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3章
人間とドラゴン
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私達がベインスにお礼を言う為に小屋に近づこうとすると突如上空から咆哮が轟く。
「な、なに!?」
「こ、こわいですぅ」
私は驚き上空を見る、コロは耳を塞ぎながら地面に蹲ってしまった。
「ドラゴンね・・・」
上空に羽ばたく3匹のドラゴンを見てディータが言葉を発する。
ディータの言う通り、空には3匹のドラゴンが羽を羽ばたかせて飛んでいた。
そういえば、ここはドラゴンたちの住処と言われているドラグ山脈だ、今までベインス以外に会わなかったから忘れてたよ。
さて、どうしたのものか、ドラゴンたちは明らかにこちらに敵意を向けている。
私達を侵入者として警戒しているのだろうか・・・ドラゴンと言えどやはり魔物である、あまり人を襲ったりはしないらしいが友好的というわけではない。
どちらかというと出会えば襲われることの方が多いらしい、ベインスみたいな変わり者は少ないだろう。
いや、ベインスにしたってアネルさんがいなければこちらに敵対していたのかもしれない。
「困ったわね・・・向こうはどうやらやる気らしいわよ?」
「みたいだニャ!敵意プンプンニャ!」
ディータとミャアの言う通りである、戦いは避けられないだろうか。
そう思っているとアネルさんが一人、前へと歩み出た。
「ア、アネルさん!?」
アネルさんはお父さんとパーティを組んでいたくらいだ、きっとものすごく強いのだろう。
お父さんのパーティは昔、邪竜と言われる、人々に災いを招いたドラゴンを退治したといわれている。
とはいえ、ドラゴン三匹相手に一人で戦うのはさすがに危険である。
だが、そんな私の心配を察してかアネルさんはこちらを向くと・・・。
「下がっていて」
と、一言だけ言うとさらに前に出るのだった。
アネルさんが前に出ると、ドラゴンたちはアネルさんを見て驚いたような表情をする。
そして、三匹で何やら話をした様子を見せると、こちらに降りてきた。
私達に対する敵意はまだなくなっていないがドラゴンたちはこちらに攻撃するそぶりはすでになくなっている。
三匹が地上に降り立つと、ラガナの使っている魔法なのだろう、人間に近い姿になるとアネルさんへと近づいてきた。
真ん中にいる一番年配そうな金髪のドラゴンがアネルさんへと話しかける。
「どうして、こちらに・・・」
「ベインスから変身の指輪を貰う為に寄らせてもらったわ」
「・・・そうですか」
金髪のドラゴンがレディたち三人を見ると理解したのか納得の言葉を言う。
そして、今度は私の方を見ると軽蔑したような不快そうな顔をした。
「しかし、なぜ人間が?」
「あら、それは私の事かしら?」
「な、何を、あなた様は別です!!」
「でも、私は人間の冒険者アネルよ・・・それは間違いないわ」
「それは・・・ですが・・・」
アネルさんの言葉に金髪のドラゴンは言葉を詰まらせた。
どういうことだろ?私にはその言葉の意味がよくわからなかったがアネルさんとあのドラゴンが知り合いであることは間違いなさそうだ。
「何をおっしゃるのですか!あなた様は・・・」
「ディラン!!」
後ろにいた青髪のドラゴンが何かを言おうとしたが金髪のドラゴンがそれを制する。
「すみません・・・」
「して、そちらの人間は?」
「私の友人よ」
「なっ・・・アネル様・・・あなたは・・・」
驚愕の表情をするドラゴンにアネルは優しく微笑んだ。
そちらの人間というのはアネル以外に人間が私しかいないことから私の事だとわかる。
アネルさんが私を友人と言ってくれることは嬉しかったが、ドラゴンたちの眼が私を睨みつけてきた。
んー、一体なんで私はこんなに睨まれているのだろう・・・。
「ちょっと、なんでカモメを睨んでいるのよ・・・カモメが何かしたのかしら?」
ディータが睨まれている私を庇うように私の顔の前まで浮かんで反論をしてくれる。
すると、青髪のドラゴンともう一匹の緑髪のドラゴンが反論してきた。
「なんでだと?人間がのうのうと我らドラゴンの前に現れること自体ふざけているではないか!」
「そうとも!」
「なんで、人間をそんなに敵視しているのよ・・・あなた達、千年前は一緒に戦っていたじゃない?」
「・・・・・貴様」
ディータがそう言うと、途端にドラゴンたちに怒りの表情が満ちる。
