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number.32 Dejavu
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「はい、いいですよ。今ジェル拭き取りますからね。」
産婦人科で定期検診を受ける。妊娠七ヶ月。お腹もだいぶ大きくなった。
「絵菜ちゃん、赤ちゃんの性別知りたい?」
「え?わかるんですか?」
「ずっと背中を向けてたり、お股を隠していたからわからなかったけど、さっきわかったよ。」
「え、えぇ…。知りたいけど、知りたくないような。」
「生まれてからにする?」
「…はい。そうします。」
待合室で待っていたリウが立ち上がる。
「どうだった?」
「問題なしだったよ。性別がわかったって言われたんだけど、」
「どっち?男?…女?」
「聞かなかったの。生まれてからのお楽しみ。」
「なんだよ。」
リウのトラックに乗り込む。高さがあるのでお腹が大きくなってきて乗り込むのがしんどくなってきた。
「大丈夫か?クルマ、買うか?」
「いいよ、送り迎えのために買うなんてもったいない。」
「生まれてからも乗るだろ?チャイルドシート、これじゃ付けられないしな。」
「然が買うんだって。」
「そうなのか?何も言ってなかったぞ?」
「そういう人なのよ。」
「…どういう人だよ。」
絵菜の言葉遣いが大人びてきた。一時期子供っぽくなったことがあったが母親の自覚か、仕草も女っぽくなってきた。
「子供が生まれたら園で育てるのか?」
「うーん…私もアパートを借りて、赤ちゃんと暮らそうかなって。」
お金はリリーグループが世話をしている。しかし、ひとりで育てられるだろうか。
「誰かと住もうとは思わないのか?」
「誰かって?…お母さん?」
玲子のことか。
「一緒に暮らさないのか?親子なのに。」
「一緒に暮らしたらお母さんに迷惑かかるでしょ?お仕事忙しいのに孫の世話までさせたら可哀想よ。」
「喜ぶんじゃないのか?」
「一緒には暮らさない。」
「…俺と暮らすか?」
「え…?」
「俺は、構わないよ。」
「…部屋が狭くなるよ?」
「広いところに引っ越すよ。」
「……うん。」
「?」
「え?」
「一緒に住む、か?」
「うん。」
絵菜とリウの同棲が始まった。
妊娠八ヶ月になった週に引っ越しをした。2LDKのマンション。絵菜の身体を考えて一階にした。駐車場も近い、ばっちりだ。
ベビーベッド、ベビーバス、オムツ、おもちゃを買い込んで帰宅したら、気が早いよ、と笑われた。
食事を一緒に食べておしゃべりをする。たまに然もやってきて三人で食べる時もある。今晩は三人で食べている。薬入れを手に取った絵菜に然が言った。
「絵菜、その薬、なに?」
「これ?お母さんが妊婦さんに良いよってくれたの。」
「ラベルがないな。大丈夫か?」
「やめてよ。葉酸って言ってたよ。」
「葉酸なら大丈夫だろ。まさか、Brain numberなんてことは、」
リウの一言で空気が凍った。
「そんなことはないだろ、って話だよ…。」
「……それ、いつから飲んでるんだ?」
「え?妊娠五ヶ月くらいからかな。」
「二ヶ月か。体調に変化はあったか?」
「それが…定期検診の血液検査で葉酸が少ないって言われてね。飲んでるのになぁ、って。」
「…リウ、一緒に暮らしていて二ヶ月前と変わったところとか、ないか?」
「なんだよ、Brain numberだって言いたいのか?」
「お母さんは反対してたんでしょ?なんで私に、」
「…処分はしていない。ダンデライオン園の上級生、訓練を受けてた子達は今も飲んでる。」
「それは訓練の記憶を消すためだろ?洗脳のためじゃない。」
「だけど、成分は変わらない。」
「Brain numberがまた始まるってこと?」
「錠数は残っていない。新しく作ることも無理だろう。」
「…何が言いたいんだ?」
リウがキレる。
「残りのBrain numberを使って、絵菜を利用しようとしてる、ということは考えられないか?」
「何を利用するんだ…。修復力、か?」
「蓮原は今はリリーグループの社長だ。新薬の開発に興味がないとは思えない。」
「だけど、私の能力をBrain numberを使ってどうにかできるものなの?」
「薬にはできないだろうな。だから、洗脳して…手当て治療するってか?」
「違う。絵菜が生まれた状況と同じにするんじゃないか?」
その後、蓮原の計画を三人は筋建てた。まさしくその通りである。薬はすぐに処分したが、体内には残っている。しかも効果は服用して数ヶ月後に出てくるのだ。
「…どうしよう。」
「蓮原に言うか?」
「言ったら余計まずい。強制的に飲まされるかも。絵菜、飲み続けているフリをするんだ。」
「…わかった。」
「影響はどれくらいから出るんだろう。」
「俺の個人データには半年効果が現れなかった、って書いてあったが。」
