青天の霹靂

SHIZU

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どうして…

数日後、俺は店の中庭の掃除をしていた。
相変わらず新さんは忙しい。
移動しようとした時、聞き覚えのある声がした。
「あ、あなた!」
「こんにちは、お香さん」
「覚えててくれたのね!」
「はい。美人は忘れません」
「あら、新さんに似てきたんじゃない?」
「そうですか?今新さんのところに?」
「そう!会ってきたわ!そういえば、あなた新さんと同居してるって言ってたわよね?」
「あ、はい。遠い親戚で…」
咄嗟に言ってしまった。
まぁもし俺が林太郎さんの生まれ変わりなら、間違いでもないか…
「あら、親戚居たのね。お杏さんだけかと…じゃああなたでいいわ。新さんの家族の事件のことは知ってる?」
「はい。なんとも悲しい事件でしたよね…」
「そうなのよ!でね、あたし思い出したんだけど…」
と、事件についての話をしてくれた。
「まあ、そういうわけなの…新さんには黙ってた方がいいわよね?」
「そうですね。時を見て、私かお杏さんから話してみます」
「そう?よろしくね!」
そう言うとお香さんは帰って行った。

その日いつもより遅めの時間に竜さんが来た。
お杏さんの部屋にお茶を持って行った後、部屋から出て来た俺と目が合う。
「どうも。今日も依頼ですか?」
「いや、今日はただ新に会いに来ただけだ」
「そうですか…竜さん。近々、お時間作ってもらえないですか?」
「なんだ?」
「お願いします。新さんのことで話があります」
「…わかった。明日の0時に〇〇神社の所はどうだ」
「…わかりました」
約束をすると、竜さんは新さんの部屋に向かった。
部屋の前での会話が聞こえてたみたいで
「なんかあった?」
と襖からお杏さんが顔を出した。
「…ちょっとお話、いいですか?あと明日、私と新さんにお休みをもらえませんか?」

その日帰ると、俺は新さんに稽古をつけてもらった。
「朝も稽古したのに、夜もするのか?」
「…少しでも強くなりたいから。あなたを守れるようになりたいから…」
「そうか。じゃあずっと私のことを守ってくれ」
「うん」
そう約束をし、いつものように愛し合った。

翌日。
「どうして今日は休みになったんだ?」
「今日はどうしても、新さんと一緒にいたかったんだ…だからお杏さんに頼んで、お休みにしてもらった」
「そうか。で、何がしたい?」
「まず、朝ご飯を一緒に作って食べて、それから朝稽古でしょー。それから新さんが買ってくれた着物を着て、いつものお団子屋さんに行って、街を散歩して、神社でお守りを買って、蕎麦屋に行って、一緒にお風呂に入って、晩御飯を食べて、星を見る…」
「そうか、やることがいっぱいだな!」
と言って新さんは眩しいくらいの笑顔をくれた。
もう、1人で着られるようになった着物だけど、俺は久しぶりにお願い!と新さんに着せてくれるよう頼んだ。
1日楽しかった。ただ楽しかった。
ごめんね。新さん。
約束、守れないかもしれない。
俺はたぶん見つけたよ。
ここに来た理由を。
あなたに会えた意味を。
自分がしなければいけないことも。
今日はたくさん連れ回したから、疲れたでしょ?
ゆっくり休んでよ。
そしてもし俺が、明日の朝、ちゃんと戻って来られたら、いつもの笑顔で言って。
「おかえり」
って。
「ただいま」
って俺が言えたら、もう離れることはないからさ。
新さんが眠ったのを確認した俺は、着物を着替え腰に刀を差して家を出た。






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