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7 見えないところで女は、怖い。(※男性読者、注意)
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さぁ、行くわよ。
ヒールを鳴らし大理石の床を歩く。毛皮のローブをクロークに預けロビーを通過し、いざ(舞台)へ。
思った通り女達は着飾り、厚化粧をし、香水の香りをぷんぷんさせている。コーラルが大広間に入ると皆振り向き目を留める。
よし。
スリットの入ったドレスの裾をひらひらとさせ、細く長い脚を見せつける。ウェイターの男から飲み物を受け取り一口飲む。するとすかさず男が話しかけてきた。
「はじめまして。私(わたくし)、桜のジョージと申します。お嬢さんはどちらの花で?」
「はじめまして。私(わたくし)は薔薇で、コーラルと申します。」
「ば、薔薇…。お美しいわけだ。ははっ。……あ、ちょっと失礼。」
え。
「お母様…え?」
後から来たカーラに今の状況を伝える。
「コーラル、薔薇の女は…今のうちに言っておくけれど、難しいのよ。」
…なんで。
「だからせめて、そのドレスのデザインはやめなさいって言ったのよ。」
遅いよ。
「で、でもまだ一人目だし?だ、大丈夫よ…うん。」
しかし、二人目、三人目、四人目と声はかけられるも(薔薇)と言うと何処へ行ってしまう。
マジか。
「お母様、なら薔薇の男性なら良いのかしら?」
飲み物を飲み干しカーラに聞く。周りを見るとカップルが出来始めている。…ヤバい。
「薔薇の男性は他の花の女性からも人気があるのよ。お父様みたいに頭は良いし仕事ができるから。…でも、これだけいるわ。薔薇もまだいるんじゃないかしら。」
慰めになってない。しかし、探さねば。 すると、
「こんばんは。あの、薔薇のコーラル様ですか?」
「は、はい。はじめまして。あなたは?」
「私は菊のロイドと申します。良かったらこの後のダンス、ご一緒しませんか?」
菊…。
(にこっとロイドが笑う。)
おまえ、歯汚いな。
「はは(歯)っ。も、もちろん。」
「ありがとうございます。あ、ご挨拶が遅れて。お母様の…?」
「はじめまして。母のカーラと申します。」
「はじめまして、ロイドの母のデボラと申します。」
めっちゃドーナツ好きそう。ボタンはち切れそうじゃん。
「とっても綺麗なお嬢さんで。うちの息子と釣り合うかしら。」
釣り合うわけねぇだろ。靴も汚い…。倹約家?無理っ。
「ロイド様も背が高くて誠実そうで…」
背が高いだけ。肩にフケが~(鳥肌)
母親同士は盛り上がり始めたが、私は全く盛り上がらない。なぜ菊?なんで菊?どうして菊??何を聞く???
「ろ、ロイド様はおいくつになられるのですか?」
「今年二十三歳になります。コーラル様は?」
「今年十八歳になります…。お、お仕事は?」
「街で図書館の運営業務に携わっております。結婚したら奥さんと一緒に本を読むのが夢でして。」
え。本?本なんて読んだことない…。
え、結婚したら働くの?私も、図書館で働くの??
