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3章
白竜ラガナ
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待ちであった茶髪の子供を連れて、私たちはギルドの訓練場へ来ていた。
ここは普段は冒険者たちが模擬戦や剣や魔法の練習に使っているのだが、今は殆どの冒険者が訓練場の端っこに移動している。
アネルさんがギルドに頼んで貸し切り状態にしてくれたのだ。
アネルさんはここの冒険者に顔が効くのかアネルさんが頼むとほとんどの人が二つ返事で了承してくれた。
アネルさんを知らない最近冒険者になったばっかりであろう人たちは多少渋ったが私やアイナが頼むと渋々移動してくれた。
「ふっふっふー、腕がなるのう」
「私が勝ったらレディをどうしたのか教えなさいよね」
「もちろんじゃ、余は嘘はつかん」
「そう」
私はバトーネを構え、少年と対峙した。
少年は片足で軽く弾みながら余裕の笑みを浮かべている。
少年が並みの強さでないのは私にも解る。
まるで、お父さんやラインハルトさんを相手にしているような凄みを感じるのだ。
「それじゃ、いくぞ!」
少年は武器も持たずに高速でこちらに向かってきた。
軽くジャンプをすると、その勢いのまま足を回しかかとを落としてくる。
私はそれをバトーネで防ぐが・・・重い。
少年は軽く攻撃をしているように見えるがその一撃がとても重いのだ。
受けた私はその重さで後ろに押される。
「さすがじゃな、どんどん行くぞ!」
「くっ」
少年が右へ左へフェイントを入れながら拳と蹴りで攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃は軽やかでまるで踊りでも見ているかのような動きであった。
しかし、その一撃一撃はかなり重い。
お父さんがパワーファイタータイプの拳士だったとしたらこの子はテクニックタイプの拳士なのだろう。
「やるのう、ではこれはどうじゃ!」
少年は口をパカッと開けると驚くことに口から炎を吐いてきた。
「なっ!あれは炎のブレスではありませんの!?」
「そう・・・見えるね・・・、ということは・・・」
私は咄嗟に炎のブレスを風の結界で防ぐ。
人間は口から炎を吐かない・・・当然だ。
いや、曲芸師とかであればもしかしたらやる人もいるかもしれないが、この子は違うだろう。
ということは・・・。
「あなた・・・魔物?」
「おお、そういえば言っておらんかったな、余はホワイトドラゴン・・・白竜のラガナじゃ!」
ドラゴンといえばランクSの魔物である・・・でも、この子・・・。
「ドラゴンは確かに人の言葉を話すわ・・・でも、あの少年は・・・」
「異常種ね」
アネルさんとディータの言う通りである・・・この子は異常種・・・レディと同じ人間のように心を持った魔物だ。
「ちょっと待って・・・レディと同じ心を持った魔物なの?」
「おお、その通りじゃ!」
確か、私と別れるときレディは自分と同じような異常種を探すと言っていた。
この子がそうなの・・・?
・・・・・・・・ってことは。
「じゃあ、レディとは友達なの?」
「友達ではない、部下じゃ!」
「ぶ、部下ぁ?」
「うむ、レディは我が白竜ファミリーの一員なのじゃ!」
「白竜ファミリー・・・ということは、レディが拷問されているとかっていうのは・・・」
「もちろん、嘘なのじゃ!」
「なんですってぇええ!」
ああもう!なにさ!じゃあ、なんで私はこの子と戦ってるの!
「じゃあ、私たちが戦う意味ないじゃん・・・」
「あ!しまったのじゃ!・・・えっと、えっと・・・そう!今言ったのは嘘なのじゃ!レディは余に捕まってそれはつらーい拷問中なのじゃ!」
「いやいや・・・」
いくら何でもそれは嘘だって解るよ・・・はあ、なんか疲れた。
「と、とにかく戦いの続きをするのじゃ!」
「えー・・・」
「やる気が無くなっているのじゃ!?やるのじゃ!やーるーのーじゃああああ!!!」
「なんでそんなに戦いたいの?」
「決まっておるのじゃ!強いものと戦うのは楽しいからなのじゃ!」
「うわぁ・・・」
なんて言うんだっけ・・・えっと、あ・・・そうだ戦闘狂、バトルジャンキーとか言うタイプの人間だ・・・あ、いやドラゴンか。
「お主の噂は聞いておるぞ!ある国では英雄と王を倒し、ある国では城を破壊し、ある国では盗賊団を壊滅させたとか!」
「えっと・・・前半は濡れ衣だよ?」
「あら、後半は本当なの?」
「ノーコメントよ」
私が正直に言うと、アネルさんがディータに尋ねていた。
アネルさんディータの事気に入ったのかな?さっきからずっと何かにつけて話しかけている。
「なんじゃ!魔女ともあろう者が逃げるのか!」
「あんですって?」
「魔女は弱虫じゃのー、余に恐れおののいて戦いを放棄するというのじゃな!」
「むかっ」
弱虫なんかじゃないもん!
