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2章
王の思惑
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空間を渡った先の砦にいたルー・ガルーを倒し、戻ってきた私達。
今私たちは、ツァインの街の中を歩いている、私とクオンは手配書が出ている為、フードを被りお城まで移動していた。
「今更ですけど、あの声の主何者でしょうね」
ソフィーナさんが尋ねてくる。
確かに、高級な魔導具を持っていたり、あの場にいなかっただろうに声だけを飛ばしてきたりと普通ではない。
「まあ、あのまま誘いに乗るのは危険な相手だったと思うよ」
「どんな罠があるかわからないもんねぇ」
「喋り方もお生意気でしたわね」
『ああいうプライドの高そうなのは怒らせるのが楽しいわ』
しかし、あの声の主はランクAのルー・ガルーまで従えていた、普通じゃないよね。
「ところで、敵の大将を倒していないのですから、王様からの依頼は果たせたことにはなっておりませんわよね?」
「そうなんだよねぇ・・・」
王様との約束はウェアウルフの襲撃の原因を突き止めること、そしてその出来るのならば排除であった。
原因は突き止めたがその原因の排除は出来ていないのだ。
まあ、空間を渡る魔導具は壊しておいたのでまたウェアウルフが100体で攻めてくるということはないだろうけど。
「これでは、冒険者になるのはお預けですわね」
「うう・・・」
「それどころか、追い出される口実を与えてしまったかもしれませんわよ?」
「う」
そうだよね、条件を達成できなかったんだもんそうなってもおかしくない・・・うう、やっとお布団で寝れるようになると思ったのに・・・。
「いえ、それはないかと」
私ががっくりしているとソフィーナさんが口を開く。
「まだ、この国の危機が去ったわけではありません、あの声の主はまたここに来るでしょう、ですので・・・」
「あ、それなら大丈夫だと思うよ」
「え?」
ソフィーナさんが喋っているところを途中で遮る。
「いや、あの声の主、魔導具壊したの相当怒ってたもん、きっとこの国の前に私に仕返しに来ると思う」
「あら、それを狙ってあんなことしたんですわよね?」
「まあ、じゃなきゃ、高級な魔導具を壊す意味ないからね」
私が言うと分かっていたと言うようにエリンシアとクオンが続けた。
「な・・・それでは魔女殿一人が危険に・・・」
「一人じゃありませんわよ」
「僕らがいるからね」
「あはは、さっすが二人とも頼りになるね」
当然と二人は胸を張った。頭の中ではディータが『私も忘れないでほしいわ』とちょっと拗ねていた。
「な、なぜ、そこまで・・・」
「だって、困ってる人を助けるのは冒険者として当然じゃん♪」
「ですわ♪」
「ヴィクトールさんの教えは守らないとね」
そう、ずっとそう教えてもらってきたのだ。
英雄と呼ばれる凄腕の冒険者のお父さんに、だから私は出来る限りをやる。
「・・・・・・」
そんな風に言う私たちを見てソフィーナさんは唖然としていた。
正直、この逃亡生活の中で私もいろいろと学んだ。
子供の頃みたいにただ、そういうものだとは思っていない、きっと人によっては綺麗事だとか偽善だと言われるだろう。
でも、これが私の冒険者としての誇りなのだ・・・たとえ魔女と言われていても心は冒険者としていたいのだ。
そして、このちっぽけな誇りを護る為に私は努力するし、強くなる。
きっと、お父さんのあの強さもこの信念があったからだと、成長した私は思うのだった。
この話が終わるころに私たちはお城に着いた。
ソフィーナさんが門の所にいた兵士に話して王様に帰ったことを報告してもらう。
少しすると兵士が戻ってきて謁見の間までくるようにと言った。
ソフィーナさんがそのまま私たちを案内し、謁見の間の前までくると少し待つように言われる。
「先に報告の為、騎士団長殿のみ入ってほしいとのことです」
「了解した」
報告なら私達も一緒にすればいいのに。
まあ、まずは信頼できる人間の報告を聞きたいのかな?