「薔薇の方は頭が良いと聞きます。コーラル様も何か得意な学問などがお有りで?」
ないわよそんなの。
「え、えぇ。」
「ダンスの後、ゆっくりお話を聞きたいな。」
「ははははっ。」
無理だ。
「お母様、少し席を外すわね。」
「え?コーラル?」
足早にトイレへ向かう。こんなはずじゃなかった。牡丹や白百合のイケメンに群がられて選べない、という想定だったのに。これは何。
クラッチバッグからリップを出して塗り直す。すると、横にいた女が鏡越しに私に声をかけてきた。
「あなた、薔薇のコーラル様?」
誰。
「あら、ごめんなさいね。私、牡丹のメアリーと申します。あなたの美貌は有名で…今もしつこい殿方から逃げてきたのかしら?」
Aラインの薄いピンクのオーガンジーのキャミソールワンピースのドレスに、同じ色味の羽が付いた帽子を被っている。
(嫌味なのか、褒め言葉なのか。
…ダサい。ウエストはどこ?太って見えるし年齢に合ってない気がする。ネイルもショッキングピンクってどういうこと?…香水付け過ぎ。)
「やっぱりコーラル様だったのね?はじめまして。私、桜のキャスリーンと申します。本当に美人さんねぇ。これじゃあ勝ち目がないわぁ。広間にいた時、次から次へと声をかけられてて…羨ましいわぁ。」
紺色のアシンメトリーのストレートラインのロングドレス。右は長袖、左は鎖骨まで大きく開いたノースリーブ。裾にはキラキラと雫のようなビーズの刺繍が施されている。
(この女は確実に嫌味だ。
ブラウン系のリップが似合わない。髪もなんでそんな大きなお団子アップにしたの?顔が縦に二つあるみたい。)
「は、はじめまして…あの私、白百合のエイミーと申します。…が、頑張りましょうねっ」
黄色のサテンの長袖膝丈ドレス。首元もしっかり襟が付き、ウエストには幅のある同じ素材のリボンが巻かれている。露出が一切ない。
(頑張りましょう、って…何をだ。
靴も白のぺたんこで、ピアノの発表会みたいだわ。こういう格好が好きな男もいるのかしら?)
「まぁ、四つの(花)がお揃いで?私で全部揃ったわね。私、菊の絵梨花と申します。エイミー様、ドレスのリボンが解けてるわよ?後ろ、向いてくださる?結んであげるわ。」
これが(着物)か。赤と金、所々黒が入りぴかぴかと動くたびに何とも言えない輝きを放つ。白い帯には金の糸で細かく華の刺繍がされている。
(目敏くリボンなんか直してあげちゃって。なんか、いけすかん。
それにしても高そう…私のドレスの倍はするんじゃないかしら。…でも、そのチーク酔っ払ったみたいで、変よ?)
ファッションチェックを終え、作り笑いを拵える。
「皆様もお美しくって、油断ならないわ。これからダンスですわね。楽しみましょうね。」
負けてたまるか。
見てろよ、お前達。
ヒールを鳴らし大理石の床を歩く。毛皮のローブをクロークに預けロビーを通過し、いざ(舞台)へ。
思った通り女達は着飾り、厚化粧をし、香水の香りをぷんぷんさせている。コーラルが大広間に入ると皆振り向き目を留める。
よし。
スリットの入ったドレスの裾をひらひらとさせ、細く長い脚を見せつける。ウェイターの男から飲み物を受け取り一口飲む。するとすかさず男が話しかけてきた。
「はじめまして。私(わたくし)、桜のジョージと申します。お嬢さんはどちらの花で?」
「はじめまして。私(わたくし)は薔薇で、コーラルと申します。」
「ば、薔薇…。お美しいわけだ。ははっ。……あ、ちょっと失礼。」
え。
「お母様…え?」
後から来たカーラに今の状況を伝える。
「コーラル、薔薇の女は…今のうちに言っておくけれど、難しいのよ。」
…なんで。
「だからせめて、そのドレスのデザインはやめなさいって言ったのよ。」
遅いよ。
「で、でもまだ一人目だし?だ、大丈夫よ…うん。」
しかし、二人目、三人目、四人目と声はかけられるも(薔薇)と言うと何処へ行ってしまう。
マジか。
「お母様、なら薔薇の男性なら良いのかしら?」
飲み物を飲み干しカーラに聞く。周りを見るとカップルが出来始めている。…ヤバい。
「薔薇の男性は他の花の女性からも人気があるのよ。お父様みたいに頭は良いし仕事ができるから。…でも、これだけいるわ。薔薇もまだいるんじゃないかしら。」
慰めになってない。しかし、探さねば。 すると、
「こんばんは。あの、薔薇のコーラル様ですか?」
「は、はい。はじめまして。あなたは?」
「私は菊のロイドと申します。良かったらこの後のダンス、ご一緒しませんか?」
菊…。
(にこっとロイドが笑う。)
おまえ、歯汚いな。
「はは(歯)っ。も、もちろん。」
「ありがとうございます。あ、ご挨拶が遅れて。お母様の…?」
「はじめまして。母のカーラと申します。」
「はじめまして、ロイドの母のデボラと申します。」
めっちゃドーナツ好きそう。ボタンはち切れそうじゃん。
「とっても綺麗なお嬢さんで。うちの息子と釣り合うかしら。」
釣り合うわけねぇだろ。靴も汚い…。倹約家?無理っ。
「ロイド様も背が高くて誠実そうで…」
背が高いだけ。肩にフケが~(鳥肌)
母親同士は盛り上がり始めたが、私は全く盛り上がらない。なぜ菊?なんで菊?どうして菊??何を聞く???
