も幾らか倒れている。
 生き残った船員達は魔物ではなくバリーから逃げてる様だった、なにがあったんだよ!
 そして船員達は全員が魔物がいる樹海へと必死の形相で逃げていった。

 後にはバリーだけが突っ立っているだけだった。

 本当に何なんだこの光景は、正直大事な部分を全て飛ばして見た映像作品みたいで何が何やらサッパリだ。
 ただ予想するにこの後は学園の教師陣や生徒達がこの目立つ飛行艇に集まってきて現在の形に落ち着いたのだろうけど……。

 そして『過去見聞』の魔法による確認を中止したタイミングにてバリーが言い放つ。

「この場所に貴族以外の人間がいる場所などない、生きたまま石に変えられたくなければ今すぐこの場から消えろ」

「………」
「フンッ嫌か? なら一つ良いことを教えてやろう」
 バリーは樹海のとある方角を指差した。

「向こうに飛行艇の船員達は逃げていったぞ、まだ魔物腹の中じゃないなら生き残りがいるかもな。その連中と共に魔物に食われるまでの僅かな時間を共に過ごすといい」

 確かにまだ船員達の生き残りがいる可能性はある……か? バリーの身に何があったのか気にならないと言えば嘘になるがここは人命優先で動くしかない。

「………失礼します」
「フンッもう二度と僕達の前に姿を見せるな、下民が…」
 なんか色々あり過ぎて彼をぶっ飛ばしてやりたい気分が遠くに行ってしまった、まあムカつく事はムカつくのだが。

 俺は小走りでバリーが指差した方角に向かう、一応魔法を使って広い範囲を索敵しながら進むつもりなのでバリーが嘘をついていても多分大丈夫だろう。

 とにかく今は船員達の生き残りがいることを信じて進むしかない。
「頼むから無事でいてくれよ」

 全員が、とは無理な願いかも知れないがそう願わずにはいられない俺だった。


 ◇◇◇◇◇◇


「………フン、行ったか」
「バリー君、良かったの? あんなヤツ見逃して」
「ああっどうせ樹海に入れば魔物のエサだからな」

「樹海に行きたがらなかったら魔法で脅してやるつもりだったんですよね!」
「その通りだよ」

 バリーは腰巾着のゴイルとマルックとつまらない会話をする。

 少なくともゴイルやマルックにとってラベルを樹海に追いやるというラベルの実力を知らない者から見れば殆ど殺人に近い行為は、単純にダンジョンを脱出する時に貴族以外の足手まといがいるのが気に入らないからと言う呆れた理由からの行動だった。

 そして暫くすると飛行艇に向かっていた学園の教師達が戻ってくる、どうやら無事に食料やら飲み水を大量に確保してこれたらしい。

 当然それらはラベルの魔法によって無事だったものだが、見つけた教師の大半はその魔法の存在していた痕跡すら見つける事は出来なかった。そういう風になる様に魔法をラベルが使っていたからだ。

 しかしその魔力の痕跡を見つけていた女性教師がいたりする。無論ラベルの仕業だとは理解していないが。

 早速教師達が生徒達に手に入れた食料の配布を始める。多くの生徒達が教師達の元に集まって行った。
「オイッ僕の分の食事をもらってこい」
「分かったよバリー君」
「行ってくるよ」

 ゴイルとマルックが教師達の元に向かう。
 一人になったバリーが不満を口にした。
「おいっどう言う事だ? 何故あの用務員を始末しなかった」
『なんだ、飛行艇の船員達は見逃したのにあの中年は始末したかったのかい?』

 それはバリーの頭の中に響く【声】だった。
「当たり前だ、ヤツは僕がディアナに怒られてる所を見てる、貴族として恥を知られたんだ、消したいに決まってるだろう」

『ボクに人間の、それも貴族の思考を理解しろと言われても困るよ』
「全く、本来なら僕に口答えなんて有り得ない話だ。あの時お前が力を貸したと言う借りがなければ許さない所だ」

『はいはい、すみませんねご主人様』

「…………フンッ」
(まあいい、僕はこの【声】に、いやっ大いなる運命に選ばれた特別な存在だ。あんな虫ケラなんて気にする必要もないだろう)

 元から自尊心が人並み外れていたバリーの増長の原因となった存在はバリーの心を聞いていた。
 そしてバリーには聞こえない声を発する。

『あの男、ボクの魔法を力ずくで僅かな時間でも破ってきた。かなり危険かな? フフッまあいいか……どうせこの子と同じ、このダンジョンに来た者はみんなボクのオモチャなんだから…』

 


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