Brain Nunber

藤岡 志眞子

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number.2 山を張る

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(ベース)に来て二日。絵菜はリウの言葉を理解し、少しだけだがコミュニケーションが取れるようになっていた。しかし、

「これ、うまくない。いらない。」

…言葉遣いが俺?

「い、いいから早く、食べて…しまいなさい。」

「いらない、きらい。」

そう言ってトーストの皿を押しやる。
こいつは普段何を食ってたんだ?昨日の飯はパンが嫌だって言うから白飯にしたのに(白飯の冷凍弁当をチン)、それも食わないし。

「だったらおまえは何だったら食うんだよ。」

「……これ。」

テレビに映るりんごを指差した。絵菜は数学が出来ても、どうやら初等教育はしていないだろうとテレビには教育番組が流れている。
俺のいちばん苦手なカテゴリー…。

「りんご?そんなナマモノあるわけないだろ。ここは冷凍食品か缶詰とかしかないんだよ。」

「いらない。」

むかつく。
食えるだけでも良いと思わないのか。
俺がおまえくらいの時、缶詰の肉食って感動したんだぞ。

「食わないと計算できなくなるだろ。」

「いい。」

「良くない。」

最初は可愛い子だなってちょっと思ったけど、俺の口調のせいかもしれないけど。可愛くない、全然。
食卓を後にし、テレビの前に置かれたソファに移動する。つまらなそうに膝を抱えてテレビを観ているが、内容を理解しているようには思えない。だって今やっているのは食育アニメだ。くそぉ…
がっつり残った朝飯を皿ごとゴミ箱に放る。そのままキッチンで立ったまま同じメニューの飯を食べる。不味くないじゃないか、贅沢なやつだな。
絵菜は目と髪が焦茶で小柄で、写真で見た母親とは全然似てない。話では親は別にいて、誘拐が何かされてあの母親が引き取ったか買ったんじゃねぇかって思ったけど、連れてきたやつに聞いたら育てられるような環境じゃなかったと言っていた。
自分の子供でも手放しそうな人が他人をなぜ育てていたのだろう。
能力が関係ありそうだが、俺にはどうでもいいな。計算式を解かせて、飯食わせて、寝かせる。以上。
リビングにある電話が鳴った。

「はい、」

「私だけど、絵菜は?」

玲子だ。

「食わず嫌いで困ってる、今はテレビ観てるよ。」

「申し訳ないんだけど、今そっちに数式を送ったから急ぎで解かせてくれない?」

「え、あぁ。」

電話を切ってパソコンのモニターを見る。新着メールが届いている。開けるとモニター全面に数字が並ぶ。

「絵菜、仕事だ。」

「………。」

陽気な童謡が流れる。観てないくせに。
絵菜の両肩に手を掛け揺する。

「おい、早く、」

その瞬間、げぼぉ……。嘘だろ。
…俺の膝周りにゲロが。最悪だ。
すぐに玲子に連絡して計算式の件は見送ってもらった。吐いたと伝えたらストレスで具合が悪くなっていたのかも、と言われた。
具合悪かったのかよ。
一日休ませて翌日、絵菜は朝飯をきれいに平らげた。

「言葉が分からないからって、顔色とか見てたらわかるでしょ?リウ、人はメカじゃないのよ。」

知ってるよ、俺だって我慢してるよ。
たくさん人殺して楽しい奴がいるかよ。
やらせてるの、おまえだろ。

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