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第1部『おっさんスライムとアルトレイクの街』
第8話『空を翔る美女と幻の島』
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アンセムは冒険者ギルドに顔を出した。するとギルドの受付カウンターでなにやら揉めていた。
「何かあったのか?」
近づくとミミルともう1人、見慣れない美女が立っていた。
紫色の髪と瞳を持ち、服装は普通の村人のそれである。しかし美女から発する気配は異質だった。
(この美人さん、恐ろしく強いな。まともにやり合ったら冒険者ギルドが吹き飛ぶぞ)
アンセムは紫髪の美女を怒られない様に話し掛ける。
「こんにちは、ミミルちゃんどうかしたの?何か揉めてるようだけども」
「はいっ実は少し困っていて」
ミミルの表情は少しではなく、多いに困っている感じだったがそこはスルーした。
「あん?何よアンタ」
「俺はアンセムってただの冒険者ですよ。なにやら揉めていた様なのでどうかしたのかと思いまして…」
「アタシはただ探して欲しいヤツがいたから冒険者ギルドに依頼しに来たんだよ」
「探して欲しい人ですか?」
アンセムの言葉に紫髪の美女は首を左右に振りながら答えた。
「探して欲しいのは人間じゃなくてスライムよ。それも虫を操る能力を持ったね」
(は?虫を操る能力を持ったスライムとかいるわけないじゃん。そんなの魔法に決まっ……あっ)
アンセムは目の美女が探してるのが自分だと分かった。しかしアンセムの知り合いにこんな美女はいないと考える。
「冒険者ギルドは人探しはしています。けどモンスター探しまではしていません」
「何さ!別にスライムの1体や2体見つけてくれてもいいじゃないのさ!」
「そっそれは……」
紫髪の美女の気配が機嫌が悪くなるとどんどん重くなっていく。
アンセムはもしかしたらこの美女はバグラードのヤツかもと思った。
(俺が『昆虫操作』を使ってるのを目の前で見たことがあるのはアルトレイク辺りじゃバグラードしかいない、何よりこの人の話を全く聞かない感じは、多分間違いないだろうな)
アンセムは美女の正体が分かるとミルルを適当に言いくるめてバグラードを冒険者ギルドの外に連れて行った。
そして人の目がない所まで移動してバグラードに質問する。
「あの、貴女バグラードさんですよね?俺がその虫を操れるスライムです」
話して右手を青いプルプルに変えた、するとバグラードは直ぐに反応する。
「どうやら本当にあのスライムみたいね、まさか人間に化けて冒険者をしてるとは驚いたわ」
「まあ生活していく為ですね。そっちこそまさか人間に化けて冒険者ギルドまで来るなんて驚きましたよ」
「フンッまあ事情があってね」
「事情?そういや何か俺に用事でもあるんですか?わざわざ冒険者使ってまで探そうだなんてただ事じゃありませんよ」
そもそも冒険者ギルドにモンスターの討伐ではなく、モンスター探しを依頼する時点でバグラードの常識は人間社会とずれている。
しかしアルトレイクで暴れられたらとんでもない事なのでアンセムはバグラードを何とか穏便に街から出て行ってもらいたかった。
「スライム、いやっアンセムの言うとおりよ。アタシは今困っているわ。またアンタの力を貸しなさい」
「力を貸すのは構いません。けど雇うのならちゃんと報酬は頂きますよ」
「報酬?なによそれ」
「……………」
これは面倒くさい事になりそうな予感がするアンセムだった。
◇◇◇◇◇◇
アルトレイクの街から離れ、バグラードの巣まで移動した。
移動はアンセムがスライムに戻り美女姿のバグラードがアンセムを引っ掴んだまま飛行するというとんでもない移動方法だった。
アンセムは巣についた時点でかなり疲労を感じていた。
「ハァッ………ハァッ……ハァッ…」
(こんのでかオウムが、鳥の姿に戻って飛べよってんだ、人を引っ掴んで空を阿呆みたいなスピードで飛びやがって……)
一方のバグラードは特に疲れてる様子はない、日ごろから飛行するのに慣れているバグラードには何の疲れも感じていない様子だ。
