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number.18 ブレインナンバー計画
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赤居 美島の様子に変わりはない。
第五ロックを解除して数日、ロックが何個あるのかわからなくなってきた。
ロックの存在とタイムリミットの時間数、数式の難易度から五、六個、多くて十個と思っていた。
絵菜が現れて数式に掛かる時間も減り、数式自体にもタイムリミットが設けられるようになり、更にヒントを出してくるあたり小皆教授は進み具合を把握している。当初の予想の十個だったとしたら、これから更に難題が出たとしても二年かかるような気がしない。
もしかしたらロックはもっとあるのではないかと思い始めた。
もっと… いや、個数設定がそもそもないのでは?タイムリミットは飾りに過ぎず、数式の解答の数が、何かに関係しているのだろうか?
赤居 美島は梅田の言っていた通りBrain number.7にしているのか?ならば、タイムリミット二年をそのままにしてロックを掛ける必要はない。
しかし、小皆教授はBrain numberには反対していたので、赤居 美島をタンクから出してしまってロックを掛けてしまうか壊せばいいこと。しかし、ロックを設定してヒントを送り、こちらの動向、様子を窺っている…。
棗が死んで一週間後、奏と交代のためベースに向かっていた景が事故を起こした。樹海に入ってすぐの参道で猛スピードのクルマに追われて運転を誤り崖から落ちた。即死だった。
景を追ったクルマは景のクルマのドライブレコーダーに映ってはいたがナンバーがなかった。景はBNCの中でいちばん効果がわかりづらい例だったのでノーマークであったのだが、まさか狙われるとは…。
棗の場合はマイナス思考が少なくなり、チャレンジ精神の向上が見られ難しいミッションにも挑戦させるようになっていた。しかし、矯正しきれなかった他者への興味、執着は逆に強くなり始め、重ねて自身のブレインナンバーへの疑念が出てきていて、説明すべきかどうするかという頃合に殺された。
ふたりの死に関わった者はロック解除のことを知っていて、ブレインナンバーを知っていて、小皆教授を知っている人物。
(梅田…。)
棗も梅田に殺されかけた。梅田はロックを解除して欲しいと言った人間である。なぜ協力者を狙う?梅田は赤居 美島を救おうとしていた人物なのに…諦めたのか…?
そもそもブレインナンバー、Brain number、ブレインナンバーというタンクの名前と、同じ発音のものが三つある。
カタカナのブレインナンバーは小皆教授の初期の計画。
英語のBrain number(投薬BNCはこちらになる)は、八つのカテゴリーに分けられ洗脳していく、菊本と梅田の計画のことである。
当初はひとつの計画だけを遂行していくつもりだったのが割れて、こんな感じに複雑になってしまった。同じ発音でもカタカナと英語とでは全く別物である。
私はカタカナの方の計画、小皆教授の当初のシステムに協力していて、英語の方と比べて脳使用率向上など割と健全な計画であった。
しかしタンクにロックがかかり、小皆教授が消えてカタカナのブレインナンバーは実行されずに終わったのだ、と思っていた。
しかし、景の代役として先日ベースに来て、絵菜となんとなく読み書きについて質問した時、わかってしまった。
「私は、文字を読めないし書けないけれど、手紙をもらって返事を返したことがあったの。」
「え?誰と?」
「わからない。モムが私にってくれたの。」
「何が書かれていたの?」
「これ。」
そう言って練習用に開かれたままのパソコンモニターを指差した。
「数式?それで何かわかるの?」
「これで何を言っているのかわかるの。決まった数列や、計算で…言葉になっていて、文になっていてね。」
言葉…?
「じ、じゃあ、最初の、第一ロックの答えはなんていうメッセージだったの?」
「…確か、(おかえり)みたいな言葉。」
お帰り…。
「第二ロックは?思い出せる範囲で。」
「順番は忘れたけれど、今思い出せるのは、(お母さん元気?)みたいなのとか(君のいる場所は安全だよ)とか…」
「…第四ロックは…?」
「……(本当のお母さんは近くにいるよ)って。誰だかわかる?」
…あいつ。
「ごめんなさい、わからないわ…。続けるけど、第五ロックの答えは?」
「(もうすぐ、終わる)…って。」
終わる…?解除作業の終わりということか?
