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number.13 ナンバリング
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第四ロックを解除するまでに漕ぎ着けた。
地下室に籠って二ヶ月経った。
たまに地上に上がることはあるが、二ヶ月間ほぼ日の当たらない部屋にいる。食事や風呂、睡眠はせめて地上の自室で摂ろうと考えたが、けっこう面倒くさいし一回上がると精神的に地下に降りづらくなる。
二回上がったきり、ずっと地下だ。
食事も栄養補助食品に変わり、水もコップを使わず二リットルボトルをそれぞれそのまま口に付けている。
部屋は荒れて、紙やビスケットのゴミ、ペットボトルが転がっている。
絵菜とオレは、今さっき届いた第四ロックの解除に向けて、ヒントの意味を模索していた。
(君の腎臓は、何処?)
意味がわからない。数学と関係なさそうなヒント。
「絵菜は腎臓に何かあったりするのか?」
「ジンゾウ?べつに病気じゃないよ?」
絵菜に向けての質問ではないだろうし、誰にでも当てはまるものだとしても、意味が全くわからない。
「腎臓は、ふたつあるものだから…いや、違うな。移植か何かか?」
「ふたつ?ジンゾウってなにするものなの?」
「体の水分量の調整や老廃物の排出なんかをする臓器だ。」
「…それ、私ひとつしかない。」
「は…?取ったのか?」
「違う、生まれた時からなかったの。」
腎臓が生まれつきひとつしかないなんて。ヒントは絵菜に向けてのものなのか?
「ルクシュクは知ってたのか。」
「うん。だから、たまに病院に行ってたよ。でもいつも大丈夫です、って。」
「他に何か言ってたか?産んだ母親のこととか。」
「モムが私を産んでくれたんだってば。モムに聞いてみて。」
「ルクシュクは産みの母親じゃない、それに、」
「…なに。」
「死んだ。もう聞けない。」
絵菜の顔色が変わる。
「いつ。」
「前回の第四ロック解除の時だ。ルクシュクの死んだ病院の場所がヒントだったんだよ。」
「知らない、さ…リウは、何も言ってなかった。」
優しさか、くだらない。
「とにかく、腎臓は産みの母親の身体に置いてきた、という事なんだろう。何も知らないのか?」
「知らない、わからない…」
母親が死んだくらいで精神崩壊かよ。
その時、パソコンにメールが届いた。
(ヒント、絵菜からは何か聞き出せた?)
(:絵菜の腎臓は生まれつきひとつしかなかったそうです。産みの母親の居場所でしょうか?)
産みの、母親……。
(::前回と同じパターンではないと思います。腎臓は皆持っているものです。然も注意して下さい。)
注意?腎臓を取られるということか?
(:::しかし君というのは絵菜の事で間違いないのでは?前回はルクシュクの居場所から数列を導き出し、記憶にあった数式と当てはめました。)
(::::絵菜の腎臓を調べてみましょう。外に出られるか聞いてみます。)
翌日、蓮原の車でオレと絵菜はリリーグループ経営の白百合会クリサンセマム医療センターに向かった。
血液検査、エコー、CT…たくさんの検査を行い一日中病院にいた。
「結果が出ましたので、ご説明いたします。」
各科の医師が絵菜の検査結果の説明をする。
血液検査から始まり全ての検査結果に異常はなかった。オレの横に座る蓮原が質問する。
「腎臓がひとつでも大丈夫という事でしょうか?」
「先天性な腎臓欠損です。ひとつの腎臓で賄えるよう身体が機能しているので大丈夫です。移植などでひとつになった人も対処していけば健康に暮らせますし。ひとつでも問題はありません、絵菜さんに関しては特に。」
「他に悪いところはない、と。」
…保護者みたいだな。
「…わかりました。実は絵菜の実の母親を探しているのですが、依頼したDNA鑑定の結果はいつ頃出ますでしょうか?」
DNA鑑定?対象者がいるのか?
