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8章
終結
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先ほどまでの激しい戦いが嘘のように辺りは静寂に包まれていた。
そんな中、私は息を切らせながらも未だ戦闘態勢を解いていない、自分の放った光と闇の魔法で舞い上がっている煙達が晴れるまで『魔』ちゃんと消滅したのを確認するまで、気を抜くわけにはいかないのだ。
今の私の魔法で結界は完全に壊れてしまった、ディータ達もすでに結界を張り直すだけの魔力が残っていないようだ。
なら、もし、まだ『魔』が生きていたら、逃げられる可能性もある、そうならないように集中を途切れさせるわけにはいかないのだ。
ゆっくりと、煙が晴れると……そこには、一つの影が現れた。
それは紫色の霧のような体をしている……『魔』だ。
「まだっ……生きてる……」
私は重い全身に力を込めてその影の元へと進む。
煙が完全に晴れると、そこにいた影がハッキリと見え始めた。
「なぜですか……なぜ邪魔をするんですか……」
そこにいた、『魔』が喋り始める……いや、喋ることしかできないのだろう。
煙が晴れたその場にいた『魔』はすでに上半身部分しか残っておらず、紫の光の粒子のようなものが体から溢れ始めていた……お父さんやコロが消えた時と同じである。
つまり、『魔』はすでに死にかけているのだろう。
以前、幻影で死を偽装した事がある『魔』だが、今回は、これが偽装とは思えない……少なくとも私の光と闇の合成魔法をまともに喰らっているのだ……幻影を作って逃げるなんて余裕は無いはずである。
「なぜっ!……私は……私を捨てた『世界』に復讐したいだけなのにっ!」
「……当然だよ」
「くっ……貴方も『世界』の味方ですか!ちっぽけな正義感で『世界』は正義と決めつけるのですか!」
「『世界』が正義なんてこれっぽっちも思ってないよ?私はただ、仲間を友達を護りたかっただけ……貴方が『世界』を殺すことで私の仲間にも危害が及ぶ……ううん、危害なんてものじゃない『世界』が死ねば、私の中も死んじゃうもん」
「…………」
「それに、あなたはグランルーンで私にケンカを売ったんだよ……自業自得じゃない」
「……ニンゲンを甘く見ました……もっと扱いやすいと思ったんですけどねぇ」
『魔』はなにやら、悟ったような顔をすると先ほどまでの激しい口調が嘘のように穏やかな喋りへと戻った……そして……。
「いるのでしょう……憎たらしい存在感を感じますよ……さっきまでは結界のせいでわからなかったですが……」
『魔』がディータ達の方を見てそう言った……いる?一体何を言ってるの?
「ええ、貴方を結界の外に出したくありませんでしたから……かと言ってカモメさん達を止めるのは無理だと解りましたので……」
「それで、人間が勝つ方に賭けたのね……しかも、自分から私の近くに来るなんて……ちっ、体が動けば今すぐにでも殺してやるのに……」
「貴方の存在が消えかけているのを感じます……どうやら幻影の類ではないようですね……」
青髪の少女だ……確か、結界の外で、兵士たちが操られたときに何か薬のようなものを出してくれた子……っていうか、『ふぇええええ』とか頼りない喋り方してなかったっけ!?……なんかむっちゃ落ち着いてるんですけど!?
