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第36話 酔っぱらい
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「あ~~今日も酒は美味い」
その日の晩、俺は気分良く飲んでいた。
サボン遺跡では金目の物なんて見つける事は出来ないどころか変な拾い物をした俺だが、ほかの冒険者が頑張ってくれたのか遺跡の奥から結構な財宝を見つけ出してくれた。
それに気分を良くしたマルコは雇った全ての冒険者に特別ボーナスを払ってくれたのだ。
更にマイルは居なくなったのでその分のボーナスまで俺の懐に入ってきた、合計三十万ペスカである。
更に遺跡での俺のお手製丸薬が気になったと言う冒険者が現れて激くさ煙を出す青い丸薬も近頃地味に売れているのだ。
何でもアレを森の狼の群れとかに放り込むと大半など白目をむいて気絶するんだと、俺も狼の討伐依頼とか受けた時は試してみよう。
そんな感じで遺跡の探索自体は成功かいまいち分からないが収支は黒字、更に今後の生活にも余裕が出て来た。
本当に、一番ツラい時期を自力で乗り越えたぜ。
今は売れ筋の丸薬を調合しながら寺院に通い、新たなレシピとしてトライ出来そうなのを探したり、オルキアと世間話をしながら過ごす毎日だ。
しかしそんな日々にも終わりは訪れる。
わりと静かな酒場、その扉が乱暴に蹴り開かれる。その扉の向こうから見知ったヤツが現れた。
「オヤジ! 酒だ酒! 酒を持ってこぉ~~い!」
「…………」
流れるような長くクセのないサラサラの金髪を振り乱しながら酒場に現れたから闖入者、ソイツはミレスだった。
以前俺を暴漢から助けてくれた時の頼りになる感じは完全に消え失せ今はただの酔っぱらってるヤバそうなヤツである。
どっか別の場所で飲んできたな、既に顔は真っ赤で完璧に酒に飲まれてる。
「おいっ飲み過ぎだよアンタ」
「うるへ~飲むって言ってんだろ! もっと……もっと酒をもってこんかい!」
ミレスの酒癖が元から悪いのか知らん、ただコイツが何でこんな感じになってしまったのかは噂で聞いた。
なんでもコイツが付き合っていたあのサル似のイケメン、死んじゃったらしい。
詳しい理由は知らん、しかし冒険者なんて仕事をしてるからな。そこまで驚く事ではない、朝に依頼で出かけた冒険者がそれ以降帰ってこない事なんてカルカトに来て日が浅い俺でも何度か見たしな。
ここ何日かのミレスのこの荒れようを見て、噂は事実だったんだと確信する。
問題はこの暴れん坊をどうするかである、既に酒場の店員二人に店から追い出されそうである。
「ウォオオーーー! アタシは飲むって言ってんらろ! 酒を、酒を出せーーー!」
「お客さん、頼むから出ていってくれよ!」
「もうつまみ出せ!」
「…………ハァッ」
まあコイツには小さくない貸しがある、流石に見ないふりも出来ないな。
カウンターにお金を置いて俺は席を立った。
「ソイツは俺が外に運びだすぞ」
ミレスの両脇に手を通して引っ張る。
「はっはなせ! アタシをどこ連れてく気だこのドスケベヤロー!」
酒場のほかの連中の視線が痛い。
コイツもう路地裏に捨てちまおうかな。
そしてアホに肩を貸して何とか店から出る、ずっとブツブツと言っているが無視だ無視。
「ミレス、お前どこの宿屋に泊まってるか憶えてるか?」
「あ? 金ないから馬小屋」
コイツは何をイッテるんだ?
馬小屋で人間が生活出来るか、匂いとかフンとか問題が多すぎるだろうが。あそこで生活出来るのはラノベとかの世界の住人だけだろうが。
「おっあそこだあそこ、あの馬小屋がアタシの寝床だ~~~よ」
「あ~そうかいそうかい」
仕方ないな、今日は無理を言って俺が泊まってる宿屋の空き部屋を借りられないか聞いてみるか。
「って…グオッ!?」
「う~~酒が足りないが、もう眠いから寝る! 行くぞ~~~~!」
酔っぱらっていてもとんでもない馬鹿力だなコイツ、全力で抵抗したが力負けした俺はこのアホに馬小屋に引っ張り込まれた。
そして翌日。
「……ん? あ? オッサン何してんだ?」
「………お前に少し話す事がある」
俺達は馬小屋の一室にいた、ヤツは藁をベッドに爆睡していて俺は適当に馬小屋に投げつけられて気絶していた。起きたら全身が痛かった、まあこんな硬い地面で転がっていたんだから当たり前だ。
取り敢えずこのアホには素面のうちに酒を控える様に言っておく必要がある、そして今回俺にかけた迷惑について五割増して訴えてやるからな。
全身のダメージを我慢してのそのそと起き上がる。
「お前、マジで昨日アホみたいに酔っぱらってた事を憶えてないのか? こちとら本当に大変だったんだぞ?」
「え? あ~~なんかまたやっちまったかアタシ?」
「このボロボロの俺を見ろよ」
「……ハァ~~~、悪いかった少しさ、色々あって酒に逃げてた」
素直に謝れるだけマシか。
「話を聞かせろ、ここまでひどい目に合わされて理由も分からんとか納得出来ないからな」
「……分かったよ」
