青天の霹靂

SHIZU

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望まぬ結末

神社に向かうと竜さんがいた。
「遅かったな…」
「ちょうどいいくらいですよ。新さんとの夜を楽しんでいたんです」
「……」
「1人ですか?」
「どういう意味だ?」
「今日はお仲間を連れていないのかなって」
「何を言ってる…」
「ある噂を耳にしたんですよ…」
あの日、お香さんから聞いた話を話した。
お香さんの店は飲み屋をやっていて、10年前に来たお客さんの話をしてくれた。
2人組の男たちは何かヒソヒソ話をしていた。
噂好きのお香さんがほっとくわけがなく、聞き耳をたてていたんだそうだ。

「旦那は父親だけを殺せと言ったんだぞ。大事な母親を殺したら意味がないだろう?」
「母親と息子には顔を見られたからな…仕方なかったんだ。最悪皆殺しかと思ったが、坊ちゃんのお気に入りの上の息子は家にいなかったな」
「まあ、それならそれで好都合だ。坊ちゃんのお気に入りさえ残っていれば、旦那がくたばった後も、死ぬまであの家で面倒見てくれるだろう」
「そうだな。くくくっ…」
物騒な話をしている輩がいるもんだと、そのくらいにしか思っていなかったらしい。
ただこの間。着物を新調しに行ったお香さんは、その恐ろしい会話をしていた男たちを偶然見つけてしまった。
竜さんの店で。

俺は竜さんに問いただした。
「この旦那っていうのはあなたのお父さんで、坊ちゃんはあなたのことですね」
「……」
「黙っているということは、当たっているということですよね」
「…だったら何だ」
「どうしてあなたのお父さんは新さんのお父さんを殺すように命じたんですか?」
「…私の父と新の親は3人とも子供の頃からの友人だった。そして父はずっと新の母親のことを好いていた。だけどそれは叶うことはないということも知っていた。後継ぎのこともあり、父は祖父の決めた人と結婚して私が出来た」
「幸せそうだけど?」
「そんなわけはなかった。当時は私もそこまで執着することが理解できずにいた。それからもずっと父の気持ちは変わらず、そんな中、新が生まれて林太郎が生まれた」
「それでもお父さんは諦めきれなかったの?」
「あぁ。ある日、新の母親を殺して、自分も死ぬと言い出した。そんなことを…よその妻を手にかけて、自分も死ぬなんてことが世間に知られたら、店の評判は落ちてしまう。そこで、私が父に助言した」
「どういうこと?」
「新の父親を殺せば良いと。そうすれば新の母親を簡単に自分のものにできると。独り身で子供を育てなければいけないとなったら、頼るものは全て頼るだろう?」
「酷いな。そんなことで人を殺すなんて…」
「どの口が言っている?お前だって、新の仇討ちのために人をも殺しただろう?同じことだ。それに私にも父の気持ちが理解できた。新を好きになったからだ」
「だからって母親や弟まで殺すこと…」
「あれは予定外だった。顔を見られて殺すとは…ただ万が一のことを考えて、新が家にいないよう、お杏さんのもとに着物を届ける手伝いを頼んだんだ」
「そんな…でも仇討ちの手伝いをしていたじゃないですか!」
「父に辿りつかないよう見張るためだ…いや、違うな。新の手伝いをするということで、私たちだけの秘密を作れると思った。そうすれば新の気持ちが自分から離れることが無いと思ったからだ…お前が現れる前までは上手くいっていた。俺だけにしか見せない顔が大好きだった…だけどある時気付いた。俺よりも大切なものが出来たと…だから今日ここで全て片付ける」
そう言って竜さんは刀を抜いた。
やっぱりそのつもりだったよな。
俺もだ。
勝てないかもしれないけど、死ぬかもしれないけど、とりあえず後のことは、お杏さんに頼んである。
新さんが傷付かないようにフォローしてくれる。
「あんたを許さない」
「勝てると思ってるのか?私に」
「相討ち上等。腕の1本でも落とせりゃ本望だ」
人気のない神社に、金属が当たる音が響く。
やっぱ強いな。
攻撃をかわすだけで精一杯だ。
そしてついに刀を弾かれてしまった。
手を伸ばしても届かないところにいってしまった。
結局何もできなかったな。
ごめんね。
新さん。
仇取れなかった。
竜さんが振り翳した刀が、俺を斬りさいた。
と思ったのに、血を流して倒れたのは新さんだった。
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