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number.30 欲
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大きなミッションが終わって一息ついた頃あたりから、お腹に激痛が走るようになった。不正出血もみられる。処方された痛み止めに頼っていたがだんだんと効かなくなってきた。ふと、絵菜の能力を思い出す。
絵菜なら、治せるかもしれない。
回復してダンデライオン園で過ごしている絵菜に会いに行く。
グラジオラス養護施設で訓練を受けていた子達には、Brain numberを服用させ訓練していた時の記憶を書き換えている。そのためBrain numberは処分せず保管している。必要な服用だ、仕方がない。
Brain numberを服用した子は本当に良い子ばかりで手を煩わせないと聞いた。私から見ても下の子達の世話をよくして、勉強や運動、お手伝いもしっかりこなしている。今なら菊本や梅田の気持ちがよくわかる。非常に気分が良い。絵に描いたような平和が園にはある。これが世の中全体に広がったら……
「玲子さん!」
園舎から絵菜が出てくる。
「絵菜、元気そうね。」
「はい、今日はどうしたんですか?」
「絵菜に会いに来たんじゃない。」
「ありがとう。」
満面の笑みの絵菜がいる。
「お腹の赤ちゃんは元気そう?」
「はい、今十一週で。お医者さんが大丈夫、元気ですって。」
「そう、良かったわ…ちょっと、絵菜、お願いがあるんだけど、」
絵菜と一緒に園舎に入る。誰もいない教室で椅子を持ってきて向かい合って座った。園庭からは子供達の笑い声が聞こえる。
「最近ね、私お腹が痛くて。お医者さんには治せない病気なの。絵菜、あなたの力で痛みだけでいいから良くして欲しいの。できるかしら?」
「いいよ、大丈夫?」
そう言って両手を下腹の辺りにあてる。じんわりと温かい。さっきまでビリビリと電気の走るような鋭い痛みがあったが、スーッと消えていった。
「凄いわ、絵菜!ありがとう。」
「良くなった?よかった!」
それから毎日絵菜の元へ通い手を当ててもらった。半月後、婦人科で診察を受けた。
「蓮原さん、腫瘍…小さくなってますよ。」
やはり。
「そうですか。手術はまだ必要でしょうか?」
「そうですね、この大きさではまだ必要です。なにか抗がん剤か何かを服用されましたか?」
「…いえ。」
「不思議ですね…。あの、蓮原さんはリリーグループの社長さんになられたとか?なにか凄いお薬でも開発なさったんですか?今、被験者になられているとか…?」
「まさか。当社は治療薬といっても一般向けの物ですし。」
「そうですか…。腫瘍、小さくなっていると言ってもまだ油断できない状態に変わりはありません。手術のこと考えて下さいね。」
「はい。ありがとうございました。」
医者は不思議そうにエコー写真を凝視する。まさか女の子が手を当てて病気を治したなんて言える訳がない。
この力、もったいないわ。
きっかけがあると発動するといっていたけど、もしかしたらそんなものはないのかも。ブレインナンバーだって中途半端で終わりを迎えた。絵菜のことも最後までやらずにそのままの可能性がある。
…Brain numberは、ある。
今は妊娠中なので服薬できないが、出産後Brain numberの服薬を勧め、園の子達のようにできないだろうか。絵菜は戸籍がないし、私の子供。罪にはならない。
そうしよう。
(ダンデライオン園)
「絵菜ー。」
園の門で手を振る人がいる。然だ。
走って然の元へ行く。
「おいおいおいおいっ!駄目だろ走っちゃ。」
「大丈夫だよ、元気だよ?」
「そうじゃなくて。転んだら大変だろ。」
絵菜の子供は弟の子供だ。この子と絵菜を守るために奏は死んだ。つまらないことで死なせてはいけない。
「どうしたの?」
「今からリウのところに行くんだ。絵菜も行くか?」
「うん。」
「なら園長さんに言ってこい。」
「わかった!」
「おいおいおいおいっ!だから走るなって!」
然の雰囲気、言葉遣いがだいぶ変わった。Brain numberが完全に体内から消えて本来の然になったのだ。そのせいでミッションへの抵抗が出てきたため、今はリウと一緒にリリーグループの配送課に所属しトラックを乗り回している。リウと然が辞めたことにより、スパイを置いていた部署は消滅した。
「リウとどこに行くの?」
「どこって。リウの家だよ。家を借りて、ひとりで住んでるところに遊びに行くんだよ。」
「リウ、ひとりで住んでるの?…寂しくないの?」
「寂しいからオレ達を呼んでるんだろ。」
「そっか。」
然も寮から出てリウの借りているアパートの近くに住んでいる。みんなバラバラになったが、前より一緒にいる時間が長くなった。
