闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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7章

魔王との戦い⓵

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 魔王の攻撃とディータの攻撃がぶつかり合う。
 その衝撃の凄まじさに、あたりの空気は振るえ渡った。


「以前は自分が最前線に立って戦っていた癖に今回は城に籠ってるなんて、以前の戦いで臆病風にでも吹かれたのかしら………魔王さん!」
「ふんっ、そのようなわけがなかろう!我とて出来るのであればそうしていた!だが、調べ物があったのでな!」


 言葉を交わしながらも攻撃を止めることのない二人。
 ディータは闇の魔法を撃ちながら風の魔法で相手の攻撃を逸らし、魔王は魔力を溜めた拳でディータの闇の魔法を打ち消しながら、魔力弾を放ち攻撃をしていた。



「あら、何を調べていたのかしらね!」
「貴様に教えることなどないわ!」
「あら……そうっ!闇魔滅砲イビルスレイヤー!!」



 強力な闇の魔法が魔王を襲う、普通の魔族であればこの一撃は脅威となるのだが、魔王はそれを先ほどまでと同じように魔力の籠った拳で打ち払った。


「やはり、弱くなったな闇の女神よ……」
「あら、今のが全力だと思っているのかしら?」
「ほう、なら次はどんな攻撃をしてくる?」
「こうよ!闇雷纏シュベルクレシェント!!」


 ディータは黒い雷を纏い、魔王に向かって突撃をする。
 カモメと違って武器を持たないディータはあまりこの呪文を使う恩恵がなさそうに見えるが……そこはさすがのディータの凶暴さ……いや、勇ましさ、魔王に向かって素手で殴りかかり始めた。


「相変わらず野蛮な女神よ!」
「やかましい!その顔一発殴らせなさい!!」


 女神と魔王とは思えないほどの格闘戦が展開される。
 だが、ディータの拳は魔王に届く前に悉く打ち払われた。


「やはり、弱いな」
「まだ言うか!」
「もうよいわ!」
「きゃあ!?」


 うざったいというかのように、魔王はつけていたマントを翻し、ディータは弾き飛ばした。


「弱くなった女神などに興味は失せたわ……消えるがいい」



 魔王の掌から銀色の魔力の塊の球体が現れる。
 それを魔王はディータに向かって放った。


「くっ……風よ!」
「その様なチャチなバリアで防げるものか!」
「なっ……きゃああああああ!!」


 ディータの風のバリアを突き破り、魔王の攻撃はディータを捉える。
 銀色の球体がディータの体に触れると爆発し、ディータは弾き飛ばされ地面を転がった。


「姉様!!!」


 それを見ていたアネル……いや、レナが叫ぶ。


「姉様……だと?………ふふふふ、そうか貴様、光の女神か!!」
「エリンシアさん、この魔族の相手もお願いします!」


 そう言うと、レナは目の前のグラネルザを無視し、ディータの元へと走り出した。


「逃がすと思うか!」


 グラネルザはそんなレナを逃がすまいと、持っている大剣でレナの背中に攻撃しようとする。


「ちょ、まったく!聖滅弾セイクリッドブリッツ!!」
「ちいっ!!」


 レナに追いつこうとしたグラネルザは空中でエリンシアの攻撃を受け、弾き飛ばされる。
 エリンシアは弾き飛ばしたグラネルザとレナ達の間に立つように移動し、魔導銃を構えた。


「魔族を二体相手にしろとか、一体どんな罰ゲームですの……」


 大きなため息を吐きながらも、魔族二人に対峙するエリンシア。


「それにしても、アネルさんが光の女神でしたの……通りでお強いわけですわ」


 光の女神であるのならあの強さもそして、ディータを気にかけていた理由も納得できるというものである。だが、そうであるのならば……。


「ならば、ワタクシはあの二人が千年前の戦いの続きに集中できるようにしないといけませんわね……魔族二人は少しヘビーな相手ですが……やってやりますわ!!」


 エリンシアは全力で行くと言わんばかりに光祝福リヒトブレスを展開し、魔族二人との戦いを始めるのであった。






 一方、ツァインには一筋の流れ星のように空から平する光があった。
 その流れ星は、ツァインの王城にツッコミ、せっかく修理された壁を破壊しながら城の中になだれ込んでくる。


「な、何事だ!?」


 声を上げたのはツァインの王様であるフィルディナンドだ。


「王様、リーナ!リーナはいる!?」
「ま、魔女殿?リーナならそこにいるが……」


 フィルディナンドの刺した方向にはエルフの少女と少年が立っていた。
 リーナとコハクである。


「私ですか?一体どうしたんです、カモメさん」
「魔王との戦いはどうしたんですか?」


 リーナとコハクが当然の質問を投げかけてくる。


「実は空間魔法がヴァルネッサで魔族が弾かれて、私がここなの!」
「……はい?」


 とても慌てているのか、カモメはまるで意味の分からないことを口走っていた。


「落ち着け魔女殿、それでは何を言いたいのか全く分からん!」
「ご、ごめん……えっと、リーナの空間魔法を頼りたいんだ」
「私の空間魔法ですか?」
「うん、敵の城が異空間にあったんだけど、私、そこから弾き出されちゃって戻れなくなっちゃったんだ、それで、リーナならその異空間に私を送れないかなと思って……」
「なるほど……すでにある空間に繋げるだけなら出来ると思います、ですが、その場所に行かないと……」
「解った、捕まって!!」
「……え?」


 カモメはリーナの言葉を聞くと、リーナの腰のあたりを掴み再び、天井に穴をあけ飛び出して行った。


「……扉を使え……扉を……」


 真上に空いた大きな穴を見てフィルディナンドは眼から光を消しながらそう呟いた。


「ちょっ、リーナだけじゃ危険だ……ヒスイ、僕を背中に乗せて走ってくれ!!」
「ガウ!!」


 コハクと、リーナの使い魔であるヒスイは慌ててカモメ達を追いかけるのであった。
 
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