闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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2部 1章

ラリアスの街

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 私達は何とか謎の大陸に上陸し、そのままその足で東へと向かった。
 東へしばらく進んでいると、お爺さんの言う通り、大きな街が現れた。

 大きさからしてツァインの国の城下町と同じくらいの大きさがあるようだ。


「大きな街だね~」
「だね、どこかの国の首都なのかな?」
「中に入って見ればわかりますわ……ほら、あそこから入るみたいですわよ」


 エリンシアが指さす方向を見ると、そこには門があり、確かに何人かが並んでいる、並んでいる中には冒険者風の人や、商人のような人がいて、門番に何かを見せてから中に入っているようだ。


「身分証の確認でもしてるのかな?」


 私達も冒険者カードがあるので身分証を求められても大丈夫なのだが、結構街に入るのでも大変なんだね……ツァインにもちゃんと門番はいるけど、怪しい人物がいないかどうか見ているだけだったからなぁ。
 そういえば、ツァインは大丈夫かな……ディータ達に聞いた話だと、ラガナは竜の里に戻り、ミャアは旅に出ると言っていたらしい。
 レディとレナはそのままツァインに残ってくれるらしいので安心は出来るのだけど、私たちを逃がしたことで他の国になにか言われてないといいなぁ……。

 ツァインには色々お世話になって、迷惑もいっぱいかけちゃってるもんね……ほとぼりが冷めたらちゃんとお礼に行かないとだね……どれくらい経てばほとぼり冷めるか分からないけど……。



「ねえ……」
「どうしたんですのディータさん?」


 私がツァインの事を考えていると、ディータが真剣な顔をして3人に話しかけてくる……何かあったのかな?


「あなた達が持っている冒険者カード……使えるのかしら?」


 ん?どういうことだろう?冒険者ギルドがあるんだから冒険者カードも使えるんじゃ?


「結界の中の冒険者ギルドと結界の外の冒険者ギルド……同じものだとは思えないのだけれど……」
「どういうこと?同じ人間が作った冒険者ギルドなら同じなんじゃ?」
「いや、国が違えば文化も違う……それに結界が張られたのは千年以上も前だ……同じ名前でも全然違う者の可能性があるかもしれない……」


 んー、そんなものなのかな?……ああ、でも確かにこのカードが使えない可能性は高いのかな……。


「それに同じ人間ではないわ……」
「どういうことですの?」
「結界の中に元々人気や亜人はいなかったのよ……魔物や竜族はいたけど……」


 あ、そういえば、昔ディータに聞いたことがある気がする……ディータとレナで人間を誕生させたって……だから、人間はディータ達にとって子供のようなものなんだって……。

 

「そっか……あれ、でもだとしたらなんで結界の外にも人間がいるの?」
「恐らく他に女神がいるということなんでしょうね」


 そっか、リーンがそうだったように、ディータ達以外にも、女神はいるのだ……その別の女神が結界の外で人間を創造したということだろう……。いや、人間だけじゃない、並んでいる人の中には獣人や亜人もいる……つまり、女神が創る生物は結構みんな同じようなものを創造するってことなのかな?


「そうね、ほとんどの女神は自分に近い形のものを創るわ……中にはリーンみたいに変わっているのもいるけど」


 なるほど……でもそれなら、冒険者ギルドも似たような物かもしれないし、大丈夫かも?


「いや、冒険者ギルドの在り方自体は似ていても、その証となる冒険者の証がカードとは限らないのかもしれない……ほら、見てみて」


 クオンが指を指した方向を見ると、門番に冒険者風の男たちがなにやら首から下げている金属のペンダントのようなものを見せている。
 そして、それを確認した門番は冒険者たちを門の中へと誘導した。つまりあれば結界の外での冒険者の証の可能性が高いのだ……つまり、この冒険者カードを見せても通してはもらえないかもしれない。



「どうしよう……」
「それでも入れないか聞いてみるしかありませんわね……駄目でしたら別の街を探すか、証になる物を手に入れるしかありませんわよ」


 そうだね、ものは試しである……何もせずここいいてもしょうがないのでとりあえず門番の所までいってみよう……。

 皆でそう決めて、私達は門へと近づいた……。
 門へと近づくと、門番の人が笑顔で私達に話しかけてくる。


「お、冒険者か?恰好を見ればすぐわかるぞ……しかし、見ない顔だな、この街は初めてか?」
「あ、うん、初めてだよ」
「そっかそっか、ラリアスの冒険者ギルドは人手不足だからなぁ、新人は大歓迎さ……で、お前さん達の階級はいくつなんだ?」
「えっと………」


 階級ってランクのことだよね……冒険者ランクは私がSS、クオンとエリンシアがSだけど……多分ここじゃ通じないよね……そもそも同じランク分けかもわからないし……どうしよう……。

 私が悩んでいると、クオンが私の前にでる……そして、門番の人と話を始めた。


「それが……ですね、僕ら皆、同じ村の出なのですが……そこで冒険者になりまして……腕を磨いていざ街へと出てきたんです……」
「おお、そうなのか……で?」
「その時貰った冒険者の証がこれなのですが……」
「なんじゃこりゃ?」


 クオンが結界の中で使っていた冒険者カードを門番の人に見せる……見せちゃって大丈夫なのかな?


「これを冒険者の証としてもらったてのか?」
「はい……ですが先ほどここを通られた冒険者の方は別のものを提示していたのでおかしいなと思いまして……」
「そりゃあそうさ……冒険者の証って言ったら階級を示す冒険者プレートだ……こんな紙っ切れじゃねぇよ……それにSランクなんて世界中探しても20人しかいない高ランクじゃねぇか……兄ちゃんたち完全に騙されたな……」
「そうなのですか……その場合どうしたらいいのでしょうか?他に身分を提示するものも持っていないんですが……」


 ああ、なるほど……悪い人に騙されたことにして、何か街に入る方法が無いか聞き出すのか……相変わらずクオンは頭がいいねぇ。


「そうさなぁ……少なくとも冒険者希望なのは間違いないんだろ?」
「はい、そうです」
「だったら、このまま俺が冒険者ギルドに案内してやるよ」
「いいんですか?」


 身分証の類が無くても入ることは出来るのか……よかった。


「といっても、冒険者ギルドで登録し直してもらうからな……そうしねぇと、おめぇらがどんな人間かわからねぇし……」


 うん?冒険者ギルドで登録すると私たちが危険な人間じゃないと解ってもらえるのかな?


「登録しなおすと、僕らが危険じゃないとわかるんですか?」
「ああ、それも知らねぇのか……冒険者ギルドに登録するときにその人間に前科がないかとか調べられるんだよ」
「なるほど……わかりました、案内をお願いします」


 まあ、私達はそもそも、この結界の外の人間じゃないので前科なんてないもんね……結界の中だったら逆にやばかったかな……私、闇の魔女だし……。
 とりあえず、冒険者ギルドに冒険者として登録できるかもしれない……そうしたら……子供の頃から念願だったちゃんとした冒険が出来るんだ!やったー♪

 私は胸を弾ませながら門番の人の後をついて、街へと入っていった。
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