「あれは『世界』よ……『世界』が人の形を持って現れたと言ったところかしらね」
「え!?」
私が戸惑っていると、ディータが私の近くまで歩いてきて、教えてくれた。
いや、来てくれたのはディータだけじゃない、クオンとエリンシアもである。
皆が近くに来てくれるだけでこんなにも心強いとは……私の心が皆が近くにいるだけで暖まるのを実感できた。
「そろそろ限界ね………負けは認めるわ……カモメ……だけど、私は『世界』を認めない……認めたくない」
「……ごめんなさい」
「!っ……ケンカを売ってるの?貴方に謝られてもちっとも嬉しくもないわよ!……今更……」
「はい、今更ですよね……今更ながら、私がどれだけあなたに酷いことをしたのか教えられました……カモメさんに……」
私に?……私は別に何も教えたつもりないんだけど……。
「私も彼女のように自分の『魔』……貴方を受け入れてあげることが出来たら……また違ったのかもしれません………」
「嫌よ……貴方なんかに受け入れられたくないわ……貴方の一部になるくらいなら消滅した方がマシね」
「………そうですか」
心底嫌そうに言う『魔』に少し寂しそうな顔をする『世界』
「ふざけた顔するんじゃないわよ……私は貴方にそんな顔をされる謂れは無いわよ……ああ……惨めね……私……最後までこんな……悔しいなぁ」
そう言って、『魔』は光の粒子となって消えていった。
少し、可哀想にも思う……けど、自分が不幸だからって周りを不幸にして良いわけがない……。
境遇には同情しそうになるが、『魔』のやった行いで多くの人を傷つけたのも事実である。
私は正義感が強いというわけじゃないけど……私の周りにもその『魔』のせいで傷ついた人間がいっぱいいるのだ……お母さんもお父さんも……。だから、同情なんてしてやらない。
「それで、『世界』なんだよね……この後、どうするの?」
『世界』は一度私を殺しに来ている……私を危険な存在と考えるなら、今、疲弊しきっているこのチャンスを逃すわけがない。
「どうもしませんよ……結界で封印する相手は消滅しました……結界を張り直す必要もありませんし……」
「あら、私達に襲い掛かっては来ないのかしら?」
「襲う理由がもうありませんもの……あなた達がこの世界を壊すというのなら話は別ですけれど……」
「無いわね……私もカモメも貴方になんて興味ないもの」
「ヒドイですねぇ……ですが、安心です」
ちょっと凹んだ顔をしながら、『世界』はそう言った。
まあ、ディータの言う通り、私も『世界』という存在には特に興味がない。
「それなら、私はここでお暇させてもらいますよ……『魔』を倒していただきありがとうございました」
「ふんっ、別にあなたの為に倒したわけじゃないわよっ!」
私の言いたいことをディータが言ってくれる。
「たはは……私、嫌われてます?」
「当然でしょう……貴方一度カモメを殺そうとしてるのよ?貴方が『世界』なんて存在じゃなければ八つ裂きにしてるわよ」
「同感」
珍しく、クオンとディータの意見が合う。
そして、その眼が本気であることを気付いたのか、『世界』は冷や汗を流しながら距離を取った。
「安心しなさい、アンタを殺したら、この世界の生き物全部が死ぬんでしょう?そんなこと望んじゃいないわよ」
「そうですか……」
安心したような、少し寂しそうな顔をして『世界』はそう言った。
そして、まるで消えるようにその場所からいなくなる。
『世界』が消える瞬間、『世界』がある方向を指さした。
その指の先を見ると、白い光の粒子のようなものが飛んでいるのが目に入る……リーンだ。
「リーン!?」
私はディータの肩を借りて、リーンの元まで走った。
リーンはすでに消滅しかけている。
特に外傷などはないはずなのだが……。
「……どうして?」
「残念ながら、私の魂はすでに『魔』にほとんど破壊されてましたので……ここまで持ったのが奇跡なくらいなんです」
「そんな……せっかく元に戻れたのに……」
「貴方は優しいんですね……」
『魔』に体を乗っ取られて、したくもないことをさせられて、全てを奪われてしまったリーン。
慈愛の女神であり……私の……お祖母ちゃんでもある……。
「私が不甲斐ないばかりに、ごめんなさい……あなた達には感謝しています……『魔』を止めてくれてありがとうございます」
「……おばあちゃん」
「!っ………ありがとう、カモメ……こんな私をおばあちゃんと呼んでくれて……ごめんね、何もしてあげられなくて……」