「さてっ報酬の話だったんわね。またタマゴならあげるわよ?」
「いえっタマゴはもういらないんで、お金とか価値のある品物とか下さいよ」
「───ないわよそんなもの、仕方ないわね。またアルトレイクに行ってお金を持ってそうな連中から奪ってくるわ」
物凄い事を言ってくる蛮族美女だった。アンセムは急いで止めた。
「あーー待って待って!そんな事しないでいいですから!」
「そう?それは良かったわ。なら早速話をするわね」
(このトリ公……完全に確信犯だな。けど異世界は金や権力よりも物理的な力が強い方が我を通せる世界だ。仕方ないか……ハァッ)
異世界もまた弱肉強食、ついでに暴力もその力にしっかりカウントされる世界である。アンセムはバグラードに勝てる見込みがないので折れた。
渋々了承し、バグラードの目的を聞いてみる。
「そんでバグラードさん貴女は……」
「フリームよ、アタシの名前。バグラードは人間達が使う呼び名でしょう?ちゃんと名前で呼んで」
「それじゃあフリームさん、一体何が理由で俺を探してたんですか?」
アンセムの質問にフリームは胸を張って答える。
「実はハルマトリ湖にはこの時期にしか現れない幻の島があるの。そこにしか生えない島の大樹の木の実がアタシの大好物なのよ、それを採ってきて欲しいの」
(幻の島か、まあ内容は普通の採取依頼とそう変わらないのか?)
「ハルマトリ湖ですか、しかしどうやってその島を見つければいいんですか?」
「幻の島まではアタシが運ぶわ」
「場所まで知ってるんですか?ならフリームさん自身が取りに行けばいいんじゃ……」
「以前それをやったら木の実を取り過ぎたらしくね……島の守護者から島の砂浜から奥に入れない様に魔法で呪いをかけられたのよ」
(島には守護者がいるのか、しかも欲張り過ぎると次回から島に入れなくなると……)
思った通りフリームの話には言葉が足りないようだ、もしも何も知らない状態で幻の島に入ればどんな目にあうか考えたくもない。
アンセムはフリームの巣にいる間など幻の島について話を聞けるだけ聞いてから出発した。
尚、移動はフリームに掴まれたままの超速飛行であった。またアンセムは地獄を見た。
「何かあったのか?」
近づくとミミルともう1人、見慣れない美女が立っていた。
紫色の髪と瞳を持ち、服装は普通の村人のそれである。しかし美女から発する気配は異質だった。
(この美人さん、恐ろしく強いな。まともにやり合ったら冒険者ギルドが吹き飛ぶぞ)
アンセムは紫髪の美女を怒られない様に話し掛ける。
「こんにちは、ミミルちゃんどうかしたの?何か揉めてるようだけども」
「はいっ実は少し困っていて」
ミミルの表情は少しではなく、多いに困っている感じだったがそこはスルーした。
「あん?何よアンタ」
「俺はアンセムってただの冒険者ですよ。なにやら揉めていた様なのでどうかしたのかと思いまして…」
「アタシはただ探して欲しいヤツがいたから冒険者ギルドに依頼しに来たんだよ」
「探して欲しい人ですか?」
アンセムの言葉に紫髪の美女は首を左右に振りながら答えた。
「探して欲しいのは人間じゃなくてスライムよ。それも虫を操る能力を持ったね」
(は?虫を操る能力を持ったスライムとかいるわけないじゃん。そんなの魔法に決まっ……あっ)
アンセムは目の美女が探してるのが自分だと分かった。しかしアンセムの知り合いにこんな美女はいないと考える。
「冒険者ギルドは人探しはしています。けどモンスター探しまではしていません」
「何さ!別にスライムの1体や2体見つけてくれてもいいじゃないのさ!」
「そっそれは……」
紫髪の美女の気配が機嫌が悪くなるとどんどん重くなっていく。
アンセムはもしかしたらこの美女はバグラードのヤツかもと思った。
(俺が『昆虫操作』を使ってるのを目の前で見たことがあるのはアルトレイク辺りじゃバグラードしかいない、何よりこの人の話を全く聞かない感じは、多分間違いないだろうな)
アンセムは美女の正体が分かるとミルルを適当に言いくるめてバグラードを冒険者ギルドの外に連れて行った。