「………。」
「なんでお母さんが…。」
出産まで一ヶ月と少し。無事、乗り切れるだろうか。
産婦人科で定期検診を受ける。妊娠七ヶ月。お腹もだいぶ大きくなった。
「絵菜ちゃん、赤ちゃんの性別知りたい?」
「え?わかるんですか?」
「ずっと背中を向けてたり、お股を隠していたからわからなかったけど、さっきわかったよ。」
「え、えぇ…。知りたいけど、知りたくないような。」
「生まれてからにする?」
「…はい。そうします。」
待合室で待っていたリウが立ち上がる。
「どうだった?」
「問題なしだったよ。性別がわかったって言われたんだけど、」
「どっち?男?…女?」
「聞かなかったの。生まれてからのお楽しみ。」
「なんだよ。」
リウのトラックに乗り込む。高さがあるのでお腹が大きくなってきて乗り込むのがしんどくなってきた。
「大丈夫か?クルマ、買うか?」
「いいよ、送り迎えのために買うなんてもったいない。」
「生まれてからも乗るだろ?チャイルドシート、これじゃ付けられないしな。」
「然が買うんだって。」
「そうなのか?何も言ってなかったぞ?」
「そういう人なのよ。」
「…どういう人だよ。」
絵菜の言葉遣いが大人びてきた。一時期子供っぽくなったことがあったが母親の自覚か、仕草も女っぽくなってきた。
「子供が生まれたら園で育てるのか?」
「うーん…私もアパートを借りて、赤ちゃんと暮らそうかなって。」
お金はリリーグループが世話をしている。しかし、ひとりで育てられるだろうか。
「誰かと住もうとは思わないのか?」
「誰かって?…お母さん?」
玲子のことか。
「一緒に暮らさないのか?親子なのに。」
「一緒に暮らしたらお母さんに迷惑かかるでしょ?お仕事忙しいのに孫の世話までさせたら可哀想よ。」
「喜ぶんじゃないのか?」
「一緒には暮らさない。」
「…俺と暮らすか?」
「え…?」
「俺は、構わないよ。」
「…部屋が狭くなるよ?」
「広いところに引っ越すよ。」
「……うん。」
「?」
「え?」
「一緒に住む、か?」
「うん。」
絵菜とリウの同棲が始まった。
妊娠八ヶ月になった週に引っ越しをした。2LDKのマンション。絵菜の身体を考えて一階にした。駐車場も近い、ばっちりだ。
ベビーベッド、ベビーバス、オムツ、おもちゃを買い込んで帰宅したら、気が早いよ、と笑われた。
食事を一緒に食べておしゃべりをする。たまに然もやってきて三人で食べる時もある。今晩は三人で食べている。薬入れを手に取った絵菜に然が言った。
「絵菜、その薬、なに?」
「これ?お母さんが妊婦さんに良いよってくれたの。」
「ラベルがないな。大丈夫か?」
「やめてよ。葉酸って言ってたよ。」
「葉酸なら大丈夫だろ。まさか、Brain numberなんてことは、」
リウの一言で空気が凍った。
「そんなことはないだろ、って話だよ…。」
「……それ、いつから飲んでるんだ?」
「え?妊娠五ヶ月くらいからかな。」
「二ヶ月か。体調に変化はあったか?」
「それが…定期検診の血液検査で葉酸が少ないって言われてね。飲んでるのになぁ、って。」
「…リウ、一緒に暮らしていて二ヶ月前と変わったところとか、ないか?」
「なんだよ、Brain numberだって言いたいのか?」
「お母さんは反対してたんでしょ?なんで私に、」
「…処分はしていない。ダンデライオン園の上級生、訓練を受けてた子達は今も飲んでる。」
「それは訓練の記憶を消すためだろ?洗脳のためじゃない。」
「だけど、成分は変わらない。」
「Brain numberがまた始まるってこと?」
「錠数は残っていない。新しく作ることも無理だろう。」
「…何が言いたいんだ?」
リウがキレる。
「残りのBrain numberを使って、絵菜を利用しようとしてる、ということは考えられないか?」
「何を利用するんだ…。修復力、か?」
「蓮原は今はリリーグループの社長だ。新薬の開発に興味がないとは思えない。」
「だけど、私の能力をBrain numberを使ってどうにかできるものなの?」
「薬にはできないだろうな。だから、洗脳して…手当て治療するってか?」
「違う。絵菜が生まれた状況と同じにするんじゃないか?」
その後、蓮原の計画を三人は筋建てた。まさしくその通りである。薬はすぐに処分したが、体内には残っている。しかも効果は服用して数ヶ月後に出てくるのだ。
「…どうしよう。」
「蓮原に言うか?」
「言ったら余計まずい。強制的に飲まされるかも。絵菜、飲み続けているフリをするんだ。」
「…わかった。」
「影響はどれくらいから出るんだろう。」
「俺の個人データには半年効果が現れなかった、って書いてあったが。」
「………。」
「なんでお母さんが…。」
出産まで一ヶ月と少し。無事、乗り切れるだろうか。
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