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青天の霹靂
俺は木野渉。
26歳。昨日まで普通の会社員だった。
少しだけ俺の話を聞いて欲しい。
俺は昔から運がない。
というか不幸だらけだった。
幼稚園の頃から、遠足の前日に熱を出すのは当たり前。
道を歩けば犬に追いかけられ、焦って逃げて電柱に頭をぶつけることもあった。
雨上がりの後は水たまりにはまる。
中学の時の初恋の女の子は、告白しようとした前日に、俺の友達を呼び出し告白成功。
想いを告げぬまま失恋。
推しのアイドルの歌番組を録画予約したのにも関わらず、その直前にレコーダーが壊れる。
楽しみにしていたデパ地下グルメが直前で売り切れることもしばしば。
鍵をかけていても自転車がパクられたり、子供の蹴ったサッカーボールが頭に当たったり、注文した荷物が家に届かなかったり、さっきまで晴れていて予報でも晴れなのに、俺が家を出ると突然雨が降ったり…
まあとにかく運が悪い。
そして昨日、少し残業をして会社を出た。
雨は降っていない。でも雷の音が近づいてくる。
バリバリー!と雷が落ちた。俺に。
死んだと思った。たった26年の人生だった。
2年前に別れた彼女の顔が浮かんだ。
ちょうど仕事が忙しい時で、すれ違いが増えて別れてしまった。
こんなことなら結婚しちゃえば良かったか。
そしたら今頃、仕事ばかりじゃない幸せな家庭が…
あ、違った。1ヶ月後、あの子新しい男連れてたっけな…
このまま死ぬのかなぁ、俺…
ふと目を開けると、見たことない家の天井が見えた。
ん?ここはどこだ?
ゆっくりと身体を起こす。
見渡すと木造建築の古い家だった。
古いというか時代劇のセットのような…
「起きたのか?」
ふと、隣の部屋から声がした。
出てきたその人は本当に時代劇に出てくる格好をしている。
あーこれは夢か。そうだ夢だ!
雷に打たれたけど、俺は死んでなくて、寝ているだけなんだ。
「え?あ、はい」
「腹は減ってるか?」
「少し…」
「これでも食べて、疲れているならそれからまた休めばいい」
「ありがとうございます」
………ってか夢じゃないのか?
とすると、ここどこよ?この人誰?
それを聞かなきゃ。
「あの…」
「なんだ?」
「ここどこですか?」
「なんだ。記憶がないのか?ここは江戸だ。そして私の家だ」
「江戸って東京?」
「とうきょう?なんだそれは?」
「今って何年ですか?」
「質問ばっかするんだな…私の質問には答えないくせに…」
「いいから!いまは何年ですか?」
「…元禄10年だ」
「はー!?」
「大きい声を出すんじゃない!」
「元禄10年ってことは、1700年くらいってことか」
「さっきから何をぶつぶつ言っている?」
「お兄さん、何者?」
「だから、私の質問に答えろ。お前こそ何者だ?」
「俺は木野渉。多分これが夢じゃないなら、俺は300年以上先の時代から来たってことになる」
「なにを言ってる?」
「雷に打たれて気付いたらここにいた。俺は300年以上先の令和って言う時代からきたんだ」
「……」
「んで、あなたのお名前は?」
「私は坂田新右衛門だ」
「じゃあ新さんでいい?」
「…あぁ。みんなもそう呼ぶ。渉と言ったか?」
「うん。何?」
「髪はいいとして、その格好では目立つ。この着物に着替えたほうがいい」
「着物、借りてもいいの?」
「ああ。自分ので申し訳ないが…渉のいた世界に帰るまではここにいればいい」
「ありがとう!でも俺が言ったこと信じてくれるの?」
「まぁ疑ってもしょうがないし、その格好を見れば、この時代やこの国ではないとこから来た、と言うのもわかるからな」
「ありがとう!ところで新さんはいくつなの?」
「歳か?25になる」
「え。年下じゃん」
「そうなのか?」
「うん。ひとつだけだけど…新さんは仕事は何してる人?」
「仕事か…なんと言えばいいのだろうか…」
「芸術家?」
「どうして?」
「なんか少し見た目が派手な服だから…」
「これはまあ仕事着だ」
「へー。じゃあ役者?歌手とか!」
「どちらでもない」
「もったいぶらずに教えてよー!」
「花魁はわかるか?」
「うん。なんとなく…」
「簡単に言えばそういう仕事だ」
「遊郭で女の人をまとめてるってこと?」
「ではなくて、女性と食事したり、話したり、酒を呑んだり、金額によっては体の相手をしたり…」
「マジ?そういうこと?まあ男前だし優しいから、需要はあるだろうけど、なんでそんな仕事してんの?他にも色々あるだろうに…」
「他にもか…そうだな」
そう言って新さんは黙ってしまった。