今にでもディータを噛み殺さんと言わんばかりの殺気を放ったのだ。
私は慌ててディータを抱きしめる。
「なんなの?・・・一体、あなた達と人間の間に何があったのよ?」
前にディータに聞いたことがある。
千年前の古の戦いのときのことである、魔王の軍勢と戦っていたディータ達は自分たちが女神であることを隠すため人間に姿を変え、女神に導かれたものとして魔王からこの世界を救ったのだ。
そして、その時の戦いの時には魔物であるドラゴンたちも協力したとのことである。
普通の魔物であれば意思疎通などできないのだがドラゴンは賢く、人間の言葉を理解することが出来たため、交渉したのだ。
ちなみに、魔物はディータ達、女神の創った者ではないらしい。
元々、この世界にいた生き物らしく、ディータ曰く自分たちの前にいた女神が創ったのだろうと言っていた。
その為、彼ら魔物は女神を崇拝してはいない、なので直接、頼みに行ったそうだ。
聡明なドラゴンたちはディータ達が女神であることに気付き、協力することを約束した。
そして、ドラゴンたちの力もあってなんとか魔王を撃退することに成功したのだ。
まあ、結果的にはディータと魔王の相打ちであったのでその後の事をディータは知らない。
その為、なぜドラゴンたちが人間を裏切り者などというのかわからないのだった。
「人間はあれだけの仕打ちをしてすでに忘れたというのか!・・・我らドラゴンは人間の蛮行を許すことはない!・・・アネル様の頼みでこちらから手出しはせぬが、我らの近くに寄ればその命は無いと思え!」
青髪のドラゴンが私を見て、そう怒鳴った。
私は、ドラゴンに何かをした覚えはない、その為、そう言われても困ってしまうだけである。
「アネル様・・・あまりここに人間を近づけないでいただきたい」
「・・・解ったわ」
そう言うと、ドラゴンたちは再び竜の姿に変わり飛び去って行った。
青髪と緑髪のドラゴンは未だに私の事を睨んでいたが・・・。
「アネル・・・あなたは知っているのよね?どうして、ドラゴンたちがあそこまで人間を憎んでいるの?」
そう、ドラゴンたちは明らかに私にだけ敵意を向けていた。
それは私が闇の魔女だからではなく、人間だからという理由だったのだ。
「・・・千年前、ドラゴンたちと人間が協力して魔王を撃退したのは知っているのですね」
アネルさんは私の方を見て話し始める。
「え、うん・・・ディータに聞いたことある」
「そうですか、ディータさんは物知りなのですね」
「いいから、教えなさい」
アネルさんが微笑みながら言うが、はぐらかされないぞと言わんばかりにディータが続きを促す。
「その千年前の古の戦いの少し後の話です。協力して魔王を撃退した人間とドラゴンは親交を深めるために今後とも協力しようと約束しました。そして、ドラゴンはドラグニル王国を人間はヴァルネッサ帝国を築きお互いに協力をして国を栄えさせたのです」
「そう」
「ですが、その約束は突如人間側から破られたのです」
「・・・なぜ?」
「正確な理由はわかりません・・・人間が強大な力を持つドラゴンを脅威に感じた為や人間以外の種族を認めない過激派の陰謀だとか色々あります」
「・・・・・」
「ですが、人間から仕掛けられた戦争でドラゴンたちは自分たちの身を護る為、仕方なく戦いました。そして・・・」
「そして?」
「ドラゴンと人間の架け橋をしていた女神の使いを人間側が殺めてしまったのです」
「なんですって!?」
女神の使いって・・・。
そうだよ、ディータと妹のレナという女神は自分たちを女神だと悟らせない為、女神に導かれた人間として人々を導いたはずだ・・・つまり、ディータがその時すでに異空間に魂を移動させている以上、殺されたというの光の女神であるレナである。
「レナが殺されたっていうの!?」
「・・・はい、そして、それを知ったドラゴンたちは怒り狂い、人間の国に攻め込んだのです。ですが、怒りで我を忘れてしまったドラゴンたちは人間に返り討ちにあい、散り散りになって逃げのびたそうです」
「・・・・・そんな」
私の腕の中にいたディータの体から力が抜ける。
妹のレナさんは死んでいると知ったのだ・・・。
「ディータ・・・」
私はなんと声を掛けていいのか分からず、慰めることも出来なかった。
「それが、ドラゴンが人間を恨む理由なのね」
ディータは力のないままそう言った。
「はい」
「解ったわ、話してくれて感謝するわ」
「ディータ・・・ごめんね」
「なんでカモメが謝るのよ」
「だって、私達人間が・・・」
