闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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8章

竜族の隠れ里 再び

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「あ、確かあそこだよね、見張りらしきドラゴンもいるし」
「ええ」


 カモメ達はドラグ山脈まで来ていた。
 以前、訪れた時に入った竜族の隠れ家に繋がる入り口に来ると、二匹の竜族が人族の姿で見張りのように立っている。

 一度魔族にバレた場所だった為、すでに移動している可能性も考えたがどうやらまだこの場所にいてくれたようだ。


「き、貴様っ!」


 上空から降り立った私を見ると、見張りのドラゴンが持っていた槍をこちらに向けてくる。


「闇の魔女め……ここへ何をしに来た!」
「わ、わわっ……ちょっとお願いがあって来ただけだよ!?」
「願いだと……嘘を吐くな!今度こそ我ら竜族を滅ぼしに来たのだろう!」
「しない、しない!!」


 そう、以前ここを訪れた時に、カモメはリーンから受け継いでしまった『魔』の力に支配されかけ、暴れてしまった事があるのだ。
 だが、クオン達のお陰でその時は正気に戻ることが出来た……。
 でも、竜族にとってはその状態のカモメを眼にしたことで恐怖を覚えている者も少なくない。


「騙されんぞ!」
「ホントだってばぁ!」
「騒々しい、何事じゃ!」
「ぐ……ラガナ……殿……」


 そこへ現れたのはカモメにとってもよく知った顔のラガナであった。


「うん?おお!カモメなのじゃ!」
「ラガナ!」


 カモメにとっては救いの手である。
 以前の魔族襲来の際、竜族は大きな被害を受けてしまった、長を亡くしてしまい、途方に暮れている竜族をラガナ放っておけなかった。
 その為、ラガナはここに残り、復興に手を貸しているのだ。


「どうしたのじゃ、カモメ?魔王を倒してきたのじゃ?」
「うん、魔王は死んだんだけど……ちょっと厄介なことになってね」


 魔王は死んだ、その言葉を聞いた見張りの竜族たちが動揺をする。
 真実なのだが、闇の魔女が言う事を信じていいのか分からないと言った顔であった。


「おお、さすがカモメ達なのじゃ!それで、厄介なこととは何なのじゃ?」
「実は……」



 カモメはヴァルネッサ城で起きたことをラガナに1から説明をした。
 魔王を討伐したという事を聞き最初は明るい顔だったラガナだが、話を聞くうちにどんどんと表情を曇らせていったのだ。


「何という事じゃ……コロ……コロが死んだじゃと?」
「うん……ごめん」
「カモメが謝ることではないのじゃ……じゃが、コロの命を奪ったそのリーンとか言う女……許せないのじゃ」


 ラガナの瞳には怒りの炎が燃えていた。
 当然である、元々コロはラガナの仲間であり家族のような間柄なのだ。


「それで、その女の所にクオンとアネルを助けに行くのじゃな?」
「うん」
「そして、そのためには謎の大陸に行く必要があると……」
「うん、だから行き方を『世界』に聞きたいの……竜の秘宝をもう一度、使わせてくれない?」
「ふむ、良いぞ……と言いたいところじゃが、余にその権限はないのじゃ……」
「そうなの?」
「うむ、その権限を持つのは族長である……レガロールだけじゃ」


 レガロールというのは以前竜族の隠れ里に来た時、案内をしてくれたドラゴンだ。
 真面目そうな人で、ラガナとはそりが合わない感じであったが。


「とりあえず、レガロールにあわせるのじゃ……ついてくるのじゃ」
「なっ、ラガナ殿っ……この者たちを里にいれるというのですか!」
「当然じゃ、カモメ達は以前、この里の竜の命を救ってくれた恩人じゃ、それを門前払いするつもりなのだ?」
「ですが……闇の魔女は我ら竜族を滅ぼすとも言ったそうではないですか……」
「聞き間違いじゃ……そうじゃろうカモメ、お主は竜族を傷つけたりはしないのだ」
「う、うん、しないよ」


 魔に乗っ取られ、闇に堕ちたカモメは確かにそう言葉にしていた。
 だが、正気のカモメはもちろん、そんなことをするつもりはない。



「ならば、ついてくるのじゃ、レガロールに直接会って、お願いするといいのじゃ」
「ありがとう、ラガナ」


 門番たちに睨まれながらもカモメ達は竜族の里の中に入っていった。

 恐怖と疑いの目で見られるのはカモメは慣れている……こちとら、ずっと追われる身だったのだ。
 今更、それで尻込みするなどという事はないのだ。


 カモメ達はレガロールに会い、秘法の使用許可を得る為、足を進めるのだった。
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