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number.17 生身の兵器
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「おまえまで飲むことないだろ。」
妻が倒れたと聞き病院に来た。
大事を取って入院することになったが、糖尿病が悪くなっていることも判明し治療入院が追加された。今まで医者、薬嫌いでなかなか受診をしてくれなかった、良いタイミングだ。
「……良いじゃない?一緒に飲んだ方が私は疑われないし、女の子は亡くなったみたいだし。」
「毒だけじゃ死ななかった。」
「…殺したの?」
「あぁ。」
「酷い人ね。」
「おまえもな。」
夫の指示でカロライナジャスミンで殺すよう言われた。目的は知らないが私は協力した。
夫の妾だった女の子供かもしれないと知った時、殺意が湧いたからだ。
実際、女の子供ではなかったみたいだが、どうでもいい。
私達には子供はいない。私が原因なのだがそれを理由に浮気を繰り返され、その中のお気に入り、赤居 美島を助けるため躍起になっている状況は面白くなかった。
あんなに交際を懇願され結婚したのに、結婚生活に喜びなどひとつもなかった。
仕事と女、夫は私に見向きもしなくなった。欲しかったのは私の父の会社だ。混ざり物だらけの薬に何の魅力があるのだろうか。
そう思いながら点滴のチューブを摘む。夫の会社の製品を今まさに体内に入れられている。
汚い。
「なぜあの子を殺したの?理由を聞いていないわ。」
「BNCの計画を白紙に戻す。矯正できていた部分が元に戻りつつあるんだ。何かされたら面倒だからな、矯正し直すには小皆教授が必要なのだが今いない。」
「……そう。」
「カロライナジャスミンは掘り起こされていたよ。リリーの人間がやったんだろう、きっと私のやったこともすぐバレる。」
「…BNCが手に負えなくなったらリリーがやってたんじゃないの?」
「あいつらは優秀な殺人兵器だ、自ら処分はしないだろう。」
「あなたがやらないと、あなたに何か不都合でもあったの。」
「私があいつらに、リリーに殺されるかもしれないからね。」
殺されてしまえ。
「なぜ…?」
「小皆教授と私達(菊本)の目指す実験内容が大幅に変わったんだ。当初は納得してやってくれていると思ったのだが…。小皆教授がいなくなった今、菊本はトラブルの対処に追われて、私に対して恨みを持ち始めている…ブレインナンバーチーム外でこの事を知っているのは私だけだからね。消したくなったからあの上原とかいうスパイを寄越したんだろう。」
洗脳実験、か。それを推し進めたのはあなた、菊本さんではないわ。当然の報い。
「000008は、小皆教授の当初の研究、脳使用率向上の人体実験に実験内容が変わっている可能性がある。」
「そうなるとどうなの。」
「ブレインナンバーの計画で創られる人間は、私や菊本に従順になるようにプログラミングされている。しかし、000008は、そうじゃない。小皆教授の独自のプログラミングがあると思われるんだ。」
「どんな。」
「そもそも脳使用率向上ということはだな、常人が思いもつかないような発想や思考の回転率が備わる。更に全身の筋肉、細胞にまで影響を及ぼし…最強になる。」
「…兵器になると…?」
「小皆教授は今もブレインナンバーを使って最強兵器を造っているんだ。それが外に出たら、」
愛してやまない女が殺人兵器。その女に殺される夫…笑えるわね。
自らの洗脳人間の計画も失敗、愛する女は助けられずに地団駄を踏み命を狙われる。素晴らしいシナリオだわ。
病室を後にする夫の背中を見送った後、携帯電話を手に取る。
(ミナコロシ)
「あなたの本当の計画は、何?カロライナジャスミンを贈った時点で考えてたのかしら?」
「…さぁ?カロライナジャスミンにヒントは付けたが梅田が使うなんて思いもしなかったよ。…他に、何か聞いたのかな?」
「赤居 美島は殺人兵器になるのね。」
「そこまで話したのかい?…順調だよ、タイムリミット前に解除されても、タイムリミットがきても同じ事。パスワードを解除される度に、急速に向上率が上がってるのに気付かずみんな協力してくれている。」
「怖い人ね。娘さんが心配だわ。」
「絵菜も赤居も同じだ。ただ、きっかけをまだ作ってあげていないだけ。」
「きっかけ?」
「それが起こったら、赤居をも上回る兵器になる。」
「…怖い人ね。」
(リリーグループ本社)
リウは久々のミッションクリアランスで、用もなく本社のブレインナンバー研究室に訪れていた。ふだん鍵が掛かっていて入れないが、こっそり玲子の鍵をコピーしていたのですんなり入れた。
膨大な量のファイルと数台のパソコン、何か自分のこともわかるかもしれない。
事前にピックアップしておいたパスワードを入力する。強制終了手前でロックが解除された。
(あっぶねぇ。)
モニターに映るファイルにカーソルを合わせる。文字だらけ、数字だらけで目がチカチカする。その中に(Brain Number Children)のページが。
Children…?子供も実験対象者にいるのか?スクロールしていくと、見慣れた名前がある。
景、然、奏…リウ。
(お、俺?)
