闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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3章

合魔気

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闇雷纏シュベルクレシェント


私は再び闇の雷を身体に纏うとラガナに襲い掛かる。
ラガナは避けず、正面から私のバトーネを左腕で受け止めると、開いている方の腕でこちらに攻撃を仕掛ける。
私はそれを負けじと右足の裏で受け止めてやった。

ラガナの攻撃を利用してそのまま後ろに飛んで距離を稼ぐと闇雷纏《シュベルクレシェント》を解き魔法を唱える。


氷束縛フリーズ
「ぬ・・・足が動かんのじゃ!」


氷の魔法で足を地面にくっつけてやった。
そして・・・。


「これは痛いよ・・・炸裂炎弾バーストフレイム!!」
「ぬお!?」


私の炎の魔法が動けないラガナに炸裂する。
少しやりすぎたかな?・・・そう思っていると爆炎の中からなにか光の玉が飛び出し、私に向かってきた。


「な、なに!?風結界ウィンディシールド!!」



私は慌てて風の結界を張りそれを防ごうとするも光の玉は私の風の結界を突き破り私のお腹に命中する。
咄嗟に闇雷纏シュベルクレシェントで防御力をあげるが、まるで鈍器で殴られたような痛みを受けて私は後ろへと転がった。


「く・・・何今の?」
「驚いたのじゃ?今のは気というものなのじゃ!・・・余のとっておきじゃ」
「気?」


聞いたことがある、様々な武術の達人は体内に流れる気といものを自在に操り魔法のような技を繰り出すとか・・・でも今のは。


「おお、気づいたかの?そうなのじゃ、今のはその気と余の魔力を合わせて作ったもの・・・その名も合魔気じゃ!」


そのまんまである。
本来、気というものは魔力がない者が魔力のある者に対抗する為に編み出された技である。
それを、魔力と合わせるなんて・・・まるで私の合成魔法のようだ。

「やるじゃない」
「ぬはは、そなたとの戦闘とても楽しいのじゃ!」
「私も」


私とラガナはお互いをみてニヤリと笑う。
傍から見れば異様な光景である、お互いに本気で戦っているのに本気で楽しんでいるのだから。



「ゆくぞ!竜魔気弾!」


ラガナが懐に構えた拳を勢いよくこちらに突き出すと、再び、私に光の玉が襲い掛かってくる。


「そっちが魔力と気の合成なら、こっちは合成魔法だよ!氷牙咆哮《アイシクルルジート》!」


氷を帯びた風の螺旋がラガナの竜魔気弾とぶつかり相殺される。


「風よ!」
「ぬ!」


私は、すぐさま風の刃を複数作り出し、ラガナに放った。


「その程度避けるまでもないのじゃ!」
「へぇ・・・そうかな?炎よ!雷よ!氷よ!変則合成魔法アレンジ!!」


先に放った風の刃に私は炎と雷と氷を別々に合成する。
4つの魔法の合成はまだ私にはできないが、別々の風の刃になら出来るのだ・・・ふっふっふー器用でしょ♪


「なんじゃと!?」


突如、合成魔法になり威力の上がった風の刃にラガナは驚愕する。
そして、迫りくる合成魔法の刃を合魔気を体の周りに展開させ身体能力を上げた状態で受ける。

なるほど、ラガナが異様にタフだったのはあれのせいか・・・なら。


「くう・・・今のは効いたのじゃ・・・」
「そう?・・・じゃあ、これはどうかな?」
「な!?」


間髪入れずに私はラガナの間近で再び魔法を唱える。
そう、合魔気を体の周りに展開させているが体とその合魔気の間にはすこしだけ隙間がある。
なので私はラガナのお腹のあたりにぴったりと掌をくっつけると直接魔法を叩き込んだ。


炸裂炎弾バーストフレイム!!」


容赦なく炎の上級魔法だ。



「ぐおおおおお!」


今回は合魔気に阻まれず完全に炎の魔法を喰らったためこんがりと焼きあがりプスプスと煙を上げていた。


「ドラゴンの丸焼きいっちょあがり~♪」
「「「容赦無っ!?」」」
「ちょっとカモメさん、その方、レディさんの仲間ですのよ!?」
「あ・・・忘れてた」


戦いに夢中になりラガナがレディの友達であることを忘れて全力でいっちゃったよ・・・大丈夫かな?
まあ、ドラゴンだし炎に体制くらいあるよね?大丈夫だよね?
そう思いながらラガナを見るとピクピクと動くだけで起き上がる気配はない・・・あ、やばいっぽい。


私は慌てて治癒魔法を掛けた。










「ぬあー、死ぬかと思ったのじゃ!」


私の治癒魔法でなんとか回復したラガナは死にかけたにも関わらず陽気な声をあげる。


「さすがは闇の魔女じゃ、そなたは強いのう!」
「死にかけたというのに元気ね」


ディータが呆れたように突っ込みをいれる。


「ぬははは!楽しかったから問題なしなのじゃ」
「たはは」
「決めたぞ、闇の魔女よ!」
「ん、何を?」
「今日から余はそなたのライバルなのじゃ!」
「・・・はい?」
「次は負けぬから覚悟しておくのじゃ!」