私達人間がディータの妹を殺してしまったのだ。
それも、自分たちを救うために奔走してくれていた女神をだ・・・許されることではない。
「カモメが妹を殺したわけではないでしょう、あなたが謝ることはないわ」
「・・・でも」
「それに、その話には理解しがたいこともあるわ」
「どういうこと?」
「レナは私より戦いに向いてはいなかったけど、人間やドラゴンに殺されるほど弱くはないわよ・・・どうやったのかしら・・・。」
「それは私にもわかりません」
「・・・・・・・・・・そう」
ディータはしばらくアネルさんの顔を見ると、ため息を一つはいた後、そう言った。
「ドラゴンが人間を恨む理由の話はこれで終わりですね、では、ベインスに挨拶をしたらツァインに戻りましょう」
「ええ」
いつの間にか話についていけず眠りこけているミャアとドラゴンにおびえて震えていたコロを優しくなでていたレディが移動を開始することに気付いてアネルさんの後を付いていった。
私も後を追おうとするとディータが声を掛けてきた。
「カモメ、気を付けなさい、アネルはきっと何か隠しているわよ」
「え、どういうこと?」
「あの子、私が闇の女神だということを気付いているわ」
「・・・あ」
そうだ、先ほどの話の時にディータは自分が光の女神であるレナの姉であることを隠していなかった。
自分が闇の女神であることを知られれば、それを知った人間に魔王が何かしてくる可能性がある為である。
だが、先ほど光の女神が死んだことを知った時、ディータはそのことを考える余裕が無かったのだろう、光の女神の事を妹と呼んだのだ。
普通であればそこで疑問を持つはずである、レディはディータの事を知っている。ミャアは寝ていた。コロは殆ど話を理解できていなかったようだったので疑問を持つことはない。当然私も。
だが、話を理解していてディータの事をしらないアネルさんが疑問に思わないのはおかしいのだ・・・。
あの人・・・一体何者なのだろう・・・。
「それと、さっきも言ったけどカモメが昔の事を気にする必要はないわよ、あなただって私からすれば妹と同じように大切な家族なのだから」
「・・・ディータ」
ディータの言葉に私は心が温かくなった・・・嬉しい。
私はありがとうとディータに言うと二人で小屋に向かうのだった。
アネルさんが悪い人とは思えないが警戒はしておかないとならないね・・・。
「な、なに!?」
「こ、こわいですぅ」
私は驚き上空を見る、コロは耳を塞ぎながら地面に蹲ってしまった。
「ドラゴンね・・・」
上空に羽ばたく3匹のドラゴンを見てディータが言葉を発する。
ディータの言う通り、空には3匹のドラゴンが羽を羽ばたかせて飛んでいた。
そういえば、ここはドラゴンたちの住処と言われているドラグ山脈だ、今までベインス以外に会わなかったから忘れてたよ。
さて、どうしたのものか、ドラゴンたちは明らかにこちらに敵意を向けている。
私達を侵入者として警戒しているのだろうか・・・ドラゴンと言えどやはり魔物である、あまり人を襲ったりはしないらしいが友好的というわけではない。
どちらかというと出会えば襲われることの方が多いらしい、ベインスみたいな変わり者は少ないだろう。
いや、ベインスにしたってアネルさんがいなければこちらに敵対していたのかもしれない。
「困ったわね・・・向こうはどうやらやる気らしいわよ?」
「みたいだニャ!敵意プンプンニャ!」
ディータとミャアの言う通りである、戦いは避けられないだろうか。
そう思っているとアネルさんが一人、前へと歩み出た。
「ア、アネルさん!?」
アネルさんはお父さんとパーティを組んでいたくらいだ、きっとものすごく強いのだろう。
お父さんのパーティは昔、邪竜と言われる、人々に災いを招いたドラゴンを退治したといわれている。
とはいえ、ドラゴン三匹相手に一人で戦うのはさすがに危険である。
だが、そんな私の心配を察してかアネルさんはこちらを向くと・・・。
「下がっていて」
と、一言だけ言うとさらに前に出るのだった。
アネルさんが前に出ると、ドラゴンたちはアネルさんを見て驚いたような表情をする。
そして、三匹で何やら話をした様子を見せると、こちらに降りてきた。
私達に対する敵意はまだなくなっていないがドラゴンたちはこちらに攻撃するそぶりはすでになくなっている。
三匹が地上に降り立つと、ラガナの使っている魔法なのだろう、人間に近い姿になるとアネルさんへと近づいてきた。
真ん中にいる一番年配そうな金髪のドラゴンがアネルさんへと話しかける。