「どうしたのじゃ、弱虫魔女なんかに用はないのじゃ・・・もう言ってよいぞ?」
「むかむかっ!・・・上等じゃない・・・相手になってあげるよ!!!」
「釣れたのじゃ!」
小さくガッツポーズをするラガナ、もう、泣いても許してあげないんだから!
「いくよ!」
私はバトーネを振りかぶりながらラガナとの距離を詰める。
「甘いのじゃ!」
私のバトーネを軽々と片腕で受け止めるラガナ。
嘘でしょ、かなり魔力込めて威力を上げてるのに軽々と受け止められてしまった。
「見た目は人間のように見えるじゃろうが、余の肌はドラゴンの皮膚と同じ強度じゃ!その程度の棒っ切れでダメージを与えられるわけがないのじゃ!」
「なにそれひどい!」
私のバトーネを受け止めると、ラガナは拳を繰り出してくる。
かなりの威力のある拳だ、あれにあたるわけにはいかない。
私はその拳を避け、左掌をラガナのお腹のあたりに突き出す。
そして・・・。
「風弾!」
「うおお!」
風の魔法でラガナを訓練場の壁まで吹き飛ばし叩き付けた・・・ちょっとやり過ぎた?
そう思ったがラガナはまるでダメージが無いのかケロリとしている。
「わはははは、やるのじゃ!」
「ドラゴンは伊達じゃないってことか・・・」
私は再びバトーネを構える。
今度は全力で魔力を込めてやる!
「やああああ!」
「ぐっ!さっきより重いのじゃ!」
「まだまだ!電爆撃」
「ぐおおおお!」
雷の魔法を受けて、体が痺れるラガナ、その隙を見逃さず私はバトーネで追撃を放つ。
「うおっと!?」
だが、しびれている体を必死に動かし、ラガナはバトーネを躱した。
「なんと・・・最初の時とは全然違う動きのキレではないか!どうして最初から本気を出してこなかったのじゃ?」
「最初・・・だって、最初はレディが捕まっているかもしれないって思ったから、どうやって情報を聞こうかとか色々考えてたからね」
「何じゃお主、戦いの最中にそんなことを考えておるのか?」
「そりゃね」
「戦いとは本能でやるものじゃろう、殴りたいときに殴り、蹴りたいときに蹴る。そして拳と拳を交えて語り合うのが戦いというものじゃ!」
「それは、戦闘狂のあなたみたいな人だけだよ・・・」
「何を言っておるのじゃ?そなたも余と同じじゃろう?」
・・・・え?私、戦闘狂じゃないよ・・・絶対違うよ!?
「余には分かるぞ、そなたも直感で動くタイプじゃ」
「あ・・・そういう?」
ビックリした私が戦闘狂仲間だと思われているのかと思ったよ。
直感で動くかぁ・・・確かにその方が楽なんだけど・・・ね。
「確かに子供の頃はそうしてたけど・・・今は何も考えずに戦うなんてこと出来ないよ・・・本気で戦ったら周りの人を傷つけることもあるし」
「何を言っておるのじゃ、それも直感でなんとかすればよいではないか?」
「そんな無茶な・・・」
いくら何でもそんな都合よくは行かないって・・・。
「無茶なものか・・・こうやるのじゃ!」
ラガナはそう言うと、私に向かって特大の炎のブレスを吐いてきた。
ちょっと、こんな広範囲のブレスを吐いたら後ろで見ている人たちに被害が・・・・。
そう思って私は後ろにいる人を確認しようと視線を後ろに移す、やっぱり何人かの冒険者が私の後ろで観戦をしていた。
くっ、なんとか防がないと・・・そう思った矢先、後ろに危険な気配を感じる。
「なっ!?」
私の後ろにはさっきまで正面にいたはずのラガナが回り込んでおり、そして、眼の前から迫る特大のブレスと同じ大きさのブレスを吐いてきた。
そして、私のいるところで両方のブレスがぶつかり合うと混ざり合い炎の竜巻のように渦を巻いた。
「どうじゃ!これなら周りに被害はでなかろう!」
確かに炎は上へと逃げている為、周りの人には被害が出ないだろう・・・だが。
私の周りは大変なことになっている・・・これ普通死んじゃうよ?!