《ソフィーナside》
カモメ達が謁見の間で待機し、中へ一人の女性が入ってくる。
彼女はこの国の騎士団長であり、フィルディナンドが一番信頼を寄せている人物でもあった。
「ご苦労だったな・・・・・・で、魔女はどうだった?」
「はっ、魔女殿の力は凄まじく、また、お仲間の方々も人間離れした強さを持っております」
「そうか・・・それで、お前は魔女をどう見る?」
「・・・・・・」
彼女は沈黙した、彼女には判断できなかったのである。
自分が見た、魔女たちはとても心優しく噂のような残虐性はまったく見せなかったのだ。
それどころか、彼女自身は魔女たちに少なからず好意を持っていた。
だが、それが自分を騙すための演技ではないと言い切れる自信が無かった。
人を見る目に自信はあったのだが、彼女たちは打算で動いているようには見えない。
もし、この裏に打算があったのならばとんでもない詐欺師だと思う。
でも、相手は魔女と呼ばれる人間、それくらいやってのけるかもしれない。
フィルディナンドもソフィーナが迷っているのに気づき口を開く。
「判断は俺がする、お前は思ったことを言ってみろ」
「はい・・・私は魔女殿が噂通りの人間とは思えません、むしろ、優しく思いやりのある人間かと・・・ですが、それがすべて私を欺く為の演技という可能性もないとはいえないかと・・・」
「なぜそう思う?」
「冒険者として困っている人を見捨てることができない、そう言っておりました。そして、今回の事件の主犯である者の怒りを自分に向け、このツァイスから目を逸らせようとしていたようです」
「・・・・・・ほう」
そう、カモメがやったことはそのまま見れば自分を犠牲にしてでもツァイスを護ろうとしたということだ。
彼女の言う、困っている人を見捨てられないと言う言葉も本当のことではと思ってしまうほどに。
もし、この言葉だけであれば胡散臭い人間だと思うだろう、だが、彼女は行動でもそれを示している。
「なるほど、魔女殿はお人好しというわけだな」
「王よ・・・どうするおつもりですか?」
「ふむ、そなたはどうしたい?」
「個人的には・・・彼女らを匿ってあげたいと思います、ですが・・・グランルーンを敵に回すことになるのはまずいかと・・・」
「まあ、そうだろうな」
魔女を匿えばグランルーンの怒りを買うのは必至である。
そうなれば、グランルーンがこの国に攻めてくる可能性もあるのだ・・・だが。
「この国は大陸の最果て。グランルーンからは一番離れているな」
「はい、戦争を仕掛けるにも他の国が邪魔をしてそうそううまくはできないでしょう」
「ああ、それに・・・」
途中まで言って口を濁すフィルディナンド。
普段は言いたいことをズバズバ言うフィルディナンドが口を濁す程の事があるのかとソフィーナが疑問に思う。
「何かあるのですか?」
「帝国が怪しい動きをしていてな」
「帝国がですか?」
「ああ、もしかしたら・・・戦争が起こるかもな」
「帝国がこのツァイスに?」
「いや、恐らく・・・グランルーンにだろう」
「なっ・・・大国同士の戦争が起こるというのですか!」
「恐らく・・・な」
大国同士の戦争となればそれはその国だけの問題では済まないかもしれない。
他国も巻き込まれ、この大陸中の戦争となる可能性もあるのだ・・・最果てにあるとはいえ、このツァイスも巻き込まれないとはいいきれない。
そうなったとき、もし魔女がこの国にいれば国を守ることが出来るかもしれない。
フィルディナンドはそう考えていた。
その為にも、魔女殿の願いを聞き入れるべきであることは彼女に願いを言われたときに思っていたことだ。
だが、彼女には魔女としての噂がすでにこのツァインでも十分浸透している。
それはメイドや兵士の反応をみればわかるというものだ、このままただ冒険者にするのでは恐らく、いらぬ諍いを生むことになるだろう。
そうならないように、いや、諍いをゼロにすることはできないだろう、だがそれを少しでも緩和できるようにする方法を考えている。
そして、その為に今回の依頼を頼み、ソフィーナを同行させたのだ。
「まったく、そなたの言うとおりであれば、俺は優しい少女を利用しようとする悪い王か・・・」