26歳。昨日まで普通の会社員だった。
少しだけ俺の話を聞いて欲しい。
俺は昔から運がない。
というか不幸だらけだった。
幼稚園の頃から、遠足の前日に熱を出すのは当たり前。
道を歩けば犬に追いかけられ、焦って逃げて電柱に頭をぶつけることもあった。
雨上がりの後は水たまりにはまる。
中学の時の初恋の女の子は、告白しようとした前日に、俺の友達を呼び出し告白成功。
想いを告げぬまま失恋。
推しのアイドルの歌番組を録画予約したのにも関わらず、その直前にレコーダーが壊れる。
楽しみにしていたデパ地下グルメが直前で売り切れることもしばしば。
鍵をかけていても自転車がパクられたり、子供の蹴ったサッカーボールが頭に当たったり、注文した荷物が家に届かなかったり、さっきまで晴れていて予報でも晴れなのに、俺が家を出ると突然雨が降ったり…
まあとにかく運が悪い。
そして昨日、少し残業をして会社を出た。
雨は降っていない。でも雷の音が近づいてくる。
バリバリー!と雷が落ちた。俺に。
死んだと思った。たった26年の人生だった。
2年前に別れた彼女の顔が浮かんだ。
ちょうど仕事が忙しい時で、すれ違いが増えて別れてしまった。
こんなことなら結婚しちゃえば良かったか。
そしたら今頃、仕事ばかりじゃない幸せな家庭が…
あ、違った。1ヶ月後、あの子新しい男連れてたっけな…
このまま死ぬのかなぁ、俺…
ふと目を開けると、見たことない家の天井が見えた。
ん?ここはどこだ?
ゆっくりと身体を起こす。
見渡すと木造建築の古い家だった。
古いというか時代劇のセットのような…
「起きたのか?」
ふと、隣の部屋から声がした。
出てきたその人は本当に時代劇に出てくる格好をしている。
あーこれは夢か。そうだ夢だ!
雷に打たれたけど、俺は死んでなくて、寝ているだけなんだ。
「え?あ、はい」
「腹は減ってるか?」
「少し…」
「これでも食べて、疲れているならそれからまた休めばいい」
「ありがとうございます」
………ってか夢じゃないのか?
とすると、ここどこよ?この人誰?
それを聞かなきゃ。
「あの…」
「なんだ?」
「ここどこですか?」
「なんだ。記憶がないのか?ここは江戸だ。そして私の家だ」
「江戸って東京?」
「とうきょう?なんだそれは?」
「今って何年ですか?」
「質問ばっかするんだな…私の質問には答えないくせに…」
「いいから!いまは何年ですか?」
「…元禄10年だ」
「はー!?」
「大きい声を出すんじゃない!」
「元禄10年ってことは、1700年くらいってことか」
「さっきから何をぶつぶつ言っている?」
「お兄さん、何者?」
「だから、私の質問に答えろ。お前こそ何者だ?」
「俺は木野渉。多分これが夢じゃないなら、俺は300年以上先の時代から来たってことになる」
「なにを言ってる?」
「雷に打たれて気付いたらここにいた。俺は300年以上先の令和って言う時代からきたんだ」
「……」
「んで、あなたのお名前は?」
「私は坂田新右衛門だ」
「じゃあ新さんでいい?」
「…あぁ。みんなもそう呼ぶ。渉と言ったか?」
「うん。何?」
「髪はいいとして、その格好では目立つ。この着物に着替えたほうがいい」
「着物、借りてもいいの?」
「ああ。自分ので申し訳ないが…渉のいた世界に帰るまではここにいればいい」
「ありがとう!でも俺が言ったこと信じてくれるの?」
「まぁ疑ってもしょうがないし、その格好を見れば、この時代やこの国ではないとこから来た、と言うのもわかるからな」
「ありがとう!ところで新さんはいくつなの?」
「歳か?25になる」
「え。年下じゃん」
「そうなのか?」
「うん。ひとつだけだけど…新さんは仕事は何してる人?」
「仕事か…なんと言えばいいのだろうか…」
「芸術家?」
「どうして?」
「なんか少し見た目が派手な服だから…」
「これはまあ仕事着だ」
「へー。じゃあ役者?歌手とか!」
「どちらでもない」
「もったいぶらずに教えてよー!」
「花魁はわかるか?」
「うん。なんとなく…」
「簡単に言えばそういう仕事だ」
「遊郭で女の人をまとめてるってこと?」
「ではなくて、女性と食事したり、話したり、酒を呑んだり、金額によっては体の相手をしたり…」
「マジ?そういうこと?まあ男前だし優しいから、需要はあるだろうけど、なんでそんな仕事してんの?他にも色々あるだろうに…」
「他にもか…そうだな」
そう言って新さんは黙ってしまった。
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