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5章
狂惑
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王が兵士が、打倒、偽女神を叫ぶ、その中に一人、その狂気には飲まれずにいる者がいた。
アネルという王の身の周りの世話をする女性である。
彼女は、王たちの変わりように怯え、身を隠していた。
「なんで?みんなどうしてあの女の人の言う事を信じるの?」
普段は冷静で賢王と呼ばれる王様が目を血走らせながら打倒女神を叫んでいる。
「あの女神様が偽物?……そんなはずないです……」
アネルは、昨日自分と話をした、あの優しい笑顔の女神を思い出す。
あの人が、私たちを騙したりするとは思えない。
「我々を謀った、あの偽物を殺すのだ!全軍進め!!」
身を隠しているアネルの耳にその言葉が聞こえるとアネルは慌てた。
「あわわ、どうしよう……このままじゃ、王様と女神様が戦うことに……」
慌てるアネルの視線の先に王様に近づく女性が一人。
女性が王様に何かを話すと王様たちの表情がさらに怒りに溢れる。
「皆の者!あの女の正体がわかったぞ!あの者は魔族だ!魔族が女神になり代わり魔物を使い、我々を滅ぼそうとしているのだ!」
もし、レナが魔族であるのならばすでに昨日の夜に奇襲をかけてしまえばいいことである。
賢王と呼ばれる、人間の王がそんなことにも気づかないのはおかしいことであった。
いや、それだけではない。気づけば、先ほどまで人間たちを襲っていた魔物がその攻撃を止めているのだ。これは明らかにおかしい。まるで人間たちが女神打倒を目指すのを待っていたかのようであった。
「女神さまに知らせないと……」
アネルは王様たちの変わりように戦慄しながらもこれから先に起こるであろう戦いを止める為、一人で走り、ドラゴンの山を再び駆けあがるのであった。
「ふう、なんとかなりましたね」
「うむ、光の女神よ。協力を感謝する」
レナとドラゴンたちは襲い掛かってきた魔物をすべて討ち滅ぼしていた。
辺りには元々は魔物であったであろう魔石が散らばっていた。
「でも、なんで魔物がここを襲ってきたのでしょう?」
「わからん、今までは我らを恐れて近づきもしなかったのだが……」
魔物が襲ってきた理由を考えるレナであったが、それよりも先に確認しなければならないことを思い出し。考えを止める。
「人間たちは無事でしょうか……」
「わからん、襲ってきた魔物がこ奴らだけならば良いが……」
「私、ちょっと様子を見てきます……龍の皆さん、魔族との戦いに協力して頂いてありがとうございました」
レナは深々とお辞儀をする。
「いや、我らとて、魔族にこの世界をやる気は無かったからな。こちらこそ協力を感謝する」
「では」
「気を付けて」
レナは踵を返すと、風の魔法で空を飛び、人間たちが降りた山の麓の方へと飛び去った。
しばらく、下を注意しながら飛んでいると、またも魔物の群れを発見する。
数はそれほど多くは無い、10体かそこいらであろう。
その魔物たちが何かを追いかけていた。
その何かが、地面の意思に躓き、その場を転がった。
「あれは!」
追いかけられている者に気が付き、レナは慌ててそちらに向かう。
「光よ!!」
レナの力強い言葉が辺りに響くと、光の柱が魔物を飲み込んだ。
魔物たちは、その光の柱に包まれると、蒸発し魔石すら残らず消え去るのだった。
「女神様!」
「アネルちゃん……だったわね、どうしたんです、こんなところに一人で」
「大変!大変なんです!!」
アネルの尋常ではない慌てように、もしや人間たちが魔物に襲われているのでは?と考えるレナ。
「そちらにも魔物が襲ってきたんですね?案内してください、すぐに手助けに向かいます」
「違います!確かに魔物も襲ってきたんですけど、違うんです!!」
アネルはレナが助けに向かおうとするのを止めるためにレナの腕を掴み、止めた。
「違う?どういう事でしょう?」
「狙われているのは女神様なんです!」
「……そう、でも魔物なんかに私は負けませんよ」
アネルが自分を心配してくれているのだと勘違いしたレナは笑顔でアネルに語り掛ける。
だが、アネルの表情は変わらず、首を横に振りながら必死に言葉を発し続けた。
「違うんです、魔物じゃないんです!狙っているのは王様たちなんです!」
「え?」
王様たちが狙っている?自分を?
