咲き誇る陰で、

藤岡 志眞子

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8 恐⭐︎黒髪細過ぎ少女〜コーラルん〜

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結局、女子の耐性を付けることは出来なかった。なのに、僕は今、

舞踏会の会場に、いる。(一時間経過)

煌びやかなドレスに身を纏った同年代の女子達が、同じくビシッときめた男子と楽しそうに話をしている。

「蜂太郎、しっかりなさいな。」

母のマリサが隣りで心配そうな表情をする。飲み物を渡され飲むように言われたが、喉を通らない。軽く咽せて母が背中を摩ってくれる。すると、

「大丈夫ですか?ハンカチーフ、良かったらお使い下さい。」

黄色のワンピースを着た女の子が白いハンカチを差し出してきた。小柄でおかっぱ頭の可愛らしい子。他の子とは違い、何か安心するような…。

「ありがとうございます…」

お礼を言って無言でいると、隣りの母が横腹を突いてきた。

「あ、あの、私(わたくし)白百合の、は、蜂太郎、と申します…。」

「蜂、太郎さん?お父様が蜂蜜がお好きだったとか?」

名前を恨む。

「え。いや、名前を付けたのはお祖父様で。蜂蜜は好きとは聞いたことはありませんが。」

「そうなのですか?…あ、申し遅れました。私(わたくし)白百合のエイミーと申します。」

「あら、白百合なの?そうだと思ったわ。お上品だし、お優しいし、可愛らしいし!」

母が割り込み褒めまくる。僕の受け答えが焦ったいのだろう。しかし、母にこうやって女の子と話しているのを間近で見聞きされるのは非常に、居心地が悪い。兄さんに来て欲しかったが、今日に限って仕事が忙しいと断られた。(多分、アイリスさんに引き留められたのだろう…。)
ぼーっとしていると再び脇腹に一撃を喰らった。

「あ…だ、ダンス、よ、良かったらご一緒しません…か?」

ごくり

「は、はい。よろしくお願いします。」

や、やったぁ!

「ありがとうございます。」

母まで喜んでいる。しかし、問題は(ダンス)。歩いて行く背中を見ながら、はて、あの子の胸はメロンだっただろうか…。背伸びし見ていると、

「やめなさい、はしたない。」

と、母に怒られた。メロンのことがバレたと思いひやっとした。(汗)

「蜂太郎からも声をかけなさい。」

「え?な、なんで?今の子と踊るんだからもういいんじゃ、」

「皆さん複数人とお約束するのですよ。ひとりのわけないじゃないですか、全く。」

えぇー…。

周囲をキョロキョロとし、話しかけやすそうな女の子を探す。すると、一際目を引く真っ赤なドレスの、長い黒髪の女の子。後ろを向いていて顔が見えない。こっち、こっちを向け…向いてくれ!む、向いたっ…

……思ったんと違う。

僕の苦手な女子だ。美人だけど、なんか恐(怖)いキツめの顔。胸元が開き、まさにメロンの持ち主だ。メロンなのに肩や腕は細く、ウエストなんて何センチだよ?というくらい無い。ドレスの切れ目?から見える脚も病気みたいに細いし…。再び後ろを向いた瞬間、後ろに降ろした髪が横に動く。するとざっくり開いた背中が見えた。背骨が浮いている…。ふだん何を食べているのだろう。心配になる域だ。

「あの赤いドレスの子がいいの?」

母が心配そうに聞く。

「えっ、いや…別に。」

「あのお嬢さんは薔薇のコーラル様よ。この舞踏会を開くきっかけになった方らしいの。きっと我儘で手に負えないわ。」

眉間に思いっきり皺を寄せ、近所のおば様達と会話するテンションで教えてくれた。そうか、やはり怖い人なのだな。

りーん

ダンス開始のベルが鳴った。ダンスの約束をした人のみが、男女分かれて一列に並ぶ。ベルが再び鳴り、向かい合ってお辞儀をした。
僕の隣りは背の高い、年上と思われる男性。
そして正面は、エイミーさんと…

赤い女。(死亡フラグ)

ダンスには約束した女性と踊り終わると、隣りの女性と踊る曲がある。一気に冷や汗が出る。

お願いだから、やめてくれ。

しかし、イントロは…その曲だった…(死亡)

ふつうファーストダンスに持って来ないだろ?!楽譜間違えてるんじゃないのか?!
そんなことを考えている僕をよそに男女が近付く。僕も慌ててエイミーさんに歩み寄る。が、隣りの赤い女に目がいってしまう。そんな僕の視線をエイミーさんが追う。不安そうな表情をしたので、僕はがっつりエイミーさんの瞳を見た。見てしまった。
黒目がちの大きな瞳に僕が映る。途端、カンナの時の不安が襲う。

(こんな僕で、良いのだろうか。)

上手く出来ていたステップがぎこちなくなっていき、リズムもズレる。エイミーさんの小さな身体が左右に大きく揺れる。ヤバい…。

りーん

パートナー交代のベルが鳴る。ま、まさか。
僕の手を取り肩に腕を回してきたのは、赤い女。

「私を見て、足元見ない。…足踏まなくて良かったわね。」

瞬間、赤い女はくるっと回る。広がる黒髪から良い香りがした。

「え。」

「イケメンなのに、ダンスは下手なのね、」

笑った顔が。

「お名前は?」

「…ご、権田原 蜂太郎。」

両手を繋いだまま腕を伸ばし、距離を取ってから一気に引き寄せる。力が余り、弾みでメロンが僕のお腹にあたる。

「権田原!?嘘でしょ?結婚した子は権田原になるのね、」

笑った顔が、

「あ、あなたの名前は?」

薔薇の、コーラルさん。

「コーラルよ。残念ながら薔薇よ、」

笑った顔が…

「ぼ、僕は白百合です。」

「ならモテモテね。良い子、見つかると良いわね。」

りーん

「じゃあ、」

彼女が肩から腕を外す。繋がれた右手を解く。残り香が…

「ち、ちょっと!」

「…えっ」

解かれた手を再び掴む。そのままダンスの輪から抜けて、そのまま歩いて中庭に向かう。そのまま歩き続けて、歩き続けて、

「ち、ちょっと待って。待ってってば!」

あ。

「足、痛いのよ。あなたと違ってこっちはヒールなの!何よ、ダンスの途中なのに…まだあなた含めて二人しか踊ってないのに…」

「ご、ごめんなさい。つ、つい…」

「つい…?」

しゃがんで痛めた足を摩る彼女の眉間に皺が寄る。

しまったぁ…(死亡(二回目)

「は、話しやすくて。緊張しなかったんだ、初めて。」

「?…そ、そう。…で?」

「え…。」

「それだけ?」

立ち上がり距離を詰めてくる彼女に恐怖を感じる。あぁ、なんてことしちゃったんだ…。

「ま、良いけどね。何話す?話しやすかったんでしょ?」

「え?」

「菊の嫌ぁな奴に気に入られちゃってね。初めに踊った、あなたの隣りにいた男よ。」

「は、はぁ…。」

「権田原さん、だっけ?下の名前何だっけ?」

「は、蜂太郎です。」

「蜂太郎って…嘘でしょ?センス、良いわね。」

笑った顔が……可愛い。
生まれて初めて、自分の名前に感謝した。
美しい黒髪の、良い香りのする綺麗な子。

かおりん、だ。

賑やかな音楽が遠くで聴こえる。コーラルさんは靴を脱ぎ、僕とおしゃべりしながらダンスを教えてくれた。ずっと、音楽が終わるまでずーっと、ずーっと。

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