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2部 1章
兄登場
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「一応確認するが、これをやったのはお前さん達か?」
ギルドマスターと呼ばれた男性は私達に話しかけながらこちらに近づいてきた。
「うん、そだよ?」
元々はオークを20体討伐するだけのクエストだったんだけど、街の近くにオークの村なんてあったら大変だしね……結果的にキングやハイオークを合わせて100体近くを討伐したんじゃないだろうか?
クエストの報酬5倍とかならないかなぁ……ならなよね。
「信じられん……いや、ここに来た時、そこの少年がオークキングを斬り伏せるところを見ているのでな疑っている訳じゃないが………まさか、こうもあっさりとオークキングを……いや、オークの村ごと殲滅して見せるとは……」
ギルドマスターと呼ばれた男性がブツブツと何か言っている。
でも、このギルドマスターって人、多分私たちが無茶をするんじゃないかと思って見に来てくれたんだよね?なら、いい人なのかな?
「……えっと、とりあえずシルネアは大丈夫?」
「あ、はい……大丈夫です」
「よかった、ところでさっき他にも一緒にクエスト受けた人がいるみたいなこと言っていたけど……」
「はい、兄と一緒にクエストを受けています」
「お兄さんはどこいったの?」
「それが、はぐれてしまいまして……」
それは大変だ、さっきのオークキングといい、ディータ達が討伐しているワーウルフといい、結構な数の魔物がこの森には生息しているだろう、一人でぶらついているのは危険かもしれない。
「一人だと危ないかもだし、一緒に探すよ」
「え、いいのですか?」
「もちろん、困った時はお互い様っていうじゃん♪」
「あ、ありがとうございます」
私が、シルネアと話をしていると、クオンがこちらに近づいてくる。
「いいよね、クオン」
「うん、もちろん……ところで、そちらの方は?」
クオンは戻ってくるとギルドマスターの方を向く。
えっと、正直、私もどうしていいのか分からないのだけれど、冒険者ギルドのギルドマスターっていったらギルドのトップということだ……挨拶くらいしていた方がいいのかな。
「えっと、ギルドマスターさん……らしいよ?」
「え、そうなの?」
クオンもまさかこんなところにギルドマスターがいるなんて思っていなかったのだろう、それだけじゃない、そのギルドマスターがこんなにもガタイのいい冒険者風の男だというのも驚いたのかもしれない。
「すみません、挨拶が遅れました、本日、冒険者ギルドに登録させていただきましたクオンと言います、こちらはカモメ」
クオンの紹介で私も一応、おじぎをする。
「ああ、話は聞いている、ギルドマスターのフランクだ。お前さん達が冒険者になりたてで討伐クエストを複数受けていったと聞いてな、心配になってきてみたのだが……いらん心配だったようだ、すまんな」
「いえ、こちらこそ、ご心配をおかけして申し訳ありません。もう少し、実績を積んでから受けるべきでした」
「いや、気にするな、実力のある者を遊ばせていられるほどラリアスの冒険者ギルドは余裕がないのでな、助かる」
おお、すごい話の分かる人だよ、ギルドマスター。
「ところで、パーティは四人と聞いていたが……」
「四人いるわよ……」
私達とギルドマスターが喋っていると、先ほど、ギルドマスターが来た方向から聞きなれた声が聞こえる。………ディータだ。