「ろ、ロイド様はおいくつになられるのですか?」
「今年二十三歳になります。コーラル様は?」
「今年十八歳になります…。お、お仕事は?」
「街で図書館の運営業務に携わっております。結婚したら奥さんと一緒に本を読むのが夢でして。」
え。本?本なんて読んだことない…。
え、結婚したら働くの?私も、図書館で働くの??
「薔薇の方は頭が良いと聞きます。コーラル様も何か得意な学問などがお有りで?」
ないわよそんなの。
「え、えぇ。」
「ダンスの後、ゆっくりお話を聞きたいな。」
「ははははっ。」
無理だ。
「お母様、少し席を外すわね。」
「え?コーラル?」
足早にトイレへ向かう。こんなはずじゃなかった。牡丹や白百合のイケメンに群がられて選べない、という想定だったのに。これは何。
クラッチバッグからリップを出して塗り直す。すると、横にいた女が鏡越しに私に声をかけてきた。
「あなた、薔薇のコーラル様?」
誰。
「あら、ごめんなさいね。私、牡丹のメアリーと申します。あなたの美貌は有名で…今もしつこい殿方から逃げてきたのかしら?」
Aラインの薄いピンクのオーガンジーのキャミソールワンピースのドレスに、同じ色味の羽が付いた帽子を被っている。
(嫌味なのか、褒め言葉なのか。
…ダサい。ウエストはどこ?太って見えるし年齢に合ってない気がする。ネイルもショッキングピンクってどういうこと?…香水付け過ぎ。)
「やっぱりコーラル様だったのね?はじめまして。私、桜のキャスリーンと申します。本当に美人さんねぇ。これじゃあ勝ち目がないわぁ。広間にいた時、次から次へと声をかけられてて…羨ましいわぁ。」
紺色のアシンメトリーのストレートラインのロングドレス。右は長袖、左は鎖骨まで大きく開いたノースリーブ。裾にはキラキラと雫のようなビーズの刺繍が施されている。
(この女は確実に嫌味だ。
ブラウン系のリップが似合わない。髪もなんでそんな大きなお団子アップにしたの?顔が縦に二つあるみたい。)
「は、はじめまして…あの私、白百合のエイミーと申します。…が、頑張りましょうねっ」
黄色のサテンの長袖膝丈ドレス。首元もしっかり襟が付き、ウエストには幅のある同じ素材のリボンが巻かれている。露出が一切ない。
(頑張りましょう、って…何をだ。
靴も白のぺたんこで、ピアノの発表会みたいだわ。こういう格好が好きな男もいるのかしら?)
「まぁ、四つの(花)がお揃いで?私で全部揃ったわね。私、菊の絵梨花と申します。エイミー様、ドレスのリボンが解けてるわよ?後ろ、向いてくださる?結んであげるわ。」
これが(着物)か。赤と金、所々黒が入りぴかぴかと動くたびに何とも言えない輝きを放つ。白い帯には金の糸で細かく華の刺繍がされている。
(目敏くリボンなんか直してあげちゃって。なんか、いけすかん。
それにしても高そう…私のドレスの倍はするんじゃないかしら。…でも、そのチーク酔っ払ったみたいで、変よ?)
ファッションチェックを終え、作り笑いを拵える。
「皆様もお美しくって、油断ならないわ。これからダンスですわね。楽しみましょうね。」
負けてたまるか。
見てろよ、お前達。
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