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第十章・葉千子救出作戦
10-4~太郎SIDE~
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「ぐぅぉぉぉおっぉぉ!痛ぇ!」
飢鬼の声が山中に響いた。
「何?どうしたんだ!」
飛が叫ぶ。
「ぐぼおっ……げふぉっ。」
その場に崩れ落ちた飢鬼が嘔吐する。
胃液が飢鬼の口から溢れだした。
透明の粘着液に赤い筋がいたるところにまじった胃液とともに、俺が、俺が何としても助けたかった女の上半身がにゅるりと出てきた。
「葉千子っ。」
ぽっかりと開いた口に腕を突っ込み、葉千子の全身を引き出す。
ぬめりのある飢鬼の体液が俺の身体にまとわりつくが、そんなことはどうでもいい。
こいつ、心配かけやがって。
あとちょっと遅かったら消化されていたところだぞ。
上着を脱ぎ、胃液だらけになった彼女の顔をぬぐう。
服が胃液で少し痛んでいるくらいで、彼女に怪我はなさそうだ。
「目を開けろ。……目を開けろ、葉千子!」
お願いだ。
意識が戻ってくれ。
彼女の背中に手を回し、胸元に引き寄せ、目を瞑る。
お願いだ。
お願いだ。
お願いだ。
「太郎……先輩。わたし、がんばりました。先輩、飢鬼の体の中を狙ってください。」
葉千子?
目を開けると、頼りなさげに微笑む葉千子が俺の腕の中にいた。
「よかった……。本当によかった、葉千子。」
「やだもう。太郎先輩、泣かないでください。あたしは大丈夫です。」
俺が……泣いている?
頬に手を触れると、濡れていた。
「もう、俺に心配かけるな。」
彼女を、やさしく、力強くギュッと抱きしめる。
こいつ、こんなに小さかったっけ……?
こんなにあたたかかったっけ……?
あとちょっと遅かったら失っていたかもしれなかったと思うと、急に怖くなって、もう一度葉千子を抱きしめた。
「葉千子はそこで休んでろ。」
俺はポン、と彼女の頭に手を置いた。
「飛!」
「分かってるよ!太郎くん!」
飛が舞い、羽ペンで飢鬼の口に開口器を描く。
ガッチリと口を固定された飢鬼は口を閉じることはできない。
「今だよ、太郎くん!」
「うりゃぁぁぁぁぁ!」
飢鬼の口の中をめがけて桃伐剣を垂直に下した。
葉千子を苦しめやがって!
俺はありったけの怒りを桃伐剣に込め、全体重をかけて飢鬼の口の中に突き刺した。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
夜の小山に飢鬼の断末魔が轟き、鬼の身体は美しい桃の花となって跡形もなく消えてしまった。
飢鬼の声が山中に響いた。
「何?どうしたんだ!」
飛が叫ぶ。
「ぐぼおっ……げふぉっ。」
その場に崩れ落ちた飢鬼が嘔吐する。
胃液が飢鬼の口から溢れだした。
透明の粘着液に赤い筋がいたるところにまじった胃液とともに、俺が、俺が何としても助けたかった女の上半身がにゅるりと出てきた。
「葉千子っ。」
ぽっかりと開いた口に腕を突っ込み、葉千子の全身を引き出す。
ぬめりのある飢鬼の体液が俺の身体にまとわりつくが、そんなことはどうでもいい。
こいつ、心配かけやがって。
あとちょっと遅かったら消化されていたところだぞ。
上着を脱ぎ、胃液だらけになった彼女の顔をぬぐう。
服が胃液で少し痛んでいるくらいで、彼女に怪我はなさそうだ。
「目を開けろ。……目を開けろ、葉千子!」
お願いだ。
意識が戻ってくれ。
彼女の背中に手を回し、胸元に引き寄せ、目を瞑る。
お願いだ。
お願いだ。
お願いだ。
「太郎……先輩。わたし、がんばりました。先輩、飢鬼の体の中を狙ってください。」
葉千子?
目を開けると、頼りなさげに微笑む葉千子が俺の腕の中にいた。
「よかった……。本当によかった、葉千子。」
「やだもう。太郎先輩、泣かないでください。あたしは大丈夫です。」
俺が……泣いている?
頬に手を触れると、濡れていた。
「もう、俺に心配かけるな。」
彼女を、やさしく、力強くギュッと抱きしめる。
こいつ、こんなに小さかったっけ……?
こんなにあたたかかったっけ……?
あとちょっと遅かったら失っていたかもしれなかったと思うと、急に怖くなって、もう一度葉千子を抱きしめた。
「葉千子はそこで休んでろ。」
俺はポン、と彼女の頭に手を置いた。
「飛!」
「分かってるよ!太郎くん!」
飛が舞い、羽ペンで飢鬼の口に開口器を描く。
ガッチリと口を固定された飢鬼は口を閉じることはできない。
「今だよ、太郎くん!」
「うりゃぁぁぁぁぁ!」
飢鬼の口の中をめがけて桃伐剣を垂直に下した。
葉千子を苦しめやがって!
俺はありったけの怒りを桃伐剣に込め、全体重をかけて飢鬼の口の中に突き刺した。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
夜の小山に飢鬼の断末魔が轟き、鬼の身体は美しい桃の花となって跡形もなく消えてしまった。
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