「氷花乱舞!!」
私は、自分の周りに氷の魔法と風の魔法を合成した魔法を展開する。
氷はまるで花弁のように私の周りを舞い、ラガナの炎のブレスをかき消していった。
「わはは、やるのう!」
「アンタねぇ、無茶苦茶しないでよ!!」
「無茶苦茶ではない本能に従って戦っておるのじゃ!」
「意味わかんない!」
あーもう!あったまきた!
「いいわよ・・・私も直感でたたかってやろーじゃないの!」
もうどうなっても知らないから!
なんかもう、考えてるのバカバカしくなってきたよ・・・っていうか、なんで私戦ってるんだっけ?
まあ、もういいや・・・考えるのやーめた!
「暴風轟炎!」
先程のラガナのブレスと同じように私の魔法は螺旋状の炎となってラガナの周りに現れた。
「ぬお!?」
炎が刃のようになってラガナを切り刻むのだが・・・。
「わはは、効かんのう」
ラガナの竜の皮膚には効かないようだ・・・だろうね。
「わはは・・・は?」
私は、炎の螺旋の中から飛び出し、バトーネに思いっきり魔力を込めラガナに叩き付けた。
「ぎゃん!?」
ラガナは顔面を叩き付けられ砂埃を上げながら再び訓練場の壁に衝突する。
今度のは効いたのか顔を抑えながら起き上がった。
「な、なんという無茶を・・・」
「やるわねカモメ」
驚いているアネルさんとは別にディータは私を褒める。
クオンとエリンシアは頭に手をやってあちゃーと言った感じだ。
なぜみんながこんな反応をするかというと私は自分の魔法の中に突っ込み、荒れ狂う炎と風の中を進んでラガナの意表をついたのだ。
その為、私は結構傷を負っている・・・自分の魔法で。
これだけ、身を犠牲にしたのだ・・・まさか、一撃で終わるなんて思ってないよね?
「闇雷纏」
私は闇の魔法で雷を体に纏わせ身体能力を上げる。
そして、瞬く間にラガナに詰め寄り、再びバトーネを浴びせる。
「ぬあ!?」
反応しきれず再び、ふっとぶラガナ・・・そして。
「どりゃあああああああああああ!」
吹っ飛んだ先へ私は移動すると、今度はおもいっきりバトーネを振り下ろした。
まるで、1トンくらいの重りが落ちたような音がして訓練場にはクレーターのようなへこんだ地面が出来上がった。
「ふ・・・ふははは、面白いのじゃ!」
ラガナはとんでもない威力のバトーネを喰らったはずであるのに勢いよく飛び起きるとこちらに向かってきた。
いいじゃん・・・とことんやってあげるよ!
私はバトーネを握り直すと迎撃の準備に入る。
ラガナの右の拳をバトーネで滑らし、ラガナの肩に一撃を入れようとするもラガナは身を捻りそれを躱し、その捻った時の勢いを利用して右の足を後ろ回し蹴りの要領で私に放ってくる。
それを、私は棒高跳びの要領で空中にジャンプし避ける、そして、残していたバトーネをわざと蹴らせて蹴られたバトーネの勢いをそのまま持っている部分を軸にして回転させ、ラガナに振り下ろす。
ラガナはそれを地面を転がり躱すとブレスを吐いて再度私に攻撃をしてきたが私は恐らくそう来るだろうと思って闇雷纏を解いて風の魔法でブレスを押し返す。
「ぐおおおおなのじゃ!」
ブレスはそのまま、吐いた本人であるラガナを焼いた。
「面白いのじゃ!そなたと戦うのは面白いのじゃ!!」
「まだまだ、こんなもんじゃ終わらせないよ!」
=================================================
「カモメちゃんが使ったあの魔法・・・そう、やっぱり・・・」
「アネル、どうかしたの?」
「いいえ、なんでもないわ。ディータさん」
「?」
しかし、驚いたわね。
あのホワイトドラゴンの異常種、あれだけのカモメの攻撃を受けてもまだぴんぴんしてるわ。
おまけに自分のブレスまでくらっているのに。
それにカモメもいつの間にか楽しみ始めてるし・・・あの子も戦闘狂の素質あるんじゃないかしら・・・まあ、それも可愛いからいっか。
戦いはまだ終わらない、二人は再び対峙し構えた。
ここは普段は冒険者たちが模擬戦や剣や魔法の練習に使っているのだが、今は殆どの冒険者が訓練場の端っこに移動している。
アネルさんがギルドに頼んで貸し切り状態にしてくれたのだ。
アネルさんはここの冒険者に顔が効くのかアネルさんが頼むとほとんどの人が二つ返事で了承してくれた。
