闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

文字の大きさ
103 / 412
4章

救世主

しおりを挟む
「はああああ!」


 エリンシアは光を纏った拳を魔族に叩き付ける。魔族も異形の腕を振るいながら反撃するがエリンシアを捕らえることが出来ずに唯、エリンシアの拳を受けるのみになっていた。


「ボディーがガラ空きですわよ!」


 エリンシアの渾身の一撃が魔族のお腹に決まると魔族は再び壁へと叩き付けられる。
 魔族はよろけながらも立ち上がるが、その表情には焦りが現れていた。


「随分と無口な魔族さんですわね、魔族の方すべてが喋れるというわけではないんですかしら?」


 魔族は表情を歪めるも、言葉を発することは無い。よく見ると、その魔族には口らしき場所が無かったのだ。


「なぜ、今になって街の人を襲ったのか聞きたかったんですけれど・・・仕方ありませんわね」


 クーネル国が帝国に占領されてからすでに幾日か経過している、その間、街の人には手を出さず、食料や金品だけを巻き上げていった帝国が、なぜ今になって人々を襲ったのか、何か理由があると思われるのだが相手の魔族にはそれを話す口がなかった。


「終わりにさせていただきますわ!」


 エリンシアが魔導銃を構えると、無口の魔族が口は無いが確かにニヤリと笑ったように感じられた。
 そして・・・異形の腕がものすごい勢いで伸び、カモメから少し離れながらも治療の順番を待っている街の人たちの元へと襲い掛かったのだ。


「なんですって!?―――――――カモメさん!!」
「・・・え?」


 カモメはエリンシアの声に振り向き、事態に気付くが、すでに間に合う距離にはいない。
 魔族の腕が集まっている街の人達の元へと届く直前―――――――。


「ニャっと!」


 突如現れた、猫耳と尻尾を付けた長身の女性が、その腕を蹴り上げた。


「ミャア!コロ!」


 カモメのがその女性の名前とその近くで治療を始めた少女のような見た目の少年の名前を呼ぶ。


「ナイスですわ、ミャアさん!」
「ニャニャ♪」
「でも、どこから入ってきたんですの?」


 エリンシアはふと疑問に思ったことを聞いてみる、教会の扉は今はエリンシアの近くにあるのだ、誰かが入ってきた気配は無かった。


「そこの壁をぶち破ってきたニャ」


 ミャアが指さす方向を見ると、確かに大きな穴が開いていた。


「教会が・・・・」


 そんな場合ではないとわかってはいるのだろうが、この教会で働く神父さんが目を丸くしながら大きく開いた穴を見て呟いていた。


「おっと、もうさせませんわよ!」


 エリンシアの方を見ると、今一度、攻撃に移ろうとしてた魔族にエリンシアが拳を叩き付けている。
 もう、攻撃をする暇を与えるものかというほどのラッシュが魔族へと叩き込まれていた。


「はあああ!」


 大きく体重を乗せた拳が魔族の顔面に叩き込まれると魔族は転げていく、そして、その転がった場所の近くには人がいないことを確認すると、エリンシアは魔導銃を再び抜いた。


「今度こそ終わりですわ―――――――聖滅全力魔弾セイクリッドフルバスター


 エリンシアの放った全力の聖属性の付与された魔弾は大きな波動砲のようになり、魔族へと襲い掛かる。
その威力に魔族は耐えきれず塵へと変わり、教会の壁ごと吹き飛ぶのであった。


 ―――――――――そして、その光景を見ていた神父さんは目が死んでいた。


「いっちょあがりですわ♪」


 腰に手をやりながら魔導銃から出る煙を息で吹いて飛ばすエリンシアは満足そうに微笑んだ。


「すごい・・・」
「「「わああああああああ!」」」


 魔族の恐怖に絶望していた街の人たちが歓声を上げる、そして、私やエリンシア、ミャアやコロ、そしてディータの元に近寄ってくるとお礼を言ってくれた。

 私に対しての警戒心も少し緩くなっているようで、私の手を取ってお礼をしてくれる人もいたのだ。


 私はコロと共に治療を続けながら、街の人たちの無事を喜んだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...