「微塵も間違っておりませんね」
「・・・おい」
まるで、まじめな話は終わりだというかのように二人の雰囲気が変わる。
それは、フィルディナンドとソフィーナが二人とも信頼しあっている証でもあるのだろう。
「では、魔女殿を呼んできてくれるか?」
「はっ」
ソフィーナは踵を返し、扉の方へと向かって行った。
今私たちは、ツァインの街の中を歩いている、私とクオンは手配書が出ている為、フードを被りお城まで移動していた。
「今更ですけど、あの声の主何者でしょうね」
ソフィーナさんが尋ねてくる。
確かに、高級な魔導具を持っていたり、あの場にいなかっただろうに声だけを飛ばしてきたりと普通ではない。
「まあ、あのまま誘いに乗るのは危険な相手だったと思うよ」
「どんな罠があるかわからないもんねぇ」
「喋り方もお生意気でしたわね」
『ああいうプライドの高そうなのは怒らせるのが楽しいわ』
しかし、あの声の主はランクAのルー・ガルーまで従えていた、普通じゃないよね。
「ところで、敵の大将を倒していないのですから、王様からの依頼は果たせたことにはなっておりませんわよね?」
「そうなんだよねぇ・・・」
王様との約束はウェアウルフの襲撃の原因を突き止めること、そしてその出来るのならば排除であった。
原因は突き止めたがその原因の排除は出来ていないのだ。
まあ、空間を渡る魔導具は壊しておいたのでまたウェアウルフが100体で攻めてくるということはないだろうけど。
「これでは、冒険者になるのはお預けですわね」
「うう・・・」
「それどころか、追い出される口実を与えてしまったかもしれませんわよ?」
「う」
そうだよね、条件を達成できなかったんだもんそうなってもおかしくない・・・うう、やっとお布団で寝れるようになると思ったのに・・・。
「いえ、それはないかと」
私ががっくりしているとソフィーナさんが口を開く。
「まだ、この国の危機が去ったわけではありません、あの声の主はまたここに来るでしょう、ですので・・・」
「あ、それなら大丈夫だと思うよ」
「え?」
ソフィーナさんが喋っているところを途中で遮る。
「いや、あの声の主、魔導具壊したの相当怒ってたもん、きっとこの国の前に私に仕返しに来ると思う」
「あら、それを狙ってあんなことしたんですわよね?」
「まあ、じゃなきゃ、高級な魔導具を壊す意味ないからね」
私が言うと分かっていたと言うようにエリンシアとクオンが続けた。
「な・・・それでは魔女殿一人が危険に・・・」
「一人じゃありませんわよ」
「僕らがいるからね」
「あはは、さっすが二人とも頼りになるね」
当然と二人は胸を張った。頭の中ではディータが『私も忘れないでほしいわ』とちょっと拗ねていた。
「な、なぜ、そこまで・・・」
「だって、困ってる人を助けるのは冒険者として当然じゃん♪」
「ですわ♪」
「ヴィクトールさんの教えは守らないとね」
そう、ずっとそう教えてもらってきたのだ。
英雄と呼ばれる凄腕の冒険者のお父さんに、だから私は出来る限りをやる。
「・・・・・・」
そんな風に言う私たちを見てソフィーナさんは唖然としていた。
正直、この逃亡生活の中で私もいろいろと学んだ。
子供の頃みたいにただ、そういうものだとは思っていない、きっと人によっては綺麗事だとか偽善だと言われるだろう。
でも、これが私の冒険者としての誇りなのだ・・・たとえ魔女と言われていても心は冒険者としていたいのだ。
そして、このちっぽけな誇りを護る為に私は努力するし、強くなる。
きっと、お父さんのあの強さもこの信念があったからだと、成長した私は思うのだった。
この話が終わるころに私たちはお城に着いた。
ソフィーナさんが門の所にいた兵士に話して王様に帰ったことを報告してもらう。
少しすると兵士が戻ってきて謁見の間までくるようにと言った。
ソフィーナさんがそのまま私たちを案内し、謁見の間の前までくると少し待つように言われる。
「先に報告の為、騎士団長殿のみ入ってほしいとのことです」
「了解した」
報告なら私達も一緒にすればいいのに。
まあ、まずは信頼できる人間の報告を聞きたいのかな?