途端、飛ばしていた概要欄を読む。
(リウ Age9 BNC.04 Brain number.7)
九歳の時、何かあったかな…グラジオラスに来て三年くらいか?
(反抗的且つ暴力的、我儘。身体的能力、頭脳共に低。)
ヒドい言われ様だな。
(投薬開始半年後、あまり効果は見られず。)
…投薬?
(投薬開始二年後、身体的能力、頭脳共に良好な変化有り。続けて観察。)
………。
(十三歳越えたあたりから成長と共に見られる反抗的な精神状態は見られず、相反し投薬の効果と思われる冷静沈着、従順、適応能力が備わる。)
…何の薬を飲まされていたんだ?
最後の項目を読んで止まった。
頭と腹から恐怖と怒りが同時に溢れ出る。
読み終わった瞬間、パソコンのキーボードを床に叩きつけ、モニターを素手で割った。
こんなことした奴の力になんてなってやるもんか。
そのまま行方を眩ませた。
割られたモニターに映し出されたままの文章。
リウの中で、書かれていた内容がリセットされてしまったようだ。
(書き換え前の記憶一斎なし、テスト済み。
グラジオラス前、訓練開始、投薬効果前の記憶をリセットしました。
Plan.02を上書き済み。
個人データ詳細
父:死亡 母:死亡 共にリウが殺害。花庭 陽一一時保護後、グラジオラスにて正式にプログラムメンバーとして訓練開始。兄弟、姉妹無し。 以上)
BNC.04 Brain number.7、Leew 脱走。直ちに捕獲、拘束せよ。
妻が倒れたと聞き病院に来た。
大事を取って入院することになったが、糖尿病が悪くなっていることも判明し治療入院が追加された。今まで医者、薬嫌いでなかなか受診をしてくれなかった、良いタイミングだ。
「……良いじゃない?一緒に飲んだ方が私は疑われないし、女の子は亡くなったみたいだし。」
「毒だけじゃ死ななかった。」
「…殺したの?」
「あぁ。」
「酷い人ね。」
「おまえもな。」
夫の指示でカロライナジャスミンで殺すよう言われた。目的は知らないが私は協力した。
夫の妾だった女の子供かもしれないと知った時、殺意が湧いたからだ。
実際、女の子供ではなかったみたいだが、どうでもいい。
私達には子供はいない。私が原因なのだがそれを理由に浮気を繰り返され、その中のお気に入り、赤居 美島を助けるため躍起になっている状況は面白くなかった。
あんなに交際を懇願され結婚したのに、結婚生活に喜びなどひとつもなかった。
仕事と女、夫は私に見向きもしなくなった。欲しかったのは私の父の会社だ。混ざり物だらけの薬に何の魅力があるのだろうか。
そう思いながら点滴のチューブを摘む。夫の会社の製品を今まさに体内に入れられている。
汚い。
「なぜあの子を殺したの?理由を聞いていないわ。」
「BNCの計画を白紙に戻す。矯正できていた部分が元に戻りつつあるんだ。何かされたら面倒だからな、矯正し直すには小皆教授が必要なのだが今いない。」
「……そう。」
「カロライナジャスミンは掘り起こされていたよ。リリーの人間がやったんだろう、きっと私のやったこともすぐバレる。」
「…BNCが手に負えなくなったらリリーがやってたんじゃないの?」
「あいつらは優秀な殺人兵器だ、自ら処分はしないだろう。」
「あなたがやらないと、あなたに何か不都合でもあったの。」
「私があいつらに、リリーに殺されるかもしれないからね。」
殺されてしまえ。
「なぜ…?」
「小皆教授と私達(菊本)の目指す実験内容が大幅に変わったんだ。当初は納得してやってくれていると思ったのだが…。小皆教授がいなくなった今、菊本はトラブルの対処に追われて、私に対して恨みを持ち始めている…ブレインナンバーチーム外でこの事を知っているのは私だけだからね。消したくなったからあの上原とかいうスパイを寄越したんだろう。」
洗脳実験、か。それを推し進めたのはあなた、菊本さんではないわ。当然の報い。
「000008は、小皆教授の当初の研究、脳使用率向上の人体実験に実験内容が変わっている可能性がある。」
