闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

文字の大きさ
72 / 412
3章

英雄の仲間

しおりを挟む
意識不明事件から数日が経ち、私たちは今、お城で王様と謁見をしている。
ギルドでなにか依頼を受けようとしていたところに、お城の兵士の人が王様が呼んでいると伝えに来てくれたのだ。

今日こそは冒険しようと思ってたのになぁ。
冒険者になってから、冒険者らしい自由な冒険をしていない気がする・・・事件はいっぱい起きているのに・・・なぜだ。



「それで王様、何かあったんですか?」
「ああ、実はな、魔女殿達に会いたいという者がいてな、紹介するために来てもらったのだ」
「私達に?」
「うむ、本来であればそんな事はしないのだが、相手が相手だったのでな。魔女殿には悪いが呼び出させてもらった」
「誰なんです?」


この王様が気にするほどの相手となるとどこかほかの国の王様?
いやいや、この国では恐怖されることが無くなったとはいえ、他の国では未だに指名手配されている極悪人扱いなのだ。
どこかの王様が自ら私に会いに来るなんてことはないだろう。
使者の類ならこの王様は追い返しているだろうし・・・。


「心配しなくて大丈夫ですよ、あなた方を敵視している方ではありませんから」
「ソフィーナも知っている人なの?」
「ええ、私を育ててくれた恩人であり家族であり、そして剣の師匠でもあります」
「そうなんだ?」


ふーん、ってことはソフィーナの知り合いってことかな?
ああ、王様にとっても知り合いという事か・・・でも、なんでそんな人が?


「でも、その方がどうしてカモメさんに?」
「ああ、アネル殿という者でな、元冒険者なのだが、最近はベラリッサ法国に行っていたのだが、先日戻られたのだ」


元冒険者なのか・・・なんでベラリッサに行ってたんだろう?



「ところで、先ほどから気になっているのだが魔女殿の横に浮いているぬいぐるみみたいなのはなんなのだ?」
「え、あっと・・・」


どうしよう、王様たちにはディータが女神だって事話しておいた方がいいかな?
黙っている必要はない気がするし・・・。
私が答えに悩んでいるとディータが代わりに答えた。


「カモメの新しい仲間のディータよ。よろしく」
「ほう、これまた珍妙な仲間が出来たものだな」
「ちんみょっ!?」


王様が面白そうに言うとディータのこめかみに青筋が立つのが見える。


「王、失礼ですよ・・・こんなに可愛らしいではないですか」


今度はソフィーナがそう言うとディータを抱きかかえる。


「はなせええええええ!」


小さな手足をばたつかせながらディータはソフィーナの腕の中でもがいていた。
あはは・・・どうやら、ディータ的には教えない方がいいと判断したようだ・・・なぜだろう?


後で聞いてみたが、コハクたちの時はすでに事情をほとんど知っているような状態だったので仕方なかったが、魔王がすでに復活しているとわかった以上、闇の女神の存在を多くの人間に知られるわけにはいかないらしい。
ディータや私たちには特に問題ないが知っていることで魔族に狙われる可能性も出てくるからだ。
なるほど・・・そこまでは考えられなかったよ、さすがディータだね。



「それで、カモメに会いたいという方はどこに?」
「ああ、この城にいる。今、呼びに行かせているから少し待ってもらえるか?」
「りょーかい」


ディータがソフィーナにもみくちゃにされているのを見ながら少し待っていると、謁見の間の扉が開く。


「おっと、来たようだな」
「すみません、お待たせしました」


入ってきたのは緑髪の長髪が神秘的で絵にかいたような美女と言える女性である。
歩く姿にも気品があり、ニコリ微笑む姿は私が男だったら見惚れてしまっただろう。
ハッと、不安になりクオンの方を見てみると、クオンは入ってきた女性そっちのけでディータをからかっていた・・・。
安心したけど、男としてそれでいいの・・・クオン。


「アネル殿、こちらが魔女殿だ」
「まあ、ソフィーナの言う通りとても可愛らしい方ね」
「え、あ・・・どうも」


優しい微笑みを浮かべながら私の方へと近寄ってくる。
なんというか、理想の女性が目の前にいる。そんな感じだ。


「初めまして、私はアネルって言うの」
「あ・・・カモメ=トゥエリアです」
「ふふふ・・・ほんとアスカにそっくりね」
「え・・・お母さん?お母さんを知ってるんですか?」


いきなりお母さんの名前が出てきてびっくりする。
元冒険者って言っていたし、冒険者時代のお母さんを知っているんだろうか?


「知っているわ、アスカもヴィクトールも、だって、同じパーティだったもの」
「え!?」


お父さんたちと同じパーティだったということは邪竜を倒した英雄のパーティだったということだ。
お父さんたちはそのパーティ以外にパーティを組んだことが無いと言っていた。


「ヴィクトールさんと同じということは英雄のパーティですの?」
「ええ、そう言われているわね・・・みんなただ、がむしゃらに守りたいものの為に戦っただけなんだけどね」


英雄のパーティと聞いて、ディータとじゃれていたクオンもこちらを向いた。
そして、その隙を狙って襲い掛かってくるディータを見もせずに躱すクオン。
クオンに躱され、勢い止まらずディータはこちらに転がってきた。


