闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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4章

帰還

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 気絶していたリーナとヒスイが目を覚まし、クオン達はダンジョンを出るべく上の階層へと歩いていた。


「でも、驚きました。目が覚めたらクオンさんがいますし、ヒスイは進化してるしで・・・」
「ああ、僕もヒスイの進化には驚いたよ・・・すごいね」
「ガウ!」


 クオンに頭を撫でられながら褒められ、ヒスイは嬉しそうに声を上げる。


「進化したのはヒスイだけではないぞ、コハクも気を操り、グリフォンを圧倒していたのだからな」
「いえ、俺は結局、グリフォンを倒せませんでしたので」
「何、普段は大人しいコハクがあそこまで強気になるとは私も思わなかったがな」
「うっ・・・気を使うと気が大きくなるというか・・・高ぶるというか・・・うう」


 気を使っている時の言動をコハクはもちろん覚えている。
 あの時の自分を思い出し、恥ずかしさに身もだえしそうになるがそれを堪えながら顔を真っ赤にしていた。


「へえ、それは見てみたかったな」
「私も!」
「か、勘弁してください」


 そう言い、笑いながら歩くクオン達。
 だが、ここはダンジョンである、罠もあれば、当然モンスターも襲ってくるのだが・・・。


(まるでピクニック気分じゃねぇか・・・)


 ツッコミをいれるクレイジュであったが、その刀身は音もなく振り回されている。
 なぜかと言うと、罠が来れば、クオンがクレイジュを振り斬り裂き、敵が来ればこれまたクオンがクレイジュを振り斬り伏せていたからだ。
 もちろん、クオンだけではない、ソフィーナの剣が魔物を突いたり、コハクの矢が射貫いたり、ヒスイの爪で斬り裂かれたり、リーナの魔法で感電させられる魔物もいた。

 和やかにピクニックのように歩いているが、その実、彼らが歩いた道には魔物や罠が転がっていたのだ。
 もっとも、魔物は魔石に変わってしまう為、残ってはいないのだが、残っていたらきっと死屍累々だったのだろう。


「カモメさん達はツァインにいますでしょうか?」
「どうだろうね、他の国を解放しているはずだから、もしかしたらいないかもしれない」



 クオン達がダンジョンの探索を開始してから十日程、時間が経っていた。
 カモメ達ならすでにいくつか国を解放して、魔族から取り戻してる可能性もある。そう考えながらクオンは歩みを続けていた。


「あ、光が・・・」
「やっと、出られた・・・わ、眩しいです」


 リーナが手で太陽から眼を護る。
 長い間ダンジョンに入っていたため、陽の光がいつも以上に眩しく感じられた。



(相棒、これからもよろしく頼むぜ)
「ああ、僕の方こそよろしく・・・頼りにしてるよ」
(おうよ!)

今回の探索で一番の収穫はやはり、この聖剣クレイジュであろう。
クレイジュを振るうクオンの一撃はランクSSの屍龍ですら軽々と屠ってしまった。
その力には振った当人であるクオンも驚くほどだ。クレイジュと共に戦えばきっとカモメの役に立てる、そのことにクオンは嬉しさを抱いていた。

そして、ヒスイの進化、コハクの気の開放、この二つも大きな収穫である。
元々、魔力が強く空間魔法というユニークスキルのあるリーナに加え、この二人の戦力アップはこれからの戦いできっと活躍の場が見られるだろう。
これからの彼らの活躍が楽しみである、そして、ツァインを護る為に彼らには力を貸してもらおうとソフィーナは思っていた。

 これから、魔族との全面的な戦いが始まるだろう・・・いや、もう始まっているのだ、戦力は少しでも多い方がいい。そして、目的を果たし、戦力がアップしたことによる達成感を感じ、ふと自分の国のトップの顔を思い浮かべる。あの意地悪だけど優しい王とあの暖かい国に早く帰りたいなとソフィーナは思った。
 

「さっ、早く城に戻りましょう」


 ソフィーナに促され、クオン達はツァインの街へと帰還するのであった。
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