笑顔が増えて幸せだ、絵菜の子供もあと半年もしたら生まれてくる。然は初めて感じる幸せに浮かれていた。
終わったと思っていた(Brain number)が、また始動しようとしているのに。
絵菜なら、治せるかもしれない。
回復してダンデライオン園で過ごしている絵菜に会いに行く。
グラジオラス養護施設で訓練を受けていた子達には、Brain numberを服用させ訓練していた時の記憶を書き換えている。そのためBrain numberは処分せず保管している。必要な服用だ、仕方がない。
Brain numberを服用した子は本当に良い子ばかりで手を煩わせないと聞いた。私から見ても下の子達の世話をよくして、勉強や運動、お手伝いもしっかりこなしている。今なら菊本や梅田の気持ちがよくわかる。非常に気分が良い。絵に描いたような平和が園にはある。これが世の中全体に広がったら……
「玲子さん!」
園舎から絵菜が出てくる。
「絵菜、元気そうね。」
「はい、今日はどうしたんですか?」
「絵菜に会いに来たんじゃない。」
「ありがとう。」
満面の笑みの絵菜がいる。
「お腹の赤ちゃんは元気そう?」
「はい、今十一週で。お医者さんが大丈夫、元気ですって。」
「そう、良かったわ…ちょっと、絵菜、お願いがあるんだけど、」
絵菜と一緒に園舎に入る。誰もいない教室で椅子を持ってきて向かい合って座った。園庭からは子供達の笑い声が聞こえる。
「最近ね、私お腹が痛くて。お医者さんには治せない病気なの。絵菜、あなたの力で痛みだけでいいから良くして欲しいの。できるかしら?」
「いいよ、大丈夫?」
そう言って両手を下腹の辺りにあてる。じんわりと温かい。さっきまでビリビリと電気の走るような鋭い痛みがあったが、スーッと消えていった。
「凄いわ、絵菜!ありがとう。」
「良くなった?よかった!」
それから毎日絵菜の元へ通い手を当ててもらった。半月後、婦人科で診察を受けた。
「蓮原さん、腫瘍…小さくなってますよ。」
やはり。
「そうですか。手術はまだ必要でしょうか?」
「そうですね、この大きさではまだ必要です。なにか抗がん剤か何かを服用されましたか?」
「…いえ。」
「不思議ですね…。あの、蓮原さんはリリーグループの社長さんになられたとか?なにか凄いお薬でも開発なさったんですか?今、被験者になられているとか…?」
「まさか。当社は治療薬といっても一般向けの物ですし。」
「そうですか…。腫瘍、小さくなっていると言ってもまだ油断できない状態に変わりはありません。手術のこと考えて下さいね。」
「はい。ありがとうございました。」
医者は不思議そうにエコー写真を凝視する。まさか女の子が手を当てて病気を治したなんて言える訳がない。
この力、もったいないわ。
きっかけがあると発動するといっていたけど、もしかしたらそんなものはないのかも。ブレインナンバーだって中途半端で終わりを迎えた。絵菜のことも最後までやらずにそのままの可能性がある。
…Brain numberは、ある。
今は妊娠中なので服薬できないが、出産後Brain numberの服薬を勧め、園の子達のようにできないだろうか。絵菜は戸籍がないし、私の子供。罪にはならない。
そうしよう。
(ダンデライオン園)
「絵菜ー。」
園の門で手を振る人がいる。然だ。
走って然の元へ行く。
「おいおいおいおいっ!駄目だろ走っちゃ。」
「大丈夫だよ、元気だよ?」
「そうじゃなくて。転んだら大変だろ。」
絵菜の子供は弟の子供だ。この子と絵菜を守るために奏は死んだ。つまらないことで死なせてはいけない。
「どうしたの?」
「今からリウのところに行くんだ。絵菜も行くか?」
「うん。」
「なら園長さんに言ってこい。」
「わかった!」
「おいおいおいおいっ!だから走るなって!」
然の雰囲気、言葉遣いがだいぶ変わった。Brain numberが完全に体内から消えて本来の然になったのだ。そのせいでミッションへの抵抗が出てきたため、今はリウと一緒にリリーグループの配送課に所属しトラックを乗り回している。リウと然が辞めたことにより、スパイを置いていた部署は消滅した。
「リウとどこに行くの?」
「どこって。リウの家だよ。家を借りて、ひとりで住んでるところに遊びに行くんだよ。」
「リウ、ひとりで住んでるの?…寂しくないの?」
「寂しいからオレ達を呼んでるんだろ。」
「そっか。」
然も寮から出てリウの借りているアパートの近くに住んでいる。みんなバラバラになったが、前より一緒にいる時間が長くなった。
笑顔が増えて幸せだ、絵菜の子供もあと半年もしたら生まれてくる。然は初めて感じる幸せに浮かれていた。
終わったと思っていた(Brain number)が、また始動しようとしているのに。
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