1 / 33
number.1 見つけ出された女の子
しおりを挟む
此処から遥か遠い国。山脈が連なり年中雪が残っている。
そこの拓けた土地に父親のいない親子が住んでいた。
母親は現地の人間らしく、娘は母親とは人種が違うようで髪の色も目の色も全く似ていなかった。顔も、どうやら性格も。
母親と話をしようにも言葉が訛っているのか、知名度の低い言語なのか全く通じなかった。
ただ、女の子を指差してから書類の数字を指差して、身振り手振りで譲って欲しいと交渉したら承諾してくれた。
辺鄙な所で金も無い。女ふたりで明日食べるのも大変だったのだろう。
特派員が探し見つけてきた女の子、エナ。
こちらに連れてくるにあたり、絵菜と漢字をあてた。
絵菜は類稀なる計算能力に長けていて、研究所の人物ファイルに載っていた。
いつ誰が探してファイルに名を連ねていたのか分からないが、最後のチャンスだと思った。
藁をも掴む思いで絵菜を連れてきたのだが、他の者とは桁が違った。
例題の数式を全てミスなく解き、何と言っても速さが違う。まるでコンピュータで計算しているかのようだ。
使える。
当社下で保護し、同じく暗号解読に躍起になっている他社の者に見つからないようにする。場所は侵入不可能、逆探知、空からの監視もできない秘密の場所。
樹海のような森林の中に作られた(ベース)。
絵菜を監視員兼ボディガードと共に送る。その仕事を任されたのは当社のエース、リウ。
そして、然(サト)、奏(ソウ)、景(ケイ)、唯一女の棗(ナツメ)にした。
交代制で絵菜をみる。皆ほぼ同世代で若い。歳が離れたおじさんより早く心を開くだろう。
絵菜、君の計算能力でタイムリミット迫る(爆弾)を止めるんだ。
モニターにびっしりと数字が並ぶ。
それを見て絵菜が手元の紙に数式を作り、計算していく。紙とボールペンがどんどん消費されていく。絵菜の足元には計算し終わった紙が散らばっていた。
四、十五、八、百二……絵菜が紙に書かれた数字を指差す。全てで十七個。
即座に本部に連絡をし、その数字を伝える。
数分後、第一ロック解除との連絡が来た。
「絵菜、解除出来たぞ、ありがとう。」
「………。」
絵菜は私達の言葉が通じない。別の言語も皆無だ。もしかしたら、あの母親としか通じない言語を使っていたのだろう。しかし、頭は良い。きっとすぐに言葉も覚えるはず。
「リウ、本日からの任務の対象者だ。歳は十七歳くらいかな。言葉が通じないがそんな事慣れているだろう?くれぐれも大切に。」
「…女だったのか。てっきりド近眼のむっさい男かと。」
「女の子で良かっただろ。可愛らしいし…手、出すなよ。」
「出さねぇよそんなガキ。」
リウは推定二十三歳の、当社の裏部署のエースだ。こいつに任せておけば取られないだろうし、死にはしないだろう。
車にリウと絵菜、運転手に当社研究室室長、蓮原 玲子(はすはら れいこ)を乗せ見送った。玲子も特殊訓練に長けている。
ナビに従い、深い森の道をひた走る。分かれ道が多く、ひとつでも間違えると辿り着けない。一つ目のゲートに着く。ゲート横にある機械にナンバーを入力。その後、玲子、リウがそれぞれ瞳のスキャン、指紋の照合をしてゲートのロックが解除された。
通過後また暫く走り、同じようなゲートをひとつ解除し中に入る。少し走ると洋館のような建物が見えた。(ベース)だ。
「絵菜、これから交代のメンバーが来るまでだいたい一ヶ月、リウと此処で暮らすの、…って通じないのか。」
「……ハイ。」
「言ったことわかるの?…まぁ、言葉は生活しているうちに分かってくるわ。リウ、変な言葉や汚い言葉は教えないように。喋らないように。」
「うるせぇな、喋れないじゃねぇか。」
「それ、駄目よ。気を付けて。」
ふたりを置いて玲子が乗ってきた車で出て行った。帰りの車は無い。徒歩で帰れる距離じゃない。
ふたりは無言のまま、ベースの鍵を開けた。
