咲き誇る陰で、

藤岡 志眞子

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❻ メロンのカンナ様

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でんっ。

「ハチぃ、久しぶりっ!」

目の前にメロンがふたつ揺れている。隣りにいる兄さんも固まっている。

「か、カンナ、久しぶり…き、今日はごめんね。練習付き合わせちゃって…。」

「いいのいいのっ。私もしばらく踊ってないし?さっ、始めよっ。」

(始めよっ、の意味が違く聞こえる…。)
(や、やめろよ兄さんっ!い、従兄妹だぞっ?)

「なにこそこそしゃべってんのよ?早くっ、」

(早くっ、て言葉が、)
バシッ (鉄拳)
(ゔっ…) 撤退。

「じゃ、れ、練習始めようかっ?」

「?…うん。」

優雅な音楽が流れる。向かい合わせに立ち、カンナの左腕が右肩に回される。僕は右手をカンナの腰に、左手をカンナの右手と繋ぐ…。


無理いぃぃぃぃいいぃぃっ!

「え?ハチ?」

ダッシュで音楽を止めに行く。

((無理だ、無理だ、無理だぁー!(ガッ◯ャマン風)僕には無理だ。従兄妹でも無理だ。…何が無理かって?女の子だから…いや、匂い?柔らかさ?視線?違う…いや、それもあるけど、なんか。

(カンナが(僕)が、嫌なんじゃないかと思ってしまう…。)

ち、ちゃんとお風呂にも入ったし綺麗な服(新品)も着てきた。けどこんな僕と踊りたくないんじゃないか?従兄妹のカンナがそう思っていたとしたら舞踏会に来る女の子はもっと、もっと嫌なんじゃないだろうか?ど、どうしよう、こんなんじゃ、こんなんじゃ行けない行けない行けないっ!かおりんがいたとしても話しかけられないだろうし、あ、でもサインくらいはもらいたい…いや、二次元だからいるわけないか…そ、そんなこと思っちゃダメだ!かおりんは、))

「蜂太郎~、戻って来~い。お~い。」

「ハチ、どうしたの?…誰かとしゃべってんの?ね~ぇ?」

「ご、ごめん。も、もう一回。」

音楽を流し再開する。(始まってもないが。)

基本のポジションは出来たものの、動き始めるとカンナのメロンが僕のお腹にあたる。さっきまで気にしていたような感じは見受けられないが、僕の方が意識してしまって…

無理無理無理無理無理無理。

「えっ、また?!」

全力ダッシュで音楽を止めに行く。

((無理だ、無理だ、無理だぁー!!(再)
ダンス教室の母さんくらいの人は平気だったけど、いや、あの頃は僕も子供だったし色気とか(女)とか意識したことなかったし…別におばさん達が女に見えなかったとかそういう意味じゃなくて、なんて言うんだろう…と、とにかく無理だ。舞踏会でカンナみたいなメロンの持ち主が「一緒に踊ってくれませんか?」なんて言われた日にゃ断れないし、だって断るなんて失礼だよね?!だけど「はい、喜んで(キランッ)」なんて返答もできないし踊れないし…か、かおりんに「踊りませんか?」って言われたらどうしよう?…あぁ、踊りたいけど踊れない、でも話しかけられただけでも、))

「蜂太郎~、戻って来~い。お~い。」

「ハチ…病気?ちょっと診てあげなさいよ。」

「残念だが俺の分野じゃない。」

「ハチ、私のこと嫌いなの…?」

「ハチは(女の子)が苦手なんだよ。」

「女の子って、私親戚じゃない。」

「そういう問題じゃないみたいだなぁ…重症だ。俺みたいに女の子と付き合ってればなぁ。」

「えっ?白百合の(銀)が結婚前にそういうことしていいの?」

「桜はどうなの?カンナ、彼氏いないのか?」

「ダメに決まってるでしょ!いないわよそんなの。」

「じゃぁ、カンナも処女か?」

「…最低。医者だからって調子こくなよっ」

ごりっ (鉄拳)
(ゔぅっ…) 気絶。

ダンスレッスンは、ほぼ踊らずに終わった。




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