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2部 1章
クルード
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「お騒がせしてすみませんでした」
シルネアは私達とギルドマスターに申し訳なさそうにお辞儀をする。
その足元には青い顔をして白目をむいている彼女の兄が横たわっていた。
「あはは、その人がはぐれたって言っていたお兄さん?」
「はい……お恥ずかしながら兄のクルードと申します」
「はは、相変わらずのようだな」
ギルドマスターは二人の事を知っているのか、困った奴だと笑いながら返した。
「すみません」
小さくなるシルネア、どうやら先ほどの光景はこの二人にとってはよくあることのようで、ギルドマスターもそれをよく見かけているのだという……妹を大切にするのは良いんだけどね……シルネアも大変そうだ。
「っと、それじゃあ、私達は街に戻るけど、シルネアとギルドマスターさんはどうする?」
「俺は、まだ仕事があるんでな、それを片付けてから帰るとするよ」
「仕事?手伝おっか?」
「いや、俺一人で十分だ……はは、俺を手伝おうかという冒険者が現れるとはな」
え、私なんか変な事言った?手伝えることなら手伝おうかなと思っただけだったんだけど……。
「カモメさん、ギルドマスターさんは元はAランクの冒険者の方なんです、なので私達みたいな低ランクの冒険者では逆に足手纏いになってしまうかと……。」
おお、そうなのか、なるほど、今はもう冒険者じゃないから街のギルドにはCランク以上の冒険者はいないけど、冒険者でなければ強い人は他にもいるのかもしれない。
それに、ランクが低くても強い人っていうのもいるかもしれないしね。
現に、今目の前にいるシルネアはEランク冒険者で同じく危険度Eランクのオークを単身で危なげなく倒して見せている……実力だけならDランクになっていてもおかしくないだろう。
まあ、実績を積まないとランクを上げられないというシステムなのだから少なからずそう言う人はいるんだろうな。
「そっか、じゃあ、シルネア達はどうする?」
「あ、私達も採取の依頼は終わりましたので帰ろうかと思います」
「じゃ、一緒に帰ろっか」
「はい」
謎の大陸について、まだ一日目だが、仲良くできそうな子と知り合えてよかった……お兄さんの方はちょっと変わってるけど……まあ、悪い人ではないだろう。
「それじゃ、ギルドマスターさん」
「ああ、気を付けて帰れ、後、出来れば魔石はギルドに売ってくれると助かる」
「あはは、りょーかいっ」
こっちの大陸でも魔石はギルドが買い取ってくれるらしい、魔石は魔導具や魔力を使った日用品を作る際に使用される、その為、ギルドの収入源としても活躍しているのだ。
冒険者がそのまま道具屋に持っていったとしても買い取ってはくれるのだろうが、ギルドの方が買い取り値は少し高い。なぜかというと、道具屋などは一度、魔石を加工するために錬金術師に依頼をしないといけないが、ギルドはお抱えの錬金術師がいる、その分、高めに買い取っても利益を得られるからである。
その為、冒険者は基本魔石をギルドに売るのだ。
「しっかし、魔石100個も持つと思いねぇ……」
「だね、余りに多い時は大物の魔石以外は置いていくことになるかもね」
クオンの言う通り、そうするしかないかなぁ、ちょっともったいない気もするが、今回みたいに大量の魔物と戦った場合魔石を回収するとすごい重量になる、前にウェアウルフの大群と戦った時もライカンスロープとかの魔石以外は放置してしまった。
もちろん、クオンと半分こに分けて持っているが、やっぱり、重いのだ。
しょうがないよね、私はか弱い女の子なのだからっ
「しかし、皆さんお強いんですね?」
私たちがそんな話をしているとシルネアが話しかけてくる。
「あはは、まあ、それなりにね」
「ラリアスに来る前は何をされていたんですか?」
「あ、えっと……」
「カモメ、僕が説明するよ」
私は咄嗟に本当の事を言いそうになるが、クオンがそれを遮る。
危ない危ない、一応、こっちの大陸では私たちのいた大地は魔の海とか呼ばれているのだ……そのことがバレたらどうなるか分からない、黙っておいた方がいいよね。
「ここに来る前も冒険者をしていたんだけど、そこが偽ギルドだったみたいで……この街でそれを知って改めて冒険者ギルドに登録をしたんだよ」