「どうして、こちらに・・・」
「ベインスから変身の指輪を貰う為に寄らせてもらったわ」
「・・・そうですか」
金髪のドラゴンがレディたち三人を見ると理解したのか納得の言葉を言う。
そして、今度は私の方を見ると軽蔑したような不快そうな顔をした。
「しかし、なぜ人間が?」
「あら、それは私の事かしら?」
「な、何を、あなた様は別です!!」
「でも、私は人間の冒険者アネルよ・・・それは間違いないわ」
「それは・・・ですが・・・」
アネルさんの言葉に金髪のドラゴンは言葉を詰まらせた。
どういうことだろ?私にはその言葉の意味がよくわからなかったがアネルさんとあのドラゴンが知り合いであることは間違いなさそうだ。
「何をおっしゃるのですか!あなた様は・・・」
「ディラン!!」
後ろにいた青髪のドラゴンが何かを言おうとしたが金髪のドラゴンがそれを制する。
「すみません・・・」
「して、そちらの人間は?」
「私の友人よ」
「なっ・・・アネル様・・・あなたは・・・」
驚愕の表情をするドラゴンにアネルは優しく微笑んだ。
そちらの人間というのはアネル以外に人間が私しかいないことから私の事だとわかる。
アネルさんが私を友人と言ってくれることは嬉しかったが、ドラゴンたちの眼が私を睨みつけてきた。
んー、一体なんで私はこんなに睨まれているのだろう・・・。
「ちょっと、なんでカモメを睨んでいるのよ・・・カモメが何かしたのかしら?」
ディータが睨まれている私を庇うように私の顔の前まで浮かんで反論をしてくれる。
すると、青髪のドラゴンともう一匹の緑髪のドラゴンが反論してきた。
「なんでだと?人間がのうのうと我らドラゴンの前に現れること自体ふざけているではないか!」
「そうとも!」
「なんで、人間をそんなに敵視しているのよ・・・あなた達、千年前は一緒に戦っていたじゃない?」
「・・・・・貴様」
ディータがそう言うと、途端にドラゴンたちに怒りの表情が満ちる。
今にでもディータを噛み殺さんと言わんばかりの殺気を放ったのだ。
私は慌ててディータを抱きしめる。
「なんなの?・・・一体、あなた達と人間の間に何があったのよ?」
前にディータに聞いたことがある。
千年前の古の戦いのときのことである、魔王の軍勢と戦っていたディータ達は自分たちが女神であることを隠すため人間に姿を変え、女神に導かれたものとして魔王からこの世界を救ったのだ。
そして、その時の戦いの時には魔物であるドラゴンたちも協力したとのことである。
普通の魔物であれば意思疎通などできないのだがドラゴンは賢く、人間の言葉を理解することが出来たため、交渉したのだ。
ちなみに、魔物はディータ達、女神の創った者ではないらしい。
元々、この世界にいた生き物らしく、ディータ曰く自分たちの前にいた女神が創ったのだろうと言っていた。
その為、彼ら魔物は女神を崇拝してはいない、なので直接、頼みに行ったそうだ。
聡明なドラゴンたちはディータ達が女神であることに気付き、協力することを約束した。
そして、ドラゴンたちの力もあってなんとか魔王を撃退することに成功したのだ。
まあ、結果的にはディータと魔王の相打ちであったのでその後の事をディータは知らない。
その為、なぜドラゴンたちが人間を裏切り者などというのかわからないのだった。
「人間はあれだけの仕打ちをしてすでに忘れたというのか!・・・我らドラゴンは人間の蛮行を許すことはない!・・・アネル様の頼みでこちらから手出しはせぬが、我らの近くに寄ればその命は無いと思え!」
青髪のドラゴンが私を見て、そう怒鳴った。
私は、ドラゴンに何かをした覚えはない、その為、そう言われても困ってしまうだけである。
「アネル様・・・あまりここに人間を近づけないでいただきたい」
「・・・解ったわ」
そう言うと、ドラゴンたちは再び竜の姿に変わり飛び去って行った。
青髪と緑髪のドラゴンは未だに私の事を睨んでいたが・・・。
「アネル・・・あなたは知っているのよね?どうして、ドラゴンたちがあそこまで人間を憎んでいるの?」
そう、ドラゴンたちは明らかに私にだけ敵意を向けていた。
それは私が闇の魔女だからではなく、人間だからという理由だったのだ。
「・・・千年前、ドラゴンたちと人間が協力して魔王を撃退したのは知っているのですね」
アネルさんは私の方を見て話し始める。
「え、うん・・・ディータに聞いたことある」
「そうですか、ディータさんは物知りなのですね」
「いいから、教えなさい」
