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2部 4章
第二幕 4章 42話 ドーガの忠臣
しおりを挟む「レナ!!」
「姉様?……カモメちゃん!?」
ルークードとの戦いで立つことも出来なくなった私をディータが担いでレナの所まで連れてきてくれた。
「カモメちゃん……また使ったのね?」
「ごめん……使うしかなくってさ」
「はあ、まあ、カモメちゃんがそう言うのならそうなんでしょうけど……とりあえず、治療の魔法をかけるわ」
「ありがとう」
レナは先ほどまでクオンの傷を治していたのだろう、うっすらと額に汗をかいている。
だが、そのお陰か近くで横になっているクオンの傷は完全に癒えていた。
多く血を流したからなのかまだ目が覚めていないようだけどあれならきっと大丈夫だろう。
「それで、今の戦況はどういう状態なのです?クオン殿はルークードにやられてしまったようですが……」
クダンが私の状態に気を使いながらおずおずと話しかけてくる。
「そいつならカモメが倒したわ」
「ルークードを!?……すごい……あの悪魔のような相手を倒すなんて……では、後はバトロメスと我々の中にいた偽物くらいでしょうか?」
「バトロメスはエリンシアが相手をしているから大丈夫だと思う……聖なる炎を使えるようになってたみたいだし」
「あら、エリンシアちゃん。この短期間であれが使えるようになったの?すごいわね」
うん、それは私も驚いた……ちなみに私は使おうとしても使えなかった。
聖なる炎と相性悪いのかなぁ……。同じ光の魔法でも光弾とかは得意なんだけど……。
基本的に制御が難しくなく威力をガンガンあげられるものは得意なのだ……ただ私が不器用なだけか。
「それより、バトロメス以外の敵はどうなってるの?」
「ほとんどの雑魚は私が倒しちゃったわ」
「はい、レナさんが他の肩を探す片手間にやってくれました」
どうやら、白の傭兵団でレナに勝てるようなものはほとんどいなかったようだ。
その姿を横で見ていたのだろう、メリッサがカッコ良かったですと眼を輝かせて言う。
さらに同じ現場をローラが見ていたのだろう……ローラは強すぎでしょこの人……とレナを半ば呆れたような視線で見て言っていた。
「後はガロとかいうのをレンが相手しているってエリンシアが言っていたね」
「!?」
私がそう口にした瞬間、今まで会話に入ってこなかったアンナがいきなり立ち上がり、走り出した。
レンの事が心配なのだろう……私も元から頼むつもりだったので構わないのだけれど……。
「ローラ、ついて行ってあげてくれないかな?多分場所解らないだろうし……」
「はあ……レンの姉のような奴って言ってたけど……レンより抜けてるんじゃないの……アレ」
「たはは……詳しい場所は私も解らないけど、多分エリンシアが知ってるはず……エリンシアの所で聞いてみて」
「解ったわ……世話が焼けるわね」
「ごめん」
「い、いいわよ謝らなくて……もう、調子狂うわね」
なんだろう、最初に会った頃よりずっと柔らかくなった気がするよローラ……すごく頼れる感じになって来たし。
とりあえず、レンはローラとアンナに任せれば大丈夫だろう……エリンシアもいるしね。
「後はドーガだね……どこに連れていかれたのか……」
「殿下!殿下はどこにいかれたのですか!!!」
ドーガの名前を聞いた途端、シグレがすごい剣幕でこちらに詰め寄ってきた。
「ちょっと、落ち着きなさい!」
あわや、私にぶつかるんじゃというくらい近づいたところでディータがシグレの襟首を鷲掴む。
び、びっくりしたぁ……。
「殿下は!殿下はぁああ!」
「正確な場所は解らないけど、ラージェがここより北側の方に走っていくのを見たよ……もしかしたらドーガの所に向かっているのかも」
「ではそこに向かわなくては!私は向かいます!!」
「待ちなさい、あなた一人行ってもやられるだけよ」
「そうです、シグレ……少し落ち着きなさい」
「クダン殿!これが落ち着いてなどいられますか!殿下が今まさに殺されてしまうかもしれないんですよ!貴方は平気なのですか!」