「ううん、私を助けてくれたよ……ありがとうおばあちゃん」
「ふふふ、なんだかくすぐったいですね……でも、いい気分です……最後にこんな気分になれた私は幸せなんでしょうね……」
さっきの『魔』と違い……と、そう呟くリーン。
そんなリーンを見て、私は涙が溢れてきた……長い時間一緒にいたわけでもない……過去の記憶を見たときだって、自分の身内と言う感じでは見ていなかった……だけど、いざ目の前で元に戻ったリーンを見たら……自然と優しい気持ちになれたのだ……。
それはリーンが慈愛の女神と呼ばれる存在だからなのか……それとも私のおばあちゃんだからなのか……それはわからない、でも……今のリーンを他人とは思えない……思いたくない……そう思ったら自然と涙が溢れ出していたのだ。
「ありがとう、カモメ……強く生きてね……」
そう言って微笑むと……リーンは光の粒子に変わり消えていった……。
私は……泣いた……おばあちゃんを失い、お父さんも二度失った………お母さんの形見のバトーネも失った……私の大切な血縁を……この戦いで完全に失ってしまったのだ……そう思うと、悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった………そして………。
「カモメ!?」
私は魔力を使い果たしたこともあり、疲労もあり……その場で意識を失うのだった……。
そんな中、私は息を切らせながらも未だ戦闘態勢を解いていない、自分の放った光と闇の魔法で舞い上がっている煙達が晴れるまで『魔』ちゃんと消滅したのを確認するまで、気を抜くわけにはいかないのだ。
今の私の魔法で結界は完全に壊れてしまった、ディータ達もすでに結界を張り直すだけの魔力が残っていないようだ。
なら、もし、まだ『魔』が生きていたら、逃げられる可能性もある、そうならないように集中を途切れさせるわけにはいかないのだ。
ゆっくりと、煙が晴れると……そこには、一つの影が現れた。
それは紫色の霧のような体をしている……『魔』だ。
「まだっ……生きてる……」
私は重い全身に力を込めてその影の元へと進む。
煙が完全に晴れると、そこにいた影がハッキリと見え始めた。
「なぜですか……なぜ邪魔をするんですか……」
そこにいた、『魔』が喋り始める……いや、喋ることしかできないのだろう。
煙が晴れたその場にいた『魔』はすでに上半身部分しか残っておらず、紫の光の粒子のようなものが体から溢れ始めていた……お父さんやコロが消えた時と同じである。
つまり、『魔』はすでに死にかけているのだろう。
以前、幻影で死を偽装した事がある『魔』だが、今回は、これが偽装とは思えない……少なくとも私の光と闇の合成魔法をまともに喰らっているのだ……幻影を作って逃げるなんて余裕は無いはずである。
「なぜっ!……私は……私を捨てた『世界』に復讐したいだけなのにっ!」
「……当然だよ」
「くっ……貴方も『世界』の味方ですか!ちっぽけな正義感で『世界』は正義と決めつけるのですか!」
「『世界』が正義なんてこれっぽっちも思ってないよ?私はただ、仲間を友達を護りたかっただけ……貴方が『世界』を殺すことで私の仲間にも危害が及ぶ……ううん、危害なんてものじゃない『世界』が死ねば、私の中も死んじゃうもん」
「…………」
「それに、あなたはグランルーンで私にケンカを売ったんだよ……自業自得じゃない」
「……ニンゲンを甘く見ました……もっと扱いやすいと思ったんですけどねぇ」
『魔』はなにやら、悟ったような顔をすると先ほどまでの激しい口調が嘘のように穏やかな喋りへと戻った……そして……。
「いるのでしょう……憎たらしい存在感を感じますよ……さっきまでは結界のせいでわからなかったですが……」
『魔』がディータ達の方を見てそう言った……いる?一体何を言ってるの?
「ええ、貴方を結界の外に出したくありませんでしたから……かと言ってカモメさん達を止めるのは無理だと解りましたので……」
「それで、人間が勝つ方に賭けたのね……しかも、自分から私の近くに来るなんて……ちっ、体が動けば今すぐにでも殺してやるのに……」
「貴方の存在が消えかけているのを感じます……どうやら幻影の類ではないようですね……」
青髪の少女だ……確か、結界の外で、兵士たちが操られたときに何か薬のようなものを出してくれた子……っていうか、『ふぇええええ』とか頼りない喋り方してなかったっけ!?……なんかむっちゃ落ち着いてるんですけど!?