「そうなるとどうなの。」
「ブレインナンバーの計画で創られる人間は、私や菊本に従順になるようにプログラミングされている。しかし、000008は、そうじゃない。小皆教授の独自のプログラミングがあると思われるんだ。」
「どんな。」
「そもそも脳使用率向上ということはだな、常人が思いもつかないような発想や思考の回転率が備わる。更に全身の筋肉、細胞にまで影響を及ぼし…最強になる。」
「…兵器になると…?」
「小皆教授は今もブレインナンバーを使って最強兵器を造っているんだ。それが外に出たら、」
愛してやまない女が殺人兵器。その女に殺される夫…笑えるわね。
自らの洗脳人間の計画も失敗、愛する女は助けられずに地団駄を踏み命を狙われる。素晴らしいシナリオだわ。
病室を後にする夫の背中を見送った後、携帯電話を手に取る。
(ミナコロシ)
「あなたの本当の計画は、何?カロライナジャスミンを贈った時点で考えてたのかしら?」
「…さぁ?カロライナジャスミンにヒントは付けたが梅田が使うなんて思いもしなかったよ。…他に、何か聞いたのかな?」
「赤居 美島は殺人兵器になるのね。」
「そこまで話したのかい?…順調だよ、タイムリミット前に解除されても、タイムリミットがきても同じ事。パスワードを解除される度に、急速に向上率が上がってるのに気付かずみんな協力してくれている。」
「怖い人ね。娘さんが心配だわ。」
「絵菜も赤居も同じだ。ただ、きっかけをまだ作ってあげていないだけ。」
「きっかけ?」
「それが起こったら、赤居をも上回る兵器になる。」
「…怖い人ね。」
(リリーグループ本社)
リウは久々のミッションクリアランスで、用もなく本社のブレインナンバー研究室に訪れていた。ふだん鍵が掛かっていて入れないが、こっそり玲子の鍵をコピーしていたのですんなり入れた。
膨大な量のファイルと数台のパソコン、何か自分のこともわかるかもしれない。
事前にピックアップしておいたパスワードを入力する。強制終了手前でロックが解除された。
(あっぶねぇ。)
モニターに映るファイルにカーソルを合わせる。文字だらけ、数字だらけで目がチカチカする。その中に(Brain Number Children)のページが。
Children…?子供も実験対象者にいるのか?スクロールしていくと、見慣れた名前がある。
景、然、奏…リウ。
(お、俺?)
途端、飛ばしていた概要欄を読む。
(リウ Age9 BNC.04 Brain number.7)
九歳の時、何かあったかな…グラジオラスに来て三年くらいか?
(反抗的且つ暴力的、我儘。身体的能力、頭脳共に低。)
ヒドい言われ様だな。
(投薬開始半年後、あまり効果は見られず。)
…投薬?
(投薬開始二年後、身体的能力、頭脳共に良好な変化有り。続けて観察。)
………。
(十三歳越えたあたりから成長と共に見られる反抗的な精神状態は見られず、相反し投薬の効果と思われる冷静沈着、従順、適応能力が備わる。)
…何の薬を飲まされていたんだ?
最後の項目を読んで止まった。
頭と腹から恐怖と怒りが同時に溢れ出る。
読み終わった瞬間、パソコンのキーボードを床に叩きつけ、モニターを素手で割った。
こんなことした奴の力になんてなってやるもんか。
そのまま行方を眩ませた。
割られたモニターに映し出されたままの文章。
リウの中で、書かれていた内容がリセットされてしまったようだ。
(書き換え前の記憶一斎なし、テスト済み。
グラジオラス前、訓練開始、投薬効果前の記憶をリセットしました。
Plan.02を上書き済み。
個人データ詳細
父:死亡 母:死亡 共にリウが殺害。花庭 陽一一時保護後、グラジオラスにて正式にプログラムメンバーとして訓練開始。兄弟、姉妹無し。 以上)
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