アネルさんを知らない最近冒険者になったばっかりであろう人たちは多少渋ったが私やアイナが頼むと渋々移動してくれた。
「ふっふっふー、腕がなるのう」
「私が勝ったらレディをどうしたのか教えなさいよね」
「もちろんじゃ、余は嘘はつかん」
「そう」
私はバトーネを構え、少年と対峙した。
少年は片足で軽く弾みながら余裕の笑みを浮かべている。
少年が並みの強さでないのは私にも解る。
まるで、お父さんやラインハルトさんを相手にしているような凄みを感じるのだ。
「それじゃ、いくぞ!」
少年は武器も持たずに高速でこちらに向かってきた。
軽くジャンプをすると、その勢いのまま足を回しかかとを落としてくる。
私はそれをバトーネで防ぐが・・・重い。
少年は軽く攻撃をしているように見えるがその一撃がとても重いのだ。
受けた私はその重さで後ろに押される。
「さすがじゃな、どんどん行くぞ!」
「くっ」
少年が右へ左へフェイントを入れながら拳と蹴りで攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃は軽やかでまるで踊りでも見ているかのような動きであった。
しかし、その一撃一撃はかなり重い。
お父さんがパワーファイタータイプの拳士だったとしたらこの子はテクニックタイプの拳士なのだろう。
「やるのう、ではこれはどうじゃ!」
少年は口をパカッと開けると驚くことに口から炎を吐いてきた。
「なっ!あれは炎のブレスではありませんの!?」
「そう・・・見えるね・・・、ということは・・・」
私は咄嗟に炎のブレスを風の結界で防ぐ。
人間は口から炎を吐かない・・・当然だ。
いや、曲芸師とかであればもしかしたらやる人もいるかもしれないが、この子は違うだろう。
ということは・・・。
「あなた・・・魔物?」
「おお、そういえば言っておらんかったな、余はホワイトドラゴン・・・白竜のラガナじゃ!」
ドラゴンといえばランクSの魔物である・・・でも、この子・・・。
「ドラゴンは確かに人の言葉を話すわ・・・でも、あの少年は・・・」
「異常種ね」
アネルさんとディータの言う通りである・・・この子は異常種・・・レディと同じ人間のように心を持った魔物だ。
「ちょっと待って・・・レディと同じ心を持った魔物なの?」
「おお、その通りじゃ!」
確か、私と別れるときレディは自分と同じような異常種を探すと言っていた。
この子がそうなの・・・?
・・・・・・・・ってことは。
「じゃあ、レディとは友達なの?」
「友達ではない、部下じゃ!」
「ぶ、部下ぁ?」
「うむ、レディは我が白竜ファミリーの一員なのじゃ!」
「白竜ファミリー・・・ということは、レディが拷問されているとかっていうのは・・・」
「もちろん、嘘なのじゃ!」
「なんですってぇええ!」
ああもう!なにさ!じゃあ、なんで私はこの子と戦ってるの!
「じゃあ、私たちが戦う意味ないじゃん・・・」
「あ!しまったのじゃ!・・・えっと、えっと・・・そう!今言ったのは嘘なのじゃ!レディは余に捕まってそれはつらーい拷問中なのじゃ!」
「いやいや・・・」
いくら何でもそれは嘘だって解るよ・・・はあ、なんか疲れた。
「と、とにかく戦いの続きをするのじゃ!」
「えー・・・」
「やる気が無くなっているのじゃ!?やるのじゃ!やーるーのーじゃああああ!!!」
「なんでそんなに戦いたいの?」
「決まっておるのじゃ!強いものと戦うのは楽しいからなのじゃ!」
「うわぁ・・・」
なんて言うんだっけ・・・えっと、あ・・・そうだ戦闘狂、バトルジャンキーとか言うタイプの人間だ・・・あ、いやドラゴンか。
「お主の噂は聞いておるぞ!ある国では英雄と王を倒し、ある国では城を破壊し、ある国では盗賊団を壊滅させたとか!」
「えっと・・・前半は濡れ衣だよ?」
「あら、後半は本当なの?」
「ノーコメントよ」
私が正直に言うと、アネルさんがディータに尋ねていた。
アネルさんディータの事気に入ったのかな?さっきからずっと何かにつけて話しかけている。
「なんじゃ!魔女ともあろう者が逃げるのか!」
「あんですって?」
「魔女は弱虫じゃのー、余に恐れおののいて戦いを放棄するというのじゃな!」
「むかっ」
弱虫なんかじゃないもん!
