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第六章・宵との出会い~太郎SIDE~

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ここ最近頻発している誘拐事件について説明すると、宵の顔色がみるみる赤黒くなった。

「俺も飛も鬼の仕業だと思っていた。……が、どうやら違うようだな。」

おそらく、サングラスの男の狙いはこうだ。

一連の誘拐事件を鬼の仕業に見せかけ、警察が手出しできないように仕組むこと。

そのために、犯人はこの山猫通り東公園で、「早く家に帰らないと鬼がくるよ」と宵が忠告し、それに被害者が気を取られている隙に薬を嗅がせ、車に連れ込む。

「ワイに罪をなすりつけようとするなんて、えれぇ肝が据わった人間やなぁ。」

怒りのあまり、焦げ茶色だった宵の瞳が、緋色に変わる。

モン吉の体毛が恐怖で逆立つ。

「こうなったのもワイが一因や。ハチやっけ?さっきの嬢ちゃんと子ども達を助けに行くぞ。」

「宵、お前、戦えるのか?」

もしかしたら危険が伴うかもしれない。

足手まといになるくらいなら、ここで大人しく待っていてもらいたい。

「まぁ、一応は晩鬼の息子やからな。暗闇程度は扱えるで。」

「闇よ。」と呟くと、宵の手のひらの上に、サッカーボールくらいの大きさのブラックホールのようなものが発生した。

それは、公園の塵や低木を巻き込みながら、いっきに軽トラックほどの大きさになった。

「太郎くん、宵も連れて行こう。」

ここは飛に従おう。

宵が戦力になるなら、それに越したことはない。

「そうだな、宵、お願いできるか?」

返事の代わりに、宵はニヤリと笑った。

「で、ハチは今どこにいる?」

宵は闇のかたまりを収束させた。

「これが、俺たちが使っているスマホだ。ここにお互いの位置情報が表示される」

赤く点滅しているのが葉千子の居場所。

青と黄色で点滅しているのが太郎と飛だ。

赤い点は、ここ山猫通り東公園から二キロほど離れた場所を指している。

地図を拡大して、点滅している部分をタップすると、『鬼が島マンシオン』と表示された。

「ここって町はずれにある老朽化したマンションだよね?」

「あぁ。すぐに行くぞ。」 

ピリリリリリリリリリリ

「待て!翁校長からの着信だ。」

「太郎くんかね。今すぐニュースを見るんだ。ニュースを見たらすぐに学院に戻るように。」

太郎が何か言う前に、飛はニュースアプリを立ち上げ、ここにいる全員に聞こえるように、音声をスピーカーにした。
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