そして人の目がない所まで移動してバグラードに質問する。
「あの、貴女バグラードさんですよね?俺がその虫を操れるスライムです」
話して右手を青いプルプルに変えた、するとバグラードは直ぐに反応する。
「どうやら本当にあのスライムみたいね、まさか人間に化けて冒険者をしてるとは驚いたわ」
「まあ生活していく為ですね。そっちこそまさか人間に化けて冒険者ギルドまで来るなんて驚きましたよ」
「フンッまあ事情があってね」
「事情?そういや何か俺に用事でもあるんですか?わざわざ冒険者使ってまで探そうだなんてただ事じゃありませんよ」
そもそも冒険者ギルドにモンスターの討伐ではなく、モンスター探しを依頼する時点でバグラードの常識は人間社会とずれている。
しかしアルトレイクで暴れられたらとんでもない事なのでアンセムはバグラードを何とか穏便に街から出て行ってもらいたかった。
「スライム、いやっアンセムの言うとおりよ。アタシは今困っているわ。またアンタの力を貸しなさい」
「力を貸すのは構いません。けど雇うのならちゃんと報酬は頂きますよ」
「報酬?なによそれ」
「……………」
これは面倒くさい事になりそうな予感がするアンセムだった。
◇◇◇◇◇◇
アルトレイクの街から離れ、バグラードの巣まで移動した。
移動はアンセムがスライムに戻り美女姿のバグラードがアンセムを引っ掴んだまま飛行するというとんでもない移動方法だった。
アンセムは巣についた時点でかなり疲労を感じていた。
「ハァッ………ハァッ……ハァッ…」
(こんのでかオウムが、鳥の姿に戻って飛べよってんだ、人を引っ掴んで空を阿呆みたいなスピードで飛びやがって……)
一方のバグラードは特に疲れてる様子はない、日ごろから飛行するのに慣れているバグラードには何の疲れも感じていない様子だ。
「さてっ報酬の話だったんわね。またタマゴならあげるわよ?」
「いえっタマゴはもういらないんで、お金とか価値のある品物とか下さいよ」
「───ないわよそんなもの、仕方ないわね。またアルトレイクに行ってお金を持ってそうな連中から奪ってくるわ」
物凄い事を言ってくる蛮族美女だった。アンセムは急いで止めた。
「あーー待って待って!そんな事しないでいいですから!」
「そう?それは良かったわ。なら早速話をするわね」
(このトリ公……完全に確信犯だな。けど異世界は金や権力よりも物理的な力が強い方が我を通せる世界だ。仕方ないか……ハァッ)
異世界もまた弱肉強食、ついでに暴力もその力にしっかりカウントされる世界である。アンセムはバグラードに勝てる見込みがないので折れた。
渋々了承し、バグラードの目的を聞いてみる。
「そんでバグラードさん貴女は……」
「フリームよ、アタシの名前。バグラードは人間達が使う呼び名でしょう?ちゃんと名前で呼んで」
「それじゃあフリームさん、一体何が理由で俺を探してたんですか?」
アンセムの質問にフリームは胸を張って答える。
「実はハルマトリ湖にはこの時期にしか現れない幻の島があるの。そこにしか生えない島の大樹の木の実がアタシの大好物なのよ、それを採ってきて欲しいの」
(幻の島か、まあ内容は普通の採取依頼とそう変わらないのか?)
「ハルマトリ湖ですか、しかしどうやってその島を見つければいいんですか?」
「幻の島まではアタシが運ぶわ」
「場所まで知ってるんですか?ならフリームさん自身が取りに行けばいいんじゃ……」
「以前それをやったら木の実を取り過ぎたらしくね……島の守護者から島の砂浜から奥に入れない様に魔法で呪いをかけられたのよ」
(島には守護者がいるのか、しかも欲張り過ぎると次回から島に入れなくなると……)
思った通りフリームの話には言葉が足りないようだ、もしも何も知らない状態で幻の島に入ればどんな目にあうか考えたくもない。
アンセムはフリームの巣にいる間など幻の島について話を聞けるだけ聞いてから出発した。
尚、移動はフリームに掴まれたままの超速飛行であった。またアンセムは地獄を見た。
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