《ソフィーナside》
カモメ達が謁見の間で待機し、中へ一人の女性が入ってくる。
彼女はこの国の騎士団長であり、フィルディナンドが一番信頼を寄せている人物でもあった。
「ご苦労だったな・・・・・・で、魔女はどうだった?」
「はっ、魔女殿の力は凄まじく、また、お仲間の方々も人間離れした強さを持っております」
「そうか・・・それで、お前は魔女をどう見る?」
「・・・・・・」
彼女は沈黙した、彼女には判断できなかったのである。
自分が見た、魔女たちはとても心優しく噂のような残虐性はまったく見せなかったのだ。
それどころか、彼女自身は魔女たちに少なからず好意を持っていた。
だが、それが自分を騙すための演技ではないと言い切れる自信が無かった。
人を見る目に自信はあったのだが、彼女たちは打算で動いているようには見えない。
もし、この裏に打算があったのならばとんでもない詐欺師だと思う。
でも、相手は魔女と呼ばれる人間、それくらいやってのけるかもしれない。
フィルディナンドもソフィーナが迷っているのに気づき口を開く。
「判断は俺がする、お前は思ったことを言ってみろ」
「はい・・・私は魔女殿が噂通りの人間とは思えません、むしろ、優しく思いやりのある人間かと・・・ですが、それがすべて私を欺く為の演技という可能性もないとはいえないかと・・・」
「なぜそう思う?」
「冒険者として困っている人を見捨てることができない、そう言っておりました。そして、今回の事件の主犯である者の怒りを自分に向け、このツァイスから目を逸らせようとしていたようです」
「・・・・・・ほう」
そう、カモメがやったことはそのまま見れば自分を犠牲にしてでもツァイスを護ろうとしたということだ。
彼女の言う、困っている人を見捨てられないと言う言葉も本当のことではと思ってしまうほどに。
もし、この言葉だけであれば胡散臭い人間だと思うだろう、だが、彼女は行動でもそれを示している。
「なるほど、魔女殿はお人好しというわけだな」
「王よ・・・どうするおつもりですか?」
「ふむ、そなたはどうしたい?」
「個人的には・・・彼女らを匿ってあげたいと思います、ですが・・・グランルーンを敵に回すことになるのはまずいかと・・・」
「まあ、そうだろうな」
魔女を匿えばグランルーンの怒りを買うのは必至である。
そうなれば、グランルーンがこの国に攻めてくる可能性もあるのだ・・・だが。
「この国は大陸の最果て。グランルーンからは一番離れているな」
「はい、戦争を仕掛けるにも他の国が邪魔をしてそうそううまくはできないでしょう」
「ああ、それに・・・」
途中まで言って口を濁すフィルディナンド。
普段は言いたいことをズバズバ言うフィルディナンドが口を濁す程の事があるのかとソフィーナが疑問に思う。
「何かあるのですか?」
「帝国が怪しい動きをしていてな」
「帝国がですか?」
「ああ、もしかしたら・・・戦争が起こるかもな」
「帝国がこのツァイスに?」
「いや、恐らく・・・グランルーンにだろう」
「なっ・・・大国同士の戦争が起こるというのですか!」
「恐らく・・・な」
大国同士の戦争となればそれはその国だけの問題では済まないかもしれない。
他国も巻き込まれ、この大陸中の戦争となる可能性もあるのだ・・・最果てにあるとはいえ、このツァイスも巻き込まれないとはいいきれない。
そうなったとき、もし魔女がこの国にいれば国を守ることが出来るかもしれない。
フィルディナンドはそう考えていた。
その為にも、魔女殿の願いを聞き入れるべきであることは彼女に願いを言われたときに思っていたことだ。
だが、彼女には魔女としての噂がすでにこのツァインでも十分浸透している。
それはメイドや兵士の反応をみればわかるというものだ、このままただ冒険者にするのでは恐らく、いらぬ諍いを生むことになるだろう。
そうならないように、いや、諍いをゼロにすることはできないだろう、だがそれを少しでも緩和できるようにする方法を考えている。
そして、その為に今回の依頼を頼み、ソフィーナを同行させたのだ。
「まったく、そなたの言うとおりであれば、俺は優しい少女を利用しようとする悪い王か・・・」
「微塵も間違っておりませんね」
「・・・おい」
まるで、まじめな話は終わりだというかのように二人の雰囲気が変わる。
それは、フィルディナンドとソフィーナが二人とも信頼しあっている証でもあるのだろう。
「では、魔女殿を呼んできてくれるか?」
「はっ」
ソフィーナは踵を返し、扉の方へと向かって行った。
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