ミレスは渋々ながら、話をしだした。ちなみに二日酔いの頭痛も酷そうである。
その日の晩、俺は気分良く飲んでいた。
サボン遺跡では金目の物なんて見つける事は出来ないどころか変な拾い物をした俺だが、ほかの冒険者が頑張ってくれたのか遺跡の奥から結構な財宝を見つけ出してくれた。
それに気分を良くしたマルコは雇った全ての冒険者に特別ボーナスを払ってくれたのだ。
更にマイルは居なくなったのでその分のボーナスまで俺の懐に入ってきた、合計三十万ペスカである。
更に遺跡での俺のお手製丸薬が気になったと言う冒険者が現れて激くさ煙を出す青い丸薬も近頃地味に売れているのだ。
何でもアレを森の狼の群れとかに放り込むと大半など白目をむいて気絶するんだと、俺も狼の討伐依頼とか受けた時は試してみよう。
そんな感じで遺跡の探索自体は成功かいまいち分からないが収支は黒字、更に今後の生活にも余裕が出て来た。
本当に、一番ツラい時期を自力で乗り越えたぜ。
今は売れ筋の丸薬を調合しながら寺院に通い、新たなレシピとしてトライ出来そうなのを探したり、オルキアと世間話をしながら過ごす毎日だ。
しかしそんな日々にも終わりは訪れる。
わりと静かな酒場、その扉が乱暴に蹴り開かれる。その扉の向こうから見知ったヤツが現れた。
「オヤジ! 酒だ酒! 酒を持ってこぉ~~い!」
「…………」
流れるような長くクセのないサラサラの金髪を振り乱しながら酒場に現れたから闖入者、ソイツはミレスだった。
以前俺を暴漢から助けてくれた時の頼りになる感じは完全に消え失せ今はただの酔っぱらってるヤバそうなヤツである。
どっか別の場所で飲んできたな、既に顔は真っ赤で完璧に酒に飲まれてる。
「おいっ飲み過ぎだよアンタ」
「うるへ~飲むって言ってんだろ! もっと……もっと酒をもってこんかい!」
ミレスの酒癖が元から悪いのか知らん、ただコイツが何でこんな感じになってしまったのかは噂で聞いた。
なんでもコイツが付き合っていたあのサル似のイケメン、死んじゃったらしい。
詳しい理由は知らん、しかし冒険者なんて仕事をしてるからな。そこまで驚く事ではない、朝に依頼で出かけた冒険者がそれ以降帰ってこない事なんてカルカトに来て日が浅い俺でも何度か見たしな。
ここ何日かのミレスのこの荒れようを見て、噂は事実だったんだと確信する。
問題はこの暴れん坊をどうするかである、既に酒場の店員二人に店から追い出されそうである。
「ウォオオーーー! アタシは飲むって言ってんらろ! 酒を、酒を出せーーー!」
「お客さん、頼むから出ていってくれよ!」
「もうつまみ出せ!」
「…………ハァッ」
まあコイツには小さくない貸しがある、流石に見ないふりも出来ないな。
カウンターにお金を置いて俺は席を立った。
「ソイツは俺が外に運びだすぞ」
ミレスの両脇に手を通して引っ張る。
「はっはなせ! アタシをどこ連れてく気だこのドスケベヤロー!」
酒場のほかの連中の視線が痛い。
コイツもう路地裏に捨てちまおうかな。
そしてアホに肩を貸して何とか店から出る、ずっとブツブツと言っているが無視だ無視。
「ミレス、お前どこの宿屋に泊まってるか憶えてるか?」
「あ? 金ないから馬小屋」
コイツは何をイッテるんだ?
馬小屋で人間が生活出来るか、匂いとかフンとか問題が多すぎるだろうが。あそこで生活出来るのはラノベとかの世界の住人だけだろうが。
「おっあそこだあそこ、あの馬小屋がアタシの寝床だ~~~よ」
「あ~そうかいそうかい」
仕方ないな、今日は無理を言って俺が泊まってる宿屋の空き部屋を借りられないか聞いてみるか。
「って…グオッ!?」
「う~~酒が足りないが、もう眠いから寝る! 行くぞ~~~~!」
酔っぱらっていてもとんでもない馬鹿力だなコイツ、全力で抵抗したが力負けした俺はこのアホに馬小屋に引っ張り込まれた。
そして翌日。
「……ん? あ? オッサン何してんだ?」
「………お前に少し話す事がある」
俺達は馬小屋の一室にいた、ヤツは藁をベッドに爆睡していて俺は適当に馬小屋に投げつけられて気絶していた。起きたら全身が痛かった、まあこんな硬い地面で転がっていたんだから当たり前だ。
取り敢えずこのアホには素面のうちに酒を控える様に言っておく必要がある、そして今回俺にかけた迷惑について五割増して訴えてやるからな。
全身のダメージを我慢してのそのそと起き上がる。
「お前、マジで昨日アホみたいに酔っぱらってた事を憶えてないのか? こちとら本当に大変だったんだぞ?」
「え? あ~~なんかまたやっちまったかアタシ?」
「このボロボロの俺を見ろよ」
「……ハァ~~~、悪いかった少しさ、色々あって酒に逃げてた」
素直に謝れるだけマシか。
「話を聞かせろ、ここまでひどい目に合わされて理由も分からんとか納得出来ないからな」
「……分かったよ」
ミレスは渋々ながら、話をしだした。ちなみに二日酔いの頭痛も酷そうである。
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