「結果は一ヶ月ほどかかるかと。照合に必要なサンプルはお持ちですか?」
「はい、先ほどお渡しいたしました。」
ちらっと蓮原の腕を見る。左腕に採血の跡があった。
絵菜は少し体力が消耗している、ということで点滴治療を行ってから帰ることになった。誰もいない廊下の長椅子に、距離をとって並んで座る。
「…蓮原さん、なぜDNA鑑定に参加しているんですか。」
DNA検査は唾液でするものよ、と言いながら、採血された方の腕をさすり少し笑って話し始めた。
「私も小皆教授に関わった人間よ。もしかしたら、ルクシュクのように利用されているかもしれないじゃない?」
「蓮原さんが絵菜の母親って…どういう利用の仕方ですか。産んだ覚えがないなら母親にはならないだろ。…遺伝子操作とか?」
「記憶を…書き換えられている可能性があるの。」
記憶…?
「ルクシュクも記憶を書き換えられていたのか?」
「ルクシュクは違うと思うわ。あと、ルクシュクは元々リリーグループの社員だったの。」
「え。」
「…ある人物にこれから始まる企画を遂行する上で、女の子を育てて欲しいと頼まれたのよ。」
「特派員はそんなこと、」
「リリーグループの人間は、この事実を知らないわ。知っているのは私とルクシュク。」
「なぜ蓮原さんが知っているんですか。」
「…私がなぜDNA鑑定を依頼したと思う?」
「……え、」
「私が産みの母親らしいのよ。ルクシュクの手紙にそう書かれていたの。もちろん何を言ってるのって思った。…でも、その手紙が届く三日前にルクシュクは病院で死んだ。」
産みの母親…らしい?ルクシュクはその事実を伝えた罪で殺されたのか?
「らしい、というのはどういう意味ですか。」
「最近、たまたま健康診断をしたのよ。その時に、婦人科で経産婦(出産を経験した女性)と言われたの。」
「知らないうちに、子供を産んでいて…それが絵菜?」
「………。」
「すみませんが、その辺りに結婚していたのですか。」
「してない。ただ、恋人はいたわ。」
「誰、ですか。」
「小皆 要士郎よ。」
地下室に籠って二ヶ月経った。
たまに地上に上がることはあるが、二ヶ月間ほぼ日の当たらない部屋にいる。食事や風呂、睡眠はせめて地上の自室で摂ろうと考えたが、けっこう面倒くさいし一回上がると精神的に地下に降りづらくなる。
二回上がったきり、ずっと地下だ。
食事も栄養補助食品に変わり、水もコップを使わず二リットルボトルをそれぞれそのまま口に付けている。
部屋は荒れて、紙やビスケットのゴミ、ペットボトルが転がっている。
絵菜とオレは、今さっき届いた第四ロックの解除に向けて、ヒントの意味を模索していた。
(君の腎臓は、何処?)
意味がわからない。数学と関係なさそうなヒント。
「絵菜は腎臓に何かあったりするのか?」
「ジンゾウ?べつに病気じゃないよ?」
絵菜に向けての質問ではないだろうし、誰にでも当てはまるものだとしても、意味が全くわからない。
「腎臓は、ふたつあるものだから…いや、違うな。移植か何かか?」
「ふたつ?ジンゾウってなにするものなの?」
「体の水分量の調整や老廃物の排出なんかをする臓器だ。」
「…それ、私ひとつしかない。」
「は…?取ったのか?」
「違う、生まれた時からなかったの。」
腎臓が生まれつきひとつしかないなんて。ヒントは絵菜に向けてのものなのか?
「ルクシュクは知ってたのか。」
「うん。だから、たまに病院に行ってたよ。でもいつも大丈夫です、って。」
「他に何か言ってたか?産んだ母親のこととか。」
「モムが私を産んでくれたんだってば。モムに聞いてみて。」
「ルクシュクは産みの母親じゃない、それに、」
「…なに。」
「死んだ。もう聞けない。」
絵菜の顔色が変わる。
「いつ。」
「前回の第四ロック解除の時だ。ルクシュクの死んだ病院の場所がヒントだったんだよ。」
「知らない、さ…リウは、何も言ってなかった。」
優しさか、くだらない。
「とにかく、腎臓は産みの母親の身体に置いてきた、という事なんだろう。何も知らないのか?」
「知らない、わからない…」
母親が死んだくらいで精神崩壊かよ。
その時、パソコンにメールが届いた。
(ヒント、絵菜からは何か聞き出せた?)