「そうだったんですか……ヒドイ……カモメさん達を騙して利用してたんですね……」
「あはは……そうかも」
実際にはそんな人はいないので、中途半端な答えを返してしまう……うう、私、嘘を吐くのは苦手だよ……すぐボロが出そう……。
「そんなことより、その荷物、まだ起きないのかしら?」
現在、シルネアのお兄さんはディータの軽量化の魔法を掛けられて、体重を軽くし、シルネアがそれを引きずっている形になっている……ちょっとかわいそう。
「そろそろ、目を覚ますと思いますけど、できれば街まで起きないで欲しいです」
シルネアが困った顔でそう言う……ああ、起きるとさっきの続きが始まるのかな……。
「はっ!最愛の妹が私を呼ぶ声!?」
あ……起きちゃった……。
「呼んでません……」
「妹よ!あああ、無事でよかった!さあ、兄にその可愛らしい顔を見せておくれ!」
「だ~か~ら~!それはやめてって!!」
お兄さんは両手を広げながら妹にわが胸に飛び込んでおいで!と言う。
もちろんシルネアはそれをバッサリと断る……それでもめげずにお兄さんは恥ずかしがらないでおいでっと言い続けていた……ああ、これ、シルネアが飛び込まないと終わらない奴だ。
だが、シルネアも人前でそんなことは出来ない、と言うか出来れば人前じゃなくてもしたくないんだろう、頭を抱えながら苦悶していた。
どうしようかな……と、私が悩んでいると、突如、シルネアのお兄さんに雷の魔法が炸裂した。
「あばばばばばばっ」
何事!?と驚くと、お兄さんの方に手を置いたディータがにっこりとほほ笑んでいる。
「ウザいわ♪」
うん、ニッコリとほほ笑んでいるが、その笑顔がとっても怖い。
「な、何をするんだ君は!」
おお、ディータの電撃を受けたにも関わらずお兄さんはピンピンしていた。
また気絶しちゃうかなと思ったんだけど、意外と頑丈である。
ディータも驚いたらしく、問い詰めてきたお兄さんから一歩退く。
あの強気なディータを一歩退けるなんて、すごいぞ、このお兄さん。
「ま、まさか君は誘拐犯か!俺の妹を連れ去ろうって魂胆だな!」
「は、はい!?」
「『はい』だとっ、認めたな!やはり誘拐犯か!!」
いやいや、今の『はい』はそういう『はい』じゃないでしょ!?
「覚悟しろ誘拐犯……みゃ!?」
お兄さんが言い終わる前に妹のシルネアのジャンピングかかと落としがお兄さんの脳天に直撃した。
お兄さんは頭を抱えながら呻いている……うん、あれは結構痛いと思う。
「いい加減にしなさい、兄さん!この人たちは私を助けてくれたのよ!そんな恩人にそう言う事言うなんて……兄さんのこと嫌いになっちゃうから!」
「のおおおおおおおおおおおう!?」
嫌いになっちゃうから……その一言を聞いたシスコンお兄さんは、とてもオーバーなリアクションでショックを受けている。まるで、この世の終わりのようなショックの受けようだ……いや、もしかしたらそれ以上かも……。
「シルネア、兄さんが間違っていた!だから、嫌いになるなんて言わないでおくれえええ!」
「なら、カモメさん達に謝る!」
「たいっへん申し訳ありませんでしたああああ!」
こちらも見事なジャンピング土下座であった。
いや、うん……えっと……ナニコレ?
「と、とりあえず、解ってもらえたんならいいんじゃありません?」
さすがのエリンシアもドン引きしている……いやぁ、変わった人だよこのお兄さん……うん、あんまりかかわらない方がよかったかも?
「そして、私の妹を救ってくれたとのこと!重ねてお礼を申し上げます!」
「わ、わかったから、頭を上げなさい……なんか怖いわ」
「なんとお優しい!このクルード、感涙の極み!」
うん、うっとおしい……ゲフンゲフン、なんと言うか暑苦しい人だね……うん。
「だああ、近い、近い!!」
おお、ディータが狼狽えてる……お兄さんのアグレッシブな動きにあのディータですら狼狽させる……ある意味凄いねこのお兄さん……。
「もうっ、兄さん、いい加減落ち着いて!」
「皆ッ!」
私と、ディータとエリンシアが戸惑っている中、クオンがいきなり真面目な声を上げた。
そして、そのクオンの声で私も気付く……囲まれてる……。
「ちっ、気づかれたか……よう、兄さんたち、死にたくなかったら金目のモン置いていきな」
盗賊だ……ああ、そうか、あれだけバカ騒ぎしていればこういう輩を呼び込んじゃうよね……まあ、来たのが魔物じゃなかった分いいのかな?