アネルさんが微笑みながら言うが、はぐらかされないぞと言わんばかりにディータが続きを促す。
「その千年前の古の戦いの少し後の話です。協力して魔王を撃退した人間とドラゴンは親交を深めるために今後とも協力しようと約束しました。そして、ドラゴンはドラグニル王国を人間はヴァルネッサ帝国を築きお互いに協力をして国を栄えさせたのです」
「そう」
「ですが、その約束は突如人間側から破られたのです」
「・・・なぜ?」
「正確な理由はわかりません・・・人間が強大な力を持つドラゴンを脅威に感じた為や人間以外の種族を認めない過激派の陰謀だとか色々あります」
「・・・・・」
「ですが、人間から仕掛けられた戦争でドラゴンたちは自分たちの身を護る為、仕方なく戦いました。そして・・・」
「そして?」
「ドラゴンと人間の架け橋をしていた女神の使いを人間側が殺めてしまったのです」
「なんですって!?」
女神の使いって・・・。
そうだよ、ディータと妹のレナという女神は自分たちを女神だと悟らせない為、女神に導かれた人間として人々を導いたはずだ・・・つまり、ディータがその時すでに異空間に魂を移動させている以上、殺されたというの光の女神であるレナである。
「レナが殺されたっていうの!?」
「・・・はい、そして、それを知ったドラゴンたちは怒り狂い、人間の国に攻め込んだのです。ですが、怒りで我を忘れてしまったドラゴンたちは人間に返り討ちにあい、散り散りになって逃げのびたそうです」
「・・・・・そんな」
私の腕の中にいたディータの体から力が抜ける。
妹のレナさんは死んでいると知ったのだ・・・。
「ディータ・・・」
私はなんと声を掛けていいのか分からず、慰めることも出来なかった。
「それが、ドラゴンが人間を恨む理由なのね」
ディータは力のないままそう言った。
「はい」
「解ったわ、話してくれて感謝するわ」
「ディータ・・・ごめんね」
「なんでカモメが謝るのよ」
「だって、私達人間が・・・」
私達人間がディータの妹を殺してしまったのだ。
それも、自分たちを救うために奔走してくれていた女神をだ・・・許されることではない。
「カモメが妹を殺したわけではないでしょう、あなたが謝ることはないわ」
「・・・でも」
「それに、その話には理解しがたいこともあるわ」
「どういうこと?」
「レナは私より戦いに向いてはいなかったけど、人間やドラゴンに殺されるほど弱くはないわよ・・・どうやったのかしら・・・。」
「それは私にもわかりません」
「・・・・・・・・・・そう」
ディータはしばらくアネルさんの顔を見ると、ため息を一つはいた後、そう言った。
「ドラゴンが人間を恨む理由の話はこれで終わりですね、では、ベインスに挨拶をしたらツァインに戻りましょう」
「ええ」
いつの間にか話についていけず眠りこけているミャアとドラゴンにおびえて震えていたコロを優しくなでていたレディが移動を開始することに気付いてアネルさんの後を付いていった。
私も後を追おうとするとディータが声を掛けてきた。
「カモメ、気を付けなさい、アネルはきっと何か隠しているわよ」
「え、どういうこと?」
「あの子、私が闇の女神だということを気付いているわ」
「・・・あ」
そうだ、先ほどの話の時にディータは自分が光の女神であるレナの姉であることを隠していなかった。
自分が闇の女神であることを知られれば、それを知った人間に魔王が何かしてくる可能性がある為である。
だが、先ほど光の女神が死んだことを知った時、ディータはそのことを考える余裕が無かったのだろう、光の女神の事を妹と呼んだのだ。
普通であればそこで疑問を持つはずである、レディはディータの事を知っている。ミャアは寝ていた。コロは殆ど話を理解できていなかったようだったので疑問を持つことはない。当然私も。
だが、話を理解していてディータの事をしらないアネルさんが疑問に思わないのはおかしいのだ・・・。
あの人・・・一体何者なのだろう・・・。
「それと、さっきも言ったけどカモメが昔の事を気にする必要はないわよ、あなただって私からすれば妹と同じように大切な家族なのだから」
「・・・ディータ」
ディータの言葉に私は心が温かくなった・・・嬉しい。
私はありがとうとディータに言うと二人で小屋に向かうのだった。
アネルさんが悪い人とは思えないが警戒はしておかないとならないね・・・。
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