「答え以外にメッセージとして受け取れるものはなかった?」
「数式に、書いてある時があるの。」
「例えば、どんな?」
絵菜によるとほんの一部ではあるが、ブレインナンバー(タンク)の詳細、ざっくりとしたBrain numberのカテゴリーの詳細、ブレインナンバーの当初の計画、小皆教授の希望(切実に…)などが書かれていたと言った。そして、第五ロックの数式には、脳使用率向上のほかに自己修復力の向上、そして、自己防衛本能の強化、他者への攻撃能力の増幅作用が新たに組み込まれ、今後世界を救うと書かれていたと言って絵菜は黙った。
(全く別物のブレインナンバーではないか。)
話を終えて私はひとり頭を整理すべく自室に籠った。半日過ぎて、ひとつ気になる点が浮かび上がった。自室を出て階段を降り、リビングに向かう。ソファに座りテレビを観ている絵菜を見る。
腎臓欠損で生まれてきたのに、何の治療もせず健康体である絵菜。
粗悪な環境で育ったにも関わらず傷ひとつないきれいな身体をしている。
視力もこちらに来て近いものばかり見ているのに、全く低下していない。
(…もしかして。)
キッチンに行き、ナイフを手に取る。
ソファに座る絵菜の元へ行き、左腕を持った。
「…?」
「絵菜、ちょっと気になることがあるの。協力してちょうだい。」
瞬間、右手に握られたナイフを絵菜の腕に当て、引く。スッと切れて血が滲む。
「…っ、いたいっ、」
傷を手で覆い私を睨んだ。
「絵菜、その傷の経過を見たいの。あなたの身体の状態を見るわ。」
「え?」
次の日、包帯を外した腕には傷跡はなかった。自己修復力の向上、絵菜の話に出てきたブレインナンバーに組み込まれたもののひとつ。腎臓がひとつでも健康機能が正常なのもそのせいだろう。
どれかひとつを選択して理想の人物を創り上げるという計画だったはず。それが小皆教授の理想の実験だったのだろうが、絵菜は複数該当すると思われる…いや、全てかもしれない。
このプログラミングはBNCやBrain numberには組み込まれていない。絵菜はもちろん、どちらも該当しない。
となると、小皆教授の実験第一号はBNCの景でもなく、Brain number.000001でもなく、目の前にいる絵菜、私の娘の可能性が色濃くなる。しかも、(殺人兵器)の成功例として。
梅田はこの殺人兵器の創造を阻止するため、棗や景を排除したのだろうか?ならば、菊本も知っているはず。
絵菜は数式のメッセージを夢物語だと思っていたに違いないが、自分の腕の傷の治りに驚く私を見て(治りの速さはふつうだと思っていたらしい。)、何かを確信したようだった。
絵菜はブレインナンバー01.そして、遠からず02が誕生しようとしている。
阻止しなければ、早く解除を進めなければ。
第五ロックを解除して数日、ロックが何個あるのかわからなくなってきた。
ロックの存在とタイムリミットの時間数、数式の難易度から五、六個、多くて十個と思っていた。
絵菜が現れて数式に掛かる時間も減り、数式自体にもタイムリミットが設けられるようになり、更にヒントを出してくるあたり小皆教授は進み具合を把握している。当初の予想の十個だったとしたら、これから更に難題が出たとしても二年かかるような気がしない。
もしかしたらロックはもっとあるのではないかと思い始めた。
もっと… いや、個数設定がそもそもないのでは?タイムリミットは飾りに過ぎず、数式の解答の数が、何かに関係しているのだろうか?
赤居 美島は梅田の言っていた通りBrain number.7にしているのか?ならば、タイムリミット二年をそのままにしてロックを掛ける必要はない。
しかし、小皆教授はBrain numberには反対していたので、赤居 美島をタンクから出してしまってロックを掛けてしまうか壊せばいいこと。しかし、ロックを設定してヒントを送り、こちらの動向、様子を窺っている…。
棗が死んで一週間後、奏と交代のためベースに向かっていた景が事故を起こした。樹海に入ってすぐの参道で猛スピードのクルマに追われて運転を誤り崖から落ちた。即死だった。
景を追ったクルマは景のクルマのドライブレコーダーに映ってはいたがナンバーがなかった。景はBNCの中でいちばん効果がわかりづらい例だったのでノーマークであったのだが、まさか狙われるとは…。
棗の場合はマイナス思考が少なくなり、チャレンジ精神の向上が見られ難しいミッションにも挑戦させるようになっていた。しかし、矯正しきれなかった他者への興味、執着は逆に強くなり始め、重ねて自身のブレインナンバーへの疑念が出てきていて、説明すべきかどうするかという頃合に殺された。
ふたりの死に関わった者はロック解除のことを知っていて、ブレインナンバーを知っていて、小皆教授を知っている人物。
(梅田…。)
棗も梅田に殺されかけた。梅田はロックを解除して欲しいと言った人間である。なぜ協力者を狙う?梅田は赤居 美島を救おうとしていた人物なのに…諦めたのか…?
