忍者刀に転生した現代忍者と追放された黒狐の貴族令嬢

遙かなた

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1章

4話

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 メガネの女性に連れられてギルドの受付に戻ってくると変わらず腫物を見るような目がアウラ殿に向けられる。


「それでは、改めてギルド登録をさせていただきます」


 メガネの女性の言葉で周りにいた冒険者たちがざわめく。


「申し遅れました、私はセレナと申します。恐らくアウラ様の担当になりますのでこれからよろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそですわ!」


 セレナ殿はアウラ殿を見ると優しく微笑む。
 この者は偏見がないのだろう。だからギルドマスターもセレナ殿を連れてきたということか。


「それでは、こちらに記入と登録料の1000Gを頂きます」


 なんと、登録にもお金がかかるのでござるか。
 今のアウラ殿の手持ちは2000G、危なかったでござる。


「書き終わりましたわ」


 記入内容は名前と職業とのこと。
 職業とは恐らく剣士とか魔法使いとかでござろう。
 だというのに…。


「はい、確認いたしま…えっと、アウラさん?」
「はいですわ!字には自信がありましてよ!」


 うむ、確かに達筆でござるな。
 だが、セレナ殿が言い淀んだのはそこではござらん。


「あの、職業が半獣というのはちょっと…」
「え、マズいんですの?」


 マズいでござるよ。
 というか、先ほどから他の者の反応を見ていると半獣というのは差別的な発言なのでござらんか?
 拙者も最初はアウラ殿がそう言っていたので普通に使っていたが、他の者の反応を見るに分別のあるものは黒い体毛のハーフと皆行っていたでござる。拙者もそう言うようにしてたでござるのに。本人が堂々と言っちゃってるでござるよ。


「職業は戦士とか魔法使いでお願いしたいのですが」
「あ、そう言う事でしたの…でしたら令嬢?いえ、もう令嬢ではありませんわね…カゲトラ様、ワタクシなんですの?」


 拙者に聞くでござるか。拙者もよく解らないでござるのに。
 戦士というには体格も無くステータスも軒並み低いでござるし、魔法使いと言っても魔力も知力もないでござる。忍術が使えるのでそれを魔法と言い張るのもありでござるが。


「そういえば、前にカゲトラ様は忍者だと言っておりましたわね。では、ワタクシも忍者になりますわ!」
「忍者ですか?初めて聞く職業ですが先ほどのよりはいいですね。それにしましょう」


 そう言って、セレナ殿はアウラ殿の職業の欄を書き直す。
 いやいや、知らない職業なのにオッケーだしちゃうんでござるか!?
 適当ではござらんか?


「ありがとうございますわ!それと登録料の1000Gですわ」
「はい、確かに。それではこちらの水晶に手をかざしてください。レベルやステータスを計測致します」


 なっ、それはマズいでござる。ステータスが軒並み低いことがバレれば登録が出来ないかもしれないでござる。


(アウラ殿、ちょっと待)
「はい、わかりましたわ!」


 拙者の言葉が終わる前に、アウラ殿は水晶に手をかざしてしまう。
 水晶が光り輝くとその表面に文字と数字が現れた。


「なっ、これは…」


 くっ、一体どこまで表示されたでござるか?
 拙者を装備していることで使えるようになる術も表示されていればそれがステータスを補うと判断してくれるといいのでござるが…。


「アウラ様、貴方は呪いを受けているのですね?」
「あ、そう言えばそうでしたわ」


 そこまで表示されるでござるか。
 というか、アウラ殿、呪いのこと忘れていたでござるか…。


「弱体の呪い…これならば教会で解呪できるかと。教会への紹介状を書きましょう」
「え?ですが、教会は……」
「っ!そうですね、では知り合いの神父をこちらに呼びますので明日もう一度ギルドにお越しください」
「い、いいんですの?」
「はい、呪いにかかったままでは冒険者になられても死ぬだけですので」


 呪いが解けるかもしれないというのはありがたいことでござるが……。
 この者、なぜここまでしてくれるでござる?
 いくらこの者が偏見が無いとしても今日冒険者に登録に来たばかりのアウラ殿にここまで親切にするのはおかしいでござる。
 何か裏があると考えるべきでござるか?それとも黒い体毛のハーフになにか思うところがあるのか?
 どちらにしても慎重になった方がいいでござるが……。