(:絵菜の腎臓は生まれつきひとつしかなかったそうです。産みの母親の居場所でしょうか?)
産みの、母親……。
(::前回と同じパターンではないと思います。腎臓は皆持っているものです。然も注意して下さい。)
注意?腎臓を取られるということか?
(:::しかし君というのは絵菜の事で間違いないのでは?前回はルクシュクの居場所から数列を導き出し、記憶にあった数式と当てはめました。)
(::::絵菜の腎臓を調べてみましょう。外に出られるか聞いてみます。)
翌日、蓮原の車でオレと絵菜はリリーグループ経営の白百合会クリサンセマム医療センターに向かった。
血液検査、エコー、CT…たくさんの検査を行い一日中病院にいた。
「結果が出ましたので、ご説明いたします。」
各科の医師が絵菜の検査結果の説明をする。
血液検査から始まり全ての検査結果に異常はなかった。オレの横に座る蓮原が質問する。
「腎臓がひとつでも大丈夫という事でしょうか?」
「先天性な腎臓欠損です。ひとつの腎臓で賄えるよう身体が機能しているので大丈夫です。移植などでひとつになった人も対処していけば健康に暮らせますし。ひとつでも問題はありません、絵菜さんに関しては特に。」
「他に悪いところはない、と。」
…保護者みたいだな。
「…わかりました。実は絵菜の実の母親を探しているのですが、依頼したDNA鑑定の結果はいつ頃出ますでしょうか?」
DNA鑑定?対象者がいるのか?
「結果は一ヶ月ほどかかるかと。照合に必要なサンプルはお持ちですか?」
「はい、先ほどお渡しいたしました。」
ちらっと蓮原の腕を見る。左腕に採血の跡があった。
絵菜は少し体力が消耗している、ということで点滴治療を行ってから帰ることになった。誰もいない廊下の長椅子に、距離をとって並んで座る。
「…蓮原さん、なぜDNA鑑定に参加しているんですか。」
DNA検査は唾液でするものよ、と言いながら、採血された方の腕をさすり少し笑って話し始めた。
「私も小皆教授に関わった人間よ。もしかしたら、ルクシュクのように利用されているかもしれないじゃない?」
「蓮原さんが絵菜の母親って…どういう利用の仕方ですか。産んだ覚えがないなら母親にはならないだろ。…遺伝子操作とか?」
「記憶を…書き換えられている可能性があるの。」
記憶…?
「ルクシュクも記憶を書き換えられていたのか?」
「ルクシュクは違うと思うわ。あと、ルクシュクは元々リリーグループの社員だったの。」
「え。」
「…ある人物にこれから始まる企画を遂行する上で、女の子を育てて欲しいと頼まれたのよ。」
「特派員はそんなこと、」
「リリーグループの人間は、この事実を知らないわ。知っているのは私とルクシュク。」
「なぜ蓮原さんが知っているんですか。」
「…私がなぜDNA鑑定を依頼したと思う?」
「……え、」
「私が産みの母親らしいのよ。ルクシュクの手紙にそう書かれていたの。もちろん何を言ってるのって思った。…でも、その手紙が届く三日前にルクシュクは病院で死んだ。」
産みの母親…らしい?ルクシュクはその事実を伝えた罪で殺されたのか?
「らしい、というのはどういう意味ですか。」
「最近、たまたま健康診断をしたのよ。その時に、婦人科で経産婦(出産を経験した女性)と言われたの。」
「知らないうちに、子供を産んでいて…それが絵菜?」
「………。」
「すみませんが、その辺りに結婚していたのですか。」
「してない。ただ、恋人はいたわ。」
「誰、ですか。」
「小皆 要士郎よ。」
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