そもそもブレインナンバー、Brain number、ブレインナンバーというタンクの名前と、同じ発音のものが三つある。
カタカナのブレインナンバーは小皆教授の初期の計画。
英語のBrain number(投薬BNCはこちらになる)は、八つのカテゴリーに分けられ洗脳していく、菊本と梅田の計画のことである。
当初はひとつの計画だけを遂行していくつもりだったのが割れて、こんな感じに複雑になってしまった。同じ発音でもカタカナと英語とでは全く別物である。
私はカタカナの方の計画、小皆教授の当初のシステムに協力していて、英語の方と比べて脳使用率向上など割と健全な計画であった。
しかしタンクにロックがかかり、小皆教授が消えてカタカナのブレインナンバーは実行されずに終わったのだ、と思っていた。
しかし、景の代役として先日ベースに来て、絵菜となんとなく読み書きについて質問した時、わかってしまった。
「私は、文字を読めないし書けないけれど、手紙をもらって返事を返したことがあったの。」
「え?誰と?」
「わからない。モムが私にってくれたの。」
「何が書かれていたの?」
「これ。」
そう言って練習用に開かれたままのパソコンモニターを指差した。
「数式?それで何かわかるの?」
「これで何を言っているのかわかるの。決まった数列や、計算で…言葉になっていて、文になっていてね。」
言葉…?
「じ、じゃあ、最初の、第一ロックの答えはなんていうメッセージだったの?」
「…確か、(おかえり)みたいな言葉。」
お帰り…。
「第二ロックは?思い出せる範囲で。」
「順番は忘れたけれど、今思い出せるのは、(お母さん元気?)みたいなのとか(君のいる場所は安全だよ)とか…」
「…第四ロックは…?」
「……(本当のお母さんは近くにいるよ)って。誰だかわかる?」
…あいつ。
「ごめんなさい、わからないわ…。続けるけど、第五ロックの答えは?」
「(もうすぐ、終わる)…って。」
終わる…?解除作業の終わりということか?
「答え以外にメッセージとして受け取れるものはなかった?」
「数式に、書いてある時があるの。」
「例えば、どんな?」
絵菜によるとほんの一部ではあるが、ブレインナンバー(タンク)の詳細、ざっくりとしたBrain numberのカテゴリーの詳細、ブレインナンバーの当初の計画、小皆教授の希望(切実に…)などが書かれていたと言った。そして、第五ロックの数式には、脳使用率向上のほかに自己修復力の向上、そして、自己防衛本能の強化、他者への攻撃能力の増幅作用が新たに組み込まれ、今後世界を救うと書かれていたと言って絵菜は黙った。
(全く別物のブレインナンバーではないか。)
話を終えて私はひとり頭を整理すべく自室に籠った。半日過ぎて、ひとつ気になる点が浮かび上がった。自室を出て階段を降り、リビングに向かう。ソファに座りテレビを観ている絵菜を見る。
腎臓欠損で生まれてきたのに、何の治療もせず健康体である絵菜。
粗悪な環境で育ったにも関わらず傷ひとつないきれいな身体をしている。
視力もこちらに来て近いものばかり見ているのに、全く低下していない。
(…もしかして。)
キッチンに行き、ナイフを手に取る。
ソファに座る絵菜の元へ行き、左腕を持った。
「…?」
「絵菜、ちょっと気になることがあるの。協力してちょうだい。」
瞬間、右手に握られたナイフを絵菜の腕に当て、引く。スッと切れて血が滲む。
「…っ、いたいっ、」
傷を手で覆い私を睨んだ。
「絵菜、その傷の経過を見たいの。あなたの身体の状態を見るわ。」
「え?」
次の日、包帯を外した腕には傷跡はなかった。自己修復力の向上、絵菜の話に出てきたブレインナンバーに組み込まれたもののひとつ。腎臓がひとつでも健康機能が正常なのもそのせいだろう。
どれかひとつを選択して理想の人物を創り上げるという計画だったはず。それが小皆教授の理想の実験だったのだろうが、絵菜は複数該当すると思われる…いや、全てかもしれない。
このプログラミングはBNCやBrain numberには組み込まれていない。絵菜はもちろん、どちらも該当しない。
となると、小皆教授の実験第一号はBNCの景でもなく、Brain number.000001でもなく、目の前にいる絵菜、私の娘の可能性が色濃くなる。しかも、(殺人兵器)の成功例として。
梅田はこの殺人兵器の創造を阻止するため、棗や景を排除したのだろうか?ならば、菊本も知っているはず。
絵菜は数式のメッセージを夢物語だと思っていたに違いないが、自分の腕の傷の治りに驚く私を見て(治りの速さはふつうだと思っていたらしい。)、何かを確信したようだった。
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