その言葉を聞いても未だよく状況を理解できていないレナが頭の上にハテナを浮かべていた。
「人間の王が私を狙っている……のですか?」
「……はい」
アネルが嘘を言っているようには見えない、でもなぜ?なぜ自分を人間たちが狙うのだろう。
「一体なぜ?私が何かをしてしまったのかしら?」
思い当たる節もある、レナは人間が好きだ。
自分の子供のように思っている。その為、余りに関わり過ぎると過保護ともいえるくらいに人間たちにべったりになってしまうだろう。
でもそれでは人間は成長しなくなってしまう。その為、それ程親しくならないように気を付けていたのだが、もしかしたらそれが自分たちを蔑ろにしているように見えてしまったのかもしれない。
「違います!女神様は何もしていません!あの女が……王様たちを騙してっ」
「あの女?」
あの女?人間の中にいた女の誰かの事だろうか?
人間の中には女性もそれなりの数がいた、武器を持って戦う女性もいれば、王の身の周りの世話の為についてきていた女性もいる、アネルはその一人である。
「人間の女の人が王様を騙したのですか?」
「はい……でも、あんな女の人見たことないんです!昨日まではいませんでした!」
その言葉に、レナはさらに訳が分からなくなる。
今までいなかった女性がいきなり人間の軍に現れ、その女性の言葉で王様たちが惑わされレナを討伐に向かっているというのだ……そんなことってありえるのだろうか?
「とにかく、人間たちの元へ行ってみましょう」
「で、でも!」
「大丈夫です、余りに様子がおかしいのであれば逃げちゃいますから」
「は、はい…」
「それで、人間たちは今どこに?」
「女神様と魔物であるドラゴンさん達を倒すために山を登っているはずです」
それを聞いたレナは表情を変える。
自分の所にくるだけなら何とかなるかもしれないが、もし先のドラゴンたちの所へ行ってしまったら。
戦いが始まり、甚大な被害が出るだろう。
「なら、急ぎましょう」
「は、はい!」
「っ!、アネルちゃん危ない!!」
急いで王様たちの所へ向かおうとしたレナ達であったが、次の瞬間、矢がアネルに向かって飛んでくるのをレナは気付き、それをアネルの前に立ちはだかり魔法で撃ち落とした。
「くっ……」
「魔物がこんなに……」
レナ達を囲むように無数の魔物が現れる。
「相手の狙いは私よりドラゴンということでしょうか……」
レナは持っている杖を構えてアネルを護るように魔物たちを睨むのであった。
アネルという王の身の周りの世話をする女性である。
彼女は、王たちの変わりように怯え、身を隠していた。
「なんで?みんなどうしてあの女の人の言う事を信じるの?」
普段は冷静で賢王と呼ばれる王様が目を血走らせながら打倒女神を叫んでいる。
「あの女神様が偽物?……そんなはずないです……」
アネルは、昨日自分と話をした、あの優しい笑顔の女神を思い出す。
あの人が、私たちを騙したりするとは思えない。
「我々を謀った、あの偽物を殺すのだ!全軍進め!!」
身を隠しているアネルの耳にその言葉が聞こえるとアネルは慌てた。
「あわわ、どうしよう……このままじゃ、王様と女神様が戦うことに……」
慌てるアネルの視線の先に王様に近づく女性が一人。
女性が王様に何かを話すと王様たちの表情がさらに怒りに溢れる。
「皆の者!あの女の正体がわかったぞ!あの者は魔族だ!魔族が女神になり代わり魔物を使い、我々を滅ぼそうとしているのだ!」
もし、レナが魔族であるのならばすでに昨日の夜に奇襲をかけてしまえばいいことである。
賢王と呼ばれる、人間の王がそんなことにも気づかないのはおかしいことであった。
いや、それだけではない。気づけば、先ほどまで人間たちを襲っていた魔物がその攻撃を止めているのだ。これは明らかにおかしい。まるで人間たちが女神打倒を目指すのを待っていたかのようであった。
「女神さまに知らせないと……」
アネルは王様たちの変わりように戦慄しながらもこれから先に起こるであろう戦いを止める為、一人で走り、ドラゴンの山を再び駆けあがるのであった。
「ふう、なんとかなりましたね」
「うむ、光の女神よ。協力を感謝する」
レナとドラゴンたちは襲い掛かってきた魔物をすべて討ち滅ぼしていた。
辺りには元々は魔物であったであろう魔石が散らばっていた。
「でも、なんで魔物がここを襲ってきたのでしょう?」
「わからん、今までは我らを恐れて近づきもしなかったのだが……」