またやるつもりなのか・・・まあ、私もちょっと楽しかったからいいけど・・・あ、いやいや、迷惑な話だぁ。

勝負がつくと、周りから歓声が上がった。


「すげぇ・・・さすが魔女様だ!」
「あんな次元の戦い俺初めて見たよ・・・」
「俺もあんなふうに戦えるようになりてー!」
「ラガナ君もすごかったわよー!」
「ラガナ君も魔女様もかわいいー!」
「L・О・V・E・カ・モ・メ!!!」

見ていた人たちは殆どが冒険者である為、私たちの戦いを見て興奮しているようだった。
・・・・・え、最後のあの集団何?
なんか、弾幕とか張られてるんだけど・・・。

そう思って見ていると、その集団にディータが近づいていく。
いいぞ、ディータ、その集団に注意してやって!


「アンタたち、なかなかいい応援だったわよ!でも、この弾幕は改良の余地ありね、もっと可愛くしなさい!」
「はい、団長!ありがとうございます!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「ちょっとまてえええええええ!?」
「あら、どうしたのカモメ?」
「ディータ、何やってるの!?」
「何って、カモメのファンクラブの統率よ?」
「なんでそんなことやってるのさ!?」
「当然じゃない、私を差し置いてカモメのファンクラブを名乗ろうなんて烏滸がましいってものよ、だから、ファンクラブの在り方ってものを教えてあげたのよ」
「「「「ありがとうございます、団長!!!」」」」
「あうう・・・」
「あらあら」


私が脱力しているとアネルさんが楽しそうにこちらを見ている。
なんで笑ってるんですか!


「むー、ファンクラブかうらやましいのじゃ!」


欲しかったらあげるよ・・・・。
ラガナは私に対抗心を覚えたのか余もファンクラブを作るのじゃーと両手を上げて決意していた。
自分で作るものじゃないよ・・・勝手にできてるんだよ・・・迷惑なことに・・・しかも身内が率先してるって・・・あうう。



「ところで、レディさんは今、どこにいますの?」
「ん?街に入れなかったのでな、南の森でのんびりしていると思うぞ?」
「南の森って・・・」
「何やら壊れた館があったのでな、そこを目印にして各自自由行動中じゃ」
「南の森ってランクの低い冒険者が良くいくところだよね・・・」
「うん、そんなところに異常種のレディがいたら・・・」


私とクオンは顔を見合わせて言う。


「む?レディだけではないぞ、じいとミャアもおるぞ?」
「え・・・誰それ?」
「二人とも余とおなじ魔物の異常種じゃ!」
「・・・・・・なんてこった」


今頃、南の森では大騒ぎになっているのではないだろうか・・・ただでさえ異常種は本来の魔物より強い個体が多い、その為、普通は警戒されるし危険視もされる。
そんなのが三体も・・・レディの仲間ならむやみに人を襲ったりしないだろうけど・・・ラガナみたいに好戦的だったらどうしよう。


「あ、アネルさん・・・」
「そうね、お食事は今度にして、そのレディちゃんって子たちを探しましょうか」
「・・・はい」


大騒ぎになる前にレディたちを見つけられるといいなぁ・・・。


「大変だーー!南の森に異常種が出たらしいぞ!!!」


・・・駄目っぽい。
冒険者風の男性が慌てて、訓練場に入ってきて叫んだ。
冒険者たちが異常種狩りを始める前になんとかしないとね!


「余りに大騒ぎになるとフィルディナンドちゃんが兵を出すかもしれないわね」


確かにアネルさんの言う通りである。


「私はフィルディナンドちゃんに事情を説明してくるわ」
「すみません、お願いします」
「なら、ワタクシはアイナさんに報告してきますわ」
「あ、そうだね、エリンシア、お願い」


ギルドに言っておけば討伐依頼が出たりはしないかもしれない・・・少なくとも少しは待ってもらえるだろう。


「なら、僕は冒険者たちに事情を話してくるよ」
「うん、お願い」


クオンなら上手く冒険者の人たちを引き留めてくれるだろう。


「ディータ、私たちはラガナと一緒に森にレディたちを探しに行くよ!」
「解ったわ」
「ぬ?余はもう少し街を見て回りたいのじゃが・・・」
「そんなのは後!レディたちが心配じゃないの!?」
「あやつらが人間に後れをとるなどありえんのじゃ」


・・・・ああ、まあそれはそうだ。
って、そうじゃなく!


「そうだとしても!このままだと大騒ぎになっちゃうでしょ!言うこと聞かないなら今後一切勝負しないよ?」
「ぬ!?それは困るのじゃ!解ったのじゃ、すぐに向かうのじゃ!」


そう言うとラガナは背中から翼を出して空へと飛び立った・・・ほんとにドラゴンなんだね・・・。
って、見惚れてる場合じゃない。
一瞬、子供の背中からいきなりドラゴンの翼が生えるという異常事態に呆けてしまったが、すぐに気を取り直して、風の魔法でラガナを追いかける。


ああ・・・南の森にいる冒険者にイケメンがいませんように・・・。
イケメンを見たレディがどんな行動をとるか・・・また、以前のクレイさんのようなことにならないことを祈りながら私はラガナの後を追った。

 
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