「あ、ディータ、エリンシア、そっちも終わったの?」
「ええ、ワーウルフの群れがおりましたので80体程狩ってきましたわ」
「そっちはそっちで面白そうなことになっているわね」
私たちの後ろに広がるオークの村の成れの果てを見ながらディータは言う。
そういうディータの右手は何やら大きな物を引きずっていた。
「あれ、ディータ、それは何?」
「ああ、途中で拾ったのよ、泣きながらワーウルフと戦ってて、なんかウザかったから気絶させてるけど」
そう言って、ディータは右手で引きずっていた男性をこちらに投げた。
意外と力あるよねディータ……いや、その体はソウルイーターで中身は女神なのだからそれくらい普通なのだろうか……。
「私をゴリラみたい見るのやめてくれる?風の魔法で体重を軽くさせてただけよ……」
あ、私の考えていたことが解ったらしく、ディータは頬を膨らませながら抗議してきた。
「で、この人は?」
「に、兄様!?」
私が誰?って聞こうと思ったら私の後ろから答えが返ってきた。
どうやら、この人がシルネアの言っていた一緒にパーティを組んでいるお兄さんらしい。
探す手間が省けたね。
「!!!!、シルネア!妹よ!?我が愛しの最愛の妹よ!!!」
うわぁ……。
シルネアの声に、気絶していたシルネアのお兄さんがガバッと起き上がる。
……愛しの最愛のって愛を二つも付けるのか……。
「ちょっ、兄さん!?」
「ああああああ、心配したぞ、ちょー心配したぞ!兄ちゃん、兄ちゃん、お前がいなくなったらと思ったら……よかったぁあああああ!」
「こ、こら、兄さん、ちょっとまって!」
シルネアのお兄さんはシルネアに抱き着くとワンワンと泣き出した……いや、うん、妹想いの良いお兄さん……なのかな?……シルネアはすっごい恥ずかしそうにしているけど。
「兄さん、離して」
「嫌だ、もう二度と離すもんかああああ!」
「人前っ、恥ずかしいから!兄さんってば!」
「恥ずかしくなんてあるものか!もう安心だぞ、兄ちゃんが護ってやるからなぁ!」
「だああああ、やめんかあああああああ!」
………あ。
シルネアの足が、思いっきり振り上げられると、お兄さんの男性の急所を的確に蹴り上げていた。
その衝撃がお兄さんの脳天を貫いたかの如く駆け上ると、お兄さんは再び、その痛みから逃げるように気絶したのだった。
「はあっ、はあっ……まったく、困った兄さんです!」
その光景には私は乾いた笑いを上げることしかできず、クオンとギルドマスターの男性二人は、その光景から眼を逸らしていた……なんというか、見るだけでも痛いから見たくないと言った感じであった。
ギルドマスターと呼ばれた男性は私達に話しかけながらこちらに近づいてきた。
「うん、そだよ?」
元々はオークを20体討伐するだけのクエストだったんだけど、街の近くにオークの村なんてあったら大変だしね……結果的にキングやハイオークを合わせて100体近くを討伐したんじゃないだろうか?
クエストの報酬5倍とかならないかなぁ……ならなよね。
「信じられん……いや、ここに来た時、そこの少年がオークキングを斬り伏せるところを見ているのでな疑っている訳じゃないが………まさか、こうもあっさりとオークキングを……いや、オークの村ごと殲滅して見せるとは……」
ギルドマスターと呼ばれた男性がブツブツと何か言っている。
でも、このギルドマスターって人、多分私たちが無茶をするんじゃないかと思って見に来てくれたんだよね?なら、いい人なのかな?
