闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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2章

再会

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《???side》

最果ての国ツァイン。
その玄関とも言える門に一人の女性が立っていた。
彼女は闇の魔女と言われている人物を探していた。

今まで、いくつもの国を旅しながら魔女の情報を集め、追いかけてきたのだ。
だが、魔女はどの国でも追われる身であり、情報を掴んだと思ったらすぐに別の国に逃げた後であることがほとんどであった。
でもこの国は最果ての国、つまりここ以上に逃げる場所などないと当たりを付け、彼女はここへやってきた。
そしてビンゴである。先ほど白い服を着た貴族風の男の後をついてフードの二人組が門へとやってきた。
彼女は入国の手続きをしている途中だったのだが、ふとその3人に目がいったのである。
そして、門の奥に入るときに後ろの二人がフードをとった。

その顔には見覚えがある、間違いなく闇の魔女と言われる女性とその相棒だ。
私はすぐにその三人の後を追いかけたが、兵士に止められてしまう。


「ここから先は関係者以外立ち入り禁止です。もうすぐ、手続きも終わりますのでこちらでお待ちを」


冗談じゃない、せっかく見つけたのだ、こんなの所で待ってなどいられない。
彼女は魔女たちに会うために旅をしてきたのだ、目的の人物がいたのにどうして待っていられようか。
彼女は言った、魔女と呼ばれる人物がいるはずだ、その人物に会わせて欲しいと。
それを聞いた兵士は、困ったような顔をして少しお待ちをという。

そこで彼女は気付く、自分の名前を伝えて欲しいと言えばあの魔女なら会ってくれるはずだったと、彼女は念願の人物に会えることに慌ててしまい、失念していた。
だが、兵士はすでにおらず、待つしかなかった。

しばらくすると、兵士が帰ってくる。


「ここに魔女などおりません、お引き取りを」


お引き取りをと言われて、どこに引取れと言うのか、彼女は入国の手続きを待っているっていうのに。
彼女が魔女に会うため自分の名前を言おうとした時、周りの兵士が慌てだす。


「ウェアウルフが来たぞ!!」


門の外にいる兵士が大声で叫んだ。
一人の兵士が大慌てで奥に報告に行く。
彼女と話していた兵士も武器を手に、門の外へ出て行ってしまった。
彼女は、苛立つ。こちらにとっては大事な事だというのにウェアウルフなんかに邪魔されるなんてと。
外へ出て、兵士たちが慌てている相手であるウェアウルフを見ようとする、Cランクのモンスターなどそれほど危険視する相手ではないのだが、兵士たちの様子が尋常じゃなかったため少し気になったのだ。
外を見てみるとまだ、大分離れているのだろう、豆粒みたいな黒い点がわらわらとこちらに向かっていた。
あれは、100匹くらいいるのだろうか、なるほど兵士たちが慌てるわけである。

そう思っていると二つの影が、門から飛び出していった。
その姿には見覚えがある。
やっぱりいるじゃないかと彼女は目を光らせた。
そして、おもむろに彼女たちの後を追うのであった。兵士の1人が制止をするが彼女はそれを聞かずに突っ走る。
彼女は心で誓う、魔女に一発喰らわせると。


《メインside》


私とクオンはウェアウルフが来たという報告を聞いて門から飛び出した。
出来るだけ門から離れたところで撃退しようと思ったからだ。

兵士たちは連日の戦いで疲れている、今の状態で戦うと命を落とす者もいると思う。
だから、私とクオンだけで出来るだけ倒しちゃおうということだ。


平原をしばらく走るとウェアウルフたちの姿がはっきりと見えるようになった。
そして、あることに気付く。


「あれ、クオン。あの後ろの方にいるのって」
「ライカンスロープだね」


そう、ウェアウルフではない魔物が5体混じっているのだ。
ライカンスロープというのはウェアウルフの上位種でランクBに位置付けられている魔物だ。
その獰猛さから冒険者からも危険視されている魔物である。
その魔物が5体、これは私たちが居なかったら本当にツァインはやばかったかもしれない。

私達だってランクBの魔物5体が相手ならそれなりに本気を出さなければいけないのだ。
四年前であれば1体相手でもやばかった。
その四年前ですら私たちは普通の冒険者よりも強かったのだ、それを考えればいかにやばい状況かわかるだろう。


とはいえ、今の私とクオンなら負けることはない。


「残すのはウェアウルフでいいよね?」
「うん、ライカンは倒してしまおう」

私とクオンは武器を構えそのまま魔物の群れへと突っ込んだ。
私とクオンが武器を振るうたびに100体程いる魔物の数がどんどんと減っていく。
しかし、ちょっとだけ予想外の事が起きる。

てっきり私とクオンが戦ったら狙いを私たちに向けてくると思ったのだが、魔物たちは私たちを無視しツァインへ向かおうとするのだ。
こうなると100という数字は厄介だ。いくら私達でも分身出来るわけではない、一度に相手にできるのは限られてしまうのだ。


「ちょ、ちょっとなんで街に向かおうとするの!?」
「門から離れたのは失敗だったね」
『ライカンは必ず仕留めなさい!兵士には荷が重いわ!』


ディータの言う通りである。
ランクBの魔物を逃すわけにはいかない。
クオンはすでに二匹のライカンと戦いながらウェアウルフを倒している。
器用なものですぐに倒せないライカンを自分にひきつけながら弱いウェアウルフを倒していっている。

