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number.20 サイコパス
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「では、失礼します。」
グラジオラス養護施設のフロントロビーに黒いスーツの男達が数人、細長い大きな箱をクルマに運んでいく。
「残念ね、これからだったのに。」
園長の女が残念そうな演技をしながら施設のスタッフと一緒に事務所に歩いていく。それを吹き抜けの二階から眺めるオレがいた。
「私、然のコトが好きなの。」
そう言われて弟のカノジョに手を出した。思春期真っ只中。見た目の良い女の子にそう言われて気分が悪い男なんていない。ちょっと付き合ってやるか、と遊んでみたら本気にされて数ヶ月後、餓鬼ができた。
餓鬼ってこうやってできるのか。そんな程度にしか思わなかった。弟の耳にも入りキレられると思ったが何も言われなかった。
養護施設の園長にもバレたがなんだか喜んでいたので、オレはそんなに悪いことをしたわけじゃないんだな、と、その女と関係を持ったことに罪悪感はなかったし、餓鬼を堕すと言われた時も何とも思わなかった。
今朝死んだことに対しても、そうだった。これからたくさんの人間を殺すんだ、こんなことで精神が揺らいでしまうなんて弱すぎる。
なのに、涙が出たのはなんでだろう。
女の顔が頭から離れない、オレを好きだと言った声が聞こえる。生まれてきていたらどんな餓鬼だったのだろうと想像してしまう。
心が重い。暫くオレは任務に就けなくなった。
好きだった女の子が兄により殺された。でも不思議と心はすっとしていた。僕を選ばずに兄を選んだのは彼女の意思だ、僕が兄にした方がいいとか言っていないし。子供ができて困っていると言われても、自分が蒔いた種なのだから仕方がないとアドバイスまでした。なのになぜか感謝はされず、更に高い声で泣かれた。女の子って面倒くさいなぁ、何て言って欲しかったんだろう?言って欲しい言葉を事前に教えて欲しい。
明るかった彼女はめそめそして、兄ではなく僕のところにばかり来るようになった。子供ができたのなら父親の兄のところへ行くべきなのに。好きだったと思っていた感情はいつの間にかなくなって、彼女の姿を見ただけで嫌悪感が出るようになった。そのうち気持ち悪さも出てきた。
「僕に話しかけないで。」
そう言って接触を拒否した数日後、彼女は亡くなった。死にそうな顔をしていたのでいつかは死んだかもしれない。でも、最後くらい僕の言うことを聞いて欲しかった。
「死にたくなった時にだけ、会いに来てよ。」
せっかくスキルアップのチャンスだったのに。彼女が僕をちっとも好きではなかった事実も知れた。好きなのなら願いのひとつくらい叶えてくれてもいいはずなのに。
あれから時間がだいぶ経った。彼女の時のような、わくわくする女の子は数人いた。話しかけて、褒めて、好きと伝える。すると仲良くなってキスをせがまれる。それ以上の事もした。でも、僕は飽きてしまう。なんでこんな女に時間を割いているのだろう…そう思ってしまうと終わり時。
もうやめたいと伝えると、たいてい悪口を言って無視されて終わるか、何でもするからと言って関係を維持しようとしてくる。後者の場合は、最後一発やらせてもらって、それから僕が無視を決め込む。
すると、暫くするといなくなる。僕と接触しないように自分から遠くの任務を希望しているんじゃないかな?これでリセット、ね?楽チンでしょ?
女の子は可愛い、気持ちいい。けど継続するのは難しい…面倒になってきたらこうしてた。でも今回の女の子はそうはいかなさそう。
一週間後、景が担当するはずだったバディを僕がすることになった。期間は二週間ほど。僕以外のメンバーはいない、チャンスだ。
ここのところいろんなミッションを掛け持ちしていて、こんな気持ち久しぶり。考え出したら止まらない。
早く、発散したい。
(ベース)
「これから二週間、よろしくね。」
「はい、今日から地下室ですよね。よろしくね。」
可愛いな、顔がタイプだ。色も白いし柔らかそう。痩せていて腕も脚も細いけど、胸は割とあるし…。
「じゃあ、早速降りようか?早く終わらせてのんびりしよう。」
「はい。」
暖炉の隠し扉を開け、階段を降りる。暗くひんやりした空気が鳥肌を立てた。
絵菜にとっては見慣れた空間。僕にとってはもちろん初めてで、なにか興奮を覚えた。
無機質な壁と床、鉄パイプのベッド、響く音。
最高じゃないか。いや、だめだめ。まずはミッション、ミッション。
スタッフルームとメインルームのパソコンを起動させる。
ヴォーン
ピコン
スタッフルームのメールボックスに新着データが送信された。それをメインルームのパソコンに送る。
ピコン
パソコンからの音しか聞こえない。絵菜は黙ってモニターの前に座りデータを開く。集中するためにヘッドホンを装着して(絵菜の希望で自然音が流れているらしい。)、僕がデスクに水、糖分補給のための砂糖菓子を置く。準備が整った。
ピコン