「あれは『世界』よ……『世界』が人の形を持って現れたと言ったところかしらね」
「え!?」
私が戸惑っていると、ディータが私の近くまで歩いてきて、教えてくれた。
いや、来てくれたのはディータだけじゃない、クオンとエリンシアもである。
皆が近くに来てくれるだけでこんなにも心強いとは……私の心が皆が近くにいるだけで暖まるのを実感できた。
「そろそろ限界ね………負けは認めるわ……カモメ……だけど、私は『世界』を認めない……認めたくない」
「……ごめんなさい」
「!っ……ケンカを売ってるの?貴方に謝られてもちっとも嬉しくもないわよ!……今更……」
「はい、今更ですよね……今更ながら、私がどれだけあなたに酷いことをしたのか教えられました……カモメさんに……」
私に?……私は別に何も教えたつもりないんだけど……。
「私も彼女のように自分の『魔』……貴方を受け入れてあげることが出来たら……また違ったのかもしれません………」
「嫌よ……貴方なんかに受け入れられたくないわ……貴方の一部になるくらいなら消滅した方がマシね」
「………そうですか」
心底嫌そうに言う『魔』に少し寂しそうな顔をする『世界』
「ふざけた顔するんじゃないわよ……私は貴方にそんな顔をされる謂れは無いわよ……ああ……惨めね……私……最後までこんな……悔しいなぁ」
そう言って、『魔』は光の粒子となって消えていった。
少し、可哀想にも思う……けど、自分が不幸だからって周りを不幸にして良いわけがない……。
境遇には同情しそうになるが、『魔』のやった行いで多くの人を傷つけたのも事実である。
私は正義感が強いというわけじゃないけど……私の周りにもその『魔』のせいで傷ついた人間がいっぱいいるのだ……お母さんもお父さんも……。だから、同情なんてしてやらない。
「それで、『世界』なんだよね……この後、どうするの?」
『世界』は一度私を殺しに来ている……私を危険な存在と考えるなら、今、疲弊しきっているこのチャンスを逃すわけがない。
「どうもしませんよ……結界で封印する相手は消滅しました……結界を張り直す必要もありませんし……」
「あら、私達に襲い掛かっては来ないのかしら?」
「襲う理由がもうありませんもの……あなた達がこの世界を壊すというのなら話は別ですけれど……」
「無いわね……私もカモメも貴方になんて興味ないもの」
「ヒドイですねぇ……ですが、安心です」
ちょっと凹んだ顔をしながら、『世界』はそう言った。
まあ、ディータの言う通り、私も『世界』という存在には特に興味がない。
「それなら、私はここでお暇させてもらいますよ……『魔』を倒していただきありがとうございました」
「ふんっ、別にあなたの為に倒したわけじゃないわよっ!」
私の言いたいことをディータが言ってくれる。
「たはは……私、嫌われてます?」
「当然でしょう……貴方一度カモメを殺そうとしてるのよ?貴方が『世界』なんて存在じゃなければ八つ裂きにしてるわよ」
「同感」
珍しく、クオンとディータの意見が合う。
そして、その眼が本気であることを気付いたのか、『世界』は冷や汗を流しながら距離を取った。
「安心しなさい、アンタを殺したら、この世界の生き物全部が死ぬんでしょう?そんなこと望んじゃいないわよ」
「そうですか……」
安心したような、少し寂しそうな顔をして『世界』はそう言った。
そして、まるで消えるようにその場所からいなくなる。
『世界』が消える瞬間、『世界』がある方向を指さした。
その指の先を見ると、白い光の粒子のようなものが飛んでいるのが目に入る……リーンだ。
「リーン!?」
私はディータの肩を借りて、リーンの元まで走った。
リーンはすでに消滅しかけている。
特に外傷などはないはずなのだが……。
「……どうして?」
「残念ながら、私の魂はすでに『魔』にほとんど破壊されてましたので……ここまで持ったのが奇跡なくらいなんです」
「そんな……せっかく元に戻れたのに……」
「貴方は優しいんですね……」
『魔』に体を乗っ取られて、したくもないことをさせられて、全てを奪われてしまったリーン。
慈愛の女神であり……私の……お祖母ちゃんでもある……。
「私が不甲斐ないばかりに、ごめんなさい……あなた達には感謝しています……『魔』を止めてくれてありがとうございます」
「……おばあちゃん」
「!っ………ありがとう、カモメ……こんな私をおばあちゃんと呼んでくれて……ごめんね、何もしてあげられなくて……」
「ううん、私を助けてくれたよ……ありがとうおばあちゃん」
「ふふふ、なんだかくすぐったいですね……でも、いい気分です……最後にこんな気分になれた私は幸せなんでしょうね……」
さっきの『魔』と違い……と、そう呟くリーン。
そんなリーンを見て、私は涙が溢れてきた……長い時間一緒にいたわけでもない……過去の記憶を見たときだって、自分の身内と言う感じでは見ていなかった……だけど、いざ目の前で元に戻ったリーンを見たら……自然と優しい気持ちになれたのだ……。
それはリーンが慈愛の女神と呼ばれる存在だからなのか……それとも私のおばあちゃんだからなのか……それはわからない、でも……今のリーンを他人とは思えない……思いたくない……そう思ったら自然と涙が溢れ出していたのだ。
「ありがとう、カモメ……強く生きてね……」
そう言って微笑むと……リーンは光の粒子に変わり消えていった……。
私は……泣いた……おばあちゃんを失い、お父さんも二度失った………お母さんの形見のバトーネも失った……私の大切な血縁を……この戦いで完全に失ってしまったのだ……そう思うと、悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった………そして………。
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私は魔力を使い果たしたこともあり、疲労もあり……その場で意識を失うのだった……。
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