魔物が襲ってきた理由を考えるレナであったが、それよりも先に確認しなければならないことを思い出し。考えを止める。
「人間たちは無事でしょうか……」
「わからん、襲ってきた魔物がこ奴らだけならば良いが……」
「私、ちょっと様子を見てきます……龍の皆さん、魔族との戦いに協力して頂いてありがとうございました」
レナは深々とお辞儀をする。
「いや、我らとて、魔族にこの世界をやる気は無かったからな。こちらこそ協力を感謝する」
「では」
「気を付けて」
レナは踵を返すと、風の魔法で空を飛び、人間たちが降りた山の麓の方へと飛び去った。
しばらく、下を注意しながら飛んでいると、またも魔物の群れを発見する。
数はそれほど多くは無い、10体かそこいらであろう。
その魔物たちが何かを追いかけていた。
その何かが、地面の意思に躓き、その場を転がった。
「あれは!」
追いかけられている者に気が付き、レナは慌ててそちらに向かう。
「光よ!!」
レナの力強い言葉が辺りに響くと、光の柱が魔物を飲み込んだ。
魔物たちは、その光の柱に包まれると、蒸発し魔石すら残らず消え去るのだった。
「女神様!」
「アネルちゃん……だったわね、どうしたんです、こんなところに一人で」
「大変!大変なんです!!」
アネルの尋常ではない慌てように、もしや人間たちが魔物に襲われているのでは?と考えるレナ。
「そちらにも魔物が襲ってきたんですね?案内してください、すぐに手助けに向かいます」
「違います!確かに魔物も襲ってきたんですけど、違うんです!!」
アネルはレナが助けに向かおうとするのを止めるためにレナの腕を掴み、止めた。
「違う?どういう事でしょう?」
「狙われているのは女神様なんです!」
「……そう、でも魔物なんかに私は負けませんよ」
アネルが自分を心配してくれているのだと勘違いしたレナは笑顔でアネルに語り掛ける。
だが、アネルの表情は変わらず、首を横に振りながら必死に言葉を発し続けた。
「違うんです、魔物じゃないんです!狙っているのは王様たちなんです!」
「え?」
王様たちが狙っている?自分を?
その言葉を聞いても未だよく状況を理解できていないレナが頭の上にハテナを浮かべていた。
「人間の王が私を狙っている……のですか?」
「……はい」
アネルが嘘を言っているようには見えない、でもなぜ?なぜ自分を人間たちが狙うのだろう。
「一体なぜ?私が何かをしてしまったのかしら?」
思い当たる節もある、レナは人間が好きだ。
自分の子供のように思っている。その為、余りに関わり過ぎると過保護ともいえるくらいに人間たちにべったりになってしまうだろう。
でもそれでは人間は成長しなくなってしまう。その為、それ程親しくならないように気を付けていたのだが、もしかしたらそれが自分たちを蔑ろにしているように見えてしまったのかもしれない。
「違います!女神様は何もしていません!あの女が……王様たちを騙してっ」
「あの女?」
あの女?人間の中にいた女の誰かの事だろうか?
人間の中には女性もそれなりの数がいた、武器を持って戦う女性もいれば、王の身の周りの世話の為についてきていた女性もいる、アネルはその一人である。
「人間の女の人が王様を騙したのですか?」
「はい……でも、あんな女の人見たことないんです!昨日まではいませんでした!」
その言葉に、レナはさらに訳が分からなくなる。
今までいなかった女性がいきなり人間の軍に現れ、その女性の言葉で王様たちが惑わされレナを討伐に向かっているというのだ……そんなことってありえるのだろうか?
「とにかく、人間たちの元へ行ってみましょう」
「で、でも!」
「大丈夫です、余りに様子がおかしいのであれば逃げちゃいますから」
「は、はい…」
「それで、人間たちは今どこに?」
「女神様と魔物であるドラゴンさん達を倒すために山を登っているはずです」
それを聞いたレナは表情を変える。
自分の所にくるだけなら何とかなるかもしれないが、もし先のドラゴンたちの所へ行ってしまったら。
戦いが始まり、甚大な被害が出るだろう。
「なら、急ぎましょう」
「は、はい!」
「っ!、アネルちゃん危ない!!」
急いで王様たちの所へ向かおうとしたレナ達であったが、次の瞬間、矢がアネルに向かって飛んでくるのをレナは気付き、それをアネルの前に立ちはだかり魔法で撃ち落とした。
「くっ……」
「魔物がこんなに……」
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