モニターに数字がびっしりと並ぶ。
今回のヒントはなし。制限時間は十八時間。
ピッ
開始。
グラジオラス養護施設のフロントロビーに黒いスーツの男達が数人、細長い大きな箱をクルマに運んでいく。
「残念ね、これからだったのに。」
園長の女が残念そうな演技をしながら施設のスタッフと一緒に事務所に歩いていく。それを吹き抜けの二階から眺めるオレがいた。
「私、然のコトが好きなの。」
そう言われて弟のカノジョに手を出した。思春期真っ只中。見た目の良い女の子にそう言われて気分が悪い男なんていない。ちょっと付き合ってやるか、と遊んでみたら本気にされて数ヶ月後、餓鬼ができた。
餓鬼ってこうやってできるのか。そんな程度にしか思わなかった。弟の耳にも入りキレられると思ったが何も言われなかった。
養護施設の園長にもバレたがなんだか喜んでいたので、オレはそんなに悪いことをしたわけじゃないんだな、と、その女と関係を持ったことに罪悪感はなかったし、餓鬼を堕すと言われた時も何とも思わなかった。
今朝死んだことに対しても、そうだった。これからたくさんの人間を殺すんだ、こんなことで精神が揺らいでしまうなんて弱すぎる。
なのに、涙が出たのはなんでだろう。
女の顔が頭から離れない、オレを好きだと言った声が聞こえる。生まれてきていたらどんな餓鬼だったのだろうと想像してしまう。
心が重い。暫くオレは任務に就けなくなった。
好きだった女の子が兄により殺された。でも不思議と心はすっとしていた。僕を選ばずに兄を選んだのは彼女の意思だ、僕が兄にした方がいいとか言っていないし。子供ができて困っていると言われても、自分が蒔いた種なのだから仕方がないとアドバイスまでした。なのになぜか感謝はされず、更に高い声で泣かれた。女の子って面倒くさいなぁ、何て言って欲しかったんだろう?言って欲しい言葉を事前に教えて欲しい。
明るかった彼女はめそめそして、兄ではなく僕のところにばかり来るようになった。子供ができたのなら父親の兄のところへ行くべきなのに。好きだったと思っていた感情はいつの間にかなくなって、彼女の姿を見ただけで嫌悪感が出るようになった。そのうち気持ち悪さも出てきた。
「僕に話しかけないで。」
そう言って接触を拒否した数日後、彼女は亡くなった。死にそうな顔をしていたのでいつかは死んだかもしれない。でも、最後くらい僕の言うことを聞いて欲しかった。
「死にたくなった時にだけ、会いに来てよ。」
せっかくスキルアップのチャンスだったのに。彼女が僕をちっとも好きではなかった事実も知れた。好きなのなら願いのひとつくらい叶えてくれてもいいはずなのに。
あれから時間がだいぶ経った。彼女の時のような、わくわくする女の子は数人いた。話しかけて、褒めて、好きと伝える。すると仲良くなってキスをせがまれる。それ以上の事もした。でも、僕は飽きてしまう。なんでこんな女に時間を割いているのだろう…そう思ってしまうと終わり時。
もうやめたいと伝えると、たいてい悪口を言って無視されて終わるか、何でもするからと言って関係を維持しようとしてくる。後者の場合は、最後一発やらせてもらって、それから僕が無視を決め込む。
すると、暫くするといなくなる。僕と接触しないように自分から遠くの任務を希望しているんじゃないかな?これでリセット、ね?楽チンでしょ?
女の子は可愛い、気持ちいい。けど継続するのは難しい…面倒になってきたらこうしてた。でも今回の女の子はそうはいかなさそう。
一週間後、景が担当するはずだったバディを僕がすることになった。期間は二週間ほど。僕以外のメンバーはいない、チャンスだ。
ここのところいろんなミッションを掛け持ちしていて、こんな気持ち久しぶり。考え出したら止まらない。
早く、発散したい。
(ベース)
「これから二週間、よろしくね。」
「はい、今日から地下室ですよね。よろしくね。」
可愛いな、顔がタイプだ。色も白いし柔らかそう。痩せていて腕も脚も細いけど、胸は割とあるし…。
「じゃあ、早速降りようか?早く終わらせてのんびりしよう。」
「はい。」
暖炉の隠し扉を開け、階段を降りる。暗くひんやりした空気が鳥肌を立てた。
絵菜にとっては見慣れた空間。僕にとってはもちろん初めてで、なにか興奮を覚えた。
無機質な壁と床、鉄パイプのベッド、響く音。
最高じゃないか。いや、だめだめ。まずはミッション、ミッション。
スタッフルームとメインルームのパソコンを起動させる。
ヴォーン
ピコン
スタッフルームのメールボックスに新着データが送信された。それをメインルームのパソコンに送る。
ピコン
パソコンからの音しか聞こえない。絵菜は黙ってモニターの前に座りデータを開く。集中するためにヘッドホンを装着して(絵菜の希望で自然音が流れているらしい。)、僕がデスクに水、糖分補給のための砂糖菓子を置く。準備が整った。
ピコン
モニターに数字がびっしりと並ぶ。
今回のヒントはなし。制限時間は十八時間。
ピッ
開始。
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