「ちょっと、避けるんじゃないわよ!」
「あら?」
「あ、ごめんなさい、私の仲間のディータです。」
「え・・・・・・・・・ディータ?」
「もう、ディータ、少し大人しくしててよー」
「あの根暗坊主が悪いのよ・・・って、なによ?」


驚いた表情でディータを見ているアネルさん。
それに気づいたディータがぶっきらぼうにそう言った。


「あなた・・・ディータっていうの?」
「そうよ・・・何か問題でもあるのかしら?」
「・・・・・・いえ、なんでもないわ。ふふふ、可愛い仲間ね」


少し難しい顔をした後、アネルさんはこちらを向いて再び笑顔で言ってきた。


「立ち話もなんだし、どこかで食事でもしましょう?アスカとヴィクトールの結婚後の事をもっと聞きたいわ」
「あ、私も冒険者時代のお父さんたちの事をもっと聞きたい!」
「嬉しいわ、それじゃあ、私のおすすめのお店があるからそこでどう?」
「是非、みんなもいいかな?」
「ええ、構いませんわ」
「僕も問題ないよ」
「私もいいわよ」


皆も快くオーケーしてくれたので私たちは城を後にし、ご飯を食べることにした。
丁度お昼時だったのでよかった。






私達が、食事処に向かって歩いていると、街の大通りで騒いでいる人たちがいた。


「なんだろ、喧嘩かな?」


この街でも時折、喧嘩や騒ぎが起きるときがある。
ただ、大抵すぐに兵士さんがやってきてその場を収めてくれるのだが・・・。


「揉めている相手は兵士だね・・・」


クオンの言う通り、私たちの所から兵士さんがいるのが見えるのだが、その兵士さんがなにやらもめているようだ。
相手はここからの位置だとよく見えないが小柄な人物のように見える。
女性か・・・それとも子供かな?


「ちょっと様子を見に行ってみましょう」
「そだね」


アネルさんの言う通り、私たちはその騒ぎの中心へと向かう。
近づくと兵士の人のもめている相手が見えてきた。
白い服に茶髪の男の子が兵士に文句を言っているのだ。


「じゃから、余は魔女を探しているだけだといっているだろう!」
「ふざけるなっ、貴様は昨日の魔物使いではないか!そんな奴がどうやってこの街に入ったのだ!」
「余は魔物使いではないぞ・・・まったく、供がいては入れぬというから余、一人で来たのではないか・・・普通に通してくれたぞ」
「馬鹿な、貴様の人相はすでに伝えて通さぬよう言っておいたはずだ、通れるわけがない!」
「ははは、ついでにちょっと見た目を変えたのだ、余はすごいだろう?」


よくわからない会話をしているが、どうやらあの少年は私を探しているらしい、見覚えは無いけど、誰だろう?


「あの・・・」
「これは、魔女殿・・・それにアネル殿まで!」
「なにか、あったのですか?」


アネルさんは街の人や兵士にも人気らしく、先ほどからアネルさんの存在に気が付いた街の人たちも注目していた。


「それが・・・」
「おお、そなたが魔女か?」
「えっと・・・うん、そうだけど?」
「ほうほう、レディの奴の言う通りなかなか強そうではないか!」


レディ・・・え、今レディって言った?


「レディを知ってるの?」
「む、おお、知っておるぞ、今は余の元におる」
「どういうこと?」
「ふむ、知りたいか?」


ニヤリと子供らしくない笑いをして少年は私の眼を見る。


「知りたいのであれば余と戦うのじゃ」
「え?・・・・なんで?」
「余が戦いたいからじゃ」
「いやいや、意味が解らないよ」
「じゃが、レディの事を知りたいのじゃろう?もしかしたら余の元で捕まって拷問を受けているかもしれんぞ?」
「なっ」


レディが・・・?
あのレディが捕まるとは思えない・・・でも、もし本当にそうなら助けてあげないと。
レディには返しても返しきれないほどの恩もある・・・それに友達だ。


「レディに何をしたの?」
「ほう・・・いい目になったのう、じゃが、さっきから行っておるじゃろう?余と戦え、でなければ教えんぞ?」
「駄目よ、カモメちゃん。こんなところで戦ったら街の人が・・・」
「う・・・」


そうだ、アネルさんの言う通りここで戦ったら街の人を巻き込んじゃうし、街も壊してしまうだろう。


「ギルドに移動しましょう、あそこなら訓練場があるわ。そこを貸し切るからそこでやりなさい」
「そうね、それがいいわカモメ・・・見たところただ者じゃなさそうだしね」


そう、この小さな少年から溢れる魔力はただ者ではない・・・この少年ならレディを捕らえることもできるのではないだろうか・・・。
子供の頃の私から見ても規格外の力を持ったレディ・・・もし本当にレディを捕らえているなら・・・私は勝てるの?
でも、ここで逃げるわけにはいかないのだ、それなら・・・必ず勝つ!


「それでいい?」
「余は構わぬぞ!」


私は兵士さんにこの事を王様に伝えるように頼んでギルドへと移動することにした。
ギルドの訓練場はかなりの広さがある為、派手に暴れても問題はないだろう。
まあ、黒炎滅撃《フレアザード》とか街ごと破壊しそうな魔法は使えないけどね。


「ふふふ、楽しみじゃの~♪」


見た目通り子供の用にはしゃぎながら少年は私たちの後を付いてきた。
一体、何が目的なのか・・・そして、レディは無事なのだろうか・・・? 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

処理中です...