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2部 4章
第二幕 4章 43話 エリンシアの気持ち
しおりを挟む「ぐはぁ!!」
エリンシアの拳がバトロメスの鳩尾にめり込む。
「あら、白の傭兵団の団長ともあろう人がこんなか弱い女の子にいいようにされるなんてお無様ですわね」
「何がか弱いだ……ゴリラみたいなパンチを繰り出しやがって……」
「だ、誰がゴリラですの!こんなの淑女の嗜みですわよ!」
「んなわけあるか……畜生……地獄の炎が効かねぇんじゃ勝ち目がねぇ……ルークードの奴はどこ行きやがった」
ルークード……確かクダンさん達が気をつけろと言っていた相手ですわね。
この男が頼りにするくらいですし、その方はよほど強いのでしょう……ですが。
「あら、ワタクシの仲間たちが負けるわけがありませんわ……その方はもう倒されておりますわよ」
「はっ、アイツを倒せる奴なんていねぇよ……神か悪魔ならともかくな!」
女神様ならワタクシたちの仲間に二人ほど居りますけれど……悪魔……あら、どうしてかしら、悪魔という言葉を聞くと女神の黒い方の顔が浮かんできますわね……内緒にしておきましょう。
「ですが、助けに来ないのは確かですわよ?降参でもいたしますか?」
「ふざけんなっ……白の傭兵団の団長である俺が降参なんかするわけねぇだろ!」
「なら、後悔なさいますわよ!」
「うおお!?」
ワタクシの蹴りがバトロメスの頭を狙う。
バトロメスはそれをギリギリで躱すと、地獄の炎を出現させワタクシに放ってくる。
ですが、ワタクシは体に聖なる炎を纏わせているため、その炎を気にせず次の攻撃を繰り出す。
「くそっ、くそぉ!気に入らねぇ!」
「これで終わりですわ!」
先ほどのワタクシの蹴りを避けて下がっている頭に、ワタクシは回し蹴りを決める。
今度は避けることが出来なかったようで、バトロメスの意識を刈り取った。
「ふう、なんとかなりましたわね」
カモメさんに大見栄を切った以上、負けるわけにはいきませんでしたので、良かったですわ。
「エリンシア!」
「あら、ローラさん……とアンナさんでしたわね。どうしたんですの?」
「レン!レンはどこ!!」
ワタクシがバトロメスを倒すと、ローラさんとアンナさんがこちらにやってきました。
どうやら、レンさんを探しているようですわね。
「レンさんならあちらで戦っている筈ですわ」
「!」
ワタクシの言葉を聞くとアンナさんは即座にそちらに向かいます。
レンさんの事がよほど心配なんですわね……ワタクシも心配ではあるんですけれど……あら?なんか胸が痛みますわね……どうしてかしら?
「私もアンナの後を追うわ……エリンシアはどうする?」
「……ワタクシはこの方をカモメさんの所へ連れて行きますわ」
正直、ワタクシも行きたいところですけれど……バトロメスをローラさんに任せるわけにもいきませんし……仕方ありませんわよね。
「解った……アンタも難儀な性格してるわよね」
「どういう意味ですの?」
「ありゃ、自覚なし?……まあ、それはそれで面白いからいいけどね」
言いたいことだけを言って、ローラさんは「じゃ、いくわね」と残して行ってしまいました。
難儀な性格?……一体何のことでしょう……全くわかりませんわ。
とにかく、このバトロメスをカモメさんの所まで連れて行きましょう。
この方をどうするかはドーガさんやクダンさんに任せますわ。
むぅ……なんか胸がムカムカしますわねっ……なんとなくこの方のせいがしますので、蹴っておきますわ。
バトロメスを蹴り飛ばすと、少しイライラが収まった気がしますわ。
はあ……一体何なんですの、この気持ちは……。
自分の気持ちが解らないまま、エリンシアはカモメ達の所へと向かうのであった。
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