「どうしたのじゃ、弱虫魔女なんかに用はないのじゃ・・・もう言ってよいぞ?」
「むかむかっ!・・・上等じゃない・・・相手になってあげるよ!!!」
「釣れたのじゃ!」
小さくガッツポーズをするラガナ、もう、泣いても許してあげないんだから!
「いくよ!」
私はバトーネを振りかぶりながらラガナとの距離を詰める。
「甘いのじゃ!」
私のバトーネを軽々と片腕で受け止めるラガナ。
嘘でしょ、かなり魔力込めて威力を上げてるのに軽々と受け止められてしまった。
「見た目は人間のように見えるじゃろうが、余の肌はドラゴンの皮膚と同じ強度じゃ!その程度の棒っ切れでダメージを与えられるわけがないのじゃ!」
「なにそれひどい!」
私のバトーネを受け止めると、ラガナは拳を繰り出してくる。
かなりの威力のある拳だ、あれにあたるわけにはいかない。
私はその拳を避け、左掌をラガナのお腹のあたりに突き出す。
そして・・・。
「風弾!」
「うおお!」
風の魔法でラガナを訓練場の壁まで吹き飛ばし叩き付けた・・・ちょっとやり過ぎた?
そう思ったがラガナはまるでダメージが無いのかケロリとしている。
「わはははは、やるのじゃ!」
「ドラゴンは伊達じゃないってことか・・・」
私は再びバトーネを構える。
今度は全力で魔力を込めてやる!
「やああああ!」
「ぐっ!さっきより重いのじゃ!」
「まだまだ!電爆撃」
「ぐおおおお!」
雷の魔法を受けて、体が痺れるラガナ、その隙を見逃さず私はバトーネで追撃を放つ。
「うおっと!?」
だが、しびれている体を必死に動かし、ラガナはバトーネを躱した。
「なんと・・・最初の時とは全然違う動きのキレではないか!どうして最初から本気を出してこなかったのじゃ?」
「最初・・・だって、最初はレディが捕まっているかもしれないって思ったから、どうやって情報を聞こうかとか色々考えてたからね」
「何じゃお主、戦いの最中にそんなことを考えておるのか?」
「そりゃね」
「戦いとは本能でやるものじゃろう、殴りたいときに殴り、蹴りたいときに蹴る。そして拳と拳を交えて語り合うのが戦いというものじゃ!」
「それは、戦闘狂のあなたみたいな人だけだよ・・・」
「何を言っておるのじゃ?そなたも余と同じじゃろう?」
・・・・え?私、戦闘狂じゃないよ・・・絶対違うよ!?
「余には分かるぞ、そなたも直感で動くタイプじゃ」
「あ・・・そういう?」
ビックリした私が戦闘狂仲間だと思われているのかと思ったよ。
直感で動くかぁ・・・確かにその方が楽なんだけど・・・ね。
「確かに子供の頃はそうしてたけど・・・今は何も考えずに戦うなんてこと出来ないよ・・・本気で戦ったら周りの人を傷つけることもあるし」
「何を言っておるのじゃ、それも直感でなんとかすればよいではないか?」
「そんな無茶な・・・」
いくら何でもそんな都合よくは行かないって・・・。
「無茶なものか・・・こうやるのじゃ!」
ラガナはそう言うと、私に向かって特大の炎のブレスを吐いてきた。
ちょっと、こんな広範囲のブレスを吐いたら後ろで見ている人たちに被害が・・・・。
そう思って私は後ろにいる人を確認しようと視線を後ろに移す、やっぱり何人かの冒険者が私の後ろで観戦をしていた。
くっ、なんとか防がないと・・・そう思った矢先、後ろに危険な気配を感じる。
「なっ!?」
私の後ろにはさっきまで正面にいたはずのラガナが回り込んでおり、そして、眼の前から迫る特大のブレスと同じ大きさのブレスを吐いてきた。
そして、私のいるところで両方のブレスがぶつかり合うと混ざり合い炎の竜巻のように渦を巻いた。
「どうじゃ!これなら周りに被害はでなかろう!」
確かに炎は上へと逃げている為、周りの人には被害が出ないだろう・・・だが。
私の周りは大変なことになっている・・・これ普通死んじゃうよ?!