私は盗賊に囲まれながらも、そんなことを考えていた。
シルネアは私達とギルドマスターに申し訳なさそうにお辞儀をする。
その足元には青い顔をして白目をむいている彼女の兄が横たわっていた。
「あはは、その人がはぐれたって言っていたお兄さん?」
「はい……お恥ずかしながら兄のクルードと申します」
「はは、相変わらずのようだな」
ギルドマスターは二人の事を知っているのか、困った奴だと笑いながら返した。
「すみません」
小さくなるシルネア、どうやら先ほどの光景はこの二人にとってはよくあることのようで、ギルドマスターもそれをよく見かけているのだという……妹を大切にするのは良いんだけどね……シルネアも大変そうだ。
「っと、それじゃあ、私達は街に戻るけど、シルネアとギルドマスターさんはどうする?」
「俺は、まだ仕事があるんでな、それを片付けてから帰るとするよ」
「仕事?手伝おっか?」
「いや、俺一人で十分だ……はは、俺を手伝おうかという冒険者が現れるとはな」
え、私なんか変な事言った?手伝えることなら手伝おうかなと思っただけだったんだけど……。
「カモメさん、ギルドマスターさんは元はAランクの冒険者の方なんです、なので私達みたいな低ランクの冒険者では逆に足手纏いになってしまうかと……。」
おお、そうなのか、なるほど、今はもう冒険者じゃないから街のギルドにはCランク以上の冒険者はいないけど、冒険者でなければ強い人は他にもいるのかもしれない。
それに、ランクが低くても強い人っていうのもいるかもしれないしね。
現に、今目の前にいるシルネアはEランク冒険者で同じく危険度Eランクのオークを単身で危なげなく倒して見せている……実力だけならDランクになっていてもおかしくないだろう。
まあ、実績を積まないとランクを上げられないというシステムなのだから少なからずそう言う人はいるんだろうな。
「そっか、じゃあ、シルネア達はどうする?」
「あ、私達も採取の依頼は終わりましたので帰ろうかと思います」
「じゃ、一緒に帰ろっか」
「はい」
謎の大陸について、まだ一日目だが、仲良くできそうな子と知り合えてよかった……お兄さんの方はちょっと変わってるけど……まあ、悪い人ではないだろう。
「それじゃ、ギルドマスターさん」
「ああ、気を付けて帰れ、後、出来れば魔石はギルドに売ってくれると助かる」
「あはは、りょーかいっ」
こっちの大陸でも魔石はギルドが買い取ってくれるらしい、魔石は魔導具や魔力を使った日用品を作る際に使用される、その為、ギルドの収入源としても活躍しているのだ。
冒険者がそのまま道具屋に持っていったとしても買い取ってはくれるのだろうが、ギルドの方が買い取り値は少し高い。なぜかというと、道具屋などは一度、魔石を加工するために錬金術師に依頼をしないといけないが、ギルドはお抱えの錬金術師がいる、その分、高めに買い取っても利益を得られるからである。
その為、冒険者は基本魔石をギルドに売るのだ。
「しっかし、魔石100個も持つと思いねぇ……」
「だね、余りに多い時は大物の魔石以外は置いていくことになるかもね」
クオンの言う通り、そうするしかないかなぁ、ちょっともったいない気もするが、今回みたいに大量の魔物と戦った場合魔石を回収するとすごい重量になる、前にウェアウルフの大群と戦った時もライカンスロープとかの魔石以外は放置してしまった。
もちろん、クオンと半分こに分けて持っているが、やっぱり、重いのだ。
しょうがないよね、私はか弱い女の子なのだからっ
「しかし、皆さんお強いんですね?」
私たちがそんな話をしているとシルネアが話しかけてくる。
「あはは、まあ、それなりにね」
「ラリアスに来る前は何をされていたんですか?」
「あ、えっと……」
「カモメ、僕が説明するよ」
私は咄嗟に本当の事を言いそうになるが、クオンがそれを遮る。
危ない危ない、一応、こっちの大陸では私たちのいた大地は魔の海とか呼ばれているのだ……そのことがバレたらどうなるか分からない、黙っておいた方がいいよね。
「ここに来る前も冒険者をしていたんだけど、そこが偽ギルドだったみたいで……この街でそれを知って改めて冒険者ギルドに登録をしたんだよ」
「そうだったんですか……ヒドイ……カモメさん達を騙して利用してたんですね……」
「あはは……そうかも」
実際にはそんな人はいないので、中途半端な答えを返してしまう……うう、私、嘘を吐くのは苦手だよ……すぐボロが出そう……。