「ありがとうございますわ!セレナさんはとっても親切ですのね!」
「いえ、仕事をしているだけです」


 アウラ殿はすっかり信じ込んでいるでござるな。
 これは拙者がしっかりせねば。
 見返りのない親切は信用できぬでござるからな。


「あ、でも、とりあえず冒険者に仮登録みたいにはできませんの?」
「どうしてでしょう?」
「恥ずかしながら今日の宿代もないので街の外に狩りに出かけたいんですの」


 そう言えば、モンスターを狩るにも身分証無ければまた門前払いを受けてしまうでござるな。


「え、このステータスで魔物を狩るつもりですか?」
「当然ですわ!ワタクシは冒険者ですもの!」


 そういえば、拙者冒険者というのがどういうものか詳しく聞いてなかったでござるな。
 まあ、日本の物語に書かれているものと変わりないでござろう。
 ならば、冒険者は魔物を狩る者というのはアウラ殿の言う通りかもしれぬでござる。


「で、ですが危険では?」


 おや、アウラ殿の心配をしているでござるか?
 利用しようとか無茶な依頼をして排除しようとしているのであればこのアウラ殿の発言を止めるわけがないでござるよな……。一体何を考えているでござる?


「それなら半獣さんにはこの依頼をしてもらいましょう」
「サブマスター!?何を!!!」


 セレナ殿の後ろからサブマスターと呼ばれたチョビ髭の親父が現れる。
 手に持っていた紙切れをアウラ殿に差し出したが、依頼……でござるか?


「あら、いいんですの?でも、ワタクシまだ身分証を持ってませんのよ」
「もちろん、この私が仮登録証を発行いたします、貴方のような有望な冒険者の方にこそこの依頼を任せたいのです。」


 なになに、依頼内容はレッドオーガの討伐でござるか……レッドオーガがどれくらいの強さか解らぬでござるが、新人にやらせる内容とは思えないでござるな。
 この男……アウラ殿を亡き者にする気でござるな。


「ふざけないでください!!アウラさん、その依頼は駄目です。お金でしたら今日の分は私がお貸ししますので」
「こらこら、ギルド職員とあろうものが一人の冒険者を特別扱いなんてしてはいけませんよ。ですよね、冒険者の皆さん!」
「そうだそうだ!俺たち冒険者自分の力で稼ぐもんだぜ!!」


 サブマスターの声で、先ほどまでこちらを腫物のような目で見ていた冒険者たちが一斉に声をあげる。
 中には下を向いて何も言えない冒険者たちもいたが、おおむね、ここの冒険者たちはサブマスターと同じ考えという事であろう。忌み嫌われている黒い体毛のハーフであるアウラ殿に対する態度としてはこれが普通なのか。

 今すぐここにいる者たちを切り刻んでやりたいところだが……。


「確かに、冒険者とは自分の力でお金を稼ぐものですわね!わかりましたわ!サブマスターさんが選んでくれたこの依頼、このアウラ、しっかり達成してみせますわ!」
「おお、ありがとうございます!このレッドオーガは幾人もの商人を襲い被害が大変出ております。頼みましたぞ」


 嫌らしい顔で笑った後、アウラ殿の肩を叩きながらそういうサブマスター。汚らしい手で触るんじゃないでござる。それにしても、先ほどからセレナ殿はずっとサブマスターとアウラ殿を止めようと必死に声をあげているでござるな。本当にこの者は優しいだけなのかもしれぬが……そうなると、優しくする意味が解らんでござるな。ギルドマスターとジェイス殿は己の幸運が高いからと言っていたでござるがこのセレナ殿の優しさは異常でござる。なぜ、ここまで?拙者であれば、アウラ殿が行く気になってしまったところで諦めるでござろう。ここまで必死に止める理由がセレナ殿にはあるのでござろうか?
 まあ、拙者は止めるのを諦めてもアウラ殿の命を見捨てるわけではござらんがな。


「ではこちらが仮登録証です。アウラさんお頼み申します」


 相変わらず嫌な笑みを浮かべながらサブマスターは仮登録証をアウラ殿に渡してきた。
 仮登録証を貰えたなら討伐は後回しにして適当な魔物を倒し素材を売ればいいんでござるが……拙者はちらっとアウラ殿に視線を移すと。らんらんと輝く瞳のアウラ殿が映る。

 やる気マンマンでござるなー。
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