咲き誇る陰で、

藤岡 志眞子

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「お父様・・・ちょ、ちょっとお話がありまして。」

「・・・あ?」

いつも粗暴に用件を一方的に言ってくる次女コーラルが、改まって(お父様)などと呼び、更にはお話がありまして、などと。

なんだ・・・?

「は、蜂太郎さんとの結婚の後の生活のことなんだけど、」

おぉ、もうそんなことまで考えているのか。まぁ、コーラルには母親のような夫を立てる貴婦人にはなれないだろうし、ましてや一般ピープルの専業主婦はできないだろう。
どんな妻になるのやら・・・



「大学に行こうと思っているの。」



は 。(唖然)



「な、なにを言っているんだ?」


「だから、結婚後大学に通おうかと、」


「結婚したら家庭に入るのが常だろう!?そ、それにお前は専門的な教育も受けていないし、」


「だからこれから受けるんだってば。一回は諦めた・・・その、数学者の道に進みたいの。」




は 。(唖然パート2)




「数学はきっぱり辞める、諦めるって宣言してたじゃないか。何を今更、」


「蜂太郎さんがその才能を生かすべきだって・・・。結婚後に大学に通って数学者の道に進んでいいって言ってくれたの!」



権田原 蜂太郎、余計なことを。


このコーラルが数学者など、偉そうで金にもならない職業に就いたらお前が困るだろうに。普段から偉そうでプライドの塊みたいなこの娘が、数学者という肩書きを持ったらどうなるか・・・。



地獄を見るぞ。(断言)


「・・・コーラル、取り敢えず数学者の話は蜂太郎君(と呼ぶことにしよう)にも聞いてみることにして。今は結婚式の準備に集中しなさい。ほら、ドレスとか式場とか料理とか・・・。な?」


今、何を言っても聞かないだろう。話を伸ばして後で蜂太郎君を説得して、


「結婚式はしないわ。大学へ行くための受験勉強や入学資金に充てたいの。だから、やらない。」



は 。(ぶちっ)


「いい加減にしろ!」



キレた。(想定内)


「ばっ、薔薇の(金)である娘のお前がっ、結婚式をやらず大学に行くなんてふざけたことばかり抜かすな!権田原も権田原だ!(戻った)お前の性格を知らなさ過ぎる、それでいてそんな安易な約束までしおって・・・。こうだから白百合は、」

「ではお父様は私のことをどれだけ知っておいでなの?好きな食べ物は?飲み物は?色は知っていて?」

「っそんなこと、」

「知ってるの?」

「か、鴨のローストに・・・オレンジジュースが好きなんだろ?い、色は・・・赤か?」



色しか合ってませ~~~~ん。



「私が好きなのは牛丼つゆだく、ガンガンの炭酸飲料、ホイップ増し増しチョコレートドリンク!赤は赤でも紅よ紅!!」

「そ、そんなことくらいで権田原に知った気になって欲しくないな。(つゆだくって何だ?)父親だぞ!?」

「その父親がずっと娘が諦めきれていない夢がわからないなんて・・・。」



そんなこと言われても・・・お父さん相談されたことないし。



「・・・もう、いい。」






ずっと猛反発反抗期だった娘が・・・。



お父さん、初めての(しゅん)です・・・。











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