闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

文字の大きさ
216 / 412
7章

魔王との戦い②

しおりを挟む
 グラネルザが持っている大剣をエリンシアに向けて振り下ろす。
 エリンシアはそれをスルりと躱し、グラネルザの横腹に蹴りを入れる。


「ぐおっ」


 グラネルザが怯んだところに魔導銃を打ち込もうとするが、もう一人の十二神将、イルザがその攻撃に割って入る。イルザは花弁の形をした魔力の塊をエリンシアに向けて放ってきた。
 エリンシアはそれを後ろに大きく飛びのき躱し、イルザに向けて聖滅弾セイクリッドブリッツを放つが、それをイルザは大きな花の塊を盾にして防いだ。

 そして、自分から眼を離したエリンシアにグラネルザは再び大剣を持って襲い掛かる。


「おっとですわ!」
「ちっ、すばっしこい奴だ!」


 エリンシアはそれを再び後ろに大きく飛び躱した。


「さすがに二人相手は難しいですわね」
「この小娘、本当に人間?私たち二人相手に出来るなんて……」
「あら、こんなに可愛らしい人間は他にはおりませんわよ!」


 エリンシアは再び聖滅弾セイクリッドブリッツを放つと、その弾の後を追いかけるように走り出す。そして、イルザが魔弾を先ほどと同じように防ぐとその花の盾が無い方向からもう一発聖滅弾セイクリッドブリッツを放った。


「なっ!?」


 エリンシアの放った聖滅弾セイクリッドブリッツがイルザを捉える。
 だが、間一髪のところでもう一枚、花の盾を召喚したが、生成するのに時間が足らなかったのか聖滅弾セイクリッドブリッツは花の盾を壊し、イルザの身体に命中した。

 花の盾で威力を大分、削がれてしまったのか、イルザに命中はしたもののそれ程のダメージを与えられなかった。
 そして、その隙を突いてグラネルザが大剣をエリンシアに向けて振り下ろす。
 エリンシアはその攻撃を床を転がりながら躱したが、そこをグラネルザの蹴りに捉えられた。


「くっ」
「イルザ!」
「解っているわ!」


 グラネルザの蹴りをお腹に喰らい、後ろに大きく転げるエリンシアに、イルザは魔力の花びらを飛ばす。
 蹴り飛ばされて体制の整っていないところにその攻撃が飛んできたため、エリンシアはその攻撃を避けることが出来ない。

 避けることの出来ない事を悟ったエリンシアは魔導銃を花びらに構え撃った。

 エリンシアの魔弾は花弁をいくつか捕らえ、打ち消すも、全てを打ち消すことは出来ず、何枚かの花びらにその体を斬り裂かれた。


「やりますわね……」


 花弁に裂かれたところから赤い血を流すエリンシアであるが、それ程深くないのか、それを気にせず、魔族たちを見据える。


「貴様のような人間がいたことに驚いている、恐らく、魔女の懐刀と言ったところだろう」
「でも、私たち二人を相手にするのは無謀だったわね」
「魔女の助けも期待できんぞ?」
「どういうことですの?」
「魔女は今、この異空間にはいない。我らの仲間の命を懸けた一撃に外の世界に放り出された」
「しかも、その衝撃でここにつながる扉が壊れてしまったわ……だからもう、魔女はここには来れない……でも、安心して、あなた達を殺したら次はあの魔女も殺してあげるから」


 勝ち誇ったように笑うイルザ。
 確かにこの状況でカモメの援軍が期待できないのは辛い……だが。


「お~っほっほっほ!」
「何を笑っているのかしら?」


 イルザの笑いを打ち消すかのようにエリンシアは高笑いを上げた。


「まったく、こんな大事な時までドジっ子なんですから、カモメさんは……確かに、カモメさんがここから追い出されたしまったのは痛いですわ……ですが、それならばカモメさん抜きであなた達を倒してしまえばいいだけの事ですわ!」
「無理だ」
「あら、どうしてそう言えますの?」
「闇の女神や光の女神が我が王に勝てるわけがない……それに魔女の懐刀の貴様も我々二人相手では勝ち目が無かろう?」
「あら、残念ですわね?」
「……何?」


 訝しく方眉を上げるグラネルザに、エリンシアは可愛くウインクをしながら答える。


「カモメさんの懐刀はワタクシではありませんわよ?ですわよね、クオンさん?」
「ぐあっ!?……何!?」


 突如現れた少年の剣がグラネルザに襲い掛かる……クオンが背後から自分の武器であるクレイジュを使いグラネルザの背中を斬り裂いたのだ。


「グラネルザ!ちっ、新手か!!」



 グラネルザの背中を斬り裂いたクオンに、イルザは魔力の花弁を放つがクオンはそれを軽々と躱した。


「遅刻ですわよ?」
「はは、ごめん、しかも仕留めそこなったみたいだ」


 背中を斬り裂かれたグラネルザにイルザは回復魔法らしきものを掛ける。
 すると、見る見るうちに背中の傷が塞がった。


「そうみたいですわね」
「それよりも……あっちでディータ達と戦っている男は……」
「魔王ですわ」
「やっぱり……」
(相棒、アイツはやばいぜ)
「ああ、解ってる……とんでもない強さだ……」
「そう言う事ですわ……ですので早く助太刀に行きませんと!」
「了解!」


 剣と銃を構えるエリンシアとクオン。
 その言葉が届いたのか、回復を終えたイルザが『調子に乗って……』とイラついたように言葉を零した。


聖滅弾セイクリッドブリッツ!」


 エリンシアの魔弾をイルザの盾が防ぐ、そして、炸裂した魔弾の爆発の中から、クオンは魔族に襲い掛かる。


「速い!?」


 イルザを狙ったクオンであったが、あと一歩のところでグラネルザにその攻撃を防がれてしまう。
 だが、攻撃を止められたクオンは即座に体を回転させながらグラネルザの腕を蹴り上げた。


「何っ!?」


 そこに後ろからエリンシアの魔弾が飛来する。


「があ!?」


 グラネルザは腕を跳ね上げられて、大剣でそれを切り払うことも出来ずまともに魔弾を喰らい、後ろに転げる。


「大丈夫!?」
「ああ……だが……」
「厄介なのが増えたわね……」


 クオンと言う強力な援軍に先ほどまで数の有利でなんとかエリンシアを押していた二人であったが、その数も同じになり、不利な立場へと変わってしまった事を痛感していた。


「我ら十二神将が人間に後れをとるとは……」
「仕方ないわね……アレを使うわ」
「あれ?……まさか、貴様、あの女の言っていた魔鬼化を使ったのか?」
「ええ……そうよ……それに私だけではないわ」
「馬鹿な、魔王様に禁じられた筈……」
「解っている……でも、それでも魔王様の為に人間に負けるわけにはいかないのよ!!」


 イルザは自分の核を貫き、自らその動きを止めた。
 そして、一度動きを止めたイルザの身体は、徐々に黒く変わっていく。


「大バカ者め……」


 ディータ達と戦いながらその様子を見ていた魔王は舌打ちをしながら言葉を漏らす。



 そして、イルザは魔鬼へと変貌したのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!! 隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!? 何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...