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第一章・このままじゃ学院退学になっちゃう!

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あ!あたしの紹介がまだでしたね。

あたしの名前は『犬飼葉千子いぬかいはちこ』。

ここ、東京都御伽市黄泉口町とうきょうとおとぎしよみぐちちょうの名門校、私立御伽草子中等学院に通っている一年生。

この学院に通うのは犬飼家の伝統だ。

パパとママもおじいちゃんもおばあちゃんも通っていた。

御伽草子中等学院を卒業すると、自動的に高等学院への進学が認められる。

御伽草子高等学院は日本一のブランド校。

ここを卒業すれば、どんな御曹司との縁談もすぐにまとまるし、どんな難関大にも推薦で行ける。

就職だってのぞむままだ。

難しい中学受験をクリアして何とか入学できたのに、退学なんて絶対嫌!

親友の莉々亜もいるし、部活の陸上部だって楽しい。

それに何より、憧れの先輩だっている。

それは生徒会長の……。


「それでだ、パパが葉千子が学院に残れるように校長先生にお願いしてきた。」


わたしがイケメン生徒会長に思いを馳せようとしたとき、パパがとんでもないことを言いだした。

校長先生にお願いですって?

雲の上の存在過ぎて直接話したことはないけど、サンタクロースみたいな白いおヒゲの『翁源蔵おきなげんぞう』氏は学院の長。

御伽市の市長や、大企業の会長、ひいては裏社会とのコネクションもあるという噂の大物。

そして、学院の生徒だけではなく黄泉口町の住民みんなから慕われている人格者だ。

「今日登校したら、すぐに校長室に行ってお話してきなさい。」
 
あたしは、突然の出来事にフラフラしながら学院に向かった。
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