闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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4章

覚醒

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「行くぞ、ヒスイ!」
「ガウ!」


 俺とヒスイは倒れているリーナが巻き込まれないよう、出来るだけ離れる為、グリフォンの射線上にリーナが入らないよう移動する。


「喰らえ!」


 俺は再び、グリフォンの眼へと目がけ矢を放った。
 グリフォンも同じく翼でそれを払いのける。・・・やっぱり、眼への攻撃をしっかりと防ぐところから眼はそれほど固くはないのだろう。当たればダメージを与えられる。
 いや、当たらないとしても眼へ目掛けて射るのなら嫌がらせくらいにはなるはずだ。
 そして・・・。


「ガウ!!」


 ヒスイの攻撃がグリフォンを襲う、進化したヒスイの攻撃だけはグリフォンへとまともにダメージを与えられるのだ。


「いいぞ、ヒスイ!おっと、攻撃はさせない!」


 再び、眼に目掛けて矢を放つことでグリフォンの動きを制限する・・・これなら、少しずつでもダメージを与えられるはず。そう思った矢先・・・。


「クァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ぐっ・・・」


 グリフォンは再び、あの咆哮を放った。
 まるで、心臓を直接震え上がらせているようなこの感覚、体の中心から震え上がることで全身から力が抜けてしまう・・・。


「くそっ」


 厄介、極まりない。
 震え上がり、動けなくなったヒスイと俺に目掛けてグリフォンは風の弾を放つ。
 

「があ!」
「ガウ!?」


 全身から力が抜け、無防備になった俺とヒスイはその風の弾の直撃を受けてしまい、床を転がった。
 さすがはランクA、そう簡単に勝たせてくれないどころか、まともに戦わせてももらえない。
 
 再び立ち上がり、グリフォンを睨むと・・・魔物であるグリフォンがこちらを見てニヤリと笑ったような気がした。その様子に俺の背筋に冷たいものが走る・・・嫌な予感がするのだ。

 そして、俺を見ていたグリフォンが視線を移す・・・その先には倒れているリーナの姿があった。
 ・・・・・・・まさか。


「リーナ!!」


 俺はそう叫ぶと即座に駆けだした。
 そして次の瞬間、倒れているリーナに向かって風の槍をグリフォンが放つ。
 マズい、あれが直撃したらリーナは・・・。
 俺は必死に走った、クオンさんでもなければ、この位置からリーナの所まで風の槍より速く走るなんて無理な話だ・・・だが、それでも、リーナは俺の大事なたった一人のかけがえのない存在だ。
 失いたくない・・・彼女のいない世界など考えたくない。
 だから必死に走る、間に合わないと解っていても諦めることなんて出来るわけがない。


「ガウウウウ!!」


 ヒスイが俺と同じようにグリフォンの意図に気付き、そのスピードを生かして風の槍とリーナの間に割り込む、そして光の壁を展開し風の槍を防いだ・・・が。

 グリフォンはそれを読んでいたのかすでに第二撃を放っていた。
 二つ目の風の槍はヒスイの光の壁を打ち砕き、ヒスイを弾き飛ばす。
 そして、弾き飛ばされたヒスイと倒れるリーナにグリフォンは再び第三撃目を放った。


「やらせない!!」


 俺は、その三撃目の前に躍り出る。
 だが俺には光の壁もなければ盾もない・・・体でその風の槍を防ぐしかない。


「があああ!!」


 身体に引き裂かれるような痛みが走り、俺はリーナの元まで床を転がった。


「がはっ」


 なんとか、生きている・・・でも・・・。
 全身に激痛が走る中、なんとかグリフォンの方を見てみると、まで計算通りだとでも言わんばかりの優越感に浸った顔をしていた。・・・腹の立つ。

 ―――――――――――――――――じわり。


「・・・なんだ?」


 今一瞬、何か俺の体の中に違和感があったような?
 いや、風の槍をまともに喰らって体中ボロボロなんだから当然なのか?


「クァアアア!」


 グリフォンが吠える、先ほどの咆哮とは違い、実に楽しそうに吠えていた。
 自分の思い通りに行って嬉しいといったところか・・・そうだろうさ、俺もヒスイももうまともに動けないだろう・・・俺たちの負けだ。

 そう思った瞬間、背筋にまた冷たいものが走る・・・まさか。

 そう思いグリフォンを見てみると、グリフォンの視線の先にはリーナがいた、そして再び風の槍を放ったのだ。馬鹿な、もうリーナを狙う必要はないだろう!


「ぐ・・・くそっ・・・がああああああああ!!」


 俺は何とかその身をリーナの前まで動かし、再び風の槍をその身で受けた。


「クァアア!クァアア!!」


 実に楽しそうにグリフォンが鳴く。
 こいつ、俺がリーナを守れなくなるまで続けるつもりだ・・・俺がリーナを大事にしていることを悟って、俺の目の前で守れず死んでいくリーナを見せる為に・・・。


「ふざけやがって・・・」


 ――――――――――じわり。


 再び、俺の中に違和感を感じる・・・、だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
 あのふざけた鳥の好きにさせてたまるか・・・。


「クソ鳥が・・・」


 初めてじゃないだろうか、普段からリーナを怖がらせない為、リーナに嫌な思いをさせない為、俺はあまり汚い言葉を使わないようにしてきた。リーナを護る為に礼儀も正しくしてきたし、判断を鈍らせない為怒りに飲まれないように冷静でいるようにもしてきた・・・。

 だけど、今回は・・・今回だけは我慢することが出来そうにない・・・。


「てめぇ・・・その子にこれ以上何かして見ろ・・・殺すぞ」


―――――――――――ぶわっ。


 そう言葉にした瞬間、俺の中から何かが吹き出してくる。
 魔力とは違う、輝くもの・・・それが、俺の周りを纏うように現れた。

 ・・・・これは・・・そう、まるでラガナのような・・・。
 そうか、これが気か・・・。


「なるほど、確かにアネルさんの言う通り、ガァーっとなってズバーっと来たね」


 確かにこれは口で説明するのは難しい・・・実際、気を解放することのできた俺でもいまいちよくわからないのだから・・・だが・・・。


「調子に乗った代償はでかいぞ・・・クソ鳥!強気射オーラストリングショット!」


 俺の放った矢は一直線にグリフォンへと向けて奔る。
 グリフォンは前回と同じように俺の矢を翼を使って弾き返そうとするが・・・。


「クァアアアアア!?」


 弾こうと出した翼に俺の矢が刺さる。
 なるほど、気を纏った状態で放った矢は威力が格段に上がるようだ・・・。
 それにしても、なるほど、まるで俺の怒りがそのまま力になっているようなこの感じ・・・これが気なんだね・・・。なんか、楽しくなってきたよ。


 俺はニヤリと笑うと、一歩、また一歩とグリフォンに向かって近づいていった。
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