「……えっと、とりあえずシルネアは大丈夫?」
「あ、はい……大丈夫です」
「よかった、ところでさっき他にも一緒にクエスト受けた人がいるみたいなこと言っていたけど……」
「はい、兄と一緒にクエストを受けています」
「お兄さんはどこいったの?」
「それが、はぐれてしまいまして……」
それは大変だ、さっきのオークキングといい、ディータ達が討伐しているワーウルフといい、結構な数の魔物がこの森には生息しているだろう、一人でぶらついているのは危険かもしれない。
「一人だと危ないかもだし、一緒に探すよ」
「え、いいのですか?」
「もちろん、困った時はお互い様っていうじゃん♪」
「あ、ありがとうございます」
私が、シルネアと話をしていると、クオンがこちらに近づいてくる。
「いいよね、クオン」
「うん、もちろん……ところで、そちらの方は?」
クオンは戻ってくるとギルドマスターの方を向く。
えっと、正直、私もどうしていいのか分からないのだけれど、冒険者ギルドのギルドマスターっていったらギルドのトップということだ……挨拶くらいしていた方がいいのかな。
「えっと、ギルドマスターさん……らしいよ?」
「え、そうなの?」
クオンもまさかこんなところにギルドマスターがいるなんて思っていなかったのだろう、それだけじゃない、そのギルドマスターがこんなにもガタイのいい冒険者風の男だというのも驚いたのかもしれない。
「すみません、挨拶が遅れました、本日、冒険者ギルドに登録させていただきましたクオンと言います、こちらはカモメ」
クオンの紹介で私も一応、おじぎをする。
「ああ、話は聞いている、ギルドマスターのフランクだ。お前さん達が冒険者になりたてで討伐クエストを複数受けていったと聞いてな、心配になってきてみたのだが……いらん心配だったようだ、すまんな」
「いえ、こちらこそ、ご心配をおかけして申し訳ありません。もう少し、実績を積んでから受けるべきでした」
「いや、気にするな、実力のある者を遊ばせていられるほどラリアスの冒険者ギルドは余裕がないのでな、助かる」
おお、すごい話の分かる人だよ、ギルドマスター。
「ところで、パーティは四人と聞いていたが……」
「四人いるわよ……」
私達とギルドマスターが喋っていると、先ほど、ギルドマスターが来た方向から聞きなれた声が聞こえる。………ディータだ。
「あ、ディータ、エリンシア、そっちも終わったの?」
「ええ、ワーウルフの群れがおりましたので80体程狩ってきましたわ」
「そっちはそっちで面白そうなことになっているわね」
私たちの後ろに広がるオークの村の成れの果てを見ながらディータは言う。
そういうディータの右手は何やら大きな物を引きずっていた。
「あれ、ディータ、それは何?」
「ああ、途中で拾ったのよ、泣きながらワーウルフと戦ってて、なんかウザかったから気絶させてるけど」
そう言って、ディータは右手で引きずっていた男性をこちらに投げた。
意外と力あるよねディータ……いや、その体はソウルイーターで中身は女神なのだからそれくらい普通なのだろうか……。
「私をゴリラみたい見るのやめてくれる?風の魔法で体重を軽くさせてただけよ……」
あ、私の考えていたことが解ったらしく、ディータは頬を膨らませながら抗議してきた。
「で、この人は?」
「に、兄様!?」
私が誰?って聞こうと思ったら私の後ろから答えが返ってきた。
どうやら、この人がシルネアの言っていた一緒にパーティを組んでいるお兄さんらしい。
探す手間が省けたね。
「!!!!、シルネア!妹よ!?我が愛しの最愛の妹よ!!!」
うわぁ……。
シルネアの声に、気絶していたシルネアのお兄さんがガバッと起き上がる。
……愛しの最愛のって愛を二つも付けるのか……。
「ちょっ、兄さん!?」
「ああああああ、心配したぞ、ちょー心配したぞ!兄ちゃん、兄ちゃん、お前がいなくなったらと思ったら……よかったぁあああああ!」
「こ、こら、兄さん、ちょっとまって!」
シルネアのお兄さんはシルネアに抱き着くとワンワンと泣き出した……いや、うん、妹想いの良いお兄さん……なのかな?……シルネアはすっごい恥ずかしそうにしているけど。
「兄さん、離して」
「嫌だ、もう二度と離すもんかああああ!」
「人前っ、恥ずかしいから!兄さんってば!」
「恥ずかしくなんてあるものか!もう安心だぞ、兄ちゃんが護ってやるからなぁ!」
「だああああ、やめんかあああああああ!」
………あ。
シルネアの足が、思いっきり振り上げられると、お兄さんの男性の急所を的確に蹴り上げていた。
その衝撃がお兄さんの脳天を貫いたかの如く駆け上ると、お兄さんは再び、その痛みから逃げるように気絶したのだった。
「はあっ、はあっ……まったく、困った兄さんです!」
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