私は二匹のライカンを魔法で牽制しながらバトーネで近くのウェアウルフを片付けていく。
2、30体はウェアウルフを倒したであろうがさすがにこの数全てを引き付けることはできない。
何体かすでに街の方へと行ってしまっている。


『カモメ、ライカンスロープはもう一体いるはずよ!』


ディータの言葉で私も気づく、そうだ最初確認したときは5体いた。
まずい、見失った。
私は慌てて辺りを探す、そして見つけた・・・だが、そのライカンはすでに街の方へと向かっているウェアウルフの一団と一緒にいた。
しまった、どうしよう、大技でまとめて吹っ飛ばす?
いや、それだと街にも被害が出ちゃうかもしれない。
すぐに追いかける?駄目だ、ここにいる二体を見失う。
なら、ここにいる二体を倒して追いかけるしかないね!

私はそう思い、構えなおす。
近くにいたウェアウルフ二体をバトーネでなぎ倒し、魔法を唱える。
私とライカンの間にいたウェアウルフを炎の魔法で焼き払い、ライカンへと近寄った。
バトーネを振るい攻撃を仕掛ける。
それなりに魔力を入れたバトーネでの攻撃は左腕で受け止められてしまう。
さすがにランクBとなると一撃とはいかない、私は懐に入り風の魔法を唱える。


風弾ウィンディローア!」


風の衝撃波がライカンを吹き飛ばす。
そして、その衝撃波で吹き飛ばされたライカンのダメージは大きく、動きが鈍ったところにとどめの一撃を放った。


氷牙咆哮アイシクルルジート!」


氷と風の合成魔法がライカンへと向かって突き進む、ライカンは避けることも出来ず私の一撃をくらい、砕け散った。
その様子を見てから私はもう一体のライカンへと向き直った。

まずい、倒すのに時間をかけすぎている。
街へ向かったライカンが大分小さく見える、思ったよりもまだ離れてはいないようだけどこのままだと間に合わない。


「カモメ、君は街に行った方のを追いかけて!」


クオンがこちらへと来てくれた。
私が対峙していたライカンにクオンが仕掛ける。
さっきまで戦っていた二匹のライカンはどうやらすでに片付けたようだ。
さっすがクオン♪


「わかった!」


私はそう言って、風の魔法で空を飛んだ。
空中から追いかければすぐに追いつくはずだ。

私は速度を最大にして街へと向かった魔物の集団を追いかける。
空から追いかけているからなのか魔物の集団にすぐ追いついた・・・いや違う。
魔物の集団が動いていないのだ、どういう事だろう?

そう思った私だが、魔物の集団に完全に追いつき状況を理解する。
一人の旅人風の女性が魔物と戦っていた。
金髪の長い髪が綺麗で、身に着けている服も一級品とわかるくらいいいものだった。
今の私の格好とは大違いである、ただ驚いたことに、その女性は運悪く魔物の群れに襲われているわけではなく、むしろ魔物の集団を襲っている。

近づいたウェアウルフを拳や蹴りで倒していく。
拳闘士なのだろうか、かなりの強さだ。冒険者?ううん、格好からすると旅人っぽいから、流れの冒険者かな?
すると、二匹のウェアウルフがその女性を無視して、ツァインに向かおうとする。
私は慌てて魔法でそいつらを倒そうとするがそのまえに何かがウェアウルフを貫き倒した。

今のは?と思って女性の方を見てみると銃のようなものを構えて立っていた。




・・・・・・・あれ?


私はあの銃を見覚えがある、いや、よく見てみるとあの金髪の女性・・・。
嘘でしょ・・・。


私は慌てて風の魔法を解いて地面へと降りた。

丁度その時、最後に残ったライカンスロープの口に魔導銃を突っ込み、ライカンスロープの頭を吹き飛ばした金髪の女性が「ふうっ」と息を吐いた。


「腕が落ちたんじゃありませんの?こんなお雑魚さんを撃ち漏らすなんて」


腰に手を当てながら彼女は私を見てニコリと笑う。
その姿は四年前と変わらず、優しい笑顔であった。ううん、この四年で女性らしくなった彼女はさらにその姿が似合うのであった。
まさに、お嬢様という感じである。


「エリンシア!!!」


私は彼女の名前を呼び、思いっきり抱き着いた。
彼女とは四年前グランルーンで行動を共にしていた。
しかし、私が魔女として追われる立場となりお別れもできないままグランルーンを立ってしまったのだ。
ずっと、謝りたかったのだ、何も言わず行ってごめんねと。
魔女と呼ばれる前は冒険者として活動していた私は、彼女が将来冒険者になったら同じパーティになろうと言っていたのだ。


「エリンシア・・・ごめんね、何も言わずに」
「もうっ、そんなに素直に謝れてわ、怒れませんわ」


エリンシアに会えて嬉しい、嬉しくて涙が出てきた。
エリンシアは優しく微笑んでくれた。


「まったく、カモメさんは相変わらずおバカちゃんですわね」
「おバカちゃんはひどいよー」


私は笑いながら講義した、以前はおバカちゃん言われるのが嫌だったのに不思議と今は嬉しかった。
久しぶりにエリンシアに会えたからかな。



私とエリンシアが再開している間、一人クオンは黙々と魔物を倒しているのであった。


 
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