Brain Nunber

藤岡 志眞子

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「絵菜、わかる?」

ロサ製薬から引き上げて一週間、絵菜が目を覚ました。大量出血し命が危ぶまれたが奇跡的に絵菜も、お腹の子供も助かった。

「私が誰だかわかる?」

「れ、玲子さん?」

「ここに来る前のことは?」

「……奏(そう)は、大丈夫?」

記憶も戻っている。

「奏はね、残念だけど…。」

「………っ、」

絵菜は奏を愛していたのだろうか。それとも単に死んだことが悲しいのだろうか。

「ゆっくりしてちょうだい、また来るわ。」

別の病室に向かう。ドアを開ける前から怒鳴り声が聞こえた。

「…っ…痛ってぇよ!もっと丁寧にやれよ。」

「リウ、看護師さんにあたらないの。」

脇を撃たれたため腕を上げた状態で横になるリウは元気そうだ。然も怪我をしていたが入院するほどのことでもなかった。

「絵菜が回復したら治してくれるわ。」

「…は?」

絵菜がリリーに戻ってすぐ、ブレインナンバーのタイマーが停止した。そして、000008は急速に腐り始め溶けて消えた。もしかしたら、小皆教授に何かあったのかもしれない。
ブレインナンバーのチームが慎重にタンクを解体し、内容物を取り出し成分を分析した。タンクを満たしていたのはBrain numberの成分が凝縮された溶液であり、劇薬であった。もし外に出ていたら空気中に広がり、それを吸った者は即死していただろう。000008は(兵器)として造られていたようだが、劇薬に負け溶液の中に残った細胞は全て死んでいた。小皆教授がつきっきりで調整をしていたらこんなことにはならなかったのだろうが、逆にいなくなって良かったのだと思う。
Brain  numberの成分が混入されたと思われる当社のサプリメントには、やはり混入が確認された。しかし、菊本の飲んでいたサプリメントの比にならないほどの含有率で飲んでも問題はなかった。少しずつ増やしていこうとしていたのだろう。混入されたと思われるサプリメントは全回収した。





(ロサ製薬)

「何人死んだ?」

「は、八人です。」

「警察は?」

「えっ…言ってもいいんでしょうか?」

…よくない。

「…社員に見られたか?」

「いえ、休日だったので。ホテルも改装工事のためスタッフもお客様もいなかったので誰にも見られていないかと。」

「絵菜はリリーにいるんだよな?連れ戻せないのか。」

「それが…菊本社長が先日、当社との契約を全面的に打ち切りたいとおっしゃってきまして…。」

「は。」

「…はい。」

「菊本は私と契約を切ったら何もできないじゃないか!?自分の会社で開発もできないくせに…うちのコピーをしておいて何をバカなことを言ってるんだ!?」

「仰る通りでございます。しかし、その…000008とかいうことに関して、訴訟を起こすと言っておりまして。」

「は…、」

「穏便に済ませたいのであれば、こちらを、と。」

秘書が出してきた書類には莫大な示談金が記載されていた。

「ふ、ふざけるな!そもそもBrain  numberの計画は、菊本も関わっているじゃないか!?」

「えっ…は、はぁ。」

「訴訟を起こしたら菊本だってただでは済まされないんだぞ?何を考えているんだ!?」

ガチャ

「失礼します。お久しぶりです梅田社長。」

「蓮原…。」

ふたりの間に流れる空気を察知して秘書が部屋を後にする。

「どういうことだね?訴訟って…示談金って何なんだ?」

「Brain  numberの研究は確かに梅田社長と菊本、小皆教授のものです。しかし、実験台になった者達を思い出してみてください。思い出せますか?」

「え、BNCの子供達五人だろ?あと00001から000008…何があるんだ?」

「まず、000001から000005はBNCの子供達のことです。そして000006は後付けされたナンバーであり、BNCより先にBrain numberを服用した私になります。そして000007は初めてタンクに入ったグラジオラスの人間です。そして000008は赤居 美島。以上です。」

