田舎貴族の魔道具開発

宮古 そら

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第7話

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「新しく参りました。メイドのベルタ・ブランクと申します。今年学園を卒業したばかりの若輩者ではございますが皆様よろしくお願いいたします。」

新しいメイド、ベルタがネルフューア邸にやってきた。

「ベルタは学園の政経科を卒業しているから、今年からクラウスとマティアスの家庭教師も兼任してもらうことになっている。」

政経科とは、学園の中等部にある科の一つで、政治や経済について学ぶ学科だ。他には騎士科、魔法科がある。ちなみに、現在カルラが通っているのは学園の初等部で、学科は分かれておらず、教養科目や剣術、魔法の基礎を3年かけて学ぶ。その後、中等部に進学するか就職することになる。


4月になり、ベルタが来た以外に変わったことがある。僕も剣の稽古が始まった。ラインハルトに剣より魔法がいいといったところ

「魔法を使うのにも体力が必要です。」

と一蹴されてしまった。
最近はカミルも領の兵士に剣を教えてもらっているみたいだ。リネット村に遊びに行った時も最近は一緒に素振りをしたり、カミルのトレーニングに付き合ったりしている。


8月になると、カルラ姉さんが王都から帰ってきた。学園が夏休みに入ったらしい。学園では何人か友達ができたらしい。学園に入ってからも試験があるらしく、苦戦したけど今のところ何とかなっているみたい。今でもニーナに厳しく勉強を見てもらっているんだとか。
そして、姉さんが帰ってきた日の夕食後に父さんから衝撃の事実が告げられた。

「みんな気づいてはいたと思うけれど、もうそろそろ新しい家族が増える。」

そう言って、母さんと顔を見合わせた。何か月か前から母さんのおなかが大きくなっているとは思っていたが、どうやらおなかの中に赤ちゃんがいるらしい。つまり、僕に弟か妹ができるというわけだ。

「お医者様さんによるとあと1か月くらいらしいの。」

家全体がお祝いムードに包まれていた。自分にも年下の兄弟ができると思うと楽しみで仕方ない。


姉さんが帰って来てから1か月経ち、9月になっていた。まだ、赤ちゃんは産まれてなかったが、姉さんが王都に戻る日がやってきた。夏休みは8月と9月に2か月間で、来月には学園の授業が始まってしまうため、そろそろ戻らないといけない。姉さんは悔しそうな顔をしてネルフューア領を発った。
姉さんが出発して数日後、母さんの体調に異変があった。ノーラによると、もうじき産まれてくるかららしいが、心配でならない。
そして、ネルフューア家に女の子が生まれた。女の子は「エマ」と名付けられた。
初めての妹がかわいくて仕方なかった。僕はエマの様子をできるだけ毎日見に行った。


「つまりエマは天使だと思うんだ。」

「わかったから。早く行くぞ。」

カミルは半分呆れたように返事をした。マティアスは遊びに来るたびにエマの自慢をしてくるので聞き飽きていた。
今日行くのはフーゴという男のもとだ。フーゴはカミルに剣や体術を教えている、ネルフューア領の若い兵士のことだ。
僕もリネット村に遊びに来た時に時々カミルについて行ってそこで素振りや組手をしている。

「今日も来たんですね。」

フーゴが気まずそうな顔をしながら僕たちを迎えた。

「なんだか嫌そうだね。」

「カミルだけならいいんですけど…。」

僕がいるとなにか問題があるみたいだ。
やはり気まずそうな顔でフーゴが続けた。

「兵団で教えられるものとマティアス様達にラインハルト様が教えているものとは全くの別物なんですよ。あまり色々な指導を受けると変な癖がつくかもしれなくて。」

なるほど、どうやら僕のことを嫌がっているのではなく、心配してくれているようだ。

「嫌われていないみたいで少し安心したよ。そういうことなら大丈夫、ラインハルトからも許可はもらっているから。」

村での出来事を話したときに当然兵士のところに行っていることも伝わっている。ラインハルトが教えてくれるのは応用の効く一番オーソドックスな型で、一番の基礎らしく、いい機会だからいろいろな型があることを学ぶように言われている。

「それならいいんですが。」

しぶしぶといった感じではあったが、これからもフーゴは僕にも教えてくれるみたいだ。

「兵士は基本的に4~5人の隊で動きます。とはいえ、一対一の戦闘ができなければ話になりません。賊を相手にするときは多対一の時もあります。この辺りは騎士とあまり変わりないですね。」

フーゴが騎士との共通点を話し始めた。騎士と兵士戦闘シチュエーションの違いや戦闘の目的、を教えてくれた。

「それで結局今日は何をするの。」

あまりにもフーゴの話が長いのでカミルがしびれを切らした。

「マティアス様とカミルはまだ子供なので、大人と戦っても勝てません。特にマティアス様は貴族なので狙われることもあるかと思います。なにかあった時は全力で逃げてください。なので今日は走り込みをします。」

カミルと僕はあまりにも意外な内容に驚いた。そしてカミルはがっかりしている。

「少しでも早く逃げ始めて、速く走って遠くに逃げれるようになってください。」

こうして僕たちは夕方まで走り込みをさせられた。
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