「そんなことより、その荷物、まだ起きないのかしら?」
現在、シルネアのお兄さんはディータの軽量化の魔法を掛けられて、体重を軽くし、シルネアがそれを引きずっている形になっている……ちょっとかわいそう。
「そろそろ、目を覚ますと思いますけど、できれば街まで起きないで欲しいです」
シルネアが困った顔でそう言う……ああ、起きるとさっきの続きが始まるのかな……。
「はっ!最愛の妹が私を呼ぶ声!?」
あ……起きちゃった……。
「呼んでません……」
「妹よ!あああ、無事でよかった!さあ、兄にその可愛らしい顔を見せておくれ!」
「だ~か~ら~!それはやめてって!!」
お兄さんは両手を広げながら妹にわが胸に飛び込んでおいで!と言う。
もちろんシルネアはそれをバッサリと断る……それでもめげずにお兄さんは恥ずかしがらないでおいでっと言い続けていた……ああ、これ、シルネアが飛び込まないと終わらない奴だ。
だが、シルネアも人前でそんなことは出来ない、と言うか出来れば人前じゃなくてもしたくないんだろう、頭を抱えながら苦悶していた。
どうしようかな……と、私が悩んでいると、突如、シルネアのお兄さんに雷の魔法が炸裂した。
「あばばばばばばっ」
何事!?と驚くと、お兄さんの方に手を置いたディータがにっこりとほほ笑んでいる。
「ウザいわ♪」
うん、ニッコリとほほ笑んでいるが、その笑顔がとっても怖い。
「な、何をするんだ君は!」
おお、ディータの電撃を受けたにも関わらずお兄さんはピンピンしていた。
また気絶しちゃうかなと思ったんだけど、意外と頑丈である。
ディータも驚いたらしく、問い詰めてきたお兄さんから一歩退く。
あの強気なディータを一歩退けるなんて、すごいぞ、このお兄さん。
「ま、まさか君は誘拐犯か!俺の妹を連れ去ろうって魂胆だな!」
「は、はい!?」
「『はい』だとっ、認めたな!やはり誘拐犯か!!」
いやいや、今の『はい』はそういう『はい』じゃないでしょ!?
「覚悟しろ誘拐犯……みゃ!?」
お兄さんが言い終わる前に妹のシルネアのジャンピングかかと落としがお兄さんの脳天に直撃した。
お兄さんは頭を抱えながら呻いている……うん、あれは結構痛いと思う。
「いい加減にしなさい、兄さん!この人たちは私を助けてくれたのよ!そんな恩人にそう言う事言うなんて……兄さんのこと嫌いになっちゃうから!」
「のおおおおおおおおおおおう!?」
嫌いになっちゃうから……その一言を聞いたシスコンお兄さんは、とてもオーバーなリアクションでショックを受けている。まるで、この世の終わりのようなショックの受けようだ……いや、もしかしたらそれ以上かも……。
「シルネア、兄さんが間違っていた!だから、嫌いになるなんて言わないでおくれえええ!」
「なら、カモメさん達に謝る!」
「たいっへん申し訳ありませんでしたああああ!」
こちらも見事なジャンピング土下座であった。
いや、うん……えっと……ナニコレ?
「と、とりあえず、解ってもらえたんならいいんじゃありません?」
さすがのエリンシアもドン引きしている……いやぁ、変わった人だよこのお兄さん……うん、あんまりかかわらない方がよかったかも?
「そして、私の妹を救ってくれたとのこと!重ねてお礼を申し上げます!」
「わ、わかったから、頭を上げなさい……なんか怖いわ」
「なんとお優しい!このクルード、感涙の極み!」
うん、うっとおしい……ゲフンゲフン、なんと言うか暑苦しい人だね……うん。
「だああ、近い、近い!!」
おお、ディータが狼狽えてる……お兄さんのアグレッシブな動きにあのディータですら狼狽させる……ある意味凄いねこのお兄さん……。
「もうっ、兄さん、いい加減落ち着いて!」
「皆ッ!」
私と、ディータとエリンシアが戸惑っている中、クオンがいきなり真面目な声を上げた。
そして、そのクオンの声で私も気付く……囲まれてる……。
「ちっ、気づかれたか……よう、兄さんたち、死にたくなかったら金目のモン置いていきな」
盗賊だ……ああ、そうか、あれだけバカ騒ぎしていればこういう輩を呼び込んじゃうよね……まあ、来たのが魔物じゃなかった分いいのかな?
私は盗賊に囲まれながらも、そんなことを考えていた。
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