「……だから、何なんだ?」

「前々から思っていたのですが、梅田社長がなぜ社長をやられているのか不思議です。」

「どういう意味だ。」

「頭が悪いと言うことです。」

「おまえ…。」

「そんな梅田社長に説明いたします。BNCの子供達五人、もうひとりは戸籍がありません。この世に存在しない人間になっているのです。そして私、私はリリーグループの人間なので会社に不利になるようなことはいたしません。そして赤居 美島。唯一戸籍があって、捜索願が出されている人物です。おわかりになりましたか?」

「赤居 美島だけ、被害者になると…?」

「皆被害者に変わりはありませんが、そうですね。家族側からしたらあなたに殺された事になります。」

「な、ならば、私だけでなく菊本も小皆教授もそうではないかっ、」

「菊本はBrain numberの実験台になっていました、菊本も被害者になります。この事が原因で重度の鬱病になってしまったため全ての発言の有効力はありません。そして小皆教授は、先日遺体で見つかりました。ブレインナンバーの研究スタッフはBrain numberについては一切関与していないので、必然的に罪に問われるのは梅田社長、あなただけになります。どうしますか?不満があるのなら裁判を起こして全部話してしまわれますか?」

「え…え、え?」

「ついでに、上原…棗を殺したことも話してしまわれますか?(上原)は実在する人物の戸籍を買い取ったものです。棗は(上原)で死んでいます…話せば殺人になりますよ。」

「ふ、ふたつもあるのか…?」

本当にバカなのだろうか。

「大丈夫ですか?もう一回説明しますか?」

「い、いや…いい。」

「示談金、払って下さいますよね?」

「………わかった。」

震える手でペンを持ち、書類にミミズのようなサインをした。

「ありがとうございます。では、即日ご入金いただけるようお願いいたします。では。」

後日、リリーグループにロサ製薬の八十%の株が渡った。ロサ製薬は事実上倒産となった。

赤居 美島の家族についてだが、捜索願が出ていたことは事実である。しかし、息子である然が先日赤居家に行き、若干着色した事実を話した。祖母は既に亡くなっていて話を聞いたのは父親だけであったが、妻の失踪により精神が不安定になっていた。そのため後日兄三人、姉二人にコンタクトを取ろうと試みたが誰も会いたがらなかった。それどころか電話口で長男に二度と連絡してくるな、と言われ切られた。赤居 美島の稼ぎのお陰で五人とも大学を卒業し就職したというのに…。次男に関しては水商売をしていた母親の行方などどうでもいいと言っていた。三男は政治家になっており、長女と次女は三男の知人の元へ嫁にいっていた。五人とも双子の弟がいることさえ知らないようであったので、敢えて言わなかった。

花庭家は、小皆教授の両親は既に亡くなっていて、入信していた宗教施設の共同墓地で眠っている。入信した際に両家から縁を切られていたので、名前を変えた小皆教授の事は知らないのだろう。
家族がいてもこんなことでは、戸籍がなくても家族がいなくても変わらない。

今回の件をきっかけにグラジオラス養護施設の(訓練)はなくなった。
名前を(ダンデライオン園)に変え、健全な里子斡旋施設になった。訓練場も潤沢な総資金を使い製薬製造工場と化した。そこで働くのはロサ製薬の元社員。梅田社長が失脚し路頭に迷った社員達は、リリーグループに感謝して一生懸命働いてくれている。
そして、リリーグループの次期社長には私が就任した。菊本からの口止め料といったところだろうか。それともBrain number.08の能力が認められてのことなのだろうか?(もちろん冗談である。)

全て万事終わった、と思いたいがまだ大きな案件が残っている。
ブレインナンバー.01の絵菜である。何かをきっかけに能力を発揮する、と小皆教授の遺言にあったがわからない。
回復したらまたブレインナンバーについて調べをつけなくてはいけない。

私は、面倒になってきていた。












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