「氷花乱舞!!」
私は、自分の周りに氷の魔法と風の魔法を合成した魔法を展開する。
氷はまるで花弁のように私の周りを舞い、ラガナの炎のブレスをかき消していった。
「わはは、やるのう!」
「アンタねぇ、無茶苦茶しないでよ!!」
「無茶苦茶ではない本能に従って戦っておるのじゃ!」
「意味わかんない!」
あーもう!あったまきた!
「いいわよ・・・私も直感でたたかってやろーじゃないの!」
もうどうなっても知らないから!
なんかもう、考えてるのバカバカしくなってきたよ・・・っていうか、なんで私戦ってるんだっけ?
まあ、もういいや・・・考えるのやーめた!
「暴風轟炎!」
先程のラガナのブレスと同じように私の魔法は螺旋状の炎となってラガナの周りに現れた。
「ぬお!?」
炎が刃のようになってラガナを切り刻むのだが・・・。
「わはは、効かんのう」
ラガナの竜の皮膚には効かないようだ・・・だろうね。
「わはは・・・は?」
私は、炎の螺旋の中から飛び出し、バトーネに思いっきり魔力を込めラガナに叩き付けた。
「ぎゃん!?」
ラガナは顔面を叩き付けられ砂埃を上げながら再び訓練場の壁に衝突する。
今度のは効いたのか顔を抑えながら起き上がった。
「な、なんという無茶を・・・」
「やるわねカモメ」
驚いているアネルさんとは別にディータは私を褒める。
クオンとエリンシアは頭に手をやってあちゃーと言った感じだ。
なぜみんながこんな反応をするかというと私は自分の魔法の中に突っ込み、荒れ狂う炎と風の中を進んでラガナの意表をついたのだ。
その為、私は結構傷を負っている・・・自分の魔法で。
これだけ、身を犠牲にしたのだ・・・まさか、一撃で終わるなんて思ってないよね?
「闇雷纏」
私は闇の魔法で雷を体に纏わせ身体能力を上げる。
そして、瞬く間にラガナに詰め寄り、再びバトーネを浴びせる。
「ぬあ!?」
反応しきれず再び、ふっとぶラガナ・・・そして。
「どりゃあああああああああああ!」
吹っ飛んだ先へ私は移動すると、今度はおもいっきりバトーネを振り下ろした。
まるで、1トンくらいの重りが落ちたような音がして訓練場にはクレーターのようなへこんだ地面が出来上がった。
「ふ・・・ふははは、面白いのじゃ!」
ラガナはとんでもない威力のバトーネを喰らったはずであるのに勢いよく飛び起きるとこちらに向かってきた。
いいじゃん・・・とことんやってあげるよ!
私はバトーネを握り直すと迎撃の準備に入る。
ラガナの右の拳をバトーネで滑らし、ラガナの肩に一撃を入れようとするもラガナは身を捻りそれを躱し、その捻った時の勢いを利用して右の足を後ろ回し蹴りの要領で私に放ってくる。
それを、私は棒高跳びの要領で空中にジャンプし避ける、そして、残していたバトーネをわざと蹴らせて蹴られたバトーネの勢いをそのまま持っている部分を軸にして回転させ、ラガナに振り下ろす。
ラガナはそれを地面を転がり躱すとブレスを吐いて再度私に攻撃をしてきたが私は恐らくそう来るだろうと思って闇雷纏を解いて風の魔法でブレスを押し返す。
「ぐおおおおなのじゃ!」
ブレスはそのまま、吐いた本人であるラガナを焼いた。
「面白いのじゃ!そなたと戦うのは面白いのじゃ!!」
「まだまだ、こんなもんじゃ終わらせないよ!」
=================================================
「カモメちゃんが使ったあの魔法・・・そう、やっぱり・・・」
「アネル、どうかしたの?」
「いいえ、なんでもないわ。ディータさん」
「?」
しかし、驚いたわね。
あのホワイトドラゴンの異常種、あれだけのカモメの攻撃を受けてもまだぴんぴんしてるわ。
おまけに自分のブレスまでくらっているのに。
それにカモメもいつの間にか楽しみ始めてるし・・・あの子も戦闘狂の素質あるんじゃないかしら・・・まあ、それも可愛いからいっか。
戦いはまだ終わらない、二人は再び対峙し構えた。
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