闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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7章

魔王との戦い⑰

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「それで、リーンがアンタを殺したい理由の心当たりっていうのは?」
「ああ、あ奴が余に調べて欲しいと頼んでいた事があるのだ……」
「頼み?」
「ああ、それは……ぐあああああああ!!」
「魔王!?」



 突如魔王の身体が燃え上がる。


「ぐおお……」
「あはは、残念でした~♪」
「ぐ……」
「リーン……アンタ、まだいたのね?」


 上空に浮かび、まるで見えない椅子にでも座っているかのように器用に空中に座っているリーン。
 そのリーンが楽しそうにケラケラと笑っていた。


「うふふ、ちょっと荷物をお家に置いてきたもので♪」
「がああああっ!!」
「やめなさい!!」
「嫌ですよ~、だって、魔王ちゃんにあの事を喋られたら困っちゃいますもん♪」


 困っちゃいますと言いながら全然困っている感じのしない笑い方にディータは腹を立てる。


「だったら、なぜ魔王を置いていったの!困るなら連れて行けばよかったじゃない!」


 そう、魔王はリーンと離れたことによりまともに動けない状態になっていた、そんな状態で残していくくらいなら手駒として一緒に連れて行った方がいいだろう。


「そんなの決まっているじゃないですか~♪」
「何よ!」
「い・や・が・ら・せです♪」



 殊更、楽しそうに笑い転げるリーン。
 その態度にディータの怒りが頂点に達する。


「アンタ……絶対殺すわ」
「あはは、怖いですね~、とても女神の発言とは思えませんよ?」
「うるさい!」


 怒りと共に、ディータから闇の刃が放たれる。
 それを、ひょいと軽く躱すリーンだったが、元より躱されることを承知していたディータは躱された闇の刃をコントロールしてリーンの背後から強襲させる。


「もう、今は戦いに来たんじゃないんですから大人しくしててくださいよ」


 だが、その強襲もリーンには意図もあっさりと防がれてしまった。
 しかし、そのリーンの腕を魔王が体を燃え上がらせながらも掴む。


「あら?」
「貴様……」
「うふふ、胸に大穴開けて、さらに体中が燃えているのにと~ってもしぶといですねぇ、魔王さん♪」
「貴様だけは……許さぬ」
「はいはい、汚い手で触らないでくださいね」


 そう言うと、リーンは面倒くさそうに掴まれていない右腕を振るうと、魔王の頭が消し飛んだ。


 
「なっ……」
「はい、魔王ちゃん退場です♪」


 頭部の無くなった魔王の身体が光の粒子に変わりながら消滅していく。
 魔物が滅ぶ時と同じ光景である……魔王は死んだのだ……あっけなく、それもリーンの手によって。


「アンタ……」
「さてさて、それじゃあ闇の魔女ご一行さん、私は謎の大陸で待っていますので、頑張ってきてくださいね♪」
「そうはいかないよ!ここであなたを倒して、クオン達を返してもらう!!」


 リーンの出現に気付いたカモメが、リーンの背後からバトーネを振るう。


「あら、そうはいかないですよ♪」


 カモメのバトーネをひらりと躱すと、リーンはカモメを風の魔法で弾き飛ばす。


「きゃあ!?」
「カモメさんっ!」
「うっふううううん!」


 壁に叩きつけられそうになったかカモメをレディがキャッチする。


「あら、あの異常種も生きていたのね……目障りな……ふう、でもいいわ、とりあえず、今日は帰ります……謎の大陸の封印の解き方は『世界』にでも聞いてくださいね」
「待ちなさい!!」


 その生死の言葉も虚しくリーンの姿はすでに亡くなっていた。

 そして、異空間に存在するヴァルネッサ城は、その異空間を作ったであろう魔王が死ぬことによって崩壊を始めていた。


「カモメさんの攻撃をあんなにも簡単に……」
「ええ、弱っていたとはいえ、魔王を簡単に殺して見せた……アイツ、ヤバいわね」


 自分たちとの力の差を見せつけられる結果となったカモメ達、そして、囚われたクオンとレナを救うことは出来るのだろうか……。


 魔王が死に、ヴァルネッサの脅威は無くなったものの、釈然としない終わり方となったこの戦い。
 そして、謎の大陸とは……。


 ヴァルネッサの脅威が去ったというのに、カモメ達は大きな闇に捕らわれ続けているままであった。
 そして、リーンの魔王の頼み事とは一体何だったのか……。
 謎の多く残る戦いとなった。
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