「平気なわけないでしょう!!!!」
わわっ……びっくりした……。普段温厚なクダンがいきなり大声で怒鳴るんだもん……驚いたよ。
こんな大きな声でるんだ……。クダンもドーガの事が心配なんだろうなぁ。
「ですが、敵が連れ去ったということはドーガ様を生かしておく理由があるはずです……恐らくあの宝玉にかかわることだと思いますが……その理由がある間はドーガ様は無事なはず……悠長にはしていられませんが、慌てては逆にドーガ様を危険にします」
「わ、解りました」
しゅんと、小さくなるシグレ。
クダンの言う通りだ……だが、こちらであと戦えるメンバーはディータとメリッサ、それにシグレくらいだ。ディータもさっきの戦いでほとんど魔力を使い切っている……厳しいね。
「レナ、私の治療はいいからレナも一緒に行ってあげて」
「駄目よ、カモメちゃん……あなた結構ひどい状態なのよ?放っておいたら大変なことになっちゃう」
おおう……私って意外とヤバかった?とはいえ、魔力のほとんどないディータに行かせるわけにも……。
「僕が行く」
気づくと、先ほどまで眠っていたクオンが膝に力を入れながら立ち上がっていた。
「クオンちゃん、貴方もまだ安静にしてなさい……かなり血を流しているはずよ」
「大丈夫です……それより、ドーガが心配だ……ドーガを連れ去れたのは僕のせいだ……僕が行きます」
「寝てなさい根暗坊主……私が行くわ……それにあなたのせいじゃないわ……むしろあなたがいなかったらルークードは倒せなかった……あなたが責任を感じる必要はないわよっ」
「ディータ……」
ディータがクオンに優しくするなんて珍しい……じゃなかった、ディータの言う通りだ。
クオンが一人でルークードを抑えてくれてなかったら……もし、ルークードと1対1で戦うことになっていたら、もしかしたら私達は全滅していたかもしれない……それ程にアイツは強かった。
だから、クオンが責任を感じる必要はない。
「だけど、ディータ……君も魔力がほとんどないんだろう?そんな状態で……」
「私が行きます!」
ディータとクオンが言い争いを始めそうになったとき、一人が声を上げる。
それはメリッサであった。
「私だって、カモメさん達の仲間です!いつまでも護られてばかりいるわけにはいきません」
「でも、メリッサ……」
「これでもずっと鍛錬は欠かさず続けているんですよ?」
確かに出会った頃と比べるとメリッサは強くなっている……だけど、あのラージェという男……強さはそこまでじゃないけれどなんというか……姑息な感じがするのだ。
経験の浅いメリッサに任せていいものか……。
「なら、メリッサをメインに私と根暗坊主両方が補佐でついて行く……それでどう?」
補佐か……確かについて行くだけであればそれ程負担にならないだろう……メリッサの足りない経験も二人がいれば補える……。
「解った……任せるよ……シグレもお願いね」
「もちろんです、駄目といわれてもついて行きます……殿下の為に!」
あはは、シグレってホント、ドーガの事好きだよね。
「クダンさんは悪いけど……」
「はい、貴方とレナさんだけを残していくわけにもいかないでしょうから……シグレ、私の分まで殿下の事頼みます」
「任せてください!」
言うが早いか、シグレはメリッサの手を引き、北の方へと走り出した。
それをやれやれといった表情でディータとクオンがついて行く。
二人ともきついだろうけどお願いね……むぅ、悔しいなぁ……光と闇の合成魔法の反動がここまで大きくなるなんて……実の所、体が殆ど言うことをきかないのだ……なんと言うか全身がけだるい感じである。
やっぱり、あんまり使わない方がいいのかなあの魔法……恐らく魔力の乱れが原因だと思う……二つの強大な魔法を合成するから私の魔力と体がついてこないのだろう……なんとか出来ないかな。
そう思いながらも私は体内の乱れた魔力を必死に整えようとするのだった。
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