そこの拓けた土地に父親のいない親子が住んでいた。
母親は現地の人間らしく、娘は母親とは人種が違うようで髪の色も目の色も全く似ていなかった。顔も、どうやら性格も。
母親と話をしようにも言葉が訛っているのか、知名度の低い言語なのか全く通じなかった。
ただ、女の子を指差してから書類の数字を指差して、身振り手振りで譲って欲しいと交渉したら承諾してくれた。
辺鄙な所で金も無い。女ふたりで明日食べるのも大変だったのだろう。
特派員が探し見つけてきた女の子、エナ。
こちらに連れてくるにあたり、絵菜と漢字をあてた。
絵菜は類稀なる計算能力に長けていて、研究所の人物ファイルに載っていた。
いつ誰が探してファイルに名を連ねていたのか分からないが、最後のチャンスだと思った。
藁をも掴む思いで絵菜を連れてきたのだが、他の者とは桁が違った。
例題の数式を全てミスなく解き、何と言っても速さが違う。まるでコンピュータで計算しているかのようだ。
使える。
当社下で保護し、同じく暗号解読に躍起になっている他社の者に見つからないようにする。場所は侵入不可能、逆探知、空からの監視もできない秘密の場所。
樹海のような森林の中に作られた(ベース)。
絵菜を監視員兼ボディガードと共に送る。その仕事を任されたのは当社のエース、リウ。
そして、然(サト)、奏(ソウ)、景(ケイ)、唯一女の棗(ナツメ)にした。
交代制で絵菜をみる。皆ほぼ同世代で若い。歳が離れたおじさんより早く心を開くだろう。
絵菜、君の計算能力でタイムリミット迫る(爆弾)を止めるんだ。
モニターにびっしりと数字が並ぶ。
それを見て絵菜が手元の紙に数式を作り、計算していく。紙とボールペンがどんどん消費されていく。絵菜の足元には計算し終わった紙が散らばっていた。
四、十五、八、百二……絵菜が紙に書かれた数字を指差す。全てで十七個。
即座に本部に連絡をし、その数字を伝える。
数分後、第一ロック解除との連絡が来た。
「絵菜、解除出来たぞ、ありがとう。」
「………。」
絵菜は私達の言葉が通じない。別の言語も皆無だ。もしかしたら、あの母親としか通じない言語を使っていたのだろう。しかし、頭は良い。きっとすぐに言葉も覚えるはず。
「リウ、本日からの任務の対象者だ。歳は十七歳くらいかな。言葉が通じないがそんな事慣れているだろう?くれぐれも大切に。」
「…女だったのか。てっきりド近眼のむっさい男かと。」
「女の子で良かっただろ。可愛らしいし…手、出すなよ。」
「出さねぇよそんなガキ。」
リウは推定二十三歳の、当社の裏部署のエースだ。こいつに任せておけば取られないだろうし、死にはしないだろう。
車にリウと絵菜、運転手に当社研究室室長、蓮原 玲子(はすはら れいこ)を乗せ見送った。玲子も特殊訓練に長けている。
ナビに従い、深い森の道をひた走る。分かれ道が多く、ひとつでも間違えると辿り着けない。一つ目のゲートに着く。ゲート横にある機械にナンバーを入力。その後、玲子、リウがそれぞれ瞳のスキャン、指紋の照合をしてゲートのロックが解除された。
通過後また暫く走り、同じようなゲートをひとつ解除し中に入る。少し走ると洋館のような建物が見えた。(ベース)だ。
「絵菜、これから交代のメンバーが来るまでだいたい一ヶ月、リウと此処で暮らすの、…って通じないのか。」
「……ハイ。」
「言ったことわかるの?…まぁ、言葉は生活しているうちに分かってくるわ。リウ、変な言葉や汚い言葉は教えないように。喋らないように。」
「うるせぇな、喋れないじゃねぇか。」
「それ、駄目よ。気を付けて。」
ふたりを置いて玲子が乗ってきた車で出て行った。帰りの車は無い。徒歩で帰れる距離じゃない。
ふたりは無言のまま、ベースの鍵を開けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる