4 / 12
太客
「まったく…」
「何がまったくなんだ?」
あれ?聞こえてきたのは男の人の声?
「竜さん。なんでもない。庭の野菜の発育が悪くて…」
「そうか…新。会いたかった」
「私もですよ…ん、あ。そんないきなり…」
「会いたかったんだ。ずっと…我慢してたんだから楽しませてくれよ?」
「うん。ずっとって言っても、2日前に会ったじゃないですか…あっ…」
俺は呆然と屏風の裏からそれを見ていた。
なんだ!?さっきまでとは全然違うじゃないか!
女子ときゃっきゃ話していたあの感じはどこ行った?
客だって、なぜだか男だし!
でも、なんで俺ちょっと興奮してんだ!?
やっぱそっち(覗き)の趣味とかあんのか!?
どうしよう。どうしよう。このままじゃどんどん…
だって新さんが…新さんがあまりにも…
ちょっと虚な瞳。エロさが増して…
それに声だって甘さが強くなっててさ…
本当に感じてるのか演技なのかはわからないけど。
でも一つわかるのは、この人は…この竜さんて人は新さんの特別だってこと…
事が済んで、布団に横たわる2人を見て、俺は動けなかった。
「竜さん。今日はどうして?」
「どうしてってのは酷いな。愛しい人に会うのに理由がいるのか?」
「そうじゃないけど…いつもと様子が変だから」
「なぁ、新。うちで剣道場を開いて、子供達に教えてやってくれないか?近所の子供も誘って…ちゃんと月謝も払うし、どうだ?」
「ありがたい話だけど、私にはまだ…」
「それはわかってる。でもこのままじゃ、お前の人生悲しいものになってしまう。もう昔のことは忘れて、俺と仲良く暮らさないか?」
「仲良くって…奥さんはどうするの?」
「もちろん別れることは出来ないけど、一緒にいればいつでもこうやって…」
浴衣を軽く羽織った新さんの胸元に、竜さんが後ろから手を入れる。
「酷いなぁ。それじゃ今とそんなに変わらないじゃないですか?」
そう新さんが言った直後、俺の体が屏風に当たってしまった。
ガサッ。
しまった!
「なんだ?今のは?」
竜さんが起き上がってこっちに近寄って来る。
やばい…!
「竜さん。たぶんネズミですよ。それよりも…竜さんがもっと欲しい」
「新。珍しいな。お前からなんて…」
そう言うと、竜さんはまた…
俺のせいで2回戦突入させてしまったじゃねーか!
早く終われー!
竜さんが帰ったあと、屏風の裏でうずくまっていた俺に、新さんは声をかけた。
「びっくりしただろ?だから言ったのに。出て行ってって」
「…竜さんとはもう長いの?」
「私が店に来てからだから、お客さんとしては10年くらいだな」
「へー。毎回、あんな感じ?」
「気になるのか?……今日はもう上がりだ。家に帰って話そう」
お店でお風呂に入らせてもらい、家に帰ると、新さんが酒を注いでくれた。
「何が知りたい?」
「何聞いても答えてくれるの?」
「いいよ」
「お客さんとしてはってことは、竜さんとは元々知り合い?」
「そうだ」
「いつ知り合ったの?」
「生まれた時から」
そんな古いんだ。そりゃあ特別だよな。
「幼馴染ってこと?」
「そうだな。元々、父親同士、仲が良かった。2人は私の祖父から剣術を習っていたんだ。息子の竜さんは私の3つ上で、江戸ではそこそこ大きな呉服屋だ。親父さんが病気で亡くなってからは、竜さんが跡を継いでいる」
「新さんのご両親は?」
「私の父は学習塾をしていた。それと祖父と共に剣術も教えていたんだ。私も竜さんも幼いときはそこに通っていてね」
「へー。凄いお父さんだね」
「あぁ、自慢の父だった…」
「今は?元気にしてるの?一緒には住んでないんでしょ?」
「父は…家族は…私以外、全員死んだよ」
「え?」
「10年前、当時住んでいた家に、物盗りが入った。私は父に遣いを頼まれて、お杏さんの家に居た…帰ると父も母も5つ離れた弟までも、血を流して倒れていた…」
「そんな…」
「父は剣術に長けていた。そんな父に反撃すらさせず、一撃で倒したんだ。相当相手も強かったのだろう」
「お杏さんも昔からの知り合いなんだね?」
「お杏さんは父の妹だ。家族を亡くし途方に暮れた私を支えてくれた。犯人を探して仇討ちしたいと願った私に、手を貸してくれている」
「どういう事?」
「私がこの仕事をしているのは、情報が欲しいからだ。人が多く集まる場所なら、当時のことを知っている人がいるかもしれない。そう思った。ちょうど新しい商売をしたいと話していたお京さんに話すと、私がお店を開いてあげるといってくれたのだ」
「なるほど。竜さんとは…2日前も会ってたの?」
「え?…あぁ…」
新さんは最後の質問にだけ、言葉を濁した。
「何がまったくなんだ?」
あれ?聞こえてきたのは男の人の声?
「竜さん。なんでもない。庭の野菜の発育が悪くて…」
「そうか…新。会いたかった」
「私もですよ…ん、あ。そんないきなり…」
「会いたかったんだ。ずっと…我慢してたんだから楽しませてくれよ?」
「うん。ずっとって言っても、2日前に会ったじゃないですか…あっ…」
俺は呆然と屏風の裏からそれを見ていた。
なんだ!?さっきまでとは全然違うじゃないか!
女子ときゃっきゃ話していたあの感じはどこ行った?
客だって、なぜだか男だし!
でも、なんで俺ちょっと興奮してんだ!?
やっぱそっち(覗き)の趣味とかあんのか!?
どうしよう。どうしよう。このままじゃどんどん…
だって新さんが…新さんがあまりにも…
ちょっと虚な瞳。エロさが増して…
それに声だって甘さが強くなっててさ…
本当に感じてるのか演技なのかはわからないけど。
でも一つわかるのは、この人は…この竜さんて人は新さんの特別だってこと…
事が済んで、布団に横たわる2人を見て、俺は動けなかった。
「竜さん。今日はどうして?」
「どうしてってのは酷いな。愛しい人に会うのに理由がいるのか?」
「そうじゃないけど…いつもと様子が変だから」
「なぁ、新。うちで剣道場を開いて、子供達に教えてやってくれないか?近所の子供も誘って…ちゃんと月謝も払うし、どうだ?」
「ありがたい話だけど、私にはまだ…」
「それはわかってる。でもこのままじゃ、お前の人生悲しいものになってしまう。もう昔のことは忘れて、俺と仲良く暮らさないか?」
「仲良くって…奥さんはどうするの?」
「もちろん別れることは出来ないけど、一緒にいればいつでもこうやって…」
浴衣を軽く羽織った新さんの胸元に、竜さんが後ろから手を入れる。
「酷いなぁ。それじゃ今とそんなに変わらないじゃないですか?」
そう新さんが言った直後、俺の体が屏風に当たってしまった。
ガサッ。
しまった!
「なんだ?今のは?」
竜さんが起き上がってこっちに近寄って来る。
やばい…!
「竜さん。たぶんネズミですよ。それよりも…竜さんがもっと欲しい」
「新。珍しいな。お前からなんて…」
そう言うと、竜さんはまた…
俺のせいで2回戦突入させてしまったじゃねーか!
早く終われー!
竜さんが帰ったあと、屏風の裏でうずくまっていた俺に、新さんは声をかけた。
「びっくりしただろ?だから言ったのに。出て行ってって」
「…竜さんとはもう長いの?」
「私が店に来てからだから、お客さんとしては10年くらいだな」
「へー。毎回、あんな感じ?」
「気になるのか?……今日はもう上がりだ。家に帰って話そう」
お店でお風呂に入らせてもらい、家に帰ると、新さんが酒を注いでくれた。
「何が知りたい?」
「何聞いても答えてくれるの?」
「いいよ」
「お客さんとしてはってことは、竜さんとは元々知り合い?」
「そうだ」
「いつ知り合ったの?」
「生まれた時から」
そんな古いんだ。そりゃあ特別だよな。
「幼馴染ってこと?」
「そうだな。元々、父親同士、仲が良かった。2人は私の祖父から剣術を習っていたんだ。息子の竜さんは私の3つ上で、江戸ではそこそこ大きな呉服屋だ。親父さんが病気で亡くなってからは、竜さんが跡を継いでいる」
「新さんのご両親は?」
「私の父は学習塾をしていた。それと祖父と共に剣術も教えていたんだ。私も竜さんも幼いときはそこに通っていてね」
「へー。凄いお父さんだね」
「あぁ、自慢の父だった…」
「今は?元気にしてるの?一緒には住んでないんでしょ?」
「父は…家族は…私以外、全員死んだよ」
「え?」
「10年前、当時住んでいた家に、物盗りが入った。私は父に遣いを頼まれて、お杏さんの家に居た…帰ると父も母も5つ離れた弟までも、血を流して倒れていた…」
「そんな…」
「父は剣術に長けていた。そんな父に反撃すらさせず、一撃で倒したんだ。相当相手も強かったのだろう」
「お杏さんも昔からの知り合いなんだね?」
「お杏さんは父の妹だ。家族を亡くし途方に暮れた私を支えてくれた。犯人を探して仇討ちしたいと願った私に、手を貸してくれている」
「どういう事?」
「私がこの仕事をしているのは、情報が欲しいからだ。人が多く集まる場所なら、当時のことを知っている人がいるかもしれない。そう思った。ちょうど新しい商売をしたいと話していたお京さんに話すと、私がお店を開いてあげるといってくれたのだ」
「なるほど。竜さんとは…2日前も会ってたの?」
「え?…あぁ…」
新さんは最後の質問にだけ、言葉を濁した。
あなたにおすすめの小説
出戻り王子が幸せになるまで
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。
一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。
※他サイトにも掲載しております。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。