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2部 4章
第二幕 4章 46話 邪神の宝玉
しおりを挟む「カモメさん!」
「あ、エリンシア!」
「って、大丈夫ですの!?顔色がすごく悪いですわよ!?」
「たはは、光と闇の合成魔法を使っちゃって……」
「なっ!?……レナさんに止められていたのに使ってしまったんですの!?」
「うん……使わないと勝てない相手だったんだ」
正確には災厄の魔女……ツバサと戦った時にも一度使ってしまっているということは内緒にしておこう……レナにはバレてるけど。
「カモメさんが苦戦するなんて……あのルークードとか言う相手ですの?」
「うん、私とディータでなんとか倒したよ」
「なっ!?嘘を吐くな!ルークードが負けるわけがねぇ!」
「バトロメス……そっか、エリンシアも勝ったんだね……嘘じゃないよ。ルークードは私とディータで倒したよ」
「あり得ねぇ、アイツにはどんな攻撃も効かねぇんだぞ!」
「うん、ほとんどの攻撃がきかなくて焦ったけど……私の奥の手はルークードの女神の加護を破ることができたんだよ」
「………馬鹿な」
私が女神の加護という言葉を使ったことでバトロメスは疑うことをしなくなった……本当に戦ってなければ知らないことだもんね。そして戦ったということはルークード相手に勝ったということである。アイツ相手に逃げるなんて普通出来ないだろう。
「くそっ」
「それで、貴方に聞きたいことがあるんだけど……なんでドーガの宝石を狙うの?それに、宝石だけじゃなくてドーガを攫った理由はなに?」
「…………」
「言わないのなら貴方は必要ありませんわね」
そう言うと、エリンシアはバトロメスの頭に魔導銃を突きつける……あれ、演技だよね?
あのエリンシアが本気で無抵抗の人間を殺すとは思えないので多分演技だろう……私ですら恐ろしいと思う程悪い顔をしているけど……多分、演技だ……多分。
「ぐっ……俺たちはジーニアスの野郎に邪神の力を封じた宝玉とその解放の仕方を知っている奴を連れてこいと言われただけだ」
「……邪神の力?」
「邪神というと邪鬼たちの親玉ですわよね?」
「ああ、迷信だけどな……なんで、奴がそんなものを欲しがってるか知らねぇが……それを取ってくればこの国を好きにしていいという条件だったんだ……この国はそこまで軍力は強くねぇがアンダールシアと同盟を組んでいるせいで手出しができなかったからな……だが、それを持ってくれば俺たちがやることには口出ししないとジーニアスが約束したんだ……だから」
「だから、ここを襲ったんですの?」
銃を握るエリンシアから、今度は本気の怒りの感情が伝わってくる。
結局、白の傭兵団は自分たちの欲望のためにこの国の人達を殺したということだ。
「邪神……ジーニアスはツバサを諦めていないってことなのかな……」
でも、ジーニアスは邪神を復活させて何を考えているの?
そもそも、邪神ってなんでツバサの中にいるんだろう……力を宝玉に封じらているって言うことは誰かが封じ込めたってことだよね……魂はディータみたいに別の空間に逃げ込んでいたとしても……体は?
普通に考えれば誰かに倒されて滅びたってことなのかな?一体だれと争ったんだろう……この大陸の女神様?……それとも、その時代の強者が倒したのだろうか?正直考えても解らないことだけど……いまいちピンとこないんだよねぇ……邪神の狙いはなんなんだろう?いや、邪神ってそもそもどんな存在なの?私たちの大地にはいなかったよね。
……『世界』に聞いたら解るのかな?
「でも、封印の解き方を知る者を連れて来いってことならドーガちゃんはまだ無事みたいね」
「だね……後はクオン達に任せるしかないかな」
「あら、そう言えば、クオンさんとディータさん……それにメリッサさんもいないですわね?」
「うん、後シグレを入れた四人でドーガを追いかけてもらってる」
「まあ、お二人がいるのなら大丈夫でしょうけど……」
「それが、二人とももう戦う力が残ってないんだよね」
「え!?大丈夫なんですのそれ!?」
「わかんない……でも、メリッサが自分にまかせてくれっていってたから……」
メリッサは昔よりずっと強くなった……力も……そして心も。
でも、まだ一人にさせるのは不安でもある……ううん、私がそんな風に思っているからメリッサは今回こんなことを言ったのかも……ここはメリッサを信じよう。
「エリンシア……レンはどうしたの?」
「レンさんならさっきアンナさん達が救援に向かいましたわ……相手もそれほど強く無さそうでしたし大丈夫だと思います……のですけれど……」
「さっきの轟音だよね」
「ええ、レンさんがいたほうから聞こえましたわ……まるでワタクシの全力魔弾のような……」
確かに、エリンシアの使う全力魔弾はちょうどあんな感じである……だが問題はあれを放ったのが誰なのかということだ……もしレンであるのなら問題ない……それどころかあれだけの威力の技を使えるようになっていたなんてびっくりだ。
だが、もし敵が使ったのだとしたら……超再生を持つレンではあるが、体のどこかにある核が吹き飛ばされてしまったら再生が出来ないと言っていた……エリンシアの全力魔弾であればレンの身体を丸ごと吹き飛ばすことも出来る……そして、先ほどの轟音はその全力魔弾と同じほどの規模に感じたのだ。
「エリンシア、悪いんだけどレンの様子を見てきてもらってもいい?」
「も、もちろんワタクシは構いませんけれど……メリッサさんの方はいいんですの?」
「うん、私はメリッサを信じるよ……それにディータとクオンもいるしね」
「解りましたわ……では、行ってまいります……カモメさんも気を付けてくださいましね……どこに敵が潜んでいるか解りませんわ」
「了解」
そう言うと、エリンシアは元来た方へと走っていった。
バトロメスはレナがいれば何とかなるだろう……後は伏兵がここに来た時にどう対処するか